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ライダーの頭を守るヘルメットについて知っておきたいこと

警視庁が昨年行った調査結果によると、コロナ禍で多少増減はあったものの、都内及び全国におけるバイク乗車中の交通事故者の比率は、都内で26.3%、全国では17.6%となっています。

 

二輪車の交通死亡事故統計(2021年中) – 警視庁

 

また、二輪車による死亡事故を見た場合、致命傷となる身体の部位についてはやはり頭部が一番多く、しかも過去5年の平均では50%以下だったにもかかわらず、2021年は62.9%と依然として頭部が多い傾向にあります。

 

二輪車の交通死亡事故統計(2021年中) – 警視庁

 

そこで今回は、ヘルメットを購入しようと思っている方に向けて、株式会社アライヘルメットの上幸一さん(以下、上さん)に、ヘルメットの取り扱い方法や夏場での注意点についてお話を伺いしました。

 

ヘルメット選び=自分の身を守るためにしっかりと投資する傾向

上さんによると、アライヘルメットの出荷実績ベースでここ数年は6〜7割がいわゆるフルフェイス型のヘルメットです。特にコロナ禍によって教習所のヘルメットを借りたくないという心理から、教習所に通い始める段階でヘルメットを購入する方も増えており、コロナ前と比較すると2倍以上のオーダーが入っているとのことでした。

また、こうしたコロナ禍における需要増は国内だけにとどまらず、欧米でも同様に販売が続伸しており、さらには東南アジアでもジャパン・クオリティの高級フルフェイスモデルとして販売が堅調に伸びており、同社の生産ラインもフル稼働状態のようです。

新型コロナウィルス感染防止の観点から、シェアするのではなく、自分のヘルメットを被るというライダーの意識変化は、ライダーの頭部を保護する安全面においても良い影響を与えたのではないでしょうか。

 

ライダーの頭も守りたい!だからしっかりと選んで欲しい

※上は内装に使用されている発砲材の部分

バイク用ヘルメットの一般的な構造は、外側に見えている”帽体(シェル)”と、内側で衝撃を吸収する”ライナ(画像の発泡材)”、そして被った時に頭を固定するアゴひもの3つで構成されています。そして、これらの部材を各ヘルメットメーカーが幾度となく研究開発を行い、衝撃テストなどの安全性を認証する規格に適合したヘルメットのみが店頭に並んでいるわけです。

上さんも、ヘルメットの安全基準について以下のように語ります。

アライヘルメットでは、創業時から変わらず”バイクに乗る方の頭部を護りたい”という想いでヘルメットを作り続けていますので、ライダーの方々にはやはり、しっかりと規格に適合したヘルメットを選んで欲しいですね。規格も様々な種類がありますが、アライのフルフェイスヘルメットは、JISやPSC、SG規格はもちろん、さらに厳しい世界最高水準の安全規格であるSNELL規格もクリアしています。

乗っているバイクの種類や、使用のシチュエーションをお客様に伺うこともありますが、少しでも安全性の高いものとして、まずは「JIS規格」「SNELL規格」を取得しているヘルメットをお勧めいたします。

また、ヘルメットがフィットしていないと頭痛の原因ともなり走行に集中できない場合もあるほか、サイズが大きすぎても安全性能を十分発揮できないので、ヘルメット購入時のサイズ選びは重要なポイントです。

 

実はプロのバイクレーサーもフィッティングはノーマルのままが多い!

アライヘルメットでは20年前から、同社の定める特別なヘルメット講習を修了した専門ショップ(テクニカルプロショップ)による、購入時の無料のヘルメット内装のカスタマイズフィッティングサービスを展開しています。

こうした同社のヘルメットフィッティングに対するノウハウは約50年以上にわたって蓄積されており、古くは1970年代のバイクレースに参戦する選手のヘルメットをサポートしたところから始まっています。選手たちのフィッティング(かぶり心地)に対する要求に幾度となく応えながら製品へのフィードバックを繰り返し、行き着いたのが現在のフィッティングとのこと。

その結果、国の違いはあれど、現在同社がサポートするライダーのほとんどが、カスタマイズフィッティングをせずにノーマルの状態で使用しているとのことでした。つまり、一般のライダーもプロのバイクレーサーも同じヘルメットを使用していることになりますね。それだけ日本人の頭に最適化されたフィッティングを生み出せる同社の技術力には驚きです。

 

