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画像提供:株式会社ティーサーブ

【バイクを仕事にするということ】日本一スタイリッシュなバイク便!株式会社ティーサーブに聞いてみた!

1980年代あたりから海外では、小包や書類などの小さな物を緊急配送する手法として、渋滞の影響を受けにくい自転車やバイクを利用したバイク便やメッセンジャー(自転車便)が増え始めました。東京や大阪などといった日本の都市部も海外の大都市と同様の交通状況だったため、1990年代には多くの緊急配送会社が立ち上がりました。

そこで今回は、東京都心部を中心に活躍する「株式会社ティーサーブ(以下、Tサーブ)」の創業者である池谷貴行さん(以下、池谷社長)に、同社の特徴や今後の目標、バイクを職業にすることの醍醐味、さらには公道走行のプロとして安全面で気をつけていることなどについてお話を伺いました。

 

個の能力に依存せず、教育によって組織的に進化を続けるメッセンジャー

Tサーブ池谷社長(画像提供:Tサーブ)

編集部(以下、編):はじめに起業したきっかけを教えてください。

池谷社長:もともと日本でメッセンジャーという職業が定着する以前から、外資系広告代理店の専任配送スタッフとして従事していました。当時、配送スタッフは全部で4人いて、電車やバスを乗り継いで配送するのが一般的だったのですが、私だけ自前の自転車を持ち込んで配送していました。
また、同じタイミングでちょうどバイク便も流行り始めており、バイク便の価格表を見てみたらとても高額だったのと、ニューヨークでは自転車のメッセンジャーが3,000人もいるという記事を新聞で読み、これはもしかしたら東京でもビジネスが成り立つのではないかと思って起業しました。

編:現在メッセンジャーは何名在籍しており、スクーターは何台稼働しているのでしょうか?

池谷社長:プロのメッセンジャーは現在110名おり、そのうちスクーターメッセンジャーは約30名です。各自の名入りデカールを貼ったホンダ・PCXをリース支給しています。

編:バイク便・自転車便は一時期よりも淘汰されてしまったように思いますが、なぜTサーブは現在でも100名以上在籍するサービスが展開できているのですか?

池谷社長:おっしゃる通り、バイク便・自転車便はだいぶ廃れてしまったと思います。一般的なバイク便・自転車便は、個人事業主と会社が物を運ぶためだけの契約をします。そこにブランディングや効率化などの会社の意向は無く、個々の能力に依存してしまいます。
Tサーブでは創業からいままで頑なにメッセンジャーを従業員として雇ってきましたが、昨年から「T-serv Original Professional(以下、TOP)」という独自のプロメッセンジャー評価認定制度を作り、これに合格したメッセンジャーたちが、個人事業主として活躍しています。
若いメッセンジャーが入ってきたら、育てて、技術を身につけさせて、TOPに認定する。その後はTOPとして個人事業主になってもらい、仕事を流していく仕組みです。
Tサーブでは、このTOPたちに仕事だけではなく、車両やウェアなど様々なサポートを行っています。

 

画像提供:Tサーブ

編:ちなみに、TOPとはどういった内容なのですか?

池谷社長:

  • Technical (テクニカル)=自転車やスクーターにまつわる操作技術
  • Operations(オペレーション)=サービスに関する知識
  • Physical(フィジカル)=身体的能力
  • Intelligence(インテリジェンス)=地理的知識
  • Strategical(ストラテジカル)=戦略的知識(ルートを戦略的に導き出す能力)
  • Mental Toughness(メンタルタフネス)=精神的なタフさ

これらの頭文字を繋げた“TOPSIM”として、教育の本質を表現しています。プロのメッセンジャーには要求される上記6項目を総合的に評価認定する制度、それがTOPです。
先ほどお伝えした通り、TOP認定を受けたプロメッセンジャーは約110名いますが、実はその下部組織として“学校”というプロになる前の養成所があり、そこで養成講座を受けているメッセンジャーの卵が約20名、うち4名はスクーターメッセンジャー志望です。

編:学校ではどのくらいの期間をかけて学ぶのですか?

