fbpx

投資でバイク業界を応援!経済アナリストが二輪車産業の展望を解説

現在バイクに乗っている現役ライダー、またはバイクが好きな方であれば、バイク業界の将来や、現在の国内外の二輪車市場について興味があり、何らかの形で応援したいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回はそうした方々のために、少し違った角度で投資という観点からバイク業界と接し、応援する方法をご紹介いたします。

本記事では、日本が誇る主力輸出産業の一つである国内4大二輪メーカーに投資の観点から注目し、それぞれの企業価値や財務指標、成長性についてわかりやすく解説します。技術革新や市場の変化を踏まえながら、バイク業界の将来性と各メーカーの競争力について深掘りし、バイク市場の魅力と投資視点での応援についてご紹介します。

金融・投資ライター

山下 耕太郎 氏

一橋大学経済学部卒業後、証券会社で営業・マーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。保有資格は証券外務員一種。

国内4大二輪メーカーの概要

現在、東証プライム市場(旧東証一部)に上場する二輪メーカーは、川崎重工業株式会社(以下、カワサキ)、スズキ株式会社(以下、スズキ)、本田技研工業株式会社(以下、ホンダ)、ヤマハ発動機株式会社(以下、ヤマハ発動機)の4社です。言わずもがな、これらの企業はグローバルに展開しており、国内4大二輪メーカー(以下、国内4メーカー)だけで世界のバイク市場における販売台数の4割以上を占めています。

川崎重工業株式会社(KAWASAKI)[証券コード:7012]

売上高:約1兆8,492億円(前期比+7.2%) ※1
当期純利益:約253億円(前期比-52.1%) ※1
うち二輪車売上:約3,213億円(前期比-1.7%) ※2
売上構成比率※3は、航空宇宙システム21 %(-4%※4)、車両11%(2%※4)、エネルギーソリューション&マリン19% (8%※4)、精密・ロボット12% (-1%※4)、パワースポーツ&エンジン32% (8%※4)、他5% (1%※4)
海外売上高比率:60%※3
※1:2023年度決算資料より(2024年5月13日) ※2:先進国二輪車および新興国二輪車の合計 ※3:2024年3月時点 ※4:売上高営業利益率(%)=(各事業の営業利益/各事業の売上高)

スズキ株式会社(SUZUKI)[証券コード:7269]

売上高:約5兆3,743億円(前期比+15.8%) ※1
当期純利益:約2,677億円(前期比+21.1%) ※1
うち二輪車売上:約3,669億円(前期比+10%) ※1
売上構成比率※2は、二輪7 %(11%※3)、四輪91%(8%※3)、マリン2%(22%※3)、他0.2%(28%※3)
海外売上高比率:76%※2
※1:2023年度決算資料より(2024年5月13日) ※2:2024年3月時点 ※3:売上高営業利益率(%)=(各事業の営業利益/各事業の売上高)

本田技研工業株式会社(HONDA)[証券コード:7267]

売上高:約20兆4,288億円(前期比+20.8%) ※1
当期純利益:約1兆1,071億円(前期比+70%) ※1
うち二輪車売上:約3兆2,201億円(前期比+10.7%) ※1
売上構成比率※2は、二輪16 %(17%※3)、四輪66%(4%※3)、金融サービス16%(8%※3)、パワープロダクツ他2%(-2%※3)
海外売上高比率:87%※2 
※1:2023年度決算資料より(2024年5月10日) ※2:2024年3月時点 ※3:売上高営業利益率(%)=(各事業の営業利益/各事業の売上高)

ヤマハ発動機株式会社(YAMAHA)[証券コード:7272]

売上高:約2兆4,148億円(前期比+7.4%) ※1
当期純利益:約1,641億円(前期比-5.9%) ※1
うち二輪車売上:約1兆4,081億円(前期比+7%) ※1
売上構成比率※2は、ランドモビリティ66%(8%※3)、マリン23%(21%※3)、ロボティクス4%(1%※3)、金融サービス4%(18%※3)、他4%(-2%※3)
海外売上高比率:94%※2
※1:2023年度決算資料より(2024年2月14日) ※2:2023年12月時点 ※3:売上高営業利益率(%)=(各事業の営業利益/各事業の売上高)

一般社団法人 日本自動車工業会(以下、自工会)が2025年1月30日に発表した2024年の国内二輪車登録・出荷台数は前年比90.8%の約36.8万台でしたが、ご覧の通り国内4メーカーの海外売上比率は半数以上を占めているのです。つまり、日本国内における需要は氷山の一角に過ぎず、世界的にはまだまだ需要増加の余地を残した、日本が誇る強力な輸出産業であることがわかります。

