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渥美半島、菜の花祭りにて

ライダー目線で地元観光需要の活性化を目指す:奥三河公式PR大使 岸かなえさん

大型バイクに乗り、YouTubeを中心に動画配信を通じてバイクの楽しさや地元の魅力を伝える動画クリエイターのかなえADVこと岸かなえさん(以下、かなえさん)。

かなえさんのYouTubeチャンネルには、柔和で誠実な性格が全面に出た親しみやすい動画が並び、気づけばチャンネル登録者数は4万人を超えるほどの人気を誇ります。

そんなかなえさんは、なんと2023年5月から、地元愛知県は奥三河(新城市、設楽町、豊根村、東栄町の4市町村)の公式PR大使(以下、PR大使)に就任されました。バイクを中心に動画を配信する動画クリエイターが公式PR大使に任命されるという事例は、あまり耳にしない異例の大抜擢なのではないでしょうか。

そこで今回は、いったいどのような経緯でPR大使になられたのか、そしてPR大使としてどんな夢を描いているのか、さらに彼女のバイクに対する興味・関心から、普段のバイクの楽しみ方や様々な活動を通して感じることについてお話を伺いました。

 

バイクに対する不安の払拭から1人バイク旅ができるようになるまでライダーとしての成長:不安から自信へ

沖縄ソロツーリングで地元の方とも交流

バイクとの出会い、きっかけは?

私自身、もともとこれといった趣味がなくて、何か趣味を持ちたいと思っていました。そんなときに「バイク免許なら一度取得したら失効しない限り無くならないし無駄にはならないな」と思い、自動車学校に通うことを決意しました。

また、バイク免許を保有していない頃から鈴鹿8耐を観戦たこともあったので、サーキットに向かうライダーさんたちを見て憧れを抱いていたことも自動車学校へ通うきっかけのひとつです。

実際に自動車学校へ通い始めてみたら、あまりに楽しくて免許取得前からバイクにハマってしまいました。

ところが、初めてのバイク購入は免許を取得してから1ヶ月ほど経過してしまっていたこともあり、恐怖のあまりバイクショップから公道に出ることができませんでした。バイクの取り回しも全然自信がなかったため、納車日は走行と停車を繰り返しながらどうにかこうにか帰宅しました。

当時を振り返ると、中古バイクであったため試乗ができなかったことに加え、教習車以外の車種に乗る不安も大きかったです。

また、この頃はバイク友達が1人もいなかったので、バイクショップ以外に頼るところがありませんでしたし、とにかく公道を1人で走るのが不安でした。日中は交通量が多いため怖くて走れないので、夜間に名古屋市内を1人で走行練習していました。

せっかくできたバイク友達にツーリングに誘ってもらっても、集合場所まで1人でバイクに乗って駆けつけることができず断ってしまい、どうしたらバイクを楽しむことができるのか模索していました。

そんなこともあって、一時は自信を無くして半年近くバイクに乗れませんでした。

それでもバイクの運転が上手くなりたくて、ライディングスクールへも通いました。また、自分からお願いしてマスツーリングにも参加させて頂きながら、ソロツーリングを目標としました。1人でツーリングするということは、それなりにライディング技術が上達しないと、ツーリング自体も楽しめないのではないかと感じたからです。

 

大好きなゲストハウスを目的地に。千里浜ドライブウェイにて

その後、ソロツーリングするようになって何か変化はありましたか?

今のバイクに乗り換えた頃から“バイク旅”の楽しさを知り、ソロで九州や四国、沖縄ツーリングにも行くことができるようになりました。ツーリング先の人との交流や、その土地の食べ物、見る景色など、全てのモノ・コトはバイクを走らせてたどり着いたからこそ味わえるんだということに気付きました。

ある時ソロツーリングで能登半島を一周しているときに、ライダースハウスで宿泊施設のオーナーさんやライダーと交流させて頂く機会がありました。そのときベテランライダーさんたちが教えてくれたバイク旅の話は、私の人生で経験したことないことばかりで、バイクには未だ私の知らない楽しさが広がっていることを知って感動しました。

それからというもの、ライダーのみなさんが感じているバイクの楽しみ方をもっと知りたいと思い、全国のゲストハウスを巡るようになりました。ライダーも多い宿ではゲストさんのバイク旅の話を聞いたり、バイクの楽しみ方を語り合うことで、自分の知らなかった楽しみ方を知るなど、さらにバイクが好きになっていきました。

ある程度1人でどこへでも走りに行けるようになったときに、ふと地元について立ち返り、あらためて地元の魅力について考えてみました。そこには、遠方まで走りに行った経験があったからこそ気づけた地元ならではの魅力があり、絶景を望む道や美味しい食べ物、人の優しさが全て揃っていることに気づき、もっといろいろなライダーにも知ってもらいたいと思いました。

バイクで公道に出ることすら不安だったかなえさんも、いつしか単独でバイク旅に出るまでに至り、彼女がライダーとして成長していく過程について臨場感を持って知ることができました。

バイクに対する不安や葛藤を乗り越え、その先に待つ大きな楽しみや感動に気づけたことが、かなえさんの絶え間ない笑顔の源になっているのかもしれません。

 

ライダー、そしてPR大使としての使命と夢

愛知県新城市役所、奥三河公式PR大使の委嘱式にて

実際にPR大使に就任してから最も変わったのはどのようなことですか?