自分でできる内装サイズの微調整

左は耳にあたる部分の3重構造のスポンジ。右は頭頂部で、こちらも微調整ができる構造

同社製ヘルメットの内装に使われているスポンジは、複数枚のスポンジを重ね合わせた構造になっており、ユーザー自身が一枚剥がすことによってフィッティングを微調整できる(スポンジの厚さが変えられる)構造になっています。また、頭頂部のスポンジも頭部の形に合わせて位置を移動できるような構造になっているので、フィット感が気にいらない場合でもある程度は微調整できるようになっています。

内装のスポンジは、使用を重ねるうちに馴染んでくることも念頭に置いて最初のフィッティングは少しピッタリ目で選んだ方が良い。

と上さんは語ります。

なるほど、とても汎用性の高い絶妙なサイジングで設定されているものの、各ライダーの頭の形は微妙に異なるので、自身でもある程度微調整することで、さらに”フィット感=安心感”につながるということですね。

 

夏に注意すべきヘルメットの取り扱い方法やメンテナンス

 

最後に、これから夏本番を迎えるわけですが、気温の高い時期に注意すべきヘルメットの取り扱い方法やメンテナンスについてのポイントを上さんに教えていただきました。

 

高温を避ける

まず1点目は、炎天下に駐車されたクルマの中など、高温になる場所は避けて保管しましょう。

先の通り、ヘルメットの内側には衝撃吸収用の発泡材が使用されています。この材質は、熱を加え膨らませることで成形しますので、高温状態になると再度膨らみ、その後しぼむことによって変形してしまうことがあります。

また、ベンチレーションのパーツは、軽量化を考慮して樹脂製の薄い材質のものが外側から接着されているため、逆さに置いたり、長時間の高温状態が続くと、同じく変形したり接着がはがれてしまう場合がありますので注意が必要です。

 

撥水スプレーなどの溶剤に注意

2つ目は、ヘルメットシールドの日常的なメンテナンスにおける注意点です。

一般的にヘルメットのシールドは、ポリカーボネート樹脂を原料としたプラスチック素材を使用しており、表面はハードコーティングが施されています。しかし、シールドのフチ部分にあたる断面はコーティングがされていないので、なんらかの溶剤が染み込むと、シールド内に染み込んで劣化する可能性があり注意が必要とのことです。

例えば、有名なクルマ用のガラス系撥水剤は溶剤が強く、断面から染み込むと割れや劣化の可能性があるので、シールドへの使用は避けるべきでしょう。

 

ヘルメット内部が濡れてしまった場合の対処法

3つ目は、万が一ヘルメットの内側が濡れてしまった場合の適切な対処法です。

ヘルメットの内装を乾かすためには、陰干しで、とにかく風通しの良い場所で乾かしましょう。ヘルメットは高温多湿な環境に弱いため、長期保管する場合も湿度が高くならない場所で、日常的に風が通るところを選びましょう。さらに、シールドを開けて風が中側を抜けるようにできると尚良いです。

そのほか、ヘルメット内装の洗い方や干し方については、アライ公式サイトで詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

 

ヘルメットが”少し”ダメージを受けてしまった場合

最後に、ヘルメットを落としてしまった場合の想定です。

例えば、バイクのシートくらいの高さから平坦なコンクリートに落とした程度では、ほとんどヘルメットとしての性能は落ちないですが、縁石の角やヘルメットの中に重いモノを入れて同時に落下させてしまった場合などは、損傷している可能性が高いです。

アライヘルメットの場合、ヘルメットの帽体にはFRP(繊維強化プラスチック)という弾性のある素材が使われており、強い衝撃による破損がない限り性能は落ちにくいものの、内側のライナーには発泡材が使用されており、強い衝撃が加わるとライナーが衝撃を吸収し潰れてしまうため、有事の際の安全性が下がっているかもしれません。アライでは損傷したヘルメットの検証も行っていますので、もしもご自身で判断がつかない場合は検査することもできます。

 

ご自身の頭部、そして命を守る大切なヘルメット。

これからの季節は、どうしても汗や雨によって濡れてしまうことも増えますが、万が一の時にしっかりと自分を守ってもらうためにも、日常的なヘルメットのメンテナンスに心がけましょう。

株式会社アライヘルメット

https://www.arai.co.jp/jpn/top.html

警視庁 - 二輪車の交通死亡事故統計(2021年中)

https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kotsu/jikoboshi/nirinsha/2rin_jiko.html

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