fbpx

その「プロテクター」は本物?CEマーキング(レベル1・2)の意味と安全性能の違い

肘・膝・胸部などのプロテクターは幅広い価格帯で販売されており、見た目が似ていれば「安いものでも十分では」と感じるかもしれません。しかし、プロテクターの本質は「衝撃をどれだけ吸収できるか」にあり、その性能を判断する手がかりとなるのが、CEマーキングとEN 1621シリーズです。

では、保護性能の区分であるレベル1とレベル2では何が違うのでしょうか。今回は国内バイク用品メーカー「RSタイチ」の担当者への取材をもとに、バイク用プロテクターの安全性能と、購入前に確認しておきたいポイントを整理します。

「プロテクター風」商品に注意!

見た目は似ていても、身体を守れるとは限らない

大手通販サイトには、EN規格に基づく試験を経てCE表示されたプロテクターがある一方、数百〜数千円で販売され、規格や試験情報の記載がない肘・膝・胸部プロテクターも数多く出品されています。規格適合品との価格差は数倍に及ぶこともあり、価格の安さから手に取ってしまう人も少なくありません。外見が似ていても、規格や試験結果の表示がなければ、衝撃吸収性能の客観的な裏付けを購入者が確認することは困難です。

「プロテクターには、EN規格に対応した本格的なタイプと、フォームパッドのようなプロテクター風のタイプがあります。規格に通る保護性能を備えた製品を開発するには大きなコストがかかり、それを削減するためにヨーロッパ製のプロテクターをそのまま組み込んで規格をクリアする方法もありますが、それだと重くゴツくなり、安全ではあっても快適とは言えない製品になってしまいます。コストと性能のバランスはシビアな部分ではありますが、安全性はプロテクターを使用する上で一番重視すべきなので、その信頼性を示すのがCEマーキングとなります」

CEマーキングとは

プロテクターの安全性は、どこを見れば判断できるのでしょうか。その目安として一般に知られているのが「CEマーキング」です。ただし、厳密にはCEは規格名ではありません。CEマーキングは、製品がEUの法令で定められた安全・健康などの要求事項に適合していることを示す表示です。

バイク用プロテクターの衝撃保護性能について、具体的な試験方法や性能区分を定めているのが、欧州標準化委員会(CEN)が策定したEN 1621シリーズです。そのため購入時は、CEマーキングの有無だけでなく、「EN 1621-1」「EN 1621-2」といった規格番号、レベル、対象部位、規格年版まで確認することが重要です。

バイク用プロテクターには、部位ごとに異なる規格が用いられます。代表的なものとして、肩・肘・膝・腰などの関節部にはEN 1621-1、背部にはEN 1621-2、胸部にはEN 1621-3が定められています。
こうした試験が実際にどう行われているのか、RSタイチの担当者はこう説明します。

「ヘルメットのテストのように、上から重りを落として、どれだけの衝撃が下に伝わるかを計測するテストがあります。金型製作を含め、開発には非常にコストがかかるため、プロテクターの安全性を、基準よりもある程度余裕を持たせて設計しています。たとえば、レベル1として開発した肘パッドが、後日の再検査でレベル2の基準もクリアしていた、というケースもあります」

衝撃を受けたとき、身体にどれだけ力が伝わるか

EN 1621シリーズでは、一定条件のもとでプロテクターに衝撃を与え、そのときにプロテクターを通して身体側へ伝わる力をkN(キロニュートン)で測定します。基本的には、数値が小さいほど身体に伝わる衝撃が少なく、衝撃吸収性能が高いと考えられます。試験条件や合格基準は部位ごとの規格によって異なります。

規格レベル1(基準)レベル2(基準)
EN 1621-1(肘・膝・肩など)平均35kN以下 / 最大50kN以下平均20kN以下 / 最大30kN以下
EN 1621-2(背部) 平均18kN以下 / 最大24kN以下平均9kN以下 / 最大12kN以下
EN 1621-3(胸部)衝撃伝達試験:平均18kN以下 / 最大24kN以下 左記の衝撃伝達基準に加え、衝撃分散試験:平均15kN以下 / 最大20kN以下
※数値が小さいほど、試験時にプロテクターを通して伝わる力が小さいことを示します。ただし、試験方法や合格基準は部位によって異なります。特にEN 1621-3:2018では、レベル1が衝撃伝達性能、レベル2が衝撃伝達性能に加えて衝撃分散性能を満たす区分となっており、胸部は背部プロテクターのように数値だけで単純比較することはできません


