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二輪車産業政策ロードマップ2030要点チェック!カーボンニュートラル達成に向けた施策と推進について

2014年に策定した「二輪車産業政策ロードマップ2020(以下 ロードマップ2020 )」が昨年終了したことを受け、次の新たな目標として、昨年11月 第9回バイクラブフォーラムにて「二輪車産業政策ロードマップ2030(以下 ロードマップ2030)」が発表されました。ロードマップ2030では、ロードマップ2020の継続課題に、環境変化を踏まえた新規課題を加え、2030年に向けた課題達成の取り組みが進められています。

そこで今回は、4つの政策課題と11項目の実施施策から構成されるロードマップ2030の中の、バイクのカーボンニュートラル(以下 CN)の取組み課題にクローズアップしてご紹介します。

 

カーボンニュートラル達成に向けた考え方ついて

  • 2050年のCN実現に向け、答えは1つではない
  • 政府のエネルギー政策やインフラ政策など社会全体での変革が必要不可欠
  • 国内全産業をあげてのチャレンジが必要
  • 多様な車両・パワートレインの可能性を追求

まず、バイク業界におけるCN達成に向けた考え方としてのポイントは上の4つです。

昨今、取り沙汰されている「バイクの電動化」は、CNへの貢献の可能性のひとつであり、唯一の解答ではないということ。また、CN達成のためにバイク業界全体でチャレンジする必要があるほか、政策および社会全体で変革をもたらす必要があるということです。
さらに、合成燃料やバイオ燃料などの燃料の革新、燃料電池や水素エンジンなどのパワートレインの技術革新もCN貢献の選択肢です。
地域や用途に合わせた最適な選択、組み合わせも含め、様々な選択肢の可能性が追及され、CN達成が実現されていくことでしょう。

 

バイクの電動化によるCN貢献の具体策

ロードマップ2030でも掲げられる実施施策「電動二輪車の普及に向けた充電システム等の普及・推進」「環境負荷の低い二輪車の特性を踏まえた、短距離移動の用途からの電動化」に関わる2つの具体的な施策について見ていきましょう。

 

1:バッテリー交換式電動二輪車の実証実験プロジェクト「eやんOSAKA」

大阪府・大阪大学・自工会の”産官学”連携による交換式バッテリーを用いた電動バイク普及に向けた実証実験プロジェクト「eやんOSAKA」。2020年9月末より開始され、現在原付二種相当の電動バイクも追加して進行中です。2022年3月に終了し、普及に向けた課題をまとめる予定になっています。

1分でわかる!電動バイク普及ための実証実験「eやんOSAKA」

 

2:電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアムによるバッテリー交換システム標準化

2019年4月4日、電動バイクの普及を目的に、国内バイクメーカー4社によって「電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアム」が発足しました。また、2021年3月26日には、日本での電動二輪車普及に向け、相互利用を可能にする「交換式バッテリーとそのバッテリー交換システムの標準化(共通仕様)」に合意しています。

 

水素エンジンによるCN貢献の具体策

2021年11月13日、スーパー耐久レースの最終戦が開催中の岡山国際サーキットにおいて、カワサキ、スバル、トヨタ、マツダ、ヤマハ5社によるカーボンニュートラルに向けた新たな協業を発表する記者会見が行われました。

その中でカワサキとヤマハは、二輪車への搭載を視野に水素エンジンの共同研究について検討を開始したこと、そして今後その後、ホンダとスズキも加わり、国内バイクメーカー4社で二輪車における内燃機関を活用したカーボンニュートラル実現への可能性を探っていくことが発表された。通勤通学といった日常の足として使われることの多い125ccクラス以下のバイクでは、先のとおり電動バイク普及の可能性を模索する一方、250ccクラス以上のバイクでは、ツーリング使用などによる航続可能距離やパワーといった趣向性が求められるため、従来のガソリンエンジン(内燃機関)と近しい使い方のできる水素エンジンの採用を想定しています。

 

2021年は世界がCNに向けて大きく動いた年だった

昨年10月に、イギリスのグラスゴーで行われた「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)」において、地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」で合意された、産業革命前からの気温上昇を2.0℃に抑える目標から前進し、1.5℃を重視してCO₂排出量低減に向けた取り組みを進めることが合意されました。

これまでは6年前のパリCOP21で合意された、気温上昇幅を2℃未満が目標とされたのですが、その後、気温が2℃上昇すると、地球環境に多大な影響を及ぼすことは避けられないという認識のもと、1.5℃上昇までに抑える声が高まったためです。

そのため、2050年までに世界の二酸化炭素排出量を実質ゼロ(2020年比では約45%減)とする気運が高まりました。こうした潮流のなか開催された国際会議がCOP26だったというわけです。

※パリ協定の地球温暖化の気温上昇に関する条項(第2条第1項(a))
「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力が気候変動のリスクと影響を著しく減少させると認識すること。」

 

地球規模で温暖化が進むのも事実

「世界の年平均気温偏差の経年変化(1891~2021年:速報値)-国土交通省 気象庁」

国土交通省・気象庁によると、世界の気温は確実に上昇し続けています。温暖化がもたらす影響は多岐に渡り、海面上昇、異常気象、生態系への影響と様々ありますが、日本で一番身近に感じる変化といえば、異常気象と呼ばれる現象ではないでしょうか。

40℃を超える猛暑日の常態化や、熱帯雨林気候地域のようなゲリラ豪雨、台風の大型化、生態系の変化などなど。

 

日本は世界6位のCO₂排出国

参考:地球温暖化対策の推進に関する制度検討会 第1回「地球温暖化対策を巡る最近の動向について」- 環境省

2019年に環境省が作成した、2018年における世界のCO₂排出量の中で、日本は6番目に多い国となっています。しかし、上記の中国・米国・EUにおいても、日本から輸出または現地生産された日本ブランドの運輸機器(クルマやバイクなど)が多く利用されていることを考えれば、日本も世界的なCNの潮流に合わせる責務があると言えます。

 

CO₂排出17%を占めるのがクルマ/バイクなどの運輸部門

国内においては、CO₂排出量の17%を占めるのがクルマ、トラック、バスやバイクといった運輸部門です。

 

参考:日本の温室効果ガス排出量データ(1990~2020年度)速報値 – 国立環境研究所

従って、世界の動きに合わせ、日本においても自動車産業は輸送機器(クルマやバイクなど)の CO₂排出量を減らし、CNへの貢献をしようというのが今の流れなのです。

バイクが運輸部門におけるCO₂年間総排出量に対して占める割合は0.3%(2019年)と少ないのですが、バイク業界もCN達成に向け、取り組みを進めています。

 

長きにわたって世界のバイク産業をリードし続けてきた日本のバイクメーカーが、今こそ一丸となって大きな変革期に向けた数々の課題をクリアし、CNに貢献してくれることを期待しましょう!

国土交通省 気象庁「世界の年平均気温偏差の経年変化(1891~2021年:速報値)」

https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/temp/an_wld.html

国土交通省 気象庁「人為起源の温室効果ガスの総排出量に占めるガスの種類別の割合」

https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/chishiki_ondanka/p04.html

環境省 地球温暖化対策の推進に関する制度検討会 第1回「地球温暖化対策を巡る最近の動向について」

https://www.env.go.jp/earth/07_【参考資料2】地球温暖化対策を巡る最近の動向について.pdf

国立環境研究所「日本の温室効果ガス排出量データ(1990~2020年度)速報値」

https://www.nies.go.jp/gio/archive/ghgdata/index.html

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