
街を守り、生活を運ぶ。「はたらくバイク」大図鑑
目次 - INDEX
街中で見かける大型ボックス付きの配達バイクや、赤色灯・サイレンを装備した警察車両。彼らは単なる移動手段ではなく、特定の任務を遂行するため、特別につくられた専用車両でありプロのためのバイクです。
警察、消防、自衛隊といった官公庁の車両から、私たちの生活インフラを支える配送バイク、そして多くのライダーがお世話になった教習車まで。日本国内で活躍する代表的なはたらくバイクをピックアップしてみました。
規律と威厳の象徴「白バイ」とその仲間
交通取締りや警備の最前線で活躍する車両で、ベース車両に加え、白バイ専用装備を架装しています。
交通取締用自動二輪車(通称:白バイ)

交通取締りの主役である白バイ。主力車種はホンダの「CB1300P」や新型の「NT1100P」ですが、ヤマハ「FJR1300P」などの採用実績もあります。一昔前までは「VFR800P」やさらに昔は「CB750」など750ccクラス(通称“ナナハン”)が主力でした。
ここがみどころ!
市販車との違い:「P」仕様(Police仕様)は、違反速度を正確に計測する測定用メーターや、サイレンアンプ・無線機を格納するリアボックス、専用のシングルシートを装備しています。
ライディングテクニック:毎年開催される「全国白バイ安全運転競技大会」では、各都道府県を代表した隊員たちが極限まで磨き上げたライディングテクニックを披露しています。
神奈川県警女性白バイ隊、そのキャリアと交通安全への想い
【夢をかなえ、華ひらく】姉妹で今日も白バイ発進!
災害対策用オフロード白バイ

ヤマハの「セロー250」をベースとした専用車両「XT250P」などです。これらは被災地での情報収集や連絡手段として活用されています。
ここがみどころ!
部隊名:警視庁などでは「クイック・レスポンス・フォース(QRF)」といった名称で運用されることがあります。
走破性:ガレキや段差の多い災害現場でもパンクしにくい装備や、転倒時のダメージを防ぐガード類を備え、孤立地域へのアクセスを可能にします。
側車付き儀礼用・警衛用オートバイ(皇宮警察サイドカー)

皇族や国賓の護衛、パレードなどで使用されるのがサイドカー仕様のバイクです。ホンダ「ゴールドウイング」がベース車両として採用されています。
交番・駐在所用バイク

地域巡回に使われる小型バイクで、これまでホンダ「スーパーカブ」や「CD50」などが使われていましたが、近年ではヤマハ「トリシティ125」などスクータータイプの車両も多く見受けられます。
緊急事態と国土を守る特殊部隊
災害現場や高速道路、演習場など、過酷な環境下での活動を前提としたタフな車両です。
自衛隊偵察用オートバイ

陸上自衛隊ではカワサキ「KLX250」を採用しています。作戦行動用に無線機ラックや、転倒時の破損を防ぐガード類を装備しているのが特徴です。
ここがみどころ!
特殊機能:敵に見つからないよう灯火類をすべて消して走る「管制灯火(ブラックアウト)」スイッチや、ヘリコプターからの降下作戦にも耐えうる頑丈さを持っています。
警務隊用オートバイ


自衛隊内の保安職務(警務隊)で使用される車両です。白い車体に赤色灯を装備していますが、警察とは所属が異なります。
消防活動二輪車(通称:赤バイ)

消防車が入れない狭い場所や渋滞時でも先行して現場へ向かい、初動確認や情報収集を行います。
ここがみどころ!
機動力と装備:東京消防庁の「クイックアタッカー」などが有名です。2台1組で活動し、特殊消火装置(インパルス銃)や救助資機材を積載して初期消火にあたります。
高速道路会社の二輪パトロール車両(通称:黄バイ)

首都高速道路などで導入実績があります。渋滞やトンネル内事故発生時に現場へ急行し、規制や処理を行います。
【黄バイ】首都高の安全を守る黄色いパトロールバイク隊を徹底解説
郵便・物流・デリバリー、日本の物流ラストワンマイルの主役
雨の日も風の日も、荷物を届けるために走り続ける彼らは、まさに「街の毛細血管」。耐久性と積載性が何より重視されます。
郵便配達用バイク(電動・ガソリン)

