警察官の「交通安全対策」という職責の意識を高める神奈川県警主催の催事をレポート
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2024年5月31日(金)、神奈川県警察学校にて神奈川県警の「二輪車交通事故防止強化月間」の催事が開催されました。
JAPAN RIDERSでもアンバサダーを務める梅本まどかさん(以下、梅本さん)が毎年交通安全大使を務めている催事で、「二輪車交通事故防止強化月間」である2024年6月1日から6月30日までの期間に職務に就かれる警察官が職責への意識をより高く持ち、士気高く取り締まりに従事することで、バイクに乗るすべての人に緊張感を与えるとともに、事故なく安全に暮らせる、より良い交通環境づくりを目指すための出発式となりました。
そして、この取り組みを広く情報発信することで県民の安全運転意識を高め、交通事故の抑止を目指すということを最優先に考えられた催事でした。
神奈川県警の二輪車交通事故防止強化月間
本催事が開催されたのは、「二輪車事故防止強化月間」の直前となる2024年5月31日のこと。場所は神奈川県警察学校と、一般の方が滅多に入ることがない場所です。
今年で3回目となる催事ですが、今年は様相が異なります。過去に開催された2回は一般ライダーも見学できる一般向けのイベントでしたが、今回は神奈川県警の警察官と警察学校生のみが参加する内部のイベントでした。その意図は、「警察官と、今後即戦力となっていく警察学校生全員の交通安全に対する意識向上」と「仕事に対する責任感の向上を達成するため」です。
本催事ではまず、梅本さんに交通安全大使と特別講師を委嘱する式典が行われました。その後、彼女は講堂に集合した約400名の警察学校生の前に立ち、二輪車の交通事故を防ぐための取り組みの重要性について講演を実施。そして、最後は中庭に集合した交通機動隊の白バイ隊を前に出発式の指揮を執りました。
この日は朝から生憎の天候だったのですが、催事が始まる頃には初夏の天候にも恵まれました。清々しい空気感の中にも、キリッとした緊張感を肌で感じる式典は、この学校に在籍するすべての学校生が見守るなかで進められ、参加された白バイ隊員の皆さんも、気が引き締まる想いで臨んでいました。交通安全大使として参加した梅本さんはライダー代表としての声を参加された全員にしっかり届けて、最後に広場に集結した白バイ隊の出発式が行われてすべての催事が終了。翌日からの公務や勉学に生かされることになったのです。
参加した女性白バイ隊員の声
女性の白バイ隊員で構成する「ホワイトエンジェルス」は、発足以来30年以上の歴史を刻んでいます。現在は4人のメンバーで、小林さんはそのリーダーを務めています。白バイ隊員歴は5年、日々公道に出てみなさんの交通安全を見守り、危険運転者を取り締まるという重要な職務を実行されています。この催事には毎回参加しており、今回の感想をお聞きしました。
「6月から始まる「二輪車交通事故防止強化月間」直前の開催には大きな意味があると思いました。毎年この季節は、バイクの事故が増える傾向にありますので、隊員全員の意識向上には大いに役立つと思いますね。しかも、警察学校は私達警察官の全員が通った場所ですから、現在そこに在籍する学生の前で出発式をするというのは、とても緊張して、身が引き締まる想いでした」
柔らかい笑顔が特徴の小林さんですが、安全に対する意識のお話となると口元が締まります。「気の緩みが事故を誘発する」ことも安全運転をする上で重要なポイントであると語られました。
「一番事故が多いのは、通勤時や買い物の途中などです。普通のルーティーンの中に危険が潜んでいるのです。アクシデントというのは交通事故だけに限らず良く似た傾向にありますので、皆さんには気をつけていただきたいと思います」
小柄な小林さんですが、実際にバイクを取り回しているさまは「さすがホワイトエンジェルスのリーダー」と唸らされるほど見事で、そんな彼女の姿に憧れを抱く学生も数多いことでしょう。メンバー入りするための敷居はかなり高いことと思いますが、だからこそ挑戦して欲しい職務だと感じました。
交通安全大使及び特別講師に任命された梅本まどかさん
今やさまざまなバイクイベントで安全運転啓発活動を行っている梅本さん、神奈川県警との連携は今回が三度目となりました。神奈川県警の交通安全大使に加えて特別講師としての職務も委嘱された梅本さんは、この催事で約400名の学生を前にしてスピーチをされました。
