
災害時に機動力!警察のオフロードバイク訓練
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大規模災害の現場において、倒壊した建物や寸断された悪路を乗り越え、いち早く被害状況などの情報収集を行うために期待されているのが、警察の「オフロードバイク」の機動力です。今回は、栃木県のモビリティリゾートもてぎで行われた、栃木・茨城・群馬の3県警察本部「交通機動隊 広域緊急援助隊」による合同訓練の様子をレポート。プロのトライアルライダーを講師に迎えた実践的な訓練の様子と、15年前に発生した東日本大震災の現場を知る小隊長の言葉を通して、災害現場におけるオフロードバイクの重要性と、隊員たちのたゆまぬ努力に迫ります。
3県合同で挑む、大災害を想定した実践訓練

今回の訓練の舞台は、世界選手権でも使用されるセクションを有する「モビリティリゾートもてぎ」です。大型車両の進入が難しい大規模災害現場を想定し、オフロードバイクの高い機動力を活かした情報収集活動の強化を目的に実施されました。参加したのは、栃木県警察本部、茨城県警察本部、群馬県警察本部の「交通機動隊 広域緊急援助隊」に所属する総勢22名の隊員たちです。これら3県が合同でオフロードバイクの訓練を行うのは今回が初めての試みでした。

「大規模な災害現場における連携は非常に重要です。実際に現場で顔を合わせて合同で訓練を行わないと、その後の連携の確認はできません。今回初めて3県合同で訓練できたことにより、お互いの連携が取れ、今後の現場でも活躍できると確信しました」と、参加した隊員はその意義を語ります。
プロから学ぶ「道なき道」を走るための「トライアル技術」

講師を務めたのは、全日本トライアル選手権の最上位クラスであるIASクラスで14回もチャンピオンを獲得した小川友幸選手です。普段白バイで日々厳しい訓練を積んでいる交通機動隊員の皆さんは、一般のライダーに比べて格段に高い運転スキルを持っています。しかし、災害現場で求められるのは、舗装された道を走るオンロードの技術だけではありません。小川選手は「災害現場になると、本当に道がない場所を走ることになります。そのため、トライアルの技術が必要になってくるのです。トライアルのテクニックを少しでも理解していただくことで、安全に目的地へ到着できるようになります」と語ります。

今回の公開訓練は、あいにく雨天で路面コンディションが悪かったこともあり、加速時の座り姿勢や立ち姿勢など、基礎的なスキルの確認に重点を置いた指導が行われました。バイクはバランスを取りながら操る乗り物です。立ち位置や姿勢を意識することで車体が安定して前に進むという、基礎でありながら最も重要なポイントを、プロの視点から徹底的に復習していました。
「参加されている隊員の皆さんは1年目の方から4年目の方までスキルは様々ですが、4年目の隊員ともなると、腰高くらいまでの高さの障害物を普通に乗り越えていきます。トライアル特有のテクニックを駆使して越えるような、結構なレベルの技術を持っていますよ」と、小川選手も隊員たちのポテンシャルの高さを評価していました。
震災の現場を知る小隊長が語る「オフロードバイクの重要性」

実際に東日本大震災の現場に出動した経験を持つ、栃木県警察本部 交通部 交通機動隊の坂井大悟小隊長(以下、坂井小隊長)に、当時を振り返っていただきました。
「東日本大震災の時は、私も隊員として現場に出動しました。当時の現場は本当に凄まじい状況で、道路が砂を被ってしまっていたり、車では到底進めないような狭い道がいくつもありました。当時、私自身はバイクで活動していたわけではありませんでしたが、『ここがバイクであればもっと先へ進めるのに』と感じる場所、まさにバイクでなければ行けない場所が多くありました」
また、災害現場を走破するために必要なスキルについて、次のように述べられました。
「災害現場では、道路が陥没してガーンと下がっていたり、そこを登ったり降りたりしなければならない場所が想定されます。そのため、障害物を超えるというのも重要な一つのスキルであり、普段からそうした訓練を中心に行っています」

日頃から白バイに乗務し、オンロードにおいては卓越した技術を持つ隊員たちですが、オフロードバイクの操縦はまったく勝手が異なるといいます。坂井小隊長は、オフロード特有の難しさと姿勢の重要性を強調しました。
「オンロードとオフロードは全然違います。例えば白バイなどのロードバイクだと、ニーグリップが大事じゃないですか。でもオフロードバイクってなかなかニーグリップがしにくいんです。だからこそ、今回小川選手にも教えていただいた『姿勢』がとても大切になります。バランスを崩して姿勢を崩せば、あっという間に吹き飛ばされてしまいますから、常に姿勢を意識して乗ることが重要だと痛感しています」
悪条件こそ絶好の“訓練日和”。「忘れた頃にやってくる」災害への備え

取材当日はあいにくの冷たい雨が降り、モビリティリゾートもてぎの路面は非常に滑りやすく、バイクを操るには困難なコンディションでした。しかし、坂井小隊長は頼もしい笑顔を見せました。
「本日はあいにくの雨でしたが、現場ではいつどこで雨が降るか分かりません。雨ばかりでなく雪が降るかもしれない。そういった意味では、絶好の訓練日和だったと思います。
また、災害はいつ起こるかわかりませんし、毎年のように発生しています。参加した若手の隊員たちには、今後いつどこで何があるか分からないので、いつでも出動できるように、常に自分を磨き続けていってほしいですね」
災害は、天候や時間、場所を選ばず発生します。だからこそ、広域緊急援助隊の隊員たちは、どのような状況でも対応できるよう、日頃から厳しい訓練を重ねています。
道路が寸断された過酷な状況下でも、道なき道を切り拓き、いち早く被災地へ駆けつけてくれる広域緊急援助隊の隊員たち。日々の厳しい訓練に裏打ちされたその技術と、オフロードバイクの圧倒的な機動力は、いざという時、私たちにとって大きな希望となるはずです。
【動画】北関東3県警の広域緊急援助隊による初の合同訓練
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