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上段左から斎藤さん、森田さん、野沢さん、渡辺さん、下段左から伊藤さん、荻野さん、小山さん、岩瀬さん

整備士を目指す若者が日頃から気をつけるバイクの安全運転意識とは?

開校63年目の歴史を持ち、様々なメーカーに多くの卒業生を輩出している整備士のための専門学校「埼玉自動車大学校(以下、埼自大)」。

ここ埼自大には「二輪部」という日本二輪車普及安全協会が主催する二輪車安全運転全国大会を目指して活動する学生サークルがある。日々の授業では自動車・二輪車の整備士になるための座学や実技を学び、放課後は、若者たちがバイクの運転技術を磨いているサークルだ。

今回MOTOINFO編集部は埼自大 二輪部に所属する学生を取材し、整備士を目指す理由、そしてバイクへの想いや安全意識について話を伺った。

 

安全運転のための技術向上に切磋琢磨

平成23年からスタートした二輪部の主な練習内容は、バイク教習で練習する課題に沿った項目を校内で反復練習し、二輪車安全運転全国大会を目指し奮闘している。

二輪車安全運転大会の選考は、まず埼玉県予選に出場し上位三名が白バイ隊員の指導を受ける権利を獲得し、さらにそのうち一名のみが全国大会への参加を許されるというかなり狭き門だ。

ちなみに、二輪部では未だ二輪車安全運転全国大会への出場こそ叶っていないが、これまでに「テクニカルライディングスクール2019(前二輪車安全運転埼玉県大会)」のタイムトライアルで、原付クラス優勝・準優勝、400㏄以下クラスで準優勝に輝いている。

 

年に一度のイベントは卒業生や家族、地域一体で大勢の来場

なお今回 埼自大を取材する前段として、10月22日〜23日に同校で開催された年に一度のビッグイベント「オートジャンボリー」も見学させていただいた。

 

会場には2014年にダカールラリーで優勝した車両の展示や、高所作業車の試乗体験、それ以外にも埼玉県警白バイ隊や自衛隊によるクルマやバイクの特殊車両も展示されており、バラエティーに富んだ圧巻の出展数に驚いた。

 

また、屋外のグラウンドには、昭和に生産されたクルマを中心に国内外問わず多くのクラシックカーがズラリと展示され、古いクルマのエンブレムやジャケット等に縫い付けるワッペンなどの販売会があったりと、屋内外ともに大賑わいだった。

 

交通教育センターレインボー埼玉協賛によるトライアルのデモンストレーションも行われ、家族連れの子どもを含め大歓声が沸き起こっていた。

なぜここまでファミリー層の来場者が多いのかについて埼自大 教育課長の黒田和幸さんにお話を伺うと「当校の卒業生が所帯を持ち、そして友達を誘い、そしてそのまたご子息が入校されるなど、世代を超えて来場してくれている」とのことだった。また、このイベントを機に、しばらく連絡を取っていなかった同士でも再会して、再交流がはじまるケースも少なくないらしい。会話の後に改めて確認してみると、地元企業に就職した卒業生による出展も多数おり、地域に根付き愛されているイベントであることが理解できた。

 

整備士学生のバイクに対する想いとは?

50ccのバイクを分解・整備後に組み立てる実習

閑話休題、広い学内にはクルマやバイクの整備について学習するスペースがいくつかに分かれており、バイクにおいても内燃機関(エンジン)の仕組みを学びながら、実際に自分で分解・組み立てを行うほかセッティングも実習する。やはり若い学生たちは、自分たちで分解したバイクを組み立てて、いざ始動させたときにエンジンの鼓動が聞こえると、みなホッと胸をなでおろすそうだ。

今回 取材した8人の中には、埼自大に入学してから初めてバイクに触れたという方もおり、それぞれがバイクへの想いを語ってくれた。

  • 全身で風を感じることができる。
  • 正面から風を受ける爽快感と、エンジンの上にしがみつき道の上をダイレクトに走っている感覚が面白い。
  • 言葉にして楽しさを伝えるのは難しい。自分自身が楽しむこと、それに尽きる。
  • 徒歩や自転車とは違って自分の操作でどこまでも遠くにいける。また、機械との一体感が感じられる乗り物はバイク以外にはないと思う。

など、感覚的な楽しさだけではなく、いかにもメカニズムから学習した上でのバイクに対する想いが伝わってきた。

 

バイク乗車時に日頃から気をつけている安全意識とは?