「アイドル時代、バイクに乗ることは禁止されていました。バイクという乗り物に危険が伴うのは誰もが知るところで、アイドルとしての活動の趣旨を考えれば当然のことですが、いざ卒業してライダーになってみると、危険であるがゆえに自分を律することが重要だと強く感じ、それが現在の活動に繋がっていると思います。
今回の催事は、大勢の学生さんと実際の職務に就かれている白バイ隊員の皆さんを前に出発式の指揮を執るという重要な役目でしたが、一般ライダーの代表として参加させていただきました」
約400名の学生を前に梅本さんが語ったのは、神奈川県の二輪車の交通事故は全国平均よりも多く、近年は中高年層のライダー、いわゆるリターンライダーの事故が多く発生していることと、日本全域に広がるバイク文化の多様化に伴う安全意識についてでした。
「以前のバイクブームと違って、今はバイクそのものの楽しみ方が多様化しており、安全意識の違いも生まれていると思います。ファッションも乗るバイクによって違うのは当然ですが、そこが盲点となって安全面が損なわれてはいけないと思うので、その点を踏まえた安全運転の重要性をお話させていただきました」
出発式の前では、公務に出る前の白バイ隊員の皆さんに
「まず、ご自身が安全運転を心がけることで、毎日きちんと我が家に笑顔で帰ってきて『おかえり』『ただいま』と家族を安心させるということを約束してください」
とスピーチしていたのが、とても印象的でした。
本催事の意図について神奈川県警に聞いた
職務に従事する警察官にも安全運転を心がけてもらう働きかけをする、そんな意外性のあるアイデアはどうやって生まれたのでしょうか。本催事の運営を担った神奈川県警の小坂直人 管理官にお話を伺いました。
「全国的な安全運転への意識向上はもちろん、バイクや車の安全性能アップなども含め、日本国内の事故件数や死亡者数は減少傾向にあります。しかし、ここ神奈川県は交通事故死者全体に占める二輪運転者の割合が全国平均に対して毎年2倍近くとなっているのです。
それは、昔から県内に多くの車好きやバイク好きがいらっしゃるという文化的背景もあると思いますが、特にバイクで楽しくツーリングできるスポットが県内に数多くあるということも挙げられます。
そしてこの6月は梅雨時期でもあることから二輪車の数は減少しますが、通勤等で使用する方もいますので注意が必要です。これまでは安全運転啓発のイベントというと、一般ライダーの皆さん向けという発想がまずありましたが、「二輪車交通事故防止強化月間」の職務に従事する警察官も安全運転に対する意識を高く持たねばならないと考え、さらに将来の警察官となる警察学校の学生にも勉学意欲の向上と目的意識を持ってもらおうと、ここ警察学校で催す運びとなったのです。
結果、催事に参加した警察官と学生それぞれの声を聞くだけでも、期待以上の効果を生み出せました。この催事は今後も継続して開催していきたいと考えています」
梅本さんを講師として招いたのは、交通安全意識の強いアンバサダーとして、一般ライダーからの目線を届けてほしいという意味合いが大きいと言います。実際、彼女は8年のキャリアを持つツーリングが大好きなライダーです。その趣旨は参加した全員に伝わったことでしょう。
安全に長く楽しめるバイクライフのために
普段はまず入ることができない警察学校という特別な空間での催事は、非日常とも言える独特の雰囲気とともに、警察官の交通安全に対する高い意識に触れられる貴重な機会でもありました。
バイクの事故が一件でも多く減っていけば、「危険」というイメージが強いバイクへの印象も薄れていき、「バイクに乗ってみたい」と思ってくれる人がひとりまたひとりと増えることでしょう。また事故に遭わなくなれば、愛車と楽しく過ごせる時間がずっと続いていくことにも繋がります。交通安全の取り締まりに務められる警察官の皆さんは、私たちライダーの幸せのために日夜 街を見守ってくれているのです。
この催事の終了後には、番外編として梅本まどかさんとホワイトエンジェルスの皆さんとの座談会が行われました。そこで、
「白バイ隊員だって、人ですからね。私たちもバイクが大好きなので、一緒にその楽しい世界を守っていきたいと思います」
というホワイトエンジェルス メンバーのコメントが印象的でした。私たちライダーも、常に安心・安全を意識して楽しいバイクライフを過ごしましょう。