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バイク人口が増加傾向の今、新人ライダーを中心に高まるライディングレッスン需要

ここ数年、バイク免許の新規取得者数が増加し、教習所では二輪教習の予約が混み合い、中古バイクの価格は高騰し、バイク業界には様々な変化が起きています。

2019年春から2年以上続くコロナ禍によって活動自粛を余儀なくされ、バイク業界においても試乗会やショーをはじめとする様々なリアルイベントが中止となってしまいました。

それにも関わらず、むしろ密を避けた移動手段(移動具)として見直されたことも一因となって、バイク人口は増加し続けています。

そこで今回は、最近バイクの世界に足を踏み入れたユーザーが、まず何を必要としているのか探るために、ピレリが主催するバイクレッスン&サーキット走行会「FUN TRACK DAY(ファントラックデイ)」(以下、FTD)と、女子ライダーレッスンの老舗であるチームマリ主催の「Team MARI(チームマリ)モーターサイクルレッスン」(以下、TMM)を訪ねました。

 

コンセプトは「教習所とスポーツの間を埋める」

2022年5月21日、袖ヶ浦フォレストレースウェイで開催されたFTD。そのなかでもエントリーライダーに定評のあるクラス「やさしいバイクレッスン」を見学取材しました。

参加していたのは女性3名を含む計18名で、使用車両は一目見て新車だとわかる250ccスポーツモデルから300万円を越える高価な輸入車まで様々で、年齢やバイクのタイプもバラバラでした。

本レッスンの参加条件は”公道走行可能な125cc以上のバイク所有と必要な免許のみ”と敷居が低く、参加のハードルを強いて挙げるとすれば”会場までの道のり”くらいでしょうか。

ピレリ・ファン・トラック・デイ事務局の川野泰裕さん(以下、ピレリ川野さん)によると、もともとはサーキットで走行してみたいライダーのための基礎レッスンでしたが、公道走行に不安を抱くユーザーが困っているのを見て、レッスン内容をやさしく変更し”街乗りで楽しく乗れるところまで”をコンセプトとしたとのことでした。

 

やさしいバイクレッスンの内容は、教習所よりもさらに実践的な公道走行における基礎的な項目が多い印象。例えば、公道では練習しづらい少々強めのアクセル開閉による加減速や、ブレーキ操作を前後バラバラに行うことで各挙動の違いを体感するなど。

このレッスンは、前半60分で走行練習を行った後に、後半の60分に質疑応答を交えた座学があり、頭と身体で理解を深められるのが特徴です。

レッスン参加者の傾向としては、初めてバイクを購入された方が最も多く、大型バイクへの乗り換えや、ライディングポジションの異なるバイクに乗り換えた方も多いそう。

たしかに、バイクはタイプが変わればポジションも性能もハンドリングも全く変わってしまうため、そのバイクに慣れるための場所・機会を作ったのが本レッスンということですね。

 

趣向性の強いサーキット走行への憧れ

続いて、横のコースで行われていたサーキット走行会も見学取材しました。

なんと!今回のエントリー台数は16~74歳までの総勢240台が参加しており、初サーキット走行という方も10名弱いました。

走行経験などに基づいてグループ分けされ、午前・午後を通して必ず2~3回はインストラクター引導のもと走行ができるスケジュールとなっています。

 

半年前に免許を取得したというOさん(左の女性)は、過去に前記の基礎レッスン参加時に横目でサーキット走行を見て自分も走りたくなり、横の彼に背中を押されるかたちで今回サーキット走行会へ参加したそう。

「なんと言っても爽快感がたまらない」と笑顔で語ってくれました。

 

友人の誘いもあって参加したSさんは、どうせならきちんとしたライディングウェアで走行したいとレーシングスーツを新調して参加されていました。

ピレリ川野さんは、このサーキット走行会のポイントについて以下のように語ってくれました。

サーキット走行会だからといってバイクのタイプなどに制約はありませんが、参加申し込みは販売店を通して受け付けるようにし、参加前に必ず車検に代わる車両チェックをしていただいています。

最近は実態の判らない商品を買って使用してしまうユーザーもいるので、販売店でしっかり見ていただくことが結果的にユーザーとお店の信頼関係へと繋がり、走行会での安全性にも繋がるというメリットがあります。

 

余談ですが、本サーキット走行会ではバイク貼付用のゼッケンステッカーとは別に、ヘルメット貼付用に同番号の小さなゼッケンステッカーが配られていました。(右手に握られている小さめのステッカーがヘルメット貼付用)

これは、仮に複数台が絡む同時転倒によってバイクとライダーが離れてしまったとしても、ヘルメットゼッケンによって即座に個人特定ができるというアイデアで、ぜひほかのサーキット走行会でも採用してほしいとピレリ川野さんは推奨していました。

