
お帰りなさい!Hondaモーターサイクルホームカミング熊本2025
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ホンダのバイクが生み出される本田技研工業株式会社(以下、ホンダ)熊本製作所に全国のバイク愛好家が集う、年に一度の祭典「Hondaモーターサイクルホームカミング熊本2025」(以下、ホームカミング熊本)が、2025年10月5日(日)に開催されました。会場には2,299台のバイクと4,779人の来場者が集まり、会場は熱気と笑顔に包まれました。愛車の“ふるさと”を訪ね、Hondaファンにはたまらないコンテンツの数々を満喫できる。そんな特別な1日となりました。
また、熊本製作所のある熊本県大津町では来年2026年、バイクの未来を考える「BIKE LOVE FORUM バイクラブフォーラム」(以下、BLF)の開催が決定しており、さらなるバイク熱が高まる地でもあります。イベントの様子とともに、大津町のバイク愛にあふれた声をお届けします。
メイン会場は新設された「Honda KUMAMOTO WELCOME PARK」

前回2024年、台風接近に伴う雷注意報発令のために急遽中止となった「ホームカミング熊本」は2年ぶりの開催となりました。イベント当日は午前8時頃まで雨が降っていたものの、来場者が訪れる時間帯には徐々に天候が回復し、2,000台を超えるバイクで駐車場は埋め尽くされました。
今回の会場は、今年3月に熊本製作所の正門南側にオープンした施設「Honda KUMAMOTO WELCOME PARK」。従業員の福利厚生のために建設された施設ですが、なかにはホンダがこれまでチャレンジして生み出した二輪車や汎用プロダクトが展示されており、一般向けにも開放されています。「ホームカミング熊本」のメインステージはこの施設の正面に設けられました。
伝説のライダー フレディ・スペンサー氏が登場

「ホームカミング熊本」でもっとも注目を集めたコンテンツは、話題の大型ロードスポーツモデル「CB1000F」に関する展示・催事と、1980〜90年代にかけてロードレース世界選手権(以下、WGP)で活躍した伝説のライダー、フレディ・スペンサー氏(以下、スペンサー氏)の来日です。1982年からホンダ・ワークスの選手としてWGPに参戦したスペンサー氏は、1985年にGP500クラスとGP250クラスでダブルチャンピオンに輝くという快挙を達成し、ホンダの歴史にその名を刻みました。
スペンサー氏が「ホームカミング熊本」に登場することから、モビリティリゾートもてぎ(栃木県茂木町)の「ホンダコレクションホール」に展示されていたダブルチャンピオン達成時のレーサー「NSR500」と「RS250RW」が、はるばる熊本まで運ばれてきました。


「ホームカミング熊本」前日、熊本製作所に隣接するサーキット「HSR九州」にてCB1000Fに試乗したスペンサー氏。メインステージでのトークショーでは、軽快な語り口でCB1000Fの印象を話してくれました。
「ここに来ている人のなかで、私が一番遠くから来たと思います。アメリカのテキサス州ですからね。
CB1000Fについては、1980年代のレトロな雰囲気とモダンなテクノロジーが融合した素晴らしいバイクだと感じました。『マシンとの一体感』『アジリティ(敏捷性)』『スタビリティ(安定性)』の3つのバランスが優秀で、しかもパワーがすごい。アメリカでも乗りたいよ!」

この日、1982年の「デイトナ100マイルレース※」で優勝した伝説のマシン「CB750F デイトナレーサー」のエンジン始動が行われました。同大会での優勝後はライダーであるスペンサー氏が所有していましたが、ホンダコレクションホールでレストアし、長年展示していました。今回の「ホームカミング熊本」のために、初めてホールから持ち出されました。
※デイトナ100マイルレースとは、アメリカ・フロリダ州にあるサーキット「デイトナ・インターナショナル・スピードウェイ」で開催される、レース距離が約160kmに及ぶロードレース大会のこと

エンジンの始動とともに、会場内にはCB750F デイトナレーサーの凄まじい音が響き渡りました。その様子を懐かしみながら、スペンサー氏は当時の思い出を語ってくれました。
「そうそう、この荒々しい吹け上がりは最高だね。まるで1960~70年代のマッスルカーみたいだ。
このレーサーのストロングポイントは、何と言ってもエンジン。9,000~10,000rpm※1にピークパワーがあって、約150PS※2ぐらい出ている。それをストリートバイクのシャシーに載せているから、エンジンが大暴れしているようだった。フロントホイールが16インチだから、動きもクイックでね。まるで虎を手懐けているようで、とにかく自分を信じてレースに挑んだんだよ。
このCB750F デイトナレーサーがシグネチャー(象徴)となってホンダファンに長く愛され、CB1000Fにもデザインが採用されたのは嬉しいね」
※1:rpmとは、1分間でのエンジンのクランクシャフトの回転数を指す単位
※2:PSとは、ドイツ語のPferdestärkeの略で、馬力を指す単位

