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ライダーが走って生まれる波及効果!?「SSTR」と「にっぽん応援ツーリング」で垣間見た冒険家 風間深志氏の想い

2022年10月1日(土)、日本で唯一車両走行が可能な砂浜の公道として有名な石川県羽咋市~宝達志水町にまたがる「千里浜なぎさドライブウェイ」で、SSTR(サンライズ・サンセット・ツーリングラリー)のプレミアムイベントが開催された。

今年で10年目を迎えたSSTRは、かつて日本人ライダーとして初めてパリ・ダカールラリー(現在のダカールラリー)に出場を果たした冒険家の風間深志(かざま・しんじ)氏によって2013年よりスタート。風間深志氏が体験してきた長い冒険の旅、その先にたどり着いたダカールの雄大なビーチで味わった感動を伝えるべく、千里浜をゴールとして設定したダイナミックな非日常体験を味わうラリーイベントだ。

【冒険家 風間深志&俳優 風間晋之介】親子で語るバイクのルーツと向き合い方

 

5年に一度の節目にのみ開催されるプレミアムイベントとして、今回も全国津々浦々、北は北海道、南は沖縄などから多くのライダーが訪れた。

ルール自体は毎年行われているSSTRと同様に、日本海と反対側にある海岸を日の出と共にスタートし、指定された道の駅や高速道路のサービスエリアなどに立ち寄りながら、日の入りまでに到着するという非常にシンプルなもの。

さらにSSTRの特長はこの独特なルールのみならず、そこに参加するライダーや受け入れる地元住民の“思い入れ”や“心構え”にある。地元住民によるライダーを歓迎するムードは非常に心地良く、ゴールでも冒険心に胸高まらせたライダーの笑顔が夕日に照らされ、何ものにも代えがたい感動的な瞬間に立ち会うことができるのだ。

そのためSSTRは、地元住民や自治体、ライダーたちから毎年開催を熱望される非常に稀なイベントである。実際、他のイベントでは、バイクが大挙して集まることに眉をひそめる人がいるのも事実。

では、初開催からこれまででSSTRの参加者は一体どれだけ増えたのか、地元自治体はSSTRをどのように受け止めているのか、SSTRはライダーや地元に何をもたらしたのか、風間深志氏(以下、風間氏)と風間晋之介氏に改めて伺うこととした。

 

様々な喜び・出会い・奇跡を生み出している

風間氏がバイク雑誌の編集や競技、販売店など、バイクにまつわる様々な仕事をしていた頃、暴走族の増加に比例するように未成年者の交通事故死が増えてしまったことから、3ない運動(バイクの免許を取らない・バイクに乗らない・バイクを買わない)が全国に波及した。そんな時代であったが故に、バイクに対する世間の目は今よりももっと冷ややかであった。

そんな中、風間氏がモンベルのカヌーイベントに参加した際にひらめいた。「そうだ、レースなどではなく、一般のライダーが主役になれるイベントがなければいけないんだ」と。サンライズ(日の出)からサンセット(日の入り)はまさに地球を成し、地球上の生命に対する原理原則である。そこに立ち返り、自然の恵みを浴びるため、風間氏の頭に浮かんだイメージに最も近似していたのが、SSTR不変のゴール地である千里浜であった。

初開催の第一回SSTRは127名のライダーが参加し、それが2年目には500名を超え、3年目にはついに元々多くはなかった羽咋市の宿泊人数のキャパシティをあっという間に超えてしまったのだ。

SSTRは冒険心を大切にしたツーリングラリーということもあり、当初から“自己完結型”を打ち出していた。自己完結型とは、出発地やルート、立ち寄る道の駅やサービスエリア、走行時間や休憩時間の計画など全て、参加するライダーが各自で考えて実行するものである。その分だけゴール地である千里浜にたどり着いたときの達成感は最高潮に達し、そしてまた、偶発的な奇跡も数多く残している。

 

ハネムーンとしてご夫婦で参加したライダー

ゴール地でたまたま隣にバイクを停めたライダーと会話したところ、偶然にも同じ町内会の人だった。同じモデルのバイクが4台も並んで駐車されていたので、関係を聞いてみたら誰一人知り合いではなかった。さらには、赤の他人であるにもかかわらずゴール地で駐車したら、ゼッケン番号が見事に連番で停まっていた。

など、偶然のストーリーは尽きない。

 

地元の歓迎ムードから感じるSSTRの浸透

今回、編集部がSSTRのプレミアムイベントを取材した際に、“オフィシャルクルー”のTシャツを着た男女若者がいたため話を聞いてみると、彼らはなんと在学している大学の先生からボランティアスタッフの募集を知って参加したのだという。既にひとりはバイクに乗っていて、もうひとりは現在免許取得中とのこと。

