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女性の初心者に特化した「ベーシックライディングレッスン」レディース

「バイク免許を取ったばかりで公道を走るのが少し不安」「街中でも安全に走れるようになるためのライディングスキルを身に付けたい」そんな初心者ライダーの声に応えてスタートした体験型実技講習会「ベーシックライディングレッスン」(Basic Riding Lesson / 以下、BRL)が、いま多くのライダーから注目を集めています。2025年度は、全国90カ所以上での開催を目指しているそうです。

そんなBRLのなかでも、参加者を女性に限定した「BRLレディース」が、2025年10月18日(土)に千葉運転免許センター(千葉市美浜区)で開催されました。同じ悩みを持つ初心者ライダー同士でのコミュニティの場としても活用されているBRLレディースの模様をお届けします。

BRLレディースの模様をレポート

当日は好天に恵まれ、26名の受講者が集まりました。「公道で安全に走行するために役立つ技術や知識を学びたい」「自分のバイクで取り組める貴重な機会」「同性だからこそ打ち明けられる悩みを話したり、相談ができる場があるのは嬉しい」など、女性限定ならではの声が多く聞かれました。BRLは、公道を安全に走るために必要な技術や知識を“自分のバイクで”身につけられる初心者向けの実践レッスンです。今回のBRLレディースでは、女性の二輪車安全運転指導員を一部起用したうえで受講者を女性に限定し、よりリラックスして学べる環境が用意されました。

乗車前チェックの重要性と、チェック項目「ブタと燃料」について二輪車安全運転指導員が解説

最初に開講の挨拶があり、参加者全員での準備運動を終えたあと、まず乗車前チェックからスタート。走り出す前にバイクの状態を確認することの大切さと、そしてチェック項目をコンパクトにまとめた合言葉「ブタと燃料」について、指導員から詳しく解説されました。

「ブタと燃料」とは、「ブレーキ」「タイヤ」「灯火類」「燃料」の頭文字を組み合わせたもので、バイクを安全に走行させるために欠かせない基本項目です。「前後ブレーキ、ヘッドライト、ウインカーが正しく動作しているか」「タイヤの空気圧は適切か、スリップサインが出ていないか」「燃料は十分入っているか」をチェックします。

受講者は自身の愛車を入念に点検します。空気圧が低い車両には、指導員がエアーポンプで空気を入れてくれました
隊列を組んでの完熟走行

26名の受講者は“BRL初参加グループ”と“過去に参加経験ありグループ”の2つに分かれ、いよいよレッスンの開始です。午前の部のカリキュラムは「ブレーキング」。時速50kmまで加速してからの急制動と、断続的なブレーキングの2つのメニューに取り組みます。

取り組むにあたっての事前説明では、指導員による実演とともに、このレッスンが公道走行でどのように役立つのかが解説されました
白バイ隊が手厚くサポートしてくれるのも、BRLならではの魅力です
フロントフォークがしっかりと沈み込むほどブレーキをかけ、リアタイヤをロックさせずに静止します
レッスンは自身の愛車での参加となります。受講者の皆さんは序盤こそ緊張気味でしたが、カリキュラムをこなすにつれて徐々に慣れてきた様子でした
停止後には、二輪車安全運転指導員から課題と改善点が伝えられます。具体的で的確なアドバイスは、改善への道筋を明確にしてくれます
日頃から大きなバイクに乗っている女性白バイ隊員から、小柄な女性でもうまくバイクを操るためのコツを直接レクチャーしてもらえるのも嬉しいポイントです
休憩時間に、白バイにまたがっての記念撮影。こうした一面もBRLならでは

午後の部のレッスン内容は「バランス」と「コーナリング」です。「バランス」では、午前の部の「ブレーキング」と同様の直線コースを使用し、パイロンで区切られたコースを低速で走行することに取り組みます。スピードを抑えた不安定な状況で、いかにバイクを安定させられるかが、このレッスンの狙いです。ニーグリップを意識し、視線をしっかり前方に定めることで、1秒でも長く時間をかけてパイロン間を走行できるよう集中します。

歩行程度の低速走行で車体を安定させるのは至難の業ですが、公道にはない安全なコースで、二輪車安全運転指導員のサポートを受けながらチャレンジできるのもBRLの魅力の一つです
低速でもフラつくことなく安定して走行できるようになれば、公道での不安も大きく軽減されます
受講者全員の走りを見た二輪車安全運転指導員から、バランスを取るための具体的なコツが伝授されます

続いての「コーナリング」では、パイロンが配置されたコースをジグザグに走行し、最後に大きくUターンするコースに挑戦します。

最初は大きく膨らんでしまうなど、なかなか上手くいかない場面も見られましたが、繰り返し取り組むうちにバイクを操るコツを掴み、スムーズに走行できるようになっていきました
女性目線で話してくれる同性の二輪車安全運転指導員からのアドバイスは、上達の大きなキッカケになったことでしょう

「バランス」「コーナリング」のカリキュラム後には、タイヤメーカー「ブリヂストン」の担当者より、「タイヤの役割と重要性」について、摩耗して使用不能となったタイヤの実物を題材にしたレクチャーが行われました。質疑応答での「バイクのタイヤにカラフルなものがないのはどうしてですか?」という質問に、「さまざまな実験と検証の結果、従来の黒いタイヤのグリップ力がもっとも高いことがわかっています。グリップ力が低いとバイクの走行における危険性が高まるため、タイヤは黒のみとなっています。その理由は、主成分であるゴムに『強度を高める』『紫外線による劣化を防ぐ』『摩耗やカットに強くする』といった性能向上の役割を持つカーボンブラックという黒い炭素の粉末を混ぜているからです」と回答されました。