開発者とアンバサダーがCB1000Fへの熱き想いを語る

メインステージでは、CB1000Fの開発者3名と、CB1000F 公式アンバサダーを務めるレーシングライダー / モータージャーナリストの丸山 浩氏によるトークショーが行われ、ここにも多くの人が詰めかけました。ニューモデルに対する期待値の高さがひしひしと伝わってきます。
開発を主導した本田技研工業 二輪・パワープロダクツ事業本部 二輪事業統括部 大型FUNカテゴリーGMの坂本 順一氏は、CB1000Fのコンセプトについて語ってくれました。
「中型バイクからステップアップしてきたお客様がすぐに乗りこなせるよう、車重を215kg以下にするという目標にはこだわりました。さらに、足つき性の向上やクラッチレバーの軽さも追求しました。それでいて“リッターバイクに乗っているんだぞ”というボリューム感も追求しています」

かつてCBでサーキットを走った経験を持つ丸山氏は、当時の感触とCB1000Fを乗ってみての感想を述べてくれました。
「『テイスト・オブ・フリーランス』(現『テイスト・オブ・ツクバ』)などのイベントレースにBIG-1(「CB1000 SUPER FOUR」の呼称)で出場していた際の印象として、歴代CBは、レーサーに仕立てるまでの苦労がはるかに少ないですね。バイクとしての軸足はストリートですが、サーキットで走らせる際にかける手は少しだけでいいんです。でも、攻めれば攻めるほどマシンと一体感が出てきて、とにかく走るのが楽しいバイクなんです」

CB1000F製作過程の実演
熊本製作所に在籍する大型機種の開発部門によるCB1000Fのスケッチ製作過程やクレイモデリングのデモンストレーションも行われました。滅多に目にすることのない貴重な機会に、来場者も真剣な眼差しでその模様を眺めていました。


ファン垂涎!熊本製作所の工場見学
このイベントにおけるもっとも“ホームカミング”らしい体験プログラムと言えば、ホンダ熊本製作所の工場見学でしょう。少しずつ形になっていく二輪車を間近に見られるほか、ホンダ従業員の解説とともに見学できる展示もあり、事前予約の申込枠がすぐに埋まってしまうほどの人気ぶり。当日受付にはキャンセルを待つ長蛇の列ができていました。

見どころが尽きないコンテンツが満載!
電動バイク体験試乗会

「電動バイク体験試乗会」では、Hondaの市販EV車両「CUV e:」と「EM1 e:」が用意されました。実際に試乗した方からは「運転しやすい」「すごく静かで驚いた」という声が聞かれました。
GOLD WING 50周年記念 歴代車両展示

1975年のデビューから数えて50周年を迎えたゴールドウイング。本イベントでは「Honda KUMAMOTO WELCOME PARK」内に初代ゴールドウイングをはじめ、歴代モデルが集結したコーナーが設けられました。
二輪車世界累計生産5億台記念展示

1949年にホンダが産んだ本格的な二輪車第一号「ドリームD型」の量産開始から76年。2025年5月にはホンダの二輪車生産台数が世界累計5億台を突破し、インド・グジャラート州の第4工場にて記念式典が開催されました。「ホームカミング熊本」では、5億台に至るまでのホンダが生産した代表的なモデルの展示や、記念ムービーの上映などが行われました。
愛車のための「Hondaサービス!」

来場者の関心が高かったのが、愛車と末長く過ごすためのサービスを紹介する「Hondaサービス!」と名付けられたコーナーです。メンテナンスに役立つ情報や、世界各国で活躍するサービステクニシャン(整備士)に関する活動紹介、最新のオーナーズマニュアルをはじめとするサービス資料の展示などが行われました。
大津町観光協会もブース出展

開催地である大津町の「肥後おおづ観光協会」ブースでは、大津町と熊本製作所のアイディアコンテストで入賞した「からいもCub」が展示され、来場者の目を引いていました。大津町の特産品「からいも」(さつまいも)を特別に設計されたサイレンサー部分に入れて30分ほど走ると、廃熱によって焼き芋ができるというユニークな発想から生まれた一台です。
来年2026年にはBLFが開催されるなど、大津町のバイク熱はますます高まっています。熊本製作所を訪れる際は、是非大津町の観光も楽しみましょう!
はるばる熊本まで!来場者の感想

