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若年層と高齢層に多い交通事故時のヘルメット離脱…ヘルメットのアゴ紐を締めないと事故時の死亡リスクが8倍にまで高くなることが判明!

「ヘルメットのアゴ紐、毎回しっかり締めてますか?」

一般社団法人 日本自動車工業会と公益財団法人 交通事故総合分析センターが2022年3月に発行した「二輪車事故の特徴分析による事故・死傷者数の低減研究 -二輪車の単独事故の特徴-」によると、2020年の全ての交通事故死者数※1は2011年の4,691人から1,852人(39.5%)減少して2,839人となった。また、2020年の全ての交通事故死傷者数※2は、2011年の85万9,304人から48万6,989人(56.7%)減少して37万2,315人となった。

バイク乗車中の死者数に限定して見てみると、同期間計で855人から526人と329人(38.5%)減少した。なお、2020年は2019年と比較すると16人増加している。しかしながら、バイク乗車中における死傷者数※2に着目してみると、2011年の10万7,777人か2020年では4万1,516人と、6万6,261人(61.5%)も減少している。

上記のとおり、バイク乗車中における死者数・死傷者数※2ともに過去10年間で漸減傾向にあるが、2020年には再び死者数が増加していることから、今後も継続して交通事故低減に向けた取り組みの必要性を示している。
※1:24時間以内の死者数 ※2:死者数+負傷者数

 

小型二輪、軽二輪の死者数が近年増加

一般社団法人 日本自動車工業会、公益財団法人 交通事故総合分析センター「二輪車事故の特徴分析による事故・死傷者数の低減研究 -二輪車の単独事故の特徴-」より

本研究発表資料では、2011年から2020年までの10年間におけるバイク事故死傷者数の推移を「状態別、車両区分別、年齢層別、事故類型別、人身損傷主部位別、ヘルメット着用別」に細分化して分析している。そのなかから、状態別、人身損傷主部位別、ヘルメット着用別に着目してみた。

2020年の“状態別”死者割合を見てみると、歩行中が全状態別の35.2%(1,002人)と最多。次いでクルマ乗車中が31.1%(882人)、バイク乗車中が18.5%(526人)、自転車乗用中が14.8%(419人)、電車などその他が0.4%(10人)と並ぶ。
※状態別とは交通事故発生時の当事者の状態を指し、大きく分けて、四輪車乗車中、二輪車乗車中、自転車 乗用中、歩行者中、等に分類される。

 

一般社団法人 日本自動車工業会、公益財団法人 交通事故総合分析センター「二輪車事故の特徴分析による事故・死傷者数の低減研究 -二輪車の単独事故の特徴-」より

バイクの交通事故死傷者数は過去10年で減少傾向にあるものの、車両区分別に見ると2020年は小型二輪と軽二輪が増加している。

 

頭部と胸部の損傷が人身損傷主部位の合計で全体の70.0%

一般社団法人 日本自動車工業会、公益財団法人 交通事故総合分析センター「二輪車事故の特徴分析による事故・死傷者数の低減研究 -二輪車の単独事故の特徴-」より

2020年に“頭部”を損傷し亡くなった方の数は、10年前にあたる2011年の401人と比較すると173人(43.1%)減少して228人となった。また、胸部損傷の死者数は同期間比較で191人から51人(26.7%)減少の140人となっている。

人身損傷主部位別に見た際の頭部と胸部は今も昔もワースト1・2であり、他の人身損傷主部位よりも際立って多い状況が続いている。さらに2020年の単年で見ても、2つの人身損傷主部位だけで実に全体の7割を占めている。

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3割がヘルメット離脱による死亡事故

一般社団法人 日本自動車工業会、公益財団法人 交通事故総合分析センター「二輪車事故の特徴分析による事故・死傷者数の低減研究 -二輪車の単独事故の特徴-」より

2020年にヘルメット非着用(いわゆるノーヘル)で亡くなった割合は1.7%(9人)に過ぎず、着用していたにもかかわらず死亡してしまった方の割合は97.7%(514人)にものぼる。

周知の事実だが、ヘルメット着用は法律で義務づけられているため着用率は高い水準にある。しかし、ヘルメットを着用していたものの事故時に離脱したことにより死亡してしまった割合は驚くほど高い30%前後で推移している。

ヘルメットは着用していたものの、事故時に離脱してしまった。これはつまりヘルメットのサイズがあっていない場合やアゴ紐の未装着などといった適正着用を怠ったことに起因していると推察される。この記事を読み進めていただいているライダーには、ヘルメット着用の重要性はもちろん、確実な着用方法について今一度、確認してほしい。

ヘルメットの正しい着用方法と重要性についてヘルメットメーカーに聞いてみた!

