【どうなる原付!?】新基準原付とは?・特定小型原付とは?を徹底分析
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“原付(げんつき)”の愛称で親しまれている「原動機付自転車(以下、原付)」。
道路運送車両法では、総排気量50cc以下(定格出力0.6kW以下)のバイクを「第一種原動機付自転車(以下、原付一種)」、50cc超125cc以下(定格出力0.6kW超~1.0kW以下)が「第二種原動機付自転車(以下、原付二種)」として区分されています。また、16歳以上が取得できる原付、小型特殊、普通二輪免許のなかでも原付は、学科試験と適正試験の合格ならびに原付講習を受講すれば免許交付後すぐに公道走行が可能となるため、バイクのなかでも最も身近な存在です。
ユーザーの要望に応えるべく性能アップや、日本の厳しい騒音・排気ガス規制への対応を迫られ、国内バイクメーカーによる原付一種の販売価格は軒並み値上げを余儀なくされました。それでも公共交通機関が不十分な地域の学生や年配者などは、手軽で便利な移動手段(日常の足)として必要としており、原付一種を使用している場面を多く見かけます。
一方で2023年7月1日からは、そうした“日常の足”である原付のなかに16歳以上であれば運転免許不要の「特定小型原動機付自転車」という新しい区分が新設されました。さらに2023年12月には、警察庁が二輪車車両区分見直しに関する報告書をまとめ、最高出力を4kW以下に制御した排気量125cc以下のバイクを「新基準原付」として、一般的な原付一種と同じ車両区分および免許区分とする方針を示しました。
そこで今回は、追加や変更が目まぐるしい原付における車両区分や免許制度などのルールについて混合交通の観点から独自に整理してみました。
現在の販売台数はピーク時の1/10
さかのぼること1982年に、原付一種、原付二種および軽二輪(126~250cc)、小型二輪(251cc〜)の国内バイク出荷台数は328万台を超え、その大半を原付一種・二種が占めていました。しかし、40年の時を経て、2022年における二輪車総販売台数約40万台のうち原付一種・二種は23万台と1/10以下にまで縮小しました。
1980年代に巻き起こったバイクブームのなかで、利便性や経済性の高さから“日常の足”として認められた原付一種は、10万円以下というリーズナブルなモデルの販売などで需要が急増しました。その後も利便性の向上や、若年層からの支持によって長らく需要の高止まりが続きましたが、交通死亡事故増加によるヘルメットの規制強化や、騒音・排気ガスなどの環境規制対応による販売価格のアップなどによって、原付需要は徐々に勢いを失っていきました。
そして、現在の原付一種(50cc以下)は、2025年11月に国内で新たな排ガス規制が適用されると、規制をクリアする原付一種の開発は困難、かつ、開発費用に見合う事業性の見通しが立たず、今後、取得が容易な原付免許で運転できる総排気量50cc以下の現行区分に該当する原付一種の国内での生産・販売の継続が困難との見解により、メーカーの業界団体が原付一種の区分の見直しを国に要望していた背景がありました。
2025年11月から新区分として導入される「新基準原付」とは?
グローバル視点でバイクの車両区分を見ると、日本のように原付一種=排気量50cc以下の区分がある国は少なく、日本よりもバイクの使用率が高い台湾でも既に50ccクラスは、125cc廉価モデルの拡充などによって形骸化しているのが現状です。欧州も含め日本以外のほとんどの諸外国では、125ccクラスがパーソナルコミューターの主流なのです。
そこで、大気環境保護と国際基準調和の観点から2025年(令和7年)11月以降に製作される、総排気量50cc以下で最高速度が時速50キロを超える原付に対して、新たな排ガス規制が適用開始されるにあたり、業界として原付二種モデルの活用検討について要望していました。これに応えるように、警察庁が現在の原付免許保有者を対象に検証し「運転特性は現行原付とほぼ同等と評価」との報告がありました。
しかし、新基準原付については、いまだ誤った認識をされている方も少なくありませんので、以下に二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会の報告書のポイントを記します。
- 元々125ccクラスの車両であっても「新基準原付」として利用する場合、道路交通法上の扱いは今までの「原付一種」と同様、つまり法定最高速度時速30キロ、二人乗り禁止、二段階右折義務などのルールは変わりません。
- 免許制度に変更はなく、従来までの原付二種にあたる125ccのバイクを運転するためには、「原付二種の運転免許=小型限定普通二輪免許」が必要です。
※参考:警察庁「二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会報告書」
警察庁の検証結果から、俗に新基準原付と言われる総排気量125cc以下の二輪車の「最高出力」を現行原付と同等レベルの4kW以下に制御した二輪車(新基準原付)を原付一種としてみなされると、それに伴い現行販売している原付一種に変わるモデルが登場する可能性があるというポジティブな面がある一方で、原付免許で乗れたとしても、車体の大きさや販売価格に関しては、まだまだこれからのようです。
更なるルールの認知向上が求められる特定小型原動機付自転車
ここ数年、都市部を中心に見かけることの多くなった電動キックボードなどの電動パーソナルモビリティですが、2023年7月1日から一定の基準を満たすものについては「特定小型原動機付自転車」と位置づけられ、16歳以上であれば運転免許不要の新しい交通ルールが適用されています。
なお、特定小型原動機付自転車は、以下の道路交通法施行規則で定める基準を全て満たすものをいいます。
- 車体の大きさは、長さ190cm以下、幅60cm以下であること