2,299台ものバイクが集まった「ホームカミング熊本」。車種も多岐に渡り、駐車場の光景が展示会場のようでした。そこで来場者に、イベントの感想を伺いました。

「『ホームカミング熊本』への参加は初めてで、同じCB1000Rに乗っている仲間と計10名で来ました。熊本製作所に来られて感激です。
SC60(CB1000Rの初代型式)の頃からCB1000Rに興味があって、2代目となる型式SC80からヘッドライトが丸目1灯と知って、すぐにこのリミテッドエディションを注文しました。街乗りからロングツーリングまで、とにかくオールマイティに使っています。トップケースとパニアケースも付けて、あらゆるシーンで活躍してくれています」

「自宅から近いこともあって、『ホームカミング熊本』には毎回参加しています。以前はスーパースポーツに乗っていましたが、今のCB1300 SUPER BOL D’ORに乗り換えてからは妻も喜んでタンデムしてくれるようになりました。
バイクに乗り始めた若い頃からフレディ・スペンサー氏の大ファンで、彼のレプリカヘルメットをずっと愛用しています。今回はスペンサー氏本人に直接会えただけでなく、夫婦揃ってヘルメットにサインをもらえて、大満足な1日でした」
開催地・大津町の金田町長より

金田 英樹氏
熊本製作所がある大津町 町長の金田氏に、これからの大津町の取り組みやBLF開催に向けた意気込みをお聞きしました。
「大津町にホンダが進出してから、もう49年になります。当時は町の人口がピークの約22,000人から約18,000人まで減少していたのですが、熊本製作所の誘致が決まってからはV字回復して現在約36,500人になりました。地元のお祭りへのご協力や、大津町を本拠地とする社会人野球チーム『Honda熊本硬式野球部』との深い関係など、大津町は文字どおりホンダとともに成長してきた町なのです。
大津町を訪れるライダーの数は年々増えていて、皆さんのマナーの良さから町の人も良い印象をお持ちです。ツーリングの聖地・阿蘇へのルートと繋がっていることからもバイクとは縁深く、町民にもホンダ関係者が多いので、バイクが町を走っているのは日常的な風景です。
来年のBLF開催に向けて、BLF実行委員会や熊本県庁、ホンダとも連携しながら『盛り上げていこう』と気持ちを高めています。開催日当日だけでなく、プレイベントや関連イベント等も展開しながら、期間的にも内容的にも、より充実したBLFにしていきたいと考えています」
熊本製作所 所長からライダーへ

熊本製作所 所長
島添 正規氏
「ホームカミング熊本」の開催地である熊本製作所 所長の島添氏から、イベントを訪れたライダーにメッセージをいただきました。
「来年50年目を迎える熊本製作所と大津町のお付き合いは年月の長さ以上に深いもので、地域とともに歩んできた50年です。“地域に開かれた場所を作りたい”という思いから、年に数回イベントやお祭りを開催していて、毎年9月末に催すイベント『Honda秋まつり』(2025年は11月22日に開催)では、毎回1万人以上の方に来場いただいています。さまざまな形で大津町との交流を深めていきたいと考えています。
『ホームカミング熊本』を始めようと思ったのは、私がアメリカの『American Honda』に勤務していたときに体験した“ホームカミング文化”を熊本で再現したいと思ったからです。いつかはアメリカの街中で行われるパレードランを、この大津町とともに実現したいですね。
『Honda KUMAMOTO WELCOME PARK』は常設でオープンしています。今年は施設内で『2025 FIM世界耐久選手権 “コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会』(以下、鈴鹿8耐)のパブリックビューイングを行い、従業員をはじめお越しくださった大津町の方々に大画面で鈴鹿8耐の迫力を楽しんでいただきました。ツーリング途中で立ち寄っていただけるのはもちろん、お子さま連れでも楽しめるコンテンツがありますので、是非遊びに来てください」
仲間と過ごす故郷でのひととき

ライダーを暖かく迎え入れてくれる熊本製作所と大津町の想いを至るところで感じた「ホームカミング熊本」では、来場者の笑顔が常に絶えませんでした。やまなみハイウェイやミルクロードなど、ライダーの聖地・阿蘇との深いつながりが、町そのものの優しい雰囲気を生み出しているのでしょう。
来場していた関東圏ナンバーの方に話を聞くと、長距離フェリーを利用していたり、陸路で四国を横断してから九州に上陸していたりと、誰もが熊本までの道のりを楽しみながら来られていました。東日本側から熊本まではかなりの距離がありますが、故郷への凱旋と阿蘇周辺のツーリングを合わせて、来年の「ホームカミング熊本」に参加してみてください。








