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災害時にバイクが担える役割とは?「埼玉レスキューサポート・バイクネットワーク」に聞いた

日本各地で発生する災害の現場には、日本各地から災害支援ボランティアが数多く駆けつけられています。バイクの機動力を活かしたボランティア団体は全国各地に存在し、今回ご紹介する「埼玉レスキューサポート・バイクネットワーク」(以下:埼玉RB)も、全国の都道府県に拠点を置くボランティアバイク隊のひとつです。これまで2004年の新潟県中越地震、2011年の東日本大震災、2018年の西日本豪雨災害、そして2024年1月の能登半島地震と、さまざまな災害現場に駆けつけて支援活動を行ってきました。

災害現場においてバイクはどのような役割を担い、どのように役立てられているのでしょうか。実際の災害現場で支援活動をした埼玉RBが目の当たりにした被災地の実情と合わせて、バイクの特性を最大限活かせる役割と、日々の取り組みについてお話を伺いました。

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レスキューサポート・バイクネットワークとは

全国各地に点在する「レスキューサポート・バイクネットワーク」(以下:RB)は、バイクの機動力とそれを後援するネットワークにより、災害時の救援活動を支援し、バイクを通じて地域社会に貢献することを目的に設立されたボランティア団体です。

1994年に静岡県浜松市でRBは設立されました。そのわずか2ヶ月後の1995年1月17日に阪神大震災が発生し、道路や鉄道が機能不全となり救援活動が困難な状況の中、バイクが悪路をものともせずに活躍したことが大きな話題となり、RBの活動に注目が集まったのです。

2011年の東日本大震災にて原付やオフロードバイクを持ち込んで支援活動を行った模様(写真提供:埼玉RB)

「バイクを用いたレスキュー隊を全国各地に」という声のもと、浜松RBをはじめとする初期のメンバーが発起人となって全国各地にRBが設立されました。埼玉RBもそんなボランティア団体のひとつで、数々の災害現場にバイクとともに入って救援活動を行い、そして埼玉県内の自治体や警察が執り行う防災訓練にも参加し、もしもの有事に備えながら災害時の救援活動を支援する取り組みを日々行っています。

2024年1月:能登半島地震での支援活動

2024年の能登半島地震の災害現場である石川県氷見市に救援物資を持ち込んだ際の一枚(写真提供:埼玉RB)

これまでさまざまな災害現場で救援活動を行ってきた埼玉RBは、2024年1月1日に石川県の能登半島で発生した能登半島地震の被災地にも救援物資を持って赴きました。まずは可能な限り現場の状況を探り、集められた情報と物資を元に支援チームを編成。3名から成る先発隊は1月5日、情報収集と救援物資の運搬を目的に物資を詰め込んだハイエースで現地に赴きました。「現地の状況がわからないところにバイクで赴くわけにはいかないし、何より救援物資が不足しているとのことだったので、物資を積載できる大型車を使いました」と、埼玉RBの先発隊スタッフは語ります。

先発隊は能登半島の根っこにあたる石川県氷見市に辿り着き、さらにその先の七尾市まで歩を進めました。能登半島の中腹に位置する七尾市でも地割れや隆起、そして復旧作業の真っ最中のため道路状況が悪く、地元に迷惑をかけない行動を考慮してなんとか物資を届け、無事埼玉に戻られました。

能登半島地震の被災地に赴いた車両(写真左)と支援活動を行った黒須健弘さん

その3週間後となる1月下旬、埼玉RB隊員の黒須健弘さんは単身でオフロードバイクを積んだハイエースで現地に向かいます。先発隊が行けた七尾市まで赴いた黒須さんはそこでボランティア活動に従事しました。そして2月中旬、再び被災地に赴き、能登半島の突端の町・珠洲市(すずし)まで足を運んだのです。

地震発生から1ヶ月半が経った時期でしたが、能登半島の先へと進むほど状況は困難を極め、まず第一に“命を守る行動”を優先して災害ゴミの片付けや運搬といった活動に加わられました。4月には埼玉RBの別隊員が能登半島を訪れ、まだまだ支援が必要な被災地を手助けしています。

「3月にやっと下水が使えるようになったという報道があるなど、最低限のライフラインの確保もまだまだという状況です。復旧作業というのは時間がかかるものなので、私たちはボランティア団体として長く継続的に支援していこうと考えています」(黒須さん)

