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(画像提供:千葉RB)

機動力活かし迅速対応!有志ライダーによるボランティアバイク隊「千葉レスキューサポートバイク」

1995年1月17日、阪神・淡路大震災の被害状況をテレビなどで目の当たりにし、思わず絶句し、何か自分に出来ることはないかと考えた方も少なくなかったのではないだろうか。また、2011年に起こった東日本大震災の際には、筆者自身、居ても立ってもいられず知人の住む仙台へ向かおうとしたものの、道路の寸断によって行くすべがなく歯がゆい思いをした記憶が残っている。

1998年4月に設立された災害救援ボランティア団体「千葉レスキューサポートバイク(以下、千葉RB)」の発起人の一人であり理事長を務める丸山岳さんもまた、激甚災害によってクルマの通行が不可能になってしまった道を勇ましく突き進むレスキューバイクの活躍を知り、主に千葉県在住または在住在勤のバイク愛好者を中心に同隊を発足したという。

近年、日本における自然災害は頻度が増し、予測できないことも多いことから、機動力に優れたバイクを活用したレスキューサポートが注目を集めている。そこで今回は、去る2022年9月1日(防災の日)に、千葉市蘇我スポーツ公園で行われた九都県市合同防災訓練にも参加されていた千葉RBの副理事長である岡田徹さん(以下、岡田さん)に、同隊の主な活動実績と活動を継続していく上での苦労について話を伺った。

 

災害時のボランティアサポートは多岐にわたる

船橋市社協災害VC立ち上げ訓練時の様子。被災者役、調査員役、ボランティアリーダー役に分かれて訓練が行われた(画像提供:千葉RB)

一般的に災害時のボランティアというと、被災地に出向き被害にあった家屋の整理や、避難所において飲食料品などの運搬や配給といった活動をイメージする方が多いのではないだろうか。しかし、岡田さんへの取材を進めるなかで、それ以前にボランティア活動において、多くの準備が必要なことを改めて知ることとなった。

ボランティア活動を組織化し機能させるためには、少なくとも三つの大きな要素が必要となる。

 

① ボランティアを受け入れるための災害ボランティアセンターの設立

被災地で災害ボランティアセンターを昨日させるには、どの程度の規模、スピードでサポートが必要か把握し、人員を送る必要がある。当然、ボランティア人員を送る前にも現地の安全確認が必要だ。

千葉RBは、日頃から災害ボランティアセンターの設置母体となる県市町村社会福祉協議会や自治体の防災体制と深く関わっており、時には隊員によるボランティアの講義、時には各地でのデモンストレーション、時にはAEDやブルーシート展張講習会への参加など、防災に対する知識・情報に対して受動的にも能動的にも非常に精力的な活動をしている。こうした日頃の活動があるからこそ、予測不可能な自然災害に対する準備が心身ともにできているのである。

 

②災害 ボランティアセンターにおける地域に適合した運営も必要不可欠

各地域ごとに異なる地理的な事情や住民の困窮度合い、それをしっかりと把握したうえで運営する必要があるほか、その経験を全国各地のボランティアにも共有すべく、講義や勉強会などで全国に広める活動も重要となる。

2022年9月1日、九都県市合同防災訓練千葉会場での訓練風景

 

③ 多種多様なボランティアに対応するサポート体制

この項目がボランティア活動においては最も重要ではないだろうか。実際に、千葉RBの出動時におけるサポート守備範囲の広さには驚くばかりだ。

前記のような被災地や避難所におけるサポートはもちろんのこと、他の技術系ボランティア団体をサポートし、被害状況の調査、家屋の清掃補助、台風などで吹き飛んでしまった屋根のブルーシート補修の補助作業、さらには使い終わったブルーシートをリサイクルバックに再利用する馬目の洗浄や、木材に刺さったままの釘を抜く作業、倒壊した建築物から出た産業廃棄物にあたるゴミの搬送までも行う。千葉RBのボランティアサポートは、想像以上に広範囲な活動をしている。

左:ブルーシートの洗浄。2021年2月13日南房総市にて(画像提供:千葉RB)
右:一宮川の氾濫で被災した方の庭の片付け、新たに掃除のニーズを受けてセンターに伝達(画像提供:千葉RB)