長年、ガソリン車の「スーパーカブMD」などが活躍してきましたが、近年は電動のホンダ「ベンリィ e:」の導入が進んでいます。
ここがみどころ!
MDの工夫:郵政カブ(MD)は、重積載に耐える強化サスペンションや、取り回しを良くする小径ホイールなどが採用されていました。
電動化の恩恵:電動バイクは走行音が静かなため、早朝の住宅街での配達業務において、騒音低減という大きなメリットを生んでいます。
郵便配達に導入された1万台を超える電動バイクの現在を追う!
新聞配達用バイク


ホンダ「スーパーカブ110 プロ Lite」やヤマハ「ニュースギア」などが代表的です。大量の新聞を積むための大型バスケットや、強化された足回りが特徴です。
フードデリバリー(ピザ・寿司など)

ホンダ「ジャイロキャノピー e:」などがよく使われます。三輪による停車時の安定性と、全天候に対応しやすいルーフ(屋根)装備が強みです。近年では、電動化も進んでいます。
ここがみどころ!
スイング機構:三輪でありながら車体を傾けて曲がれるスイング機構(ナイトハルト機構など)のおかげで、二輪に近い感覚で曲がることができるのが特長です。
バイク便

これまでホンダ「VTR250」や「CB400SF」などが選ばれていました。運営会社が保有する“社バイ”と、個人のバイクをバイク便用に登録する“個バイ”があり、個バイは個性豊かですが、125cc超のバイクを使用する場合は、事業用ナンバー(緑ナンバー)の取得が法律で義務付けられています。二輪車ならではの機動力を活かし、重要書類などを急送します。
【バイクを仕事にするということ】日本一スタイリッシュなバイク便!株式会社ティーサーブに聞いてみた!
特定の目的のために存在するスペシャルバイク
教習所やロードサービス、報道など、プロフェッショナルが使う特殊用途の車両です。
教習車

多くのライダーの「原点」とも言えるバイクです。長らく4気筒のホンダ「CB400SF-K」が使われてきましたが、最新は「NX400L」などの2気筒が主流。転倒時の保護バンパーや、指導員用の表示ランプを備えた教習専用仕様です。
ここがみどころ!
ランプの意味:車体前後のランプは、ブレーキ操作やエンスト、規定速度(40km/h)到達などを指導員に伝える役割があります。
報道取材用バイク

マラソン中継などでカメラマンが同乗して撮影を行います。低速での安定性が高い「ゴールドウイング」やビッグスクーターなどが選ばれます。
ここがみどころ!
プロの技:ライダーは撮影対象と同じ速度を保ちつつ、映像がブレないように超低速で安定して走り続ける高度な技術が求められます。
銀行・営業用バイク

ホンダ「スーパーカブ」などのバイクにリアボックスを装着し、スーツ姿で乗車するスタイルです。街の経済活動を支える質実剛健な相棒です。
今回紹介した「はたらくバイク」たちは、決して華美な装飾を施しているわけではありません。しかし、その無骨な車体の細部には、過酷な現場で確実に任務を遂行するための「機能美」が備わっています。
何十キロもの荷物に耐える強化されたサスペンション、一刻を争う現場へ急行するための特殊装備、あるいは静かに住宅街を走るための最新電動ユニット。これらはすべて、私たちの安全や生活インフラを守るために選び抜かれた専用設計であり、メーカーの開発努力と現場の知恵の結晶と言えます。
そして忘れてはならないのが、それらを操るライダーたちの存在です。雨の日も風の日もハンドルを握り、時には高度なバランス感覚で、時には迅速な判断力で街を駆け抜ける彼らは、まさしくプロフェッショナルと呼ぶにふさわしい技術を持っています。
明日、街角で彼らを見かけたとき、今までとは少し違った視点でその姿を追ってみてください。その背中には、私たちの社会を支えているという誇りと責任が乗っているはずです。すれ違う一瞬、心の中で「お疲れさまです。ありがとう。」と敬意を表したくなる、はたらくバイクとは、そんなかっこよさを秘めた乗り物なのです。