レッスンの最後は、BRL千葉の恒例となっている「振り返り走行」です。この日のレッスンの集大成として、ジグザグ道やスラロームなど、この日のカリキュラムで出てきた箇所がすべて含まれた1本のコースに挑み、二輪車安全運転指導員を先導車として全員で走行します。

振り返り走行をする受講者

今日一日のレッスンを思い出しながら、入り組んだコースを走り抜けていきます。レッスン後にはバイクで帰路につくため、疲れすぎないよう、そして体で覚えた感覚を帰りの走行で活かせるように配慮されたメニューとなっています。

女性限定のBRL受講者の声

明石 彩さん (千葉県 / Honda「Rebel 250」)

「免許取得から約3週間で、愛車の走行距離も150キロ程度の初心者です。教習車でのライディングスクールも受講しましたが、住んでいる千葉県で『自分のバイクで受講できる女性のためのレッスンがある』と知り、すぐに申し込みました。

自分ができていないことや足りないことを知ることができ、とても充実した一日でした。上達することの楽しさを実感し、またBRLに参加したいと思っています。

バイクでどんなことを楽しみたいかについては、まだ具体的な想像ができていません。近隣を走って慣れてきたら、徐々に行動範囲を広げていきたいです」

伊藤 さおりさん / 千葉県 / Kawasaki「Ninja 250」

「子どもが大きくなったので、新しい趣味として夫婦でバイクに乗ることにしました。今日のBRLに同行してくれた主人はもう大型バイクに乗っていますが、私は今年の春に普通二輪免許を取得したばかりで、愛車との付き合いも半年ほどです。休日には、往復100kmほどのツーリングを一緒に楽しんでいます。

若い受講者が多いかと思っていましたが、来てみると同年代の方も多くて、受講者同士で気さくに話せる雰囲気が嬉しかったです。同性の二輪車安全運転指導員の方々も経験豊富で、女性ならではの悩みを相談でき、その解消法を教えてもらえたのは本当にありがたかったです。楽しくレベルアップできたと実感でき、とても有意義でした。今後は夫婦でBRLに参加したいですね」

ともに学んでスキルアップ!女性指導員からのメッセージ

左:藤森 智子氏
右:岩下 洋美氏

千葉県で二輪車安全運転指導員として活動している藤森氏と岩下氏より、これからバイクライフを楽しみたいと考えている女性ライダーへのメッセージをいただきました。

「30代でバイクに乗るようになったのですが、今日のBRL受講者の皆さんと同じように『いきなり公道を走るのは怖い』と感じ、当時『グッドライダーミーティング』という名称だった現在のBRLに通い始めました。そこで出会った二輪車安全運転指導員の姿を見て『自分も誰かの役に立ちたい』という想いが生まれ、原付二種の講習指導員を経て二輪車安全運転指導員になりました。

教える立場になることで、逆に教えられることも多いんです。受講者の意外な悩みを知ることで、伝えられる情報が増えますね。また、二輪車安全運転指導員である以上、常に“見られている”という意識を持ち、どんな時でも安全運転を第一に心がけるようになりました。こうした経験や姿勢を通して、受講者の皆さんにも安全で安心して楽しめるバイクライフを送ってほしいと思っています」(藤森氏)

「若い頃からバイクが好きで、バイクを通して様々な場所を訪れ、新しい出会いや発見をすることが私の喜びです。バイクショップの販売員をしていたこともありますが、バイクの楽しさを広めたい一方で、悲しい事故の話を耳にすることも少なくなく、『安全にバイクを楽しむことを伝えたい』という想いから、二輪車安全運転指導員を目指しました。

一本橋など、教習所で学んだ内容が公道走行でどう役立つのか、十分に伝えきれていない部分も多いと思います。実際、私の娘も『教習所卒業後に練習できる場所がない』と言っていましたが、BRLはまさにそうした声に応えられる、公道を走る際に役立つ技術が身につく初心者のためのレッスンです。今回のような女性限定レッスンでは、同性だからこそ話せる悩みにも積極的に向き合っていきたいと思っています。受講される方は、遠慮なくご相談ください。」(岩下氏)

BRL主催者が聞いた受講者の声

一般社団法人 日本二輪車普及安全協会 理事・安全本部長
荒井 龍介氏

BRLを主催する日本二輪車普及安全協会の荒井氏に、BRLに寄せられる声や今後の展望についてお伺いしました。

「全国各地で開催している初心者向け体験型実技講習会BRLは、おかげさまで多くの受講者にご参加いただき、大変賑わっています。先日、京都で開催したBRLでは、応募開始と同時に定員に達してしまうほどでした。嬉しいことに、全国から『BRLの開催数を増やして欲しい』というご要望も多数いただいております。

中級者以上が多く参加する傾向にあった『グッドライダーミーティング』を検討・変更し、“初心者向け”とテーマを明確にしたことで、受講者はもちろん、教える側である二輪車安全運転指導員も、“初心者の悩みや困りごと”をより意識した取り組みへと変化してきました。この流れを今後も継続させていきたいと考えています。

今回のBRL千葉は、女性の二輪車安全運転指導員が多く在籍しているため、女性限定での開催が実現しました。地域によって二輪車安全運転指導員の人数は異なりますので、女性限定BRLを各地で開催