ライダーなら誰しも一度は走ってみたい“日本の端”。最東端・最西端・最南端・最北端、通称「本土四極」は、ツーリングの究極の目的地であり、地の果てへ走る本能をかき立てます。そこには雄大な景色と達成感、そして到達の証となる特別な証明書が待っています。

本記事では4カ所各地がそれぞれどこに位置するのか、そこまでどんな道筋になるのか、到達するまでにどのような点に気を付けるべきか、憧れの地を目指すライダーに役立つ情報をまとめました。

日本本土四極とは

日本本土四極とは、「宗谷(そうや)岬」(北海道稚内市)、「納沙布(のさっぷ)岬」(北海道根室市)、「神崎鼻(こうざきばな)公園」(長崎県佐世保市)、「佐多(さた)岬」(鹿児島県南大隅町)の4カ所を、沖縄と離島を除く国内の東西南北の最端と定め、到達者への「日本本土四極 最○端 出発・訪問・到達証明書」や「日本本土四極踏破証明書」(出発・訪問・到達証明書の裏面)の発行、各自治体の首長による会合など自治体間での連携が進められています。

各地の交付場所で発行される「日本本土四極踏破証明書」4枚を集めると、組み合わさって一枚の証明書になります。日本の端々に位置する場所まで赴かねばならないので難易度は非常に高いですが、ツーリングを楽しむライダーなら集めてみたいと思う証明書と言えます。

日本本土四極 スポット紹介

最北端：宗谷岬(北海道稚内市)

大きく突き出た北海道の最北端に位置する「宗谷岬」には、「日本最北端の地」と刻まれた碑を終着点として、大海原が広がる雄大な景色が楽しめる場所です。サハリンを探索した江戸時代の探険家・間宮林蔵の立像がそばに立っており、旅を愛するライダーなら一度は訪れてみたい地として有名です。実際、多くのライダーが訪れる夏には何台ものバイクが宗谷岬に停まっています。記念写真とともに、証明書も手にしたいですね。

陸路で本州から北海道へは渡れないため、「フェリーを利用」「航空便や陸送を利用」「レンタルバイクを利用」のいずれかの方法を使います。フェリー利用だと、最寄りの港から出ている下記の航路から選択します。

飛行機でバイクを北海道まで運ぶ場合は、全日本空輸株式会社(ANA)のANA Cargoの貨物輸送機を利用する「BASスカイバイクツーリング」になります。関東圏のデポ(東京大井、横浜、藤沢、戸田、狭山、柏)で預けたバイクが約1週間で新千歳空港に到着するので、空港で受け取って一路宗谷岬を目指します。

レンタルバイク利用だと、札幌や函館、旭川にレンタルバイクショップがあるので、公共交通機関を利用して赴きましょう。

北海道に上陸したら、一般道または道央自動車道を利用して宗谷岬を目指します。札幌から宗谷岬まで一般道で向かうと約350km、高速道路利用だと士別剣淵(しべつけんぶち)ICまで行けば宗谷岬まであと約200kmの距離まで近づけます。せっかく北海道まで来て宗谷岬を目指すので、北海道の日本海側を沿うように走る名道「オロロンライン」を是非走ってみてください。地平線の向こうまで伸びる一本道は北海道の雄大さを感じさせてくれます。晴れた日には、日本海の向こうに利尻富士を見ることもできるでしょう。宗谷岬を目指すなら、北海道の道を目いっぱい楽しんでください。

最北端証明書を受け取れるもっとも近い場所は、宗谷岬前を走る国道238号線を挟んだ宗谷岬展望台内にある「Base宗谷」です。ただしこちらは夏季開設期間中のみの交付となります。次に近いのが「稚内(わっかない)市役所 宗谷支所」で、こちらは平日のみの営業になります。土日祝に訪れられる方は、稚内市内にある「稚内市役所」か「稚内市観光案内所」をご利用ください。

最東端：納沙布岬(北海道根室市)

北海道には最北端の地・宗谷岬とともに最東端の地もあります。それが根室市の「納沙布岬」です。世界自然遺産・知床(しれとこ)半島の下に位置する、さらに東へと突き出た根室半島の突端に納沙布岬はあります。北海道内最古と言われる洋式の灯台が目印で、晴れた日には北方領土のひとつ国後島の姿を見ることができます。朝日が昇るさまと夕日が沈むさまの両方が見られるので、朝夕の表情の違いも堪能してみてください。

本州から北海道へ上陸する方法は宗谷岬の項目でも解説したとおりで、小樽・札幌・苫小牧のいずれから向かうと、一般道では約460〜530kmの距離、移動時間も8時間以上になります。北海道横断自動車道 / 道東自動車道を利用すれば、2時間ほど短縮できます。

納沙布岬から根室市内に戻ると、最東端証明書が受け取れる根室市役所と根室市観光協会があります。どちらも根室駅のすぐ近くで、根室市役所は平日のみの営業なので、土日祝に訪れられた人は根室市観光協会へ向かいましょう。