- 原動機として、定格出力0.60kW以下の電動機を用いること
- 時速20キロを超える速度を出すことができないこと
- 走行中に最高速度の設定を変更することができないこと
- オートマチック・トランスミッション(AT)機構がとられていること
- 最高速度表示灯が備えられていること
さらに、特定小型原動機付自転車のうち、以下の基準を全て満たすものを特例特定小型原動機付自転車といいます。
- 時速6キロを超える速度を出すことができないこと
- 最高速度表示灯を点滅させること
また、特定小型原動機付自転車は、下記の基準を満たすことも必要です。
- 道路運送車両法上の保安基準に適合していること
- 自動車損害賠償責任保険(共済)の契約をしていること
- 標識(ナンバープレート)を取り付けていること
※乗車用ヘルメット着用は努力義務
なお、2024年3月末まで、特定小型原動機付自転車には原動機付自転車の自賠責保険料が適用されますが、同年4月以降は特定小型原動機付自転車のための新しい保険料が適用される予定です。その新しい保険料が、原動機付自転車の保険料より安くなる場合については、保険契約者が申請をすれば、一部のケースを除き、相応の差額が返還される予定です。詳細については、現在、金融庁において検討されています。
特定小型原動機付自転車の保安基準への適合性については、地方運輸局による型式認定番号標、または性能等確認実施機関による表示(シール)の有無が目安となります。
特定小型原動機付自転車の交通ルール遵守が求められている
1:飲酒運転の禁止
酒酔い運転……5年以下の懲役または100万円以下の罰金
酒気帯び運転……3年以下の懲役または50万円以下の罰金
また、乗ってきた人に酒を提供したり、飲酒後に車両を提供したりしても罰せられます。
2:運転者の年齢制限
特定小型原動機付自転車を運転するために運転免許は不要ですが、16歳未満が運転することは禁止されています。また、同様に16歳未満に特定小型原動機付自転車を提供すること(貸す、買い与える、譲渡するなど)も禁止されています。
3:信号機の信号などに従う義務
原則として、車両用の信号に従わなければなりません。
反則金は6,000円(原付 信号無視[赤色など])
4:通行の禁止など
道路標識などにより、通行を禁止されている道路またはその部分を通行してはいけません。
反則金は5,000円(原付 通行禁止違反)
5:特定小型原動機付自転車の通行する場所
特定小型原動機付自転車は、歩道または路側帯と車道の区別がある道路では、車道を通行しなければなりません(自転車道も通行することができます)。道路では左側を通行しなければならず、特に、車両通行帯のない道路では左側端に寄って通行しなければなりません。車両通行帯の設けられた道路においては、原則として一番左側の車両通行帯を通行しなければなりません。気軽に利用できる新たな移動手段として、都心部では多く見かけるようになりましたが、さらなる交通ルールの理解が不可欠です。
6:例外的に歩道または路側帯を通行できる場合
注意していただきたいのが、特例特定小型原動機付自転車の基準を全て満たす場合に限り、歩道を通行することができるという点です。通行することができる歩道は、全ての歩道ではなく「普通自転車等および歩行者等専用」の道路標識などが設置されている歩道に限られます。歩道を通行する場合は、歩道の中央から車道寄りの部分又は普通自転車通行指定部分を通行しなければなりません。歩道を通行するときは、歩行者優先で、歩行者の通行を妨げることとなるときは一時停止しなければなりません。
また、特例特定小型原動機付自転車は、普通自転車等および歩行者等専用の標識や補助標識等で別途示している場合を除き、最高速度を時速6キロ以下に制限した走行モードであれば、歩道を通行することができますが、歩行者の通行を妨害しないよう、安全な方法で通行しなければなりません。
車両に乗っているという自覚を持つことが大切
上図のとおり、特定小型原動機付自転車は16歳以上であれば免許が不要であるほか、ヘルメット着用も努力義務であるももの、自賠責保険の加入やナンバープレートの装着、乗車人数はほぼ原付一種と同様です。ただし通行ルールは異なる面もあるので、ルールを守って乗車する必要があります。
免許不要ということは、16歳以上であれば学科教習などで交通ルールの基本を学ばずとも運転できてしまうということです。気軽に利用できる一方で、原付一種と同等の罰則もあるため、利用する方が通行区分を含めた交通ルールの理解とマナーを守ることが非常に重要です。
いまだ存在する原付一種へのニーズと今後の課題
上記の画像は、とある山坂が多い地域のスーパーマーケット駐輪場ですが、ご覧の通りシニアカーと原付一種のスクーターが多く停められており、利用者の大半が高齢者でした。つまり、パーソナルモビリティを必要とする地域や郊外においては原付一種が生活を支える大切な役割を担っています。
このように、手軽でコンパクトな移動手段として原付一種を必要としている利用者が多くいることも事実です。これから大きな転換期を迎える国内バイクメーカー各社による新基準原付への対応に期待が集まります。
警察庁「『二輪車車両区分見直しに関する有識者検討会』報告書について」
https://www.npa.go.jp/news/release/2023/20231219001.html
警視庁「小型原動機付自転車(電動キックボード等)に関する交通ルール等について」
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/electric_mobility/electric_kickboard.html
一般社団法人 日本自動車工業会「日本の自動車工業 2023年度版」
https://www.jama.or.jp/library/publish/mioj/ebook/2023/MIoJ2023_j.pdf