国内バイク市場の動向

国内バイク市場の売上規模は年間約2,000億円で推移しています。2020年代に入ってからは、コロナ禍による移動手段の変化やアウトドア趣味の高まり(ライフスタイルギアブーム)を背景に、需要が増加したことは記憶に新しいでしょう。特に、大型バイクなどのプレミアムモデルや原付二種モデルなど、趣味性の高いモデルの売上が伸びており、趣味や余暇の充実を目的とした購買動機の傾向が多く見られました。

先の通り、2024年の国内販売台数は減少傾向へと転じたものの、コロナ特需以前に戻ったに過ぎません。つまり、2025年以降は多くのバイク愛好家たちによってバイクを末長く楽しむ、長期的なバイクライフのフェーズへと推移したものと思われます。

一方で、2025年10月31日を以って生産終了する原付バイク(原付一種) と「新基準原付」による法改正をネガティブに捉えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、この法改正は国内二輪メーカーにとっては好材料であると言えます。

50cc原付バイクの国内需要は、ピークであった1980年代前半からすでに約1/10の販売台数にまで減少しているほか、世界的に見ても主流は125ccスクーター(原付二種クラス)であり原付スクーターの需要は乏しく、「EURO5」の規制(日本では同等とされる平成32年(令和2年)排出ガス規制)も始まっています。世界的に見ても需要増加の目処が立たない原付モデルに対して、新しい規制に対応するための開発投資を迫られたのです。

出典:一般社団法人 日本自動車工業会

こうした背景から、2025年4月より「最高出力」を現行原付と同等レベルの4.0kW以下に制御した総排気量125cc以下の二輪車を原付一種(新基準原付)としてみなすよう、法改正が行われます。これによって国内二輪メーカーは、日本と他数国でのみ販売していた原付スクーターの生産を終了し、世界基準ともいえる原付二種モデルの出力規制によって、従来の原付需要までのカバーが可能となりました。

グローバル市場との関連性

先述の通り国内4メーカーの平均海外売上高比率は80%以上に達します。その裏付けとして、実際に国内4メーカーの23年度決算報告書より二輪車出荷台数の統計を見てみると、日本:約1.4%、欧州:約2.8%、北米:2.5%、アジア:83.6%、その他:9.6%となっています。

また、国内4メーカーは世界の二輪車市場における販売台数の4割以上を占めており、グローバル市場での強固なプレゼンスを誇ります。特に東南アジアやインドなど新興国市場では高いシェアを持っており、自動車と同様に日本が誇る輸出産業であると言えます。

競争力の面では、日本メーカーの製品は「高品質・高耐久・低燃費」という点で評価されており、信頼性の高さが強みとなっています。実際に東南アジアでは、“ジャパンブランド”のバイクはステータスシンボルとしての価値も持ち、ローカルブランドとの差別化要因となっています。さらに、各メーカーは現地生産体制を強化し、コスト削減と市場適応力を高めることで競争力を維持しています。

こうした海外需要の高まりに加え、ここ数年、加速的に進行していた長期的な円安トレンドによって各社の決算発表では為替による利益の増加(為替差益)が目立ちました。これらの要因により、国内4メーカーは新興国市場の成長を取り込みながら、今後もグローバル市場での存在感を高めていくことが期待されます。

各社の二輪事業が多大なる利益貢献をしている

次に、国内4メーカーの営業利益を見てみると、いかに各社の二輪事業が利益貢献を果たしているかがわかります。

ホンダの事業ポートフォリオ上における二輪事業の営業利益は約40%と、四輪事業と同等の利益を上げています。ヤマハ発動機では、二輪車事業とSPV事業(電動アシスト自転車やATV、スノーモビルなど)を合わせたランドモビリティ事業で約50%の営業利益を上げています。カワサキでは、二輪・四輪・汎用エンジンなどをまとめたパワースポーツ&エンジン(旧:モーターサイクル&エンジン)セグメントにおける売上収益が、事業ポートフォリオの約32%を占めています。スズキでは、二輪事業の占める営業利益の構成比は約8.4%となっており、2021年から毎年右肩上がりで躍進を続けています。

このように、国内4メーカー各社の二輪事業は、全社を平均すると概ね営業利益全体の1/3を担うほどの主力事業であり、安定性・成長性ともに優れた産業であることがわかります。