 

東日本大震災では現場の被害状況を調査(画像提供:千葉RB)

 

基本は有志であるため、救命講習などには自主性が、活動継続には柔軟性が求められる

千葉市蘇我スポーツ公園で行われた「第43回九都県市合同防災訓練」の千葉RBブースには、同隊の活動に興味を持ち質問を投げかける人が絶え間なく訪れていた。

千葉RBは有志の集まりであって専属の職員はおらず、所属メンバーは各々が仕事を持っているため、いつでも出動できる人員は限られている。

設立当時は、全国組織であるジャパン・レスキューサポート・バイクネットワーク(JRB)の千葉県支部であったが、地域ごとに災害への考え方や活動守備範囲が異なることもあり、なかなか上手く合致しなかった。例えば、ある地域の組織ではボランティアサポートの対象を地震被害に限定していたり、警察や自治体との協力体制も地域ごとに異なるからだ。

 

千葉RBは、現在原付二輪免許を持たないメンバー含む40名前後の隊員がおり、ひとたび天災などが起これば隊員たちの登録するメーリングリストやSNSグループに活動情報が発信され、出動可能なメンバーだけが災害現場に急行する。また、SNSグループには日々、各地の台風や災害情報の共有、他地域のボランティアからの協力依頼も飛び交い、その時に出動できるメンバーが参加するという形態をとっている。今日まで継続できているのは、こうした、各隊員の自主性に加え、柔軟な出動体制によるところも大きいのではないだろうか。

何と言っても、これまでの活動履歴が継続性の高さを物語っている。

 

主な活動履歴(このほかにも所属隊員が各被災地で個別に活動)

  • 1998年4月:千葉RB(任意団体)設立
  • 1998年9月:栃木県北部水害救援活動(栃木県那須町)
  • 2000年9月:愛知県豪雨水害復旧支援活動(愛知県西批杷島町、新川町ほか)
  • 2003年7月:宮城県北部地震復旧支援活動(宮城県南郷町ほか)
  • 2004年7月:7.13新潟豪雨水害復旧支援活動(新潟県三条市、中之島町ほか)
  • 2004年10月:中越地震復旧支援活動(新潟県十日町市、小千谷市、川口町、長岡市)
  • 2005年9月:特定非営利活動法人 千葉RB設立
  • 2006年4月:松戸市と「災害時における応急活動の協力に関する協定」を締結
  • 2006年4月:日本赤十字社千葉県支部と「災害時等における協力に関する協定」を締結
  • 2006年7月:長野県水害復旧支援活動(長野県諏訪市、岡谷市)
  • 2007年7月:中越沖地震復旧支援活動(柏崎市、刈羽村)
  • 2011年3月:東日本大震災復旧支援活動(千葉県災害ボランティアセンター連絡会)
  • 2011年3~4月:旭市災害ボランティアセンター設置・運営支援活動
  • 2011年4~6月:福島県いわき市勿来地区災害ボランティアセンター運営支援
  • 2011年4~7月:福島県いわき市災害救援ボランティアセンター運営支援
  • 2013年9月:野田市災害ボランティアセンター設置・運営支援(竜巻災害)
  • 2013年10月:茂原市台風被害災害ボランティアせんたセンター運営支援
  • 2015年9月:千葉市中央区蘇我地区竜巻災害復旧支援
  • 2016年5月:熊本地震復興支援(熊本熊本県嘉島町、南阿蘇村)
  • 2018年7月:広島市安佐期待区口田地区災害ボランティアセンター運営支援
  • 2019年9月~10月:令和元年房総台風・県内DVC運営支援(千葉県災害VC、千葉県内各地)
  • 2021年11月~2022年3月:令和元年房総台風・復興支援(鋸南町、南房総市)
  • 2021年7~12月:熱海市伊豆山災害復興支援(軽トラ貸与ほか)
  • 2022年8月:新潟県村上市災害ボランティアセンターセンター(軽トラ貸与貸与ほか)

 

千葉RBの活動形態は、現代のツールを駆使し個人の価値観やワークライフバランスの変化ともマッチした最善策なのかもしれない。

特定非営利活動法人 千葉レスキューサポートバイク

http://chiba-rb.or.jp/

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