若者ライダー需要増!進むバイクレンタル活用と所有から体験へと変化する価値観
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国内バイクメーカーがバイクレンタルに参入したのが2010年。それから12年という年月を経てレンタルを行う店舗は、一部の国内バイクメーカー正規ディーラー店をはじめ、最大手の「レンタル819」など、日本全国で今やレンタルできる店舗が500か所を超えるほどに成長しました。
特に最近では、コロナ禍によってバイクの存在意義が見直されたほか、キャンプなどのアウトドア人気もバイクと親和性の高い趣味として注目を集めています。
バイク業界を俯瞰すると総じて上向き傾向のなか、若者を中心にバイクへの価値観も変化しており、所有する楽しみから純粋に体験することに価値を見出すユーザーが増えており、バイクレンタルに対する需要も加熱しています。
そこで今回は、バイクレンタルにまつわる昨今の傾向を把握するため、国内バイクメーカー直系であるカワサキプラザレンタル(以下、カワサキ)、HondaGO BIKE RENTAL(以下、ホンダ)、ヤマハ バイクレンタル(以下、ヤマハ)と、最大手のキズキレンタルサービス「レンタル819」(以下、キズキ)にお話を伺いました。
レンタル利用に対する不安解消とともに目的も明確化
2019年に一般社団法人 日本自動車工業会が実施した「二輪車市場動向調査」によると、バイクレンタル利用者の不満項目を見ると、大きく分けて以下の3つのポイントに集中していました。
- 貸出料金(利用料金)が高い
- 借りたいバイク(車種)がない
- 返却時間が気になってしまう
ここ数年でレンタルサービスを開始した店舗が増加したことによって、借りたいバイクの種類や貸出店舗の選択肢が豊富になり、また短時間の貸出しプランの増設などによって利活用方法のバリエーションも増えたことで、バイクの免許さえあれば誰でも気軽にレンタルできるようになりました。
コロナ禍によって3密を避けた移動やレジャーとしても見直されているバイクですが、旺盛な需要に伴って、バイクレンタルの存在感も高まってきています。ホンダ、ヤマハ、カワサキといった二輪メーカー系のバイクレンタルでは、自社モデルに特化したレンタル車両の配備が充実していることから、新車購入検討時にレンタル車両をじっくりと試乗することで、自らのバイクライフに合致した機種かどうかを確認するなど、購入へと結びつくレンタル利用も見られるようです。
唯一、バイクレンタルを専業で行うキズキでは、リテンションとしてキャンペーンや新型モデルのレンタル導入などのお知らせを、会員(一度借りたメンバー)にメール配信することによって、利用者数は右肩上がりを続けているとのことでした。しかもこのメールマガジンは、新規ユーザーのみならず着実にリピートユーザーの繋ぎ止めとして機能しているようです。
バイクレンタル利用者は20〜30代が約半数を占めている!
ホンダによると、バイクレンタルを利用するユーザーの年齢層は、30代以下が約4割、ヤマハにおいても20〜30代の利用者が約半数を占めているとのことでした。
レンタルで人気のモデルは、扱い易い250ccから400ccクラス(普通自動二輪の免許区分)に集中しており、バイク歴の長いベテランライダー層になると大型ツーリングモデルなどの人気も高いようです。
またキズキによると、バイクを所有しているユーザーであっても用途や目的が愛車のスタイルでは叶わない場合に異なるタイプのバイクをレンタルしたり、バイクを所有していない友人や家族とツーリングするためにもう一台レンタルするなど、様々なケースのレンタル事情があるとのことでした。
さらに、若年層ユーザーによるバイクレンタル利用の傾向としては、自分自身の好みだけではなくライフスタイルとマッチしているかについても時間をかけて吟味したいといった目的をしっかりと持って利用するユーザーも多いそう。
新しいバイクレンタルの活用方法が始まっている
キズキの店舗立地は、幹線道路沿いなどのいわゆるロードサイド店に加え、公共交通機関から至近距離にあることが多いのも特徴のひとつです。例えば、北海道の新千歳空港付近にもレンタル店舗がありますが、最近はこうした遠方の中継点までは公共交通機関を利用して時間と体力を温存し、そこからの道中にのみバイクをレンタルして楽しむという、ハイブリッドで合理的な旅の形が増えているそうです。