投資の観点から見る国内4メーカーの魅力

この記事の想いは、投資の観点から国内4メーカーの魅力を理解し、一人でも多くの個人投資家やBizパーソンに、日本のバイク産業を注目していただくことです。そこでここからは、株式投資の財務指標としてポピュラーな項目をあげ、各企業の収益性や安全性、成長性などについて投資の視点で分析してみましょう。

株価純資産倍率(PBR)

株式1株あたりが純資産の何倍で取引されているのかを示すものです。計算式は「株価(株式時価総額)/1株あたりの純資産(純資産額)」。なお、PBRの目安は1倍とされており、PBRが1倍であれば、株価と企業の資産価値が釣り合っていると考えられます。そのため、PBRが1倍を下回れば株価は割安と捉えられます。

株価収益率(PER)

株式1株あたりの純利益の何倍で取引されているのかを示すものです。計算式は「株価(株式時価総額)/1株あたりの当期純利益(当期純利益)」。当期とは、企業が発表する当期予想数値を指しており、企業の成長期待を表す指標として用いられます。

自己資本利益率(ROE)

自己資本をどれだけ有効活用して利益を上げられているかを示しています。計算式は「当期純利益/自己資本×100」。ROEが高いほど自己資本を有効活用し利益を上げている、経営効率の良い企業と想定されます。なお、ROEの目安に明確な指標はないものの、一般的には10%以上が基準と言われることが多いです。

1株当たり純資産(BPS)

企業の財務健全性や内在価値を示すものです。計算式は「純資産/発行済株式総数」で単位は円です。純資産とは、企業が所有する資産から負債を差し引いたもので、企業の本質的な経済的価値を示します。BPSの高い企業は事業の継続性、つまり安定性が高く、BPSの推移を長期的に観察することで企業の成長性を測れるのです。

1株当たり純利益(EPS)

1株当たりの利益がどれだけあるのかを示すもので、その企業にどれだけ収益力と成長性があるのかを測る指標です。計算式は「当期純利益 / 発行済株式総数」で単位は円です。基本的にEPSの数値が高いほど企業の収益力は高く、BPSと同様にEPSの推移を長期的に観察することで企業の成長性を測れます。

カワサキ

株価:6,790円※1
PBR:1.78倍(1.35倍)↓
PER(予想):15.58倍(33.64倍)↓
ROE(予想):11.41%(4倍)↑
BPS:3,820円※1 (3,786円)↑
EPS(予想):152円(317円)↓
※2025年1月30日時点 ※カッコ内は2024年3月末日時点の数値 ※1:2024年9月末日時点の数値

スズキ

株価:1,872円※1
PBR:1.3倍(1.35倍)↑
PER(予想):10.32倍(12.57倍)↓
ROE(予想):12.6%(10.75%)↑
BPS:1,439円※1 (1,291円)↑
EPS(予想):181円(138円)↑
※2025年1月30日時点 ※カッコ内は2024年3月末日時点の数値 ※1:2024年9月末日時点の数値

ホンダ

株価:1,477円※1
PBR:0.56倍(0.72倍)↑
PER(予想):7.46倍(8.37倍)↓
ROE(予想):7.67%(8.72%)↓
BPS:2,646円※1 (2,629円)↑
EPS(予想):203円(226円)↓
※2025年1月30日時点 ※カッコ内は2024年3月末日時点の数値 ※1:2024年9月末日時点の数値

ヤマハ発動機

株価:1,099円※1
PBR:1.12倍(1.13倍)↑
PER(予想):7.96倍(7.98倍)↓
ROE(予想):14.73%(14.35%)↑
BPS:1,165円※1 (1,113円)↑
EPS(予想):164円(158円)↑
※2025年1月30日時点 ※カッコ内は2023年12月末日時点の数値 ※1:2024年9月末日時点の数値

各指標の横に矢印を記載しましたが、各企業とも昨年度よりも上昇傾向の項目が目立っています。つまり、国内バイク産業の景気は本年度も横ばいまたは右肩上がりになることが予想されます。

気になる企業の動向を見てみよう

「好きな企業を応援する投資」は、ただの資産運用ではなく、愛着のあるメーカーの成長をともに楽しむことができる点が魅力です。日本が誇る主力輸出産業のひとつであるバイク産業にご興味を持たれた方は、関連する書籍やウェブサイトをご覧になって、投資という新しい一歩に挑戦してみるのも良いのではないでしょうか。

※本記事は、投資勧誘または投資に関する助言を目的としておりません。投資の決定はご自身の判断でなされますようお願いいたします。

RECOMMEND

あなたにオススメ