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2023新春インタビュー!2023年国内バイク市場の展望を語る【自工会二輪車委員会日髙委員長】

一般社団法人 日本自動車工業会(以下、自工会)の資料「日本の自動車工業2022年版」によると、2021年の国内二輪車販売台数は前年(2020年)に対し13.7%増の41万6,000台、2015年以降実に6年ぶりの40万台超えと勢いづいている。さらに、国内二輪車メーカー4社の2022年度決算短信を見ても、各社とも売上高は順調に右肩上がりであることから、まさに国内二輪車市場は活況と言える。

市場規模拡大に比例して声が高まるバイク駐車場問題や電動モビリティとの交通共存、電動化や代替燃料などのカーボンニュートラル問題などを控え、この勢いは2023年以降も続くのか。

そこで今回は年初企画として、自工会の副会長 であり、 国内二輪車メーカー4社によって構成されている二輪車委員会の委員長を務める日髙祥博氏[ヤマハ発動機代表取締役社長](以下、日髙委員長)に、2023年の業界活動における展望と、さらなる国内二輪車市場の活性化に向けた取り組みについて抱負を伺った。

 

MOTOINFO編集部(以下、編):二輪車市場を振り返り2022年はどんな一年でしたか?

日髙委員長:コロナ禍における予測不可能な事態が様々な場面に波及した一年でした。しかしながらここ数年は、バイクを活用した遊びがアウトドアにおけるソロレジャーとして脚光を浴びたこともあり、徐々に若年層を含む利用者が増えてきています。
製造・輸送の諸問題がなければ、もっと多くのライダーが増えていたであろうことを考えると少しばかり悔しさも残りますが、新規免許取得者数や新車販売台数の増加により二輪車業界としては良い年だったのではないでしょうか。

 

編:元気を取り戻しつつある二輪車市場についてどう捉えていますか?

日髙委員長:コロナ禍における移動制限や感染リスクに配慮した移動手段としてバイクを活用いただいたのもありましたが、一方で最近の若年層はいわゆる“コスパ”(コストパフォーマンス=費用対効果)に加えて、“タイパ”(タイムパフォーマンス=時間対効果)を重視するメリハリ消費も増えています。興味のあるものやワクワクするものにはお金や時間を惜しまないものの、そうでないものには使わないとメリハリをつけています。コロナ禍において密を避けて楽しめることとして、アウトドアやレジャーに視点がシフトしたなかにバイクがマッチしたではないかと思います。
一方で、今年こそ勝負の年になるのではないでしょうか。エンデミックになり行動制限がなくなりつつあります。これまでの遊び方も復活してきました。こうした環境で、せっかく活性化し始めた二輪車業界を維持できるかどうか、昨年入ってきてくれた若者を繋ぎ止めることができるか、今年はそれが試される年になるのではないでしょうか。

 

編:現在の活況を継続するためにはどのようにしたらよいでしょうか?

日髙委員長:今までユーザーの余暇時間を室内で楽しめるスマホアプリやゲームなどといった室内で楽しむバーチャルな世界に相当な時間を取られていました。GPSによる位置情報やMR技術を活用してモンスターを集めるスマホゲームが一時期大きなブームとなりましたが、ゲームが外でも楽しめる拡張性や、SNSによる自己発信の楽しさにアウトドアレジャーの潮流と相まって、バイクにも同様の楽しさを見出してくれたのではないでしょうか。
ツーリングやグルメ、温泉といった従来の楽しみ方に加え、キャンプや釣り、写真撮影、道の駅・遺跡・御朱印巡りなどといった様々な趣味と掛け合わせて多様な楽しみ方をされています。さらに、SNSでもそうしたバイクの楽しみ方が盛んに情報発信されていたように思います。
現在の活況を継続・発展させるためには、SNSや動画などといったデジタルの世界のみならず、コロナ禍で途切れてしまいましたが再びライダーとのリアルな接点を増やし、ライダー同士の交流やSNS投稿の機会を増やしていくのもひとつの考えではないでしょうか。

 

将来ビジョンは安全で楽しい健全なバイク文化を世に根付かせること

自工会 二輪車委員会 委員長 日髙祥博氏(ヤマハ発動機 代表取締役社長)

日髙委員長:国内旅行も制限がなくなり、二輪車業界もリアルなイベントが復活した年でした。コロナ禍の鬱積もあったかもしれませんが、どのリアルイベントも多くのライダーが訪れていたと聞いています。
そうしたリアルイベントを開催し、多くの方に来場していただいて楽しめるコンテンツを用意し、楽しんでいただいた方がSNS発信して新しい仲間が増えていく。こうした好循環が確立していってくれたらと思います。
ライダー同士やバイクに興味のある方との接点を増やしていきながら、事故のない安全な乗り場所を提供していくことで、安全意識が高く楽しく乗れる仲間が増えていったら良いと思います。

 

編:MaaS(Mobility as a service)や自動運転などによって交通サービスが変わっていくなかでバイクの立ち位置をどのように捉えていますか?