なお、適用される規格は、安全性を高めるために改定されることがあります。RSタイチでは、新たに認証を取得する製品について、その時点で適用される規格年版を確認しているとのことです。

CEマーキングの読み方

実際の製品タグには、CEマーキングとあわせていくつかの情報が併記されています。たとえば、RSタイチのエアバッグ製品「T-SABE」の背面プロテクター部の表示では、以下のような項目が確認できます。

資料提供:RSタイチ
  • 本製品が二輪車用であり、背面中央部(Central Back)のレベル1試験に合格していることを示す表示
  • バックプロテクターのサイズ(ユーザーのウエストから肩までの距離の目安)
  • 適用規格:EN 1621-2:2014
  • バックプロテクターがEN 1621-2:2014の要件に適合していることを示すCEマーキング
  • 二輪車ライダー用保護具であることを示すマーク(ISO 7000-2618)
  • プロテクターのカテゴリー・タイプ(CB=背面中央部の保護範囲)
  • 規定される外生地(ガーメント)・クラスであることを示す「C」、アンダーウェア(インナー)としての使用を意図した「U」の表示
  • 適用規格:EN 17092-6:2020(ウェアとしての規格)

CEマーキングだけでなく、こうした規格番号・レベル・適用部位の表示まであわせて確認することで、その製品がどの試験を通っているのかをより具体的に把握できます。

胸部プロテクターは、JMCA推奨マークも目印になる

胸部プロテクターについては、EN 1621-3だけでなく、国内で安全性を確認する目安としてJMCA胸部プロテクター推奨制度(記事最下部のURLをご参照ください)も参考になります。

胸部プロテクターが重要視される理由

警視庁の統計では、東京都内における二輪車乗車中死者の致命傷部位は、過去5年平均で頭部が43.2%と最も多く、次いで胸部が29.2%と高い割合を占めています。一方で、胸部プロテクターの着用率は依然として低く、警視庁の2025年調査では9.9%にとどまります。前年から0.1ポイント増加しているものの、普及はまだ十分とはいえません。この10年、業界を挙げて胸部プロテクターの着用率向上に取り組む動きが強まっています。
こうした流れの中で、一般社団法人全国二輪車用品連合会(JMCA)は、2016年8月から「JMCA胸部プロテクター推奨制度」を実施しています。これは、ヨーロッパ規格(prEN 1621-3)をクリアした胸部プロテクターを対象に、商品パッケージへ推奨ステッカーを貼付する制度です。

JMCA推奨マーク表示相当するヨーロッパ規格
★1つヨーロッパ規格 レベル1 相当
★2つヨーロッパ規格 レベル2 相当
※星の数が多いほど、より高い保護性能を示す目安になります(JMCAウェブサイトより)
胸部プロテクターを選ぶ際は、CE表示やEN 1621-3の記載とあわせて、JMCA推奨マークの有無も確認材料になります。

CEマーキング レベル1とレベル2の違い

レベル2は、レベル1より厳しい性能基準が設けられています。ただし、その差は部位によって異なります。関節部では平均伝達力の基準が35kNから20kNへ、背部では18kNから9kNへ引き下げられています。一方、胸部ではレベル2に衝撃分散性能の評価が加わるため、「伝わる力が約半分になる」と一律には説明できません。

ただし、RSタイチの担当者は「レベル2の選択が一概にいいというわけではありません」と話します。

「レベル2になると分厚くなったり重たくなったりする分、安全性と快適性はトレードオフの関係になります。RSタイチでも同じ膝用・肘用のプロテクターで、レベル1のものとレベル2のものを両方用意していて、用途やお好みに応じて選んでいただけるようにしています」

実際に、RSタイチが展開するレベル1とレベル2の肘・膝用プロテクターを比較すると、その違いがよくわかります。レベル1の「ステルス CEニープロテクター(スリム)」「ステルス CEエルボープロテクター(スリム)」は、薄さや軽さ、身体への追従性を重視したタイプです。一方、レベル2の「ステルス CE(LV2)ニーガード」「ステルス CE(LV2)エルボーガード」は、厚みや重量が増す代わりに、より厳しい衝撃吸収基準を満たしています。

(左)CEレベル1、(右)CEレベル2 (ともにRSタイチ)
(左)レベル1のステルス CEニープロテクター(スリム)、(右)レベル2のステルス CEニーガード(ともにRSタイチ)

また、レベルとは別に、フォームの外側を硬質樹脂で覆ったカップ型の製品もあります。こうした構造には、衝撃を受け止めるだけでなく、転倒時に路面上を滑りやすくし、引っかかりを抑える狙いがあります。