カワサキでも同様に、一部の空港や駅近くに立地する店舗においては、やはり遠方から来店してツーリングのためにバイクレンタルを利用するユーザーも増えているとのことでした。
普段バイクを所有していないとしても、たまの休日に思いつきでバイクを借りることができたり、出張先の空き時間をつかって観光地巡りをするライダーもいる、とヤマハのレンタル担当者も同様の認識でした。
もちろん目的地へ向かうプロセスも楽しいのですが、遠方になるとレンタル店への返却時間が気になってしまうほか、肉体疲労はもちろん、時間の配分もスマートな旅の方法を見出しているそうです。
心くすぐる多様な対応はバイクレンタルにとどまらない
ホンダでは、気軽にキャンプツーリングが楽しめるよう、バイクレンタルのオプションとしてキャンプ道具一式がレンタルできる「キャンプツーリングセット」の貸出も今年からスタートしています。
キャンプツーリングに興味はあるものの、いきなり道具一式を買い揃えると出費が嵩むし、もしかしたらハマる事なく一回で断念するかもしれない、こうした次の一歩を踏み出したいユーザーの懸念材料を払拭し、レンタルから気兼ねなく始められるという間口の広さはありがたい限りですね。
キズキが注目したのは、バイク免許取得後から公道デビューまでのブランクに苦しむ女性ユーザーの多さでした。このようなバイクで公道デビューをしたいと思っている女性のために、立ちゴケしても補償でカバーしてくれるプランが人気とのこと。
さらに女性限定のサポートサービスの中でも最も人気があるのが、群馬県北軽井沢をスタート地点に行われる1泊2日の「公道デビュー応援ツアー」というツアー形式のバイクツーリングです(キズキグループのMOTO TOURS JAPANが運営実施)。
やはり教習所での技術教習だけでは不安が残り、バイクの免許は取得したものの乗るチャンスも勇気もタイミングもない、それでも夢を実現したい女性ユーザーのための本ツアーでは、ツーリングルートの全行程をスタッフが帯同し、停車・駐車、取り回しなども含め、すべてを手取り足取りサポートしてくれるため、バイクに乗れた感動や楽しい思い出がしっかりと記憶されるといいます。バイクレンタルの費用に加え、宿泊費や食事代なども含めると高額になるものの、毎回すぐに予定人数に達するほど人気の高いツアーとのことで、いかに女性ユーザーの悩みが切実であり、それだけ体験価値の高いサービスであるかが伺えます。
また、参加される女性ユーザーは基本的に一人で参加する方が多く、同じ悩みを持った仲間と走ることでとても励みになっているといいます。こうしたツアーを通じてユーザー同士の親睦が深まり、コミュニティが形成されていくことも人気の秘訣なのでしょう。
駐車スペースや車検・税金などといった維持費の捻出が難しいためバイク保有を諦めているユーザー、買い替えや家族間で試し乗りをしたいユーザー、旅先のツーリングを合理的に楽しみたいユーザーなど、バイクの楽しみ方が多様化するにつれて借り方(レンタルやサブスクリプション、シェアなど)の選択肢も広がっています。
レジャーのバリエーションが少なかった時代は、クルマやバイクを手に入れるために時間や経済面でも多くを割かなければなりませんでした。どの業界においても“手軽に気軽に利用できること”が求められるようになった今日、バイクレンタル運営側もライダーが持つ悩みや若者が生み出す新しい遊び方などを捉えたうえで新しい施策を提供するなど、ユーザーとの間に新しいコミュニケーションも形成され始めています。
バイクレンタルサービスはバイクライフにおける“もうひとつのスタンダード”として確立しつつあり、今後さらなる成長が期待されます。
カワサキプラザレンタル - カワサキ プラザネットワーク
https://www.kawasaki-plaza.net/rental-service/
HondaGO BIKE RENTAL - HondaGO
ヤマハ バイクレンタル - ヤマハ発動機販売
https://bike-rental.yamaha-motor.co.jp