 

ヘルメット離脱による死亡事故の傾向を知る

ほとんどのライダーがヘルメットを着用しているものの、適正着用を怠り事故時に離脱したことによる死亡者の割合は、10年間で平均約30%前後で推移していることを示した。

ヘルメットの着用は法律上の義務だが、本来の目的はライダーの頭部保護であることから、事故時の離脱を防ぐことが最優先だ。次項ではヘルメットを着用していたものの事故時に離脱してしまったケースに関する事故状況の分析を紹介する。

 

一般社団法人 日本自動車工業会、公益財団法人 交通事故総合分析センター「二輪車事故の特徴分析による事故・死傷者数の低減研究 -二輪車の単独事故の特徴-」より

まず、1995年から2020年までの状況を確認したところ、25年のあいだに起こったバイク死亡事故で「ヘルメット着用-離脱無し」の構成割合は、1995年の52%から、2020年には約65%に上昇している。「ヘルメット非着用」は1995年の11.8%から近年では2%前後にまで減少し、「ヘルメット着用-離脱」は約30%で推移していることが確認できる。では、近年のバイク死亡事故のなかでも「ヘルメット着用-離脱」とは、どういった特性や傾向があるのだろうか。

 

一般社団法人 日本自動車工業会、公益財団法人 交通事故総合分析センター「二輪車事故の特徴分析による事故・死傷者数の低減研究 -二輪車の単独事故の特徴-」より

「ヘルメット着用-離脱」によるバイク死亡事故を車両区分別に見てみると、原付一種のヘルメット離脱死亡率が最も高く、小排気量であるほど離脱死亡率が高い傾向にある。

 

一般社団法人 日本自動車工業会、公益財団法人 交通事故総合分析センター「二輪車事故の特徴分析による事故・死傷者数の低減研究 -二輪車の単独事故の特徴-」より

また「ヘルメット着用-離脱」によるバイク死亡事故を年齢別に見ると、16〜25歳の若年層のヘルメット離脱死亡率が最も高く、年齢の上昇とともに割合が低下していくが、66歳以上で再び割合が高くなり、若年層と高齢層においてヘルメット離脱率が高い傾向が確認された。

 

ヘルメット離脱の有無で死亡リスクが8倍も変わる

バイク死亡事故における平均的な死者割合のリスク比を確認するため2016年から2020年での死者割合を頭部周りの損傷部位についてまとめたのが上記グラフだ。ここでは、全てのバイク死亡事故のうち「ヘルメット着用-離脱」と「ヘルメット着用-離脱なし」を抜粋し、本来ならばヘルメットに守られるべき「頭部」「頭部+顔部」および「合計(全損傷主部位)」を死亡損傷主部位とした死者割合と各リスク比が示されている。
※リスク比は「(死亡事故の着用-離脱の死者割合) / (死亡事故の着用-離脱なしの死者割合)」

 

一般社団法人 日本自動車工業会、公益財団法人 交通事故総合分析センター「二輪車事故の特徴分析による事故・死傷者数の低減研究 -二輪車の単独事故の特徴-」より

「着用-離脱」と「着用-離脱なし」の死者割合の比較(左側のグラフ)では、いずれの損傷主部位でも「着用-離脱なし」の方が死者割合が低い。頭部損傷時にヘルメットが「着用-離脱」するケースでの死者割合は約18.7%と最も高く、「合計(全損傷主部位)」の6.11%と比較して12ポイントほど高い。

各リスク比(右側のグラフ)は、「合計(全損傷主部位)」では8.01だが、「頭部+顔部」に限定すると4.15、「頭部」では3.49となる。

 

ヘルメット用アゴ紐の適正着用は未だ7割強が実情

警視庁「二輪車利用者に対するヘルメット及び胸部プロテクターの着用状況調査結果」より

交通事故時にヘルメットが離脱する要因として、ヘルメット形状やその頭部への装着状態、もしくはアゴ紐の結束状態などが考えられる。警視庁ではバイク利用者に対して“ヘルメットのアゴ紐結束状態”の調査を実施しその結果が公表されている。

2021年の調査では、バイク利用者の27.4%が「結束無し」または「ゆるく結束」と、ヘルメットを適正に着用しておらず、2020年の調査でも26.9%と2年とも約27%のバイク利用者がヘルメットを適正着用できていないことがわかる。

全てのバイク死亡事故におけるヘルメット離脱率が約30%であることを考慮すると、アゴ紐の締結状態には相関がある可能性が考えられる。

 

MOTOINFOでも過去の記事でも幾度となく注意喚起をしてきたが、アゴ紐をしっかりと締めていないと、転倒時に頭を守ってくれるはずのヘルメットが離脱し、死亡リスクが高まるということは絶対に忘れないでいただきたい。

つい忘れてしまうという方は、ヘルメットを被る、グローブをつける、イグニッションキーを回す、といった自身の“バイク乗車ルーティン”のなかにアゴ紐の締結を儀式的に入れてしまうのも良いだろう。

公益財団法人交通事故総合分析センター「二輪車事故の特徴分析による事故・死傷者数の低減研究-二輪車の単独事故の特徴- (令和4年3月) 」

https://www.itarda.or.jp/materials/report/free

警視庁「二輪車利用者に対するヘルメット及び胸部プロテクターの着用状況調査結果」

https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/nirinsha/heru_pro.html

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