風間氏も「地元の応援や支援は初開催時から比べると200%になった」と笑みがこぼれる。

最初は方々への理解を前提に挨拶して回るスタンスだったが、ここ数年になって地元住民のSSTRに対する理解が深まり、歓迎ムードの高まりとともに共同作業として受け入れられている実感があるという。

 

有志が集まり歓迎ムードを盛り上げる。Tシャツには「おかえり~」

構想当時からターゲットは石川県、つまり能登だった。能登を目的地にしていたので、能登全体で歓迎してもらったのだが、いまは地元からの期待が年々大きくなっているのを感じるという。

自分たちのイベント、もはや我が事のように楽しむ前述のボランティア学生たちの笑顔からも感じることができた。

 

ライダーが全国から走り集まることで広がる経済効果

「千里浜なぎさドライブウェイ」は全国でも珍しいクルマで走れる海岸として有名だ。しかし、実際は年間3分の1近くが通行止めになるそうだ。

潮流、海岸に打ち寄せる波、天候、その他様々な要因によって浜辺の状況は日々変わる。受け入れてくれる地元への心遣いがあったとしても、どうしても自然だけはコントロールできないため、ここが最も気を揉むところという。

羽咋市によると、10年前は正直なところSSTR開催について賛否両論あったという。しかし、当時の観光課長が千里浜出身であり、普段から海岸線を走るクルマやバイクを見て馴染みがあったことから、理解が早かったと振り返る。

回を重ねるごとに増えていく参加者を見て、行政として後押しをしようという気運が高まったのも事実だが、年間何度も能登を訪れる風間氏を見て、地域・行政との信頼関係が作られたそうだ。

 

SSTRをきっかけに千里浜を知ったライダーのなかには、またゆっくり訪れたいと2度3度と石川県に訪れるライダーも珍しくないという。あのとき味わった感動を共有するために、家族を連れて再訪する方もいるほどだ。そして最近では、スタート地点や立ち寄り地でも副次的な経済効果の波及があるそうだ。

参加者の出発地は圧倒的に東京都、神奈川県が多いとのことだが、人気のスタート地点では前日宿泊するライダーも増えたため、スタート地点の地元住民が出発するライダーたちを見送ったり、SSTRに参加するライダーを歓迎する宿泊施設による独自のサービスも始まっているという。また、神奈川県のある道の駅では、駐車場の一部でSSTRを目指すライダーにコーヒーの無料配布サービスを始めたそうだ。

道の駅も同様、ラリー中はルール上やむを得ず先を急がなければならず、後日改めてゆっくりと気になった道の駅を訪れるライダーも多いそうで、こうした副次的な経済効果がまさに全国に波及している。

 

人生に思い出を刻み、さらに風間氏は一歩踏み込む活動へ【にっぽん応援ツーリング】

海岸清掃に集まったライダー達

2017年から始まった「MFJ東北復興応援ツーリング」の後継企画として、MFJ(一般財団法人日本モーターサイクルスポーツ協会)とくまなくが手を取り合い生まれた新しい形のツーリングラリー、それが「にっぽん応援ツーリング」だ。

目的は、ダイレクトにライダーが日本の全国各地を訪ね、観光・宿泊・食事・買物・ボランティアなどを通じて少しでも地域に貢献し、ライダーの力で各地を元気にする旅がコンセプトだ。

SSTRはライダー文化を育むためのものに対し、にっぽん日本応援ツーリングはライダーのプレゼンス向上のため、社会に踏み込むアクションだという。

どちらかというと、社会的な貢献、すなわちチャリティやボランティア精神がまだまだ海外に比べて弱い日本というのは否めない。ならば、ライダーもツーリングを楽しみながら同時に社会貢献という目的も持ち、旅に、風景に向かい、人々と触れ合い「良い週末を過ごしてますね!良い趣味ですね!」と言われるようなものにしたい。バイクという趣味が当たり前に受け入れられ、ライダーとバイクの社会的な価値を向上させたいという願いが込められている。

 

本土を4つのエリアに分けた“それぞれの4極点”に目を向け、北海道4極、本州4極、四国4極、九州4極の16極巡りを指標とし、より一層ライダーたちに全国をくまなく旅してもらうべく、新たな提案としている。想いが壮大な分だけ準備されるコースもなんとも壮大だ。

日本全国をバイクの機動力を活かし元気にする。近年、未曾有の自然災害に悩まされる日本各地や、コロナ禍によって疲弊する地域を巡り、直接手を伸ばし地域社会に貢献する。

 

左:風間 晋之介氏、右:風間 深志氏

バイクに縁のない方にもライダーの心意気や優しさを届け、SSTRが一つの文化を実現したように、にっぽん応援ツーリングはライダー自身のプレゼンス向上を実現したい、そこには風間氏の揺るがぬ信念「強い想い」があった。

SSTR

https://sstr.jp/category/sstr2022/

にっぽん応援ツーリング

https://www.round4poles.com/

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