バイクの整備学習スペースには綺麗に分解洗浄されたキャブレーターがテーブル上で組み立てを待っていた

埼自大 二輪部として、日頃から競技会に向けた安全運転技術の向上に余念のない彼らに、バイクでいつも心がけている安全意識について伺った。

  • バイク乗車中は右左折や車線変更などの際に、目視確認だけではなく大げさに身体を使って二重三重に振り向くことで、周囲のドライバーへ自分の進路を把握してもらえる効果があると思う。
  • バイクはスピードが出やすく、対向車はこちらの速度を遅く見誤るケースがよくあると聞くので、あらゆる場面で、危険予測をしながら走行することが大切だと思う。
  • 公道では、対車両または対人と、常に相手も動いているので、いつでも事故の対象になりうると思っている。そのため、特に走行中はたとえ低速であっても、相手の挙動(ドライバーの視線や顔の向きなど)まで観察するくらいの気持ちで周囲に注意を払って運転している。車線変更のときもミラーだけでなく振り向いて目視確認するようにしている。
  • すり抜けによる事故を周囲の知人からもよく聞くので、特に交差点では速度を落として細心の注意を払っている。また、ツーリングでは楽しさのあまり休憩を忘れてしまいがちだが、疲れていると注意力も散漫になるので、適度に休みながら走るよう心がけている。さらに万が一のことを考慮して、ツーリングはできる限り1人ではなく2人以上で行くようにしている。
  • 無意識にやってしまいがちなのがスピードの出し過ぎ。複数台のツーリングでは安全に停止できないことも考えられる。そのため、車間距離を十分にとったうえで路面の状況も確認しながら、様々なケースを想定した速度で走るようにしている。
  • やはり交差点を通過するときは周囲に最大限の注意を払っている。交差点の前ではスピードを落とし、こちらが優先道路でもクルマが来ないか注意している。
  • すり抜けは絶対にしないように決めている。交差点前で渋滞するクルマの左をすり抜けて、対向車線の右折車とぶつかるシーンを何度も目撃しているため。
  • 自分が歩行者の立場であるときに、横断歩道を渡っているにも関わらず何度も怖い思いをした。そのため自分が車両を運転する立場になっても、横断歩道手前では瞬時に止まれるくらいの速度で徐行し、歩行者を優先するようにしている。

“安全にバイクを楽しむ”ということは、実践的な運転技術を学ぶだけではなく、こうした意識を常に持つことも同等に大切である。彼らの安全運転に対する意識は予想していた以上に高く、教習所で学ぶよりも厳しい視点でバイクを運転していることがわかった。

 

夢は整備を通して社会の役に立ちたい

今回お話を伺った生徒の中には、先輩の紹介で埼自大に入学したという人もおり、前述のオートジャンボリーを見ても、本当に世代を通して地域にも根付いている学校であると改めて感じた。現実的には周辺地域での求人募集が少ないと悩む生徒もいる反面、整備を通してクルマやバイクの開発に携わりたいという夢を持つ生徒もいた。

 

最後に、ある生徒が将来の夢について語ってくれたのが印象的だった。

「これから先の未来も、モノを大事に使うという考え方はずっと伝えられていくと思う。今まで以上に、前の持ち主がどのような取り扱い方をしたのかわからない車両も増えるかもしれない。だからこそ、整備という仕事は現代の生活においても欠かせない仕事だと思っているし、自分が学んだ知識と技術で、少しでも社会に役立つことが出来たら嬉しい。一人でも多くの人に、整備という観点から安全性や快適性を提供することができたら、勉強した甲斐があったのではないかという思いで、日々を過ごしている。」

クルマやバイクの整備士は、乗る人の命を預かる大切な職業だ。また、整備の技術や知識を身につけることによって如何様にでも蘇生することができる。そこに喜びを見出した彼らは、整備士を目指す傍ら安全運転に対する技術の向上や、社会にどう貢献できるかまでを創造している。

埼自大以外にも、全国の整備士学校で同様の志向を持つ若者が多いのであれば、これからのバイク業界も明るいのではないだろうか。

取材協力:埼玉自動車大学校

https://www.saijidai.ac.jp

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