互いに尊重しながら同じ目線でバイクを楽しむ親子ライダー (元ワールドフォトプレス広告本部長荒川さん)
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大学在学中にアジアや欧米をクルマで旅するなど、若いころからアクティブだった荒川幸市さん(以下、荒川さん)。
テレビ関係の広告代理店で音響メーカーを担当していた経験からオーディオにも造詣が深く、モノ情報誌のパイオニア『モノ・マガジン』をはじめとする雑誌に30年に渡り、かかわってきた。
『モノ・マガジン』誌内のバイク特集は荒川さん主導による企画であり、競合モデル比較や性能に焦点をあてた二輪専門誌とは異なり、同誌らしくバイクを”モノ”としてとらえつつ、トレンドやデザインの時流を絡めた内容が人気を博した。
現在、荒川さんはメディアアカウントプロデューサーとして活躍しており、今後は国内各地の温泉や日本の世界遺産登録地をクルマやバイクで巡りたいと考えているそう。
今回は、そんなアクティブで好奇心の衰えを知らない荒川さんを父に持つ息子さんが、どのようにしてバイクの世界に傾倒していったのかを聞いてみた。
共通の趣味=同じ目線の趣味
荒川さんの長男である祐樹さんがバイクに興味を持ったきっかけは、小学生の頃に見た仮面ライダーだった。その後、中学生の頃にアメリカの映画で見た、アクションスターがバイクを華麗に乗りこなすシーンに衝撃を受け、何度も映画を見直したそうだ。
仕事の都合上、荒川家にはバイクが常に複数台あったことで、バイクを疎ましいと感じたり父に抵抗を感じたことは一切なく、むしろ映画に感化されていた祐樹さんは、バイクに乗りたくて仕方がないと思っていたそうだ。
ようやく迎えた16歳で念願だった普通自動二輪免許を取得し、当時家にあった父の所有するバイクを譲り受けるかたちで乗りはじめた。もちろん親子でツーリングに行くこともあったが、親子で共通の趣味というよりも、むしろ父と同じ目線の趣味が持てたという感覚だったと祐樹さんは語ってくれた。
父である荒川さんも、祐樹さんの幼少期に少しだけバイクにタンデムさせたことはあっても、バイクで並走できるようになったということに大きな喜びを感じたと、当時を思い出し微笑んでいた。
反対せず見守り育むことも教育のひとつ
仕事でもプライベートでもバイクに乗っている荒川さんは、祐樹さんがバイクに乗りたいと言い出したときに反対するわけではなく、「きちんと乗れば安全だ」と言って聞かせたそう。
もちろん親として息子の身を案ずる気持ちもあったが、安全を大前提に自分なりの楽しみ方を見つけてくれればと、祐樹さんの気持ちを優先して距離を保ちながら見守っていた。なお、祐樹さんの友人で、親の反対でバイクに乗る夢が叶わなかった方もいたらしく、荒川さんは親としてなおさら”見守り育む”ことの重要性を感じていたようだ。
美容師になった祐樹さんは当然の流れでバイク通勤をしていたが…
比較的バイクと接する機会に恵まれていた祐樹さんが美容師として働きはじめたころ、”美容師がバイクで通勤する”という行為は、当時のトレンドとして当たり前のことであり、カッコイイことだという意識で乗っていたそう。
しかし、残念ながら楽しい時代はそう長くは続かなかった。2006年からバイクの駐車違反取締が強化されたことによって、美容室の隅であってもバイクを駐車しておくことができなくなってしまったのであった。それと同時に祐樹さんは自転車通勤へと変えてしまったそう。
ライダーは社会との共生意識が必要
今でもトレンドにアンテナを張る荒川さんと祐樹さんの会話は、やはりバイクの話題が多いそうだ。今は親元を離れ自立している祐樹さんも、たまに父と会うとバイクだけでなくオーディオなどといった比較的男性が好むメカやガジェットなどの話にも花を咲かせるそうだ。
実家にはいつもバイクがある環境であったせいか、祐樹さんも常に自宅にバイクを置いておきたいと考えており、今は次のバイクを中古車検索サイトやオークションなどで探しているそうだ。基本的には出不精だという祐樹さんだが、バイクが手元にあると何となく外に出るきっかけが作れるため、自身の性格に合っているらしい。
祐樹さんがバイク通勤を辞めた当時を振り返ると、車道にまではみ出して駐車されていた多くのバイクや、不正改造マフラーによって大きな音を立てて走るスクーターなども散見され、当然の規制だったと語る。
そんな祐樹さんも36歳となり、社内では若手スタッフに社会の中で生きる姿勢を指導するエデュケーションマネージャーという役を担っていることもあり、バイクライフにおいても、父親よりも安全運転していると自負しているらしい。バイクに乗っている自分が、一般社会からどう見られているかということを意識し、自覚する必要がある時代だと言う。
モノ情報誌を作り上げるためトレンドリーダーとして常に新しい流行を追い続ける父と、社会との共生意識というトレンドの高まりを感じとる息子の祐樹さん。トレンドの尺度は違っても、同じ目線で楽しめる趣味を持ったふたりは、お互いを尊重しながらバイクを楽しむ理想的な親子だった。