fbpx

バイクに乗る夢を叶える!​​障がい者を支えるサイドスタンドプロジェクト

誰もがバイクに乗る楽しさを堪能できるよう、バイクに乗りたい気持ちを持つ障がい者を一般社団法人サイドスタンドプロジェクト(以下、SSP)が支援しています。障がい者の方それぞれに合わせた仕様のバイクを用意したり、走りやすい環境を整えることで夢を叶えようというSSPの活動範囲は全国に及びます。

今回、SSPが主催する「パラモトライダー体験走行会」の会場に赴きました。走行会の模様とともに、SSPの活動にかける想いをお届けします。

サイドスタンドプロジェクトとは

サイドスタンドプロジェクトは、元ロードレースライダーである青木治親(あおき・はるちか)さんが代表理事を務める一般社団法人で、事故などで車椅子、義手、義足になられた方でもバイクに乗れるようサポートし、楽しみを提供するための活動をしています。そして、パラリンピックのパラアスリートが多彩な種目で活躍しているように、バイクもひとつのスポーツとして楽しむ機会を増やすことを目的としています。

パラモトライダー体験走行会レポート

2024年3月12日、神奈川県平塚市にある「平塚競輪場(ABEMA湘南バンク)」にて、2024年初となる「Side Stand Project パラモトライダー体験走行会」が開催されました。当初はバスロータリーで行われる予定でしたが、あいにくの雨模様となった当日は雨がしのげる大テント下のステージスペースでの実施となりました。

※体験走行会開催にあたり、SSPでは毎回専属の理学療法士からアドバイスを受けて行っております。

障がい者のために設計されたバイクの説明会

走行会の実施に際しての説明会では、乗車する障がい者の足を固定できる特殊なブーツと固定方法の説明から始まりました。バイクには特別に取り付けられた補助輪があり、危険な転倒を防ぐ特別仕様になっています。

今回参加したパラモトライダーは4名の方。このほかに、走行会を支えるSSPのスタッフとボランティアのサポーター、SSPに参加しているライダーやその仲間と、大勢が参加する走行会となりました。

そして、いざ乗車。車いすからバイクに乗り換える際には、力を入れてはいけないところやサポートが必要な注意点を都度確認しながら実施されました。ヘルメットの着脱ひとつでも、人によっては身体への影響が出てしまうため、個々の状況を細かくヒアリングしてサポートが行われました。

バイクに乗るという夢が叶った参加者の喜びの声

SSPに5回以上参加しているT.Aさんは、今回が2回目となる実走行。脊椎損傷による障がいで体の一部が不自由なことから、補助輪付きのバイクに乗車されました。前回まで備わっていた後部の補助輪を外し、アウトリガー(転倒防止のための補助輪)のみでの走行を実現したのです。

「前回は補助輪がついたままでしたが、今回は(補助輪を)外して走ることができました。『やるぜ!!箱根ターンパイク』(SSP主催のパラモトライダー走行イベント)を目指します! 鈴鹿も!」

と喜びの声をあげ、拍手喝采を受けていました。

左上肢に麻痺が残るH.Kさんは、他界された奥様からSSPへの参加を止められていましたが、時間の経過とともに「気持ちに整理がついた」と、意を決して今回参加されました。

H.KさんのためにSSPが用意したバイクには、本来ブレーキレバーがある右グリップの手前にクラッチレバーを追加した“右手のみで操作できる”特別仕様のものでした。まさにH.Kさんのための設計で、戸惑う場面もありながらも時間とともに小気味よく操作できるようになり、無事に試乗しきりました。

「これは天国だ!やばいね!クラッチ操作も忘れて走っていました!」と、試乗を終えたH.Kさんは興奮を隠しきれずにいました。

視覚障がいを患う前は、サーフィンや乗り物に乗るのが好きだったというK.Iさん。スタッフに支えられながらの試乗でしたが、最後はスタッフの後押しなしにアウトリガー付バイクで走りきりました。

「27年ぶりなんですよ、夢が叶ったようで本当に嬉しい。まっすぐ走れているかわからないときがありましたが、周囲のスタッフから『右!』『左!』と方向を声がけてもらえてなんとか走りきれました」と喜びを隠せないK.Iさん。周囲から「本当は見えてるんじゃないの〜」という声に目を細められていました。

今回初参加というW.Tさんは、33年ぶりのバイク乗車だそうです。脊椎を損傷されているとは思えないほど無難に乗りこなしていらっしゃいましたが、ご本人にお伺いすると「思ったほどうまく乗れなかった」とのこと。

「昔の感覚でバランスを取ろうとしたのがよくなかったのかもしれません。今は下半身に力が入らないので、ハンドル操作だけでバランスを取るという乗り方はやはり難しいですね。でも、以前のようにバイクに乗ることを始めたというのに、不思議なことに新しいことを始めているような気持ちなんです。少しずつできることが増えてくれば、次回はもっとうまくいけると思います。いつの日か白バイの先導とともに箱根をバイクで走りたい!後ろから白バイが来るのは困りますけどね」

と、次回への期待に胸を膨らませていらっしゃいました。

SSPにかける青木治親代表の想い

「障がいを持つ人にもバイクに乗る楽しみを感じて欲しい」と語る青木代表(写真右側)

SSRを立ち上げた当初からの想いを、青木代表にお伺いしました。

「2018年に兄の琢磨(元ロードレースライダー。1998年のテスト走行中の事故で脊髄損傷による下半身不随に)のようなライダーがバイクに乗っている姿を見て、同じ境遇の人にまたバイクに乗ってもらうためにはどうしたらいいか、どのようなサポートをすればいいかと考え出したのが始まりです」

プロジェクト立ち上げ当初には、さまざまな意見が飛んできたそうです。

「健常者がバイクに乗るときでさえ『バイクは危ない』『転んだらどうする』という不安を抱く人がいるなかで、『障がいを持つ人がバイクに乗るなんて……』という声をよく耳にしました。

でも、正しくサポートすれば誰もがバイクに乗る楽しさを得られるんです。現在は各方面の協力に加え、ボランティアサポーターも約80名となり、今回の走行会でも4グループにわけられるほどの規模となりました。これからも一層の働きかけをしていきたいと思っています」

壁のない世界でともにバイクを楽しもう

青木代表が危惧しているのが、「障がい者に慣れていない健常者が勝手に壁のようなものを作ること」だそうです。実際今回の走行会では、参加者とボランティアサポーターそれぞれが自然にコミュニケーションをはかり、冗談を言い合いながら笑顔が絶えない温かい雰囲気が印象的でした。

参加者は新たなチャレンジの気持ちとともにバイクを楽しむ世界を切り開いていっています。「もっとバイクに乗りたい」という気持ちが、リハビリに励む原動力にもなっているそうです。今回のレポートがSSPの活動理解を深めるきっかけとなり、ともにバイクを楽しむ者同士としてサポートしていける世界になれば、そして安全に乗ることの大事さを改めて感じた1日でした。

サイドスタンドプロジェクト

https://ssp.ne.jp/

平塚市役所

https://www.city.hiratsuka.kanagawa.jp/

RECOMMEND

あなたにオススメ