このような細かな配慮の積み重ねが参加者に安心感を与え、FTDには多くのエントリーライダーが参加されているのかもしれません。

 

年間約300名越えの女性ライダーを支えるチームマリ

株式会社チームマリ主催のバイクレッスン「TMM」は、2020年の時点で受講生が15,000人を超えたという、女性による女性のためのバイクレッスンです。

女性ライダーが抱えるバイクにまつわる心配事は多く、バイクにまたがって走り出す以前に、家の車庫から出せないという悩みもよく耳にします。はたまた、出先での立ちごけやエンストなどを心配すると、さらに問題が山積みになってしまいます。絶えずTMMに多くの女性ライダーが参加されているのは、そんな不安を抱える女性ライダーが多いという証でしょう。

株式会社チームマリの菊谷仁代子さん(以下、TM菊谷さん)案内のもと、編集部が見学取材させていただいたこの日は、2つのグループに分かれてレッスンが行われたのですが、参加者リストに書かれている数字を見て驚きました。名前の横に「45」「35」と数字が書かれており、てっきり御年齢かと思ったのですが、「135」と書かれている方もいたため改めて見直すと、なんとこれまでTMMに参加した回数だったのです。TM菊谷さんによると、ライディングの楽しさを実感しながら、一歩ずつ上達でき、女性同士が友達になる環境である事も手伝って、50回超える参加の方はさほど珍しくはないそうで。女性が自由自在にバイクを操る道のりの長さを感じます。

 

運転技術が伴ってこそわかるバイクの楽しみ

参加されている方に、バイクに乗るきっかけや本レッスンに参加しようと思った理由を伺ってみました。

Aさんは「半世紀記念に何かをしたいと思い、若い時に憧れていたバイクに乗ろうと決意しました。子育てもひと段落したので、これからバイクで旅をして楽しみたい」と、バイクに乗ろうと思ったきっかけを話していただきました。

Bさんは「仕事を退職して時間に余裕ができたので、バイク教習に通い始めました。これから日本中の様々な所をバイクで巡りたい」とのことでした。

さらにCさんは「片岡義男の小説を読んでバイクに興味を持ち、20歳の時に教習所へ通っていたのですが、途中で事故に遭ってしまい免許は取れずじまい。その後は子育てに追われていましたが、それでもバイクを諦めきれず、子供が一人前になったタイミングで主人に懇願して乗り始めました。」と、”自分時間”ができたことをきっかけにバイクへの夢を叶える方が多い印象でした。

 

また、レッスンへの参加理由についても尋ねましたが、これは前記のような安全に関する切実な悩みの声が聞かれました。

前述のAさんは「一人で全部何とかしたいのでライディングテクニックを身につけたいです。リスクを減らす安心のため。家族のためでもありますね。」

Eさんも「とにかくうまくなりたいけれども、いきなり公道は怖い。安心安全に走れるようになりたいです。」

Fさんは「ライディングテクニックの一般常識は、なかなかインターネットなどでも入手できず、主人以外の意見も聞きたい。バイクは教習所を卒業したらいきなり公道に出されてしまうので、ちょっとハードルが高く感じます。女性だからやっぱり乗るなら美しく乗りたい。」

そんな不安を持つ女性ライダーたちに、TMMの女性インストラクターはまずバイクの押し歩きから教えています。

チームマリの創設者であり、経験豊かな井形マリさんが開始した女性専属レッスン。今は、元WGPライダーの井形ともさんに受け継がれ、30年以上脈々と続いています。しかも広いスペースで女性専属の指導により、バイクを走らせる楽しさを実感できることが参加のリピートや参加者同士の繋がりを深め、レッスン以外の活動にもひろがり、進化しているのでしょう。

サーキット走行プログラムに参加者も多く、インストラクターもレッスン参加者の中から生まれていて、教えられる側の気持ちを、教える側も深く共感して指導に当たることにも、人気の秘訣があるのでしょう。

 

ライダーの体格や身体能力は千差万別であり、バイクも排気量やタイプによって操作方法や特徴が全く異なるため、ライダー各自が愛車のコツを掴んで安全に乗れるようになるためには、気軽に練習できる機会をこれまで以上に増やす必要があるのかもしれません。

ここ数年、新規バイクユーザーは増加傾向にあり、2021年の日本自動車工業会の二輪車市場動向調査でもバイクの楽しみ方では”ソロ”ツーリングと答えた方が多いという結果も出ていますので、より一層の安全運転を願いつつ、業界としてもさらに一歩手厚いエントリーライダーのための施策を考えるべき時期に達しているのかもしれません。

ファントラックデイ - ピレリジャパン

https://pmfansite.com/pirelli/fun-track-day/

マリ輪ネット

https://t-mari.net/

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