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画像提供:ウエルカムライダーズおがの

人口1万2,000人の小鹿野町はなぜバイクでまちおこしに成功しているのか?【ウエルカムライダーズおがの】

都内から約100kmの位置にある埼玉県秩父郡小鹿野町は、週末ともなると数百台を超えるライダーがツーリングの目的地または経由地として立ち寄る人気のツーリングスポットです。

20年くらい前に、いわゆるブログが流行り始め、今でいう写真映えするどんぶりから溢れんばかりの大きなカツをのせた「わらじカツ丼」が、一部のライダーの間で人気を集めました。

わらじカツ丼そのものは、もちろんトンカツの形状がワラジに似ていることから名付けられたようですが、昔は一枚のカツをどんぶりの蓋にのせ、それを酒の肴として楽しんだあと、どんぶりに残ったもう一枚のカツでご飯を食べるといった食べ方が言い伝えられているそうです。

 

政府が地方創生へ動き出す風潮とも相まって始まったわらじカツ丼発祥の地に、全国からライダーを招致する小鹿野町のまちおこしプロジェクト「ウエルカムライダーズおがの」。

立ち上げから現在に至る15年、果たして小鹿野町はどう変わったのか?吉田あきら代表(以下、吉田代表)と、加藤悟副代表(以下、加藤副代表)にお話を伺いました。

 

県の助成が終了後、身の丈でライダーの小さな声も拾い上げた

画像提供:ウエルカムライダーズおがの

「ウエルカムライダーズおがの」は、2007年から全国でも珍しい“バイクでのまちおこし”としてスタートしましたが、活動3年目で県の助成が終了することとなり、さらなる効果を期待して小鹿野町は、主体を西秩父商工会に移すことで方針転換しました。コンセプトはライダーが「来やすく・居やすく・また来たい町」

多くの自治体が小鹿野町の取り組みに注目し、連日のように関係者が小鹿野町を訪れました。そして、人口1万2,000人足らずのこの町が活動を継続できていることにみな驚くそうです。

しかし吉田代表はむしろ、そうした注目度の高さに困惑した様子で、ぽつりと「身の丈にあった活動をしているだけです」と、静かに答えてくれました。

確かにお話をうかがうと、小鹿野町を訪れたライダーひとりひとりの声に耳を傾け、そして大きくはない一歩でも、小さなことからコツコツと実行していく実直な姿勢が感じられました。

 

派手ではないが、しっかりとライダー歓迎の工夫が随所に感じ取れる

画像提供:ウエルカムライダーズおがの

まずライダーに対してもっと「来やすく」というポイントについては、ウエルカムライダーズのバナーや、ロゴ入り看板を町の随所で見かけることが出来ます。

実際にウエルカムライダーズの協賛店となっている和菓子店を訪れたのですが、そこで応対してくれた店員さんが自分のバイクを見るなり、「バイクで来られたんですね。それではお饅頭をもう一つ」と。大きなことではないですが、心のこもったプチサービスと受け入れられている雰囲気は、まさにウエルカムを感じることができた瞬間でした。

こうした町ぐるみでの協力体制が浸透しており、飲食店によっては一品サービス、または以前は裏メニューだったものが表メニューになるなど、着実にライダー歓迎のムードを醸成しており、「また来たい」という動機にも結びついていきました。

 

また、観光需要が減少する冬場でも、地元の有志が尾ノ内渓谷にホースを敷設散水し創り上げた、大規模な氷柱をライトアップし観光地化することによって、冬でもSNS映えを狙ったライダーが訪れるようになったそうです。

加藤副代表によると、小鹿野町を訪れた女性ライダーに快適に過ごしてもらうため、女性ライダーからの要望を聞き入れ、女性専用のレストルームなども特別に作ったとのこと。そうした配慮も、訪れるライダーが 「居やすく(心地良く)」感じるポイントになっているようです。

訪れるライダーたちと会話しながら、まさに“小さなことからコツコツと”要望を具現化していく。そんな真摯な姿勢がこの取り組みの根幹にあり、長く続けられることに繋がっているのでしょう。

そういえば、屋根付きのバイク駐輪場や、店前にバイク専用駐車スペースをわかりやすく線引きしている飲食店も増えています。

 

地元愛のある女性も協力して時代に即した情報発信が進む

画像提供:ウエルカムライダーズおがの

そんな中でとても感銘を受けたのが、小鹿野町を愛する小鹿野町在住の女性ライダーで構成されたアンバサダーユニット「おがのモトガールズ」

現在も小鹿野町で働く3名の女性ライダーは、情報発信もInstagramやFacebookなどのSNSを中心とし、イベントなどでも訪れたライダーとの適度なコミュニケーションによって、小鹿野町への経済効果、知名度アップ、あるいは、バイク弁当の人気などで雇用創出も一部生み出しているとのことです。

各自のSNSアカウントでも多くのフォロワーを集めており、それによって年に一回開催される「おがのライダー宿」の時も、計500名もの参加者を呼び込んでいます。

地元和菓子店のショーケースにも彼女らの写真が飾ってあり、地域住民からも愛されているようでした。

 

小鹿野町は【3,900日間】交通死亡事故ゼロを更新中!

画像提供:ウエルカムライダーズおがの

冒頭のとおり、週末ともなると数百台を超えるライダーがツーリングの目的地または経由地として立ち寄る小鹿野町は、地元警察とタイアップをしながら交通安全啓発活動を継続していることもあり、2013年10月8日以降、10年以上も交通死亡事故ゼロの記録が続いています。

わらじカツ丼とバイク(ライダー人気)の融合、そこから広がった地道な活動が身を結んだのでしょう。

 

一番変わったのは町の人のライダー(バイク)に対する理解

吉田代表(左)、加藤副代表(右)

吉田代表によると、本活動を通して一番の変化は、地元住民によるライダーを見る目が変わり、とても協力的になってきたことだそうです。
※取材当時は吉田あきらさんでしたが、現在は強矢立家(すねやたつや)さんが代表を引き継がれています。

継続とは何事もハードルがあるもの。ましてや、まちおこしという地域住民が一丸となって取り組まずして成し得ない、非常に難儀な取り組みを、無理せず、できることから、ライダー目線で小鹿野町を染める“ウエルカムライダーズ”。

最近では地元の人も知らないような“隠れた名店”に、ライダーが並ぶこともあるそう。

 

「これからも小鹿野町を訪れるライダーと会話しながらヒントを見つけ、様々な活動をしていきたい」と語る吉田代表は、ライダーを歓迎する優しさで溢れていました。

日本で一番ライダーを歓迎してくれる町、小鹿野町にまた行きたくなりました。

ウエルカムライダーズおがのFacebookページ

https://www.facebook.com/welcomeogano/

OMG おがのモトガールズTwitterアカウント 

https://twitter.com/oganomotogirls

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