池谷社長:学校では「ルーキー」「ミドル」「シニア」の3階層存在し、各階層で約2ヶ月、合計6ヶ月間の試用期間を設けています。まず、ルーキーの期間には1週間かけてオリエンテーションを行い、合計2ヶ月間にわたってメッセンジャーになるための素質を見極めます。ルーキーの期間で不合格になるケースも少なくありません。
6ヶ月の期間内に都内の地形を頭に叩き込み、交通事情などを加味した戦略的なルート選定を習得した者だけが、晴れて学校を卒業し、TOP認定のプロメッセンジャーとなります。
しかも、TOPメッセンジャーになってからも「プロ」「準マスター」「マスター」「超マスター」の4段階に体制化されています。

1分1秒でも早く最短で配送するということは、配送業において重要な技術です。これは会社組織の視点から見ると“効率”ということですが、“効率”を教育し自主的な意識付けをさせるのはなかなか難しいのです。配送業においては、それを管理できないがために売上高に応じた歩合制にしてしまっている会社も散見されます。これでは効率化の図りようがなく、個々人の能力に頼るしかなくなってしまうため、弊社では、組織プレーとしての教育をしっかり提供することで配送サービスのクオリティを上げています。

編:学校での教育も然り、なぜTサーブではTOP評価認定制度を設けたのでしょうか?

池谷社長:配送業に対して、日本では評価認定制度があまりありません。優れたサービスを提供できる能力を持った人がいれば、それに見合った対価が支払われるべきだと思います。そのためには客観的に技術が可視化できる評価認定制度が必要ですし、評価認定をされれば働く人のモチベーションにもつながるため、社内独自の評価認定制度を作ったという経緯があります。

そのため弊社では、モノを供給するだけのサポートではなく、教育で階級を作りながら、その人の持っている力を評価し、総合的にサポートしています。これがTサーブの理念であり、高水準な緊急配送サービスの真髄なのです。

編:Tサーブ独自の安全に対する取り組みがございましたら教えてください。

池谷社長:学校に入っている期間で、徹底的に走行チェックをします。後ろに付いて並走し、逐一修正しながら指導していきます。交通法規や事故シミュレーションはもちろん、予測運転などについても実際のリアルな道路状況下でレクチャーしていきます。
なかでも最も重視しているのは、気づかれないように影からこっそりチェックする“ブラインドチェック”ですね。学校の卒業試験が近づいてくると、ほとんどがブラインドチェックになります。これが、メッセンジャーの安全対策として実施する最も有効な教育だと考えています。

 

日本人ならではの感性で人との接点を大切にするTサーブ

画像提供:Tサーブ

これまでの緊急配送業は、車両の持ち込みやウェアなどの装備品においても従事者に委ねられていることが多く、ボロボロであったり黒ずんでいたりと、少々清潔さに欠ける従事者がいたのも事実。こうした緊急配送業におけるプレゼンス向上を念頭に、サービス業として日本人ならではの感性によって「人に見られること」「人と接すること」への価値への意識も高くなってきました。

編:Tサーブではデザイン(スタイリング)に強いこだわりがありますが、それはなぜなのでしょうか?

池谷社長:人の目に触れる部分を少しでもスタイリッシュで美しく見えるようにディレクションすることで、メッセンジャーのプレゼンス向上に貢献できればと思っています。
例えばスクーター車両については、現時点ではオリジナルデカールまでですが、将来的にはラッピングを施し、見る者の目を惹くデザインのスクーターに仕立てていきたいと考えています。これは、仕事に従事するスタッフのモチベーションアップはもちろん、メッセンジャーに憧れを抱き、働いてみたいと思っていただくための、言わば“走る自社広告”としても機能します。

さらに、メッセンジャーの装備品についてもこだわりがあります。
実際に使用しているバッグはこちらです。

 

画像提供:Tサーブ

このバッグはすべて自社生産しており、メッセンジャーのナレッジだけではなく、登山などのノウハウを集約して改良した超軽量メッセンジャーバッグです。現在、TOPメッセンジャー向けには販売していますが、一般販売はしていません。

 

画像提供:Tサーブ

また、最近導入した冬服はこちらです。
ボディーはワークマン製のジャケットがベースですが、そこにミリタリーチックなデザインを追加することで、少しでもメッセンジャーがスタイリッシュに見えるよう監修しています。
こうしたデザインにオリジナリティをプラスするため、工業用ミシンを使って仕立てるソーナー(縫い子さん)も社内に在籍しており、このサポートチームが、Tサーブで働くメッセンジャーの使い勝手や働きやすさを含め、ウェアやバッグなどの修理メンテナンスも行いながら、総合的にデザイン・サポートしています。

全てのメッセンジャーに対して、制服のように規定デザインのモノを強制的に装着させるのではなく、各自の好みや個性を大切に、自由に組み合わせられるように様々なアイテムをプロデュースしています。
社内でここまでを実現できる設備を作らないと、私の考えるブランディングは完成しないと本気で思っていますし、これをSNSで世界にも発信していきたいですね。
また、プロメッセンジャーのサポートを前提としたショップも今後の展開として考えています。個々の好みにあわせて車体からウェアや防具までを見繕う、洋服屋さんで例えるならテーラー(仕立て屋さん)のような存在ですね。将来的には、メッセンジャーだけではなくデリバリー業なども含め、自転車やバイクに乗ることを職業としている人たちをサポートできるようなショップを目指しています。

 

都心部の緊急配送業にはスクーターが最適

編:スクーターメッセンジャーとして使用する車両について教えてください。

池谷社長:スクーターメッセンジャーの使用するバイクは、ホンダの原付二種スクーター「PCX」で統一しています。これまで年間2〜30台のスクーターを全て正規ディーラーから購入していましたが、できれば今後は、走行ナレッジをフィードバックすることで、バイクメーカーからの車両サポートなどが受けられるとありがたいですね。なんせ2年で10万km以上走行しますので。

編:なぜスクーターメッセンジャーにこだわっているのでしょうか?

池谷社長:多い時で1日に30件の配送をこなし、都内の限られたエリアだけで約200kmも走行します。また、自転車と同様に相当な回数のストップ&ゴーが求められますので、オートマチックのスクーターである必要があります。ましてや、肩に装着した無線機による指示確認もあり、作業が煩雑になってしまうことを避けるため、ギアチェンジやクラッチなどの操作はなるべく簡略化したいという狙いもありました。

編:スクーターや自転車以外のモビリティーは検討しなかったのですか?

池谷社長:例えば、キックスクーターやその他のモビリティーの機動力では、残念ながら1分1秒を短縮し効率を追い求めるメッセンジャーが使う乗り物としては要件を満たせていません。やはり、スクーターまたは自転車、この2種の機動力よりも右に出る乗り物は今のところ存在しないと考えています。

編:池谷社長とバイクの関係について教えてください

池谷社長:いままでずっと自転車一筋でしたが、約10年前に大型自動二輪免許を取得し、現在はプライベートでアドベンチャーモデルのバイクに乗っています。
今でも自転車は好きですが、バイクも同様に楽しい乗り物ですよね。自分で操り風を感じる喜び、これは乗った人にしかわからない快感だと思っています。

 

プロメッセンジャーの技術を適正に評価する「価値づくり」

編:最後に、バイクに乗ることを職業とするTサーブで働くことのやりがいや魅力とは?

池谷社長:やりがいは、先の通り独自の評価認定制度「TOP」による評価とそれに見合った総合的なサポートが、働く人のモチベーションになっていると思います。
また、働く日数や時間を自分で自由に決めることができる点も魅力の一つでは無いかと思います。数年前までは一般的なシフト組みによるスケジュール管理でしたが、TOPの評価認定制度を作ったタイミングで、勤怠スケジュールの管理ができるTサーブ独自のスマホアプリも開発しました。これによって、いつでも個々がスケジュールを自由に決めることができる非常にフレキシブルな働き方ができるようになりました。
こうした自由な働き方を提供できているからこそ、TOPメッセンジャーたちは個々の裁量で個人事業主として働いてくれています。また、会社として目指すべき目標や方針を理解した上でひとりひとりと契約を結んでいますが、こうした体制を最初に理解してもらうためにも、やはり“学校”での教育が非常に重要だと考えています。

 

取材協力:株式会社ティーサーブ

https://www.t-serv.co.jp

ティーサーブ(Instagramアカウント)

https://www.instagram.com/tserv.messenger

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