「硬質樹脂で覆うことで、より保護性能がしっかりする上、転倒した際に滑走しやすく、路面に引っかかりにくいという安全上のメリットも兼ね備えています。EN規格が通っているかどうかだけでなく、このような付加価値の部分も、選ぶ際の大事なポイントになります」

こうした試験を経て基準をクリアしているということは、それだけ安全性能の裏付けがあるということでもあります。

部位と用途によって、選ぶべきレベルは変わる

「レベル2の中でも、柔らかさにはかなりの違いがあり、技術の進歩によって、レベル2でありながらレベル1に近い柔らかさを実現した製品も最近は増えてきています」

動きやすさを重視するライダーには、柔らかく軽いタイプが人気です。一方で「硬い=安全性が高い」という認識から、あえて硬めのプロテクターを選ぶ人もいます。ただし、素材の硬さだけで安全性能を判断することはできず、EN規格への適合やレベル表示を確認することが重要です。技術の進歩によってバリエーションが増えたことで、ライダーそれぞれの好みに合った選択肢が広がってきました。

ネックスエアー チェストプロテクター:RSタイチ

また、レベルとは別に、素材や構造による付加価値も選択のポイントになります。例えば胸部プロテクターでは、通気性を重視したメッシュタイプの「ネックスエアー チェストプロテクター」(TRV091)と、耐貫通性を高めた「CROSSLAYチェストプロテクター」(TRV069)は、いずれもCEレベル2を取得していますが、性格はまったく異なります。前者は網目状のベンチレーションホールで通気性を確保しており、夏のライディングや軽量モデルを求める人向けです。一方、後者は表層に粘弾性素材「KaRVOシールド」を採用し、突起物からの耐貫通性を強化しています。

同社では、EN規格への適合に加え、快適性や滑走性といった付加価値の部分も含めて選べるよう、こうした選択肢を数多く用意し、ライダーが自身の使い方に合った製品を選べるようにしているといいます。

CE Lv.1 / Lv.2 プロテクター比較例

部位レベル商品特徴
肘・膝CE Lv.1ステルス CEニー / エルボープロテクター(スリム)
(TRV095 / TRV096)
薄い・軽い・通気性◎・柔軟性◎
肘・膝CE Lv.2ステルス CE(LV2)ニーガード / エルボーガード
(TRV080 / TRV081)
Lv.1と比べて厚み・重さは増すが、保護性能に優れる
胸部CE Lv.2ネックスエアー チェストプロテクター
(TRV091)
網目状のベンチレーションホールで通気性を確保。夏や軽量モデル向け
胸部CE Lv.2CROSSLAYチェストプロテクター
(TRV069)
粘弾性素材「KaRVOシールド」で耐貫通性を強化
※RSタイチ公式ECサイト掲載情報をもとに作成

規格適合品と性能未確認品、どこで見分けるか

正規品と模倣品を見分けるため、独自の偽造防止対策を講じるメーカーもあります。RSタイチの場合、ジャケットにはホログラムの認証タグを採用していますが、これはジャケット向けの対策で、プロテクター単体には同様のタグはなく、現時点で模倣品の流通も確認されていないといいます。

プロテクターを選ぶ際は、製品本体やタグ、パッケージに、CEマーキング、EN 1621シリーズの規格番号、レベル、対象部位やタイプが表示されているかを確認しましょう。メーカーの公式サイトに掲載されている製品情報と照合することも有効です。

胸部プロテクターについては、JMCA推奨マークも保護性能を判断する材料になります。ただし、JMCA推奨マークは製品の真贋を判定するためのものではなく、マークがないことだけを理由に模倣品や規格未適合品とは判断できません。模倣品への対策については、正規販売店で購入することや、メーカー公式情報と型番・仕様を照合することが基本となります。

「安さ」より「根拠のある安全性」を選ぶ

事故時の負傷の程度を軽減するのは、プロテクターの「見た目」ではなく、試験によって裏付けられた衝撃吸収性能です。とはいえ、EN 1621シリーズのレベルまで意識してプロテクターを選ぶ人は、そう多くはなく、実際は値段やデザイン、着け心地を基準に選ぶ人が多いでしょう。それでも、レベル1とレベル2の違いやJMCAの推奨マークなど、プロテクターの性能を判断するための仕組みが存在することを覚えておくだけで、次に製品を手にしたときの見え方が少し変わるかもしれません。「安さ」だけでなく「根拠のある安全性」を基準に、自分の用途や身体に合った製品を選びましょう。

RECOMMEND

あなたにオススメ