1週間近い日数での北海道ツーリングとして向かわれるなら、紋別市や網走市、知床を経由するルートを利用して宗谷岬と合わせて訪れられると良いでしょう。道中には摩周湖や阿寒湖、屈斜路(くっしゃろ)湖といった観光スポットが、さらに開陽台のすぐそばにはミルクロードと呼ばれる名道「北19号」があります。二輪車専門誌の北海道特集号で表紙に使われることが多いスポットです、納沙布岬と合わせて目指してみてください。

最西端：神崎鼻公園(長崎県佐世保市)

神崎鼻は1989(平成元)年、国土交通省の特別機関である国土地理院によって日本本土最西端の地に認定されました。長崎県北西部の佐世保市九十九島から平戸島、そして五島列島にかけて広がる大小400余りの島々からなる多島海景観が特徴の国立公園「西海国立公園」の区域に含まれるスポットのひとつで、神崎鼻の展望広場からはどこまでも広がる大海原と平戸島、五島列島を眺めることができます。

神崎鼻公園へ向かう本州からのルートは、「フェリー利用」と「陸路」の2通りがあります。フェリーを利用すると、本州からは関東(東京、横須賀)か関西(大阪、神戸)から新門司(しんもじ)、別府、志布志(しぶし)、宮崎へと渡る航路になります。長崎に近い港は新門司です。

陸路では、山口県と福岡県を結ぶ高速道路「関門自動車道」または関門トンネルを利用する国道2号線で渡ります。新門司を起点とするルートとしては、関門自動車道から九州自動車道、長崎自動車道、武雄佐世保道路と走り続け、終点となる佐々インターで高速道路を降ります。一般道を20分ほど走ると、神崎鼻公園に到着します。高速道路だけだと、約2時間30分を要します。新門司から一般道だけで神崎鼻公園を目指すと、移動時間は4時間30分以上に及びます。

最西端証明書が受け取れる最寄りの交付場所は、鮮魚店の「おさかな広場」になりますが、こちらは火曜・水曜が定休日で、不定休の日もあります。次いで近い小佐々(こさざ)支所または小佐々地区コミュニティセンターなら、平日の日中はもちろん、土日祝でも21時まで対応してくれるので、是非利用しましょう。

新門司から神崎鼻公園までの道中、いろいろと立ち寄りながらのんびり目指すのも楽しいですし、最西端証明書を手にしたらそのまま長崎市を目指して南下し、九州を反時計回りで巡っていくのも良いでしょう。南島原市の口之津(くちのつ)港まで行くと、バイクと一緒に約30分で鬼池港(熊本県天草市)へと渡れる「島鉄フェリー」があります。そして天草諸島へと渡った先には、バイクで走れば爽快なこと間違いなしの「天草五橋」(天草パールライン)へ向かえます。観光スポットも各所にあるので、スケールの大きな九州ツーリングを堪能してみてください。

最南端：佐多岬(鹿児島県南大隅町)

桜島、霧島神宮、開聞岳(かいもんだけ)などの鹿児島の名所を指定地域とする自然公園「霧島錦江湾(きりしまきんこうわん)国立公園」に含まれる日本本土最南端の地「佐多岬」。晴れた日には展望台から広大な太平洋や鹿児島湾、開聞岳、屋久島、種子島を一望できます。

本州から九州へ渡るフェリーは前項でもご紹介したとおりで、佐多岬に近い港は志布志港(鹿児島)になります。次に近いのは宮崎港で、いずれのフェリーも関西(大阪南港、神戸)からの出航です。関東圏から出ているフェリーは新門司など九州北部が上陸地になるため、東京起点とすると「東京から新門司までフェリーで渡り、陸路で鹿児島を目指す」か、「大阪または神戸まで自走し、志布志や宮崎着のフェリーを利用する」かのいずれかになります。

志布志から佐多岬へは一般道で約2時間かかります。高速道路や有料道路はないので、初めての道に十分注意を払いながら目的地を目指しましょう。

佐多岬から鹿児島市へ向かおうとすると、鹿児島湾を大きく迂回せねばならないかと思われますが、バイクで約45分のところにある根占港から指宿市の山川港へと渡れる「フェリーなんきゅう」があるので、是非活用してみてください。

佐多岬のすぐ近くに、最南端証明書が受け取れる「佐多岬観光案内所」があります。土日祝でも9時〜17時であれば入手できるので、ご利用ください。

目指せ日本本土四極踏破！

日本本土四極それぞれは、ただの地理的な端点ではなく、ライダーにとって特別な目的地であり、走り抜いた道の記憶そのものが価値となる場所です。実際に訪れれば各地で証明書を手にすることができ、それは旅の証であると同時に、一生忘れられない記念品となります。

もちろん四極をすべて巡るのは簡単なことではありません。しかし、長い距離と時間をかけて挑戦し、4枚一組の「日本本土四極踏破証明書」を完成させたとき、その達成感と充実感は何ものにも代えがたいでしょう。

次のロングツーリングの大きな目標に、日本本土四極を据えてみませんか。きっとあなたのライダー人生に、かけがえのない物語を刻んでくれるはずです。