奥三河の観光に従事する方達や、地元の皆さんと交流がこれまで以上に持てるようになったことです。これは本当にありがたくて、今まで“いちライダー”ではなかなか届かなかったところへ、自分の想いを伝えるチャンスをいただきました。

私の役割はライダー目線で奥三河の土地やグルメ、観光の魅力を情報発信することですが、実は以前からずっと継続して実施していました。今まではYouTubeやSNSなどを利用して、奥三河のライダーの立ち寄りスポットなどを紹介し、全国のライダーさんに知ってもらうために“外へ外へ発信”していました。

現在は、“内へ内へ発信”することも意識しています。具体的には、奥三河で暮らす人たちに向けて、ライダー目線で町を盛り上げようとする活動があることや、ライダーは奥三河のどんなところが素晴らしいと感じているかなど、ライダーと地元の方が互いに共感できることを発信しようと心がけています。

ライダーとして自分の意思を伝えたい、そこには想いがあります。私には「奥三河をライダー歓迎市町村として宣言」したいという夢があります。

今後、ライダーと町を繋ぐ拠点づくりとして、奥三河でミーティングを開催していき、ライダーは町を盛り上げる力があると地元の皆さんにも知ってもらいたいのです(第1回目は9月3日に東栄町で開催。第2回目は10月9日に新城市で地元企業と協力して開催予定)。そして、奥三河と各地を結ぶ活動に繋げていきたいです。

そのためには、ライダーの安全運転意識やマナー向上に関することも積極的に発信していきたいと考えています。

そして何より、私自身が、奥三河で暮らす人達に学ばせていただいているという姿勢を忘れてはいけません。PR大使に就任してから、さらに奥三河の魅力について触れ、バイクもより一層好きになりました。

SNS発信の先にリアルがあるのではなく、リアルの先にSNSで発信したくなるような素敵な出会いがあると思えるくらいリアルな交流を大切にし、ライダーの目線から奥三河の魅力を発信し続けたいと思っています。

ライダーだけが楽しめる世界を作るのではなく、地元の方々と会話する機会を作って、お互いのことを知るのも本当に大切ですね。かなえさんの取り組みが相互の理解を深めるきっかけとなり、奥三河地域の活性化に繋がることを心から期待しています。

 

ライダーのマナーアップ、ライダーに対するイメージアップ

奥三河もてなしミーティング:東栄町に270名以上のライダーが集まる

地元の方々と会話される機会が増え、何か気づいたことがありますか?

PR大使になってから地元の方にお話しを伺うと、ライダーのイメージを良くするための活動が必要不可欠だと痛感しました。確かに以前は社会的によくないイメージを持たれた時代もありましたが、現在もそのままのイメージでいる方も少なからずいらっしゃいます。

バイクに乗ってない人のライダーに対するイメージと、実際バイクに乗っている人のあいだには、いまだにギャップがあるかもしれません。そのため、双方の認識をもっと近づけることができたらいいなと思っています。

ライダーによる駐車場やバイクが集まる場所などでのゴミ拾い実施や、開催したミーティングでは地元企業や住民の方にも参加していただくことで、ライダーのマナーが以前より大幅に向上しているということも感じていただけるといいなと思っています。

奥三河には、自然や食べ物、観光など、ライダーにとって魅力的な要素が揃っています。そして、私達ライダーは、その土地や人への配慮を欠かすことなく楽しめる素敵な趣味を持った方々であると信じています。奥三河の土地・食べ物・人の魅力、ライダーの素晴らしさとバイクの楽しさ、こうしたことを中心に奥三河の公式PR大使として情報発信の活動をしていきたいです。

一部の二輪通行規制が解除されない(バイクによる走行が規制されている)地域では、依然としてバイクに対して過去のネガティブなイメージが根深く、通行規制解除にうしろむきであるという話も聞きます。一方で、最近のライダーはプロテクター着用などといった安全意識の向上にはじまり、マナーについても比例して改善されています。

過去と現在におけるライダー像のギャップを埋めるためには、様々な場面での会話による相互理解も非常に大切なのではないでしょうか。かなえさんのように、ライダー目線で地元とバイク双方の魅力をSNSだけでなくリアルでも情報発信する、そんなライダーが全国的に増えてくれることを願わずにはいられません。

kanae-かなえ(Instagramアカウント)

https://www.instagram.com/kanae318191/

かなえADV(YouTubeチャンネル)

https://www.youtube.com/@motorcycle.travel

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