災害現場での防犯というバイクの新たな役割

(左から)前事務局長の竹花充章さん、現事務局長の菊地健史さん、黒須健弘さん

災害現場で活躍するバイクと聞くと、瓦礫の山を超えていくオフロードバイクの姿を想像してしまいますが、実際の現場は状況がまったく異なり、求められる役割やバイクのタイプも違ってくるそうです。

「災害現場で通行が困難な道路に遭遇することは多々ありますが、私たちに求められている役割は被災地の支援なので、物資を運ぶなら積載力のあるクルマが必要ですし、機動力や運びやすさ、燃費の良さなどから原付がもっとも有用性が高いんです。車体が軽いのでライダーが押してやれば大体の道は乗り越えられますし、原付ならちょっとした荷物を積むことができます。被災地でどんな手助けをするのか、によって使い分けていますが、原付を活用できる場面は多いですね」

こう語るのは、前事務局長の竹花充章さん。長らく災害現場の復旧支援をしてきた埼玉RBは、「今の災害現場でバイクに求められる役割は変わってきている」と全員が口を揃えました。その役割とは、「防犯」です。

2022年に埼玉県内で行われた夜間情報収集訓練での模様(写真提供:埼玉RB)

これまで発生している災害現場で問題になっているのが、被災した家屋での窃盗や盗難被害です。家人がいない家屋に残る所有物が盗み出されたり、被災直後の損壊した家の補修を法外な費用で請け負う業者がやってきたりするそうです。自治体や警察でもこうした二次被害を防ぐための対応を初動に組み込んでいますが、やはり大きな災害の直後はあらゆる組織が混乱しているので、防犯対策が行き届かないのが実情です。そんなとき、「多少の悪路なら自力で乗り越えられる原付でいち早く被災地に入り、街中を周遊することで犯罪の抑制につなげられるんです」と埼玉RBのスタッフは語ります。

「ボランティアだからといって、国の許可なく勝手に被災地に立ち入ることはできませんので、日頃から積極的に防犯活動に取り組み、私たちの活動をご理解いただいた上で正式なレスキュー隊として国から承認いただく必要があると考えています。認可を受けたランプや拡声器を備えて被災地を回るだけで、十分防犯対策になると思います。被災者の財産を守るのもボランティアの仕事です」(事務局長の菊地さん)

埼玉県 交通安全課が実施する防犯活動の参加者に渡されるサポーター証とポーチ。点滅するライトが備え付いている

現在、埼玉RBは埼玉県内の防犯活動にも積極的に参加しています。大地震発生を想定した野外での情報収集訓練を自主的に行ったり、行政・関係団体が執り行う防犯訓練にも参加し、その存在と活動が徐々に認知されてきています。

「現在は埼玉県が実施している『ながら見守り』に参加しています。散歩しながら、ジョギングしながら街の様子を見て回り防犯に役立てる活動で、私たちはバイクで街中を走りながら街を見守り、また将来的に被災地の防犯のお手伝いができるときの訓練としても取り組んでいます。こうした身近な取り組みが積み重ねになるんです。

バイクで社会貢献するべく、いろんな角度からアプローチして、危ないと言われるバイクのイメージを少しずつ変えていきたいと思っています。バイクでできる人助けをより多くの人に知ってもらい、埼玉RBとしてもに困っている人たちを助けにいく仲間が増えれば、バイクに対する印象も良くなると信じています」(竹花さん)

災害現場で活躍するバイクの姿を発信していく

2018年に埼玉県蓮田市で開催された9都県合同防災訓練・埼玉会場での訓練模様(写真提供:埼玉RB)

バイクを用いて支援活動に取り組んでいる団体は全国にいくつも存在しています。どの団体も日々の訓練でスキルと経験値を積み上げ、災害発生時にその能力を最大限発揮して復興支援に大きく貢献しています。被災地の状況やバイクのタイプによって求められる役割も多岐に渡ることと思いますので、MOTOINFOでは今後もこうしたバイクの特色を活かした有用な取り組みや新しい情報を積極的に発信していきます。

埼玉レスキューサポート・バイクネットワーク

https://saitamarb.net/

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