今こそ中高年(オヤジ世代)に着けて欲しい「胸部プロテクター」
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2022年9月に一般社団法人 日本自動車工業会が実施したバイク用胸部プロテクター認知度調査(日本リサーチセンター)によると、現役ライダー全体で「胸部プロテクターの存在を認知している」と回答※したのは75%、さらにその内で「ダメージ軽減の効果を認識している」と回答※したライダーは94.9%にも達することがわかりました。
一方で、実際に胸部プロテクターを保有している割合となると、ライダーの9割を占める男性のうち、最も保有率の高い年齢帯が16〜29歳の28.1%に対し、ライダーの平均年齢前後となる50〜59歳の保有率が14.7%、60〜79歳では12.5%と、若年層と比較して中高年層の保有率が大幅に低いという結果が出ています。
そこで今回は、若者ライダーの胸部プロテクター保有率がなぜ高いのか、そして、保有率を上げるためにはどのようなことが考えられるのかについて分析してみました。
※「知っている」または「何となく知っている」と回答
胸部プロテクターの存在も効果も認識している中高年世代…
前記の通り同調査によって、現役ライダー全体におけるバイク用胸部プロテクターの認知率および効果の認識が非常に高いことが明らかになっています。年齢層別にみると男性40〜49歳および男性50〜59歳では、存在・効果の認知も全体平均よりも高い数字となっています。
また、年齢以外の要素と関係は以下の通りです。
1:バイク乗車経験年数
バイク乗車歴が浅いほど認知・保有・着用の割合が高くなるわけではありませんでした。
2:バイク乗車経験年数+排気量との関係
排気量と乗車経験年数の関係においても相関は見られませんでした。
3:保有しているバイクのタイプ(以下タイプ名のみ)との関係
胸部プロテクターの認知度は、スーパースポーツが84.1%と圧倒的に高い認知度でした。
保有率ではアドベンチャーが44.8%と高く、次いでスーパースポーツが38.1%、タイプ別の平均保有率は約18.1%でした。なお、スクーターとビジネスではそれぞれ9.5%、8.7%と保有率の低さが目立ちました。
胸部プロテクター保有者の着用率は平均92.1%に対し、ここでもビジネスが83.3%と着用率も低いという結果が出ています。
4:二輪安全運転講習への参加経験
二輪安全運転講習に参加したことのあるライダーは過去に一度も参加したことがないライダーと比較して、胸部プロテクターの認知率が19.2ポイント高く、保有率では21.6ポイント、着用率でも7.6ポイント高いという結果が出ています。二輪安全運転講習へ参加するライダーは安全運転に対する意識が比較的高く、胸部プロテクターへの関心も高いことが伺えます。
スーパースポーツタイプを保有しているライダーの胸部プロテクター認知率が高い理由には、プロテクターの着用が必須であるモータースポーツ(MotoGPなど)が影響しているのではないかと考えられます。また、二輪安全運転講習での着用指導によって、受講者を中心に一定の効果が上がっていることが窺えます。それ以外の要素での大きな差は見られませんでした。
それでは、なぜ中高年層の現役ライダーは胸部プロテクターを装着する人が少ないのでしょうか?
中高年層と若年層では“周囲からの勧め”に決定的な違い
胸部プロテクター保有者の購入動機を見てみると、若年層男性は「教習時に着用していたから」が3人に1人の割合、その他には「バイク仲間からの勧め」もほぼ同率でおり、受動的な動機ながらも理解した上で購入に至っていることがわかります。また、女性全般の場合は「家族やバイク仲間からの勧め」が割合として高く、心配の構図が窺えます。
これまで編集部でも、二輪安全運転講習に参加していた若年層ユーザーに何度か胸部プロテクターにまつわるヒアリングをさせていただいたことがありますが、いずれも「教習時に着用していたから」「教習所での指導があったから」といった回答でした。
反対に中高年層は、どちらかというとバイク関連WEBサイトを閲覧し、能動的に情報を仕入れたうえで購入に至るケースが多いという結果が出ていますが、家族・バイク仲間・バイク販売店などからの勧め(外的要因)の割合が低いという現実が見えてきました。
現在、教習所では胸部プロテクターの着用が推奨されているものの、以前は胸部プロテクターそのものが普及しておらず、教習所で着用の推奨もほとんどなかったため、着用の意識が低く、また周囲も中高年層のベテランライダーを前に勧めづらいことも要因のひとつとして考えられます。
ユーザーの声に応え種類や価格帯も大幅増加する胸部プロテクター
胸部プロテクターを持っていない理由は「装着するのが面倒である」が35.5%と最も高く、次いで「価格が高い」が31.6%、「装着すると暑い」が26.3%という回答結果でした。
しかし、ここ数年で胸部プロテクターの進化はめざましく、新たな技術開発によって安全・快適かつ買いやすい価格帯の製品も増えてきています。
多種多様な形状・材質・価格、さらにはジャケット内蔵タイプやインナータイプ、外部装着タイプなど用途に合わせた様々な装着タイプのモノがあり、バイク用品店では胸部プロテクターだけでひとつのコーナーができるほど売り場面積も年々拡大しています。
当初は重くて硬くて通気性が悪く、種類が少なかったのですが、最新の胸部プロテクターはそうした懸念事項の大半が払拭されています。以前のイメージを持たれたままこれまで胸部プロテクターの装着を見送ってきたライダーの方は、バイクショップに相談してみたり、是非一度バイク用品店のプロテクターコーナーに足を運び、ご自身の目で確かめてみてください。ビックリするほど快適になっていますよ。
子から親へ、バイク仲間から、バイクショップからもっともっと勧めよう
胸部プロテクターの保有経験者に聞くと、35.1%が「効果を実感した経験がある」と回答しています。また、どのような状況で効果を実感したかという質問に対して63.0%が実際の事故によって効果を実感しており、特に男性16〜29歳においては45.1%が効果を実感した経験があると回答しています。
なお「実際の事故で効果を実感した」と回答したライダーからは、以下のような実体験に基づく回答が得られています。
- 転倒時に胸から落ちたのですが、ほとんど怪我がなかったので効果を実感しました(20代男性)
- クルマと衝突し転倒したが、胸部プロテクターを装着していたので怪我をあまりしなかった(20代男性)
- 不意の転倒時に衝撃を吸収してくれた(40代女性)
- バイクで転倒しハンドルステムが胸部に当たった時に効果を実感した(50代男性)
- カーブを曲がり切れず転倒した際に胸から落ちたが助かった(20代男性)
- サーキット走行時に転倒してしまったが肋骨にひびが入ったくらいで済んだ(50代女性)
- うつ伏せ状態で転倒したが胸部プロテクターのおかげで無傷で済んだ(20代男性)
- 少し派手に立ちゴケした時に胸部プロテクターのおかげで少しの怪我もなく済んだ(20代男性)
バイク走行中はいかにライダー自身が細心の注意を払っていたとしても、センターラインをはみだしてくるクルマや、道路上の落下物や砂利・落ち葉などといった路面変化、タイヤのバーストなどといったような予期せぬアクシデントもあります。また、こうしたアクシデントに遭遇し転倒してしまった際には、体が露出しているライダーは外傷リスクが高くなります。
中高年ライダーの若い頃には普及していなかった胸部プロテクターの装着が、いまでは若年層を中心に当たり前となりつつあります。カッコ悪い、面倒くさいなど乗車時のスタイルや利便性にばかりに目が行きがちですが、守るものが多くなる年代こそ積極的に装着することで安全性を確保し、現代版“かっこいいライダー”としてお手本になってはいかがでしょうか?
バイク仲間やバイクショップからも、ぜひお薦めしましょう。
また、最近は親子でバイクを楽しむ方も増えていますので、もし親御さんとツーリングに出かける機会があれば、胸部プロテクター装着による安全性の確保を親子の共通項とすべく、お子さんからもぜひ勧められてはいかがでしょうか?