日髙委員長:まず、大きな流れとしてクルマがそうであるように、いわゆる“所有から利用”への流れがあるでしょう。利用するときだけにしか費用がかからないことも一因となって、クルマはレンタルやシェアリングなどの利用が増えました。
バイクの場合は、自動運転に不向きな特性やメカニズムが外に出ていることから屋外保管によるシェアリング利用などには、解決すべき課題が多く残っていますが、レンタルやリース利用をサブスクリプションで提供する可能性はあるのではないでしょうか。
また、進化する交通環境のなかで最も危惧するポイントは、自動運転や情報通信といった先端技術の進化にバイクが置いていかれないようにすることです。いわゆるV2X[=Vehicle to X](クルマと何か[歩行者、インフラ、ネットワークなど]との接続や相互連携を総称する技術)の世界に入っていくためには、バイク自体がネットワークの中に入ることが必要です。バイクだけがその環境に遅れてしまうと、バイク事故だけが増加してしまう事態にもなりかねません。一般的に多いとされる出会い頭での事故を考えた場合も、クルマとバイクの双方で認識することによって事故軽減が望めるのではないでしょうか。

 

編: DX(デジタル変革)については、二輪車業界はいかに発展していくべきでしょうか?

日髙委員長:前述にポイントとして挙げましたが、まずはバイク自体がネットワークと接続されることが必要不可欠です。様々な情報を集積し、ライダーに有益となる情報をディープラーニング(深層学習)させたうえで、ライダーに対して情報提供することが第二ステージとなるでしょう。現在増えつつある若年層ライダーを視野に、バイクの安全性について乗りながら意識向上していけるようなエンターテイメント性の高いモノが考えられないでしょうか。
以前、レンタカーに装着されているカー・ナビゲーションでは急制動や速度超過をすると警告メッセージが出されるようなシステムがありましたが、バイクの場合には瞬時の判断を要するので、危険や安全といった運転技術の評価を瞬時にかつ視覚的に伝える技術など、楽しみながら安全運転技術を身につけるための技術があっても良いと思います。そうした新たな価値創造をしてこそ、DXと言えるのではないでしょうか。

 

編:ご自身のバイクライフについて教えてください。

日髙委員長:私とバイクの付き合い方は、土日の早朝に出かける目覚めのひと走りです。交通量の少ない早朝にいつも決まったルートを走るのですが、ひとりで黙々とバイクを走らせ、バイクの操作以外のことは一切考えず操舵に集中し、ブレーキングやスロットル開閉、コーナーの立ち上がりなど全て思い通りに走行できたときに、大きなリフレッシュ感を味わうことができます。

バイクの停車ひとつとっても、停止線にきっちりと制動させ、足をスッと出して綺麗に停止できただけでも、自分にとっては“うまくいった”といった気持ちになれるのです。一時間弱の走行ですが、日々のことを一切忘れライディングに集中し、無事に帰宅できたときに得られる喜びが明日への活力に繋がっています。

 

編:今後MOTOINFOに何を期待しますか?

日髙委員長:もちろん様々なバイクに関するトピックスを情報発信することは大切ですが、特に留意したいのは、あくまでもライダー目線でどういったニーズがあるのか、あるいはこれからバイクに乗ろうと考えているライダーに対してもどういったアピールをすべきか、という点をもっともっと強化して発信されることを願います。
自工会として取り上げるべき事柄も選択しながら、我々の取り組みやコミットメントを発信し続けていく媒体になっていけばと思います。
二輪車業界は過去に紆余曲折を踏んできましたが、前回のメディアミーティング※でもお話したように、バイクが個々のライフスタイルにおける道具(ギア)として根付いてくれれば、先にお話したような日本における二輪車文化が定着していくのではないでしょうか。

※前回(第三回)のメディアミーティングとは…自工会二輪車委員会が報道関係者を招き開催した意見交換会のこと。メディアミーティングの模様はJAMA BLOGに掲載されているほか、第三回メディアミーティングで発表された「ライフスタイルギアブーム」については、MOTOINFOの過去記事で詳しく紹介しています。

【第12世代】ライフスタイルギアブーム到来!なぜ今バイクが若者や女性に人気なのか?

 

第3回「二輪車委員会メディアミーティング」を実施

 

編:最後に、2023年の抱負を色紙にお願いします。

日髙委員長:「進展」とは、勢いが進んでその力が広がること。

今までパンデミックによって抑制されていたものが今年は転機を迎えることになるでしょう。その時に、勢いを持って進め拡大させていく。そうした業界の取り組みに対するチャレンジという思いを込めて「進展」とします。

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