なぜ今エンジンガードが多くのライダーから支持を集めるのか?
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エンジンガードといえば、旧来的な考えでは白バイや教習車などに装着されているイメージが強く、ライダーのなかには少し抵抗がある方も多いのではないでしょうか。
しかし最近では、特に若年層ライダーのバイクを中心に、装着率が高まってきています。
そこで今回は、エンジンガードを装着しているユーザーの声とともに、エンジンガードそのものの機能について株式会社デイトナの吉川 要さん(以下、吉川さん)に、お話を伺いました。
ユーザーがファッション感覚で始めたアルミ製バンパーがヒント
まず吉川さんに、エンジンガードを発売するまでの経緯と、装着の目的について尋ねました。
デイトナでは、2017年からエンジンガードの販売がスタートしました。既にその時点で市場にはアルミ製エンジンバンパーを装着するアーリーエントリーユーザーが一部存在していました。カラーバリエーションが豊富であったことから、装着の目的は転倒時のエンジン保護というよりもファッション感覚の延長にあるドレスアップとしての用途が目立ちました。
しかし、アルミはどうしても材料費が嵩むため販売価格に跳ね返ってしまい、高価な販売価格が装着を検討するユーザーの障壁となっていました。そのため、手ごろな価格でありながらバイクのスタイリングを崩すことなく最大限の保護効果を発揮する製品が求められているのではと仮説を立てました。
試行錯誤ののち最終的に材質をスチール製にすることで価格を抑えつつ、バイク本来のスタイルを崩さぬよう横方向の張り出しを最小限にとどめ、さらに最大限の効果(転倒時の車体ダメージ軽減)が期待できる製品が完成しました。これによって、車両購入時に足着き性や車両重量に不安を抱くユーザーに対して、もしもの時の保険のような意味合いを兼ね、安心してバイクライフを楽しむことができる製品として販売を開始しました。
バイク人気が若者層を中心に広がりを見せるなか、高い安全性と信頼性に価値を見出し、もしもの時の保険として装着しているケースが多いようです。
ユーザーのプロファイルを反映する装着率
次に、ライダーが多く集まるバイクのイベントを取材し、タイプの異なるバイクのユーザーにエンジンガードを装着している理由について尋ねました。
ネオクラシックタイプのバイクに乗る20代ライダーの意見
つい一ヶ月前に免許取得したばかり。これは自分にとって初めて購入したバイクだから、とにかく立ちゴケが怖くて装着しました。
大型クルーザータイプのバイクに乗る40代女性の意見
え?みなさん装着するものだと思っていました。
と、当たり前に装着するものだと認識している様子でした。また、同じく大型バイクに乗るご主人のすすめもあって、立ちゴケ時のダメージ軽減のために装着しているとのことでした。
20年のブランクを経てリターンするタイミングで大型バイクに乗り始めたライダーの意見
教習所以外で大型に乗った経験がなく不安だったので装着しています。
アドベンチャータイプに乗る30代ライダーの意見
LEDフォグランプを装着したいがためにステーも兼ねてパイプエンジンガードを装着しましたが、結局立ちゴケしてしまい、カウルにダメージがなくて本当に助かりました。
スポーツタイプのバイクに乗る50代ライダーの意見
実は購入後6日目にして倒してしまったことがあり、その後すぐにエンジンガードを装着しました。
愛車を拝見すると、過去の転倒経験からエンジンガードへのキズを防止するかのように、エンジンガードをガードするプロテクターのようなパーツも追加装着されていました。
エンジンガードの形状による機能の違い
“エンジンガード”と一括りに言っても、種類は大きく分けて「パイプエンジンガード」「エンジンプロテクター(エンジンスライダー)」「クラッシュバー」の3種類あります。それぞれのパーツにどのような特長があるのかについて吉川さんに伺いました。
パイプエンジンガードは、スーパースポーツタイプ以外の車種に装着可能なパーツで、特にツーリングユースの多い方向けのパーツです。デイトナでは、バイクの持つスタイリングを極力崩すことなく最小限の張り出しで、特に転倒時には足を挟み込まないかを検証し開発しています。
エンジンプロテクター(エンジンスライダー)は、スーパースポーツタイプを含むレーシーなイメージのバイクに限定されるかと思います。主にエンジン本体やペダルなど、ダメージを受けると走れなくなってしまうパーツへの致命的なダメージ軽減を目的として設計されています。パイプエンジンガードが金属のパイプで車体を支えて守るのに対し、エンジンスライダーはパーツ自体が破損することによって車体にかかるダメージを軽減します。
最後のクラッシュバーですが、これはパイプエンジンガードの派生モデルであり、上記の2タイプのいいこと取りをした製品です。
やはりネイキッドモデルやクルーザーモデルでは、圧倒的にパイプエンジンガードを装着される方が多いですね。特に250ccのクルーザーモデルが登場して、初めて乗るバイクを大切に扱いたいと考える新規若年層ライダーや、体力に不安を感じて重い大型を敬遠するリターンライダー層などが車両購入時に同時装着されるケースが増えました。一方で、スーパースポーツタイプや、スーパースポーツタイプのカウルを外してネイキッドにしたストリートファイタータイプ にはエンジンプロテクターを好む傾向があると捉えています。
昨今、若者を含めてバイクに乗り始めたライダーたちにとって、バイクの重量やバランス感覚に慣れるまでの不安や心配がエンジンガードの需要につながっているようです。
ユーザーの要望で広がるエンジンガードのさらなる可能性
エンジンガードの装着率が増えたことで、最近ではエンジンガードに転倒ダメージ軽減を主とした安全性だけではなく副次的な機能を求めるユーザーも増えています。
こうしたユーザーの声に応えるべく、各パーツメーカーともエンジンガードのサイズ展開の拡充や様々なアクセサリーを取り付けるためのベースとして活用する提案もされています。
最後に、エンジンガードの可能性についても吉川さんに伺いました。
デイトナでは、立ち上げ当初(2017年)は11種類しかなかったエンジンガードですが、現在(2023年8月現在)では、実に3倍となる34種類にまで増えています。
適合するバイクのタイプとしても、ネイキッドやクルーザーはもちろんアドベンチャーモデルも含め、現在まだラインアップ拡大の真っ最中です。
エンジンガードを装着しているユーザーに伺うと、むしろ装着していることが普通であるという印象を受けました。また、バイクを大切にしたい気持ちをひしひしと感じ、さらにはスタイル&機能性アップの視点からも支持を集め、一挙両得なカスタムパーツとして認識されはじめています。
バイクの対応車種が増えるとともに、付加できる様々な副次的機能もユーザーが上手く見つけ始めています。エンジンガードの進化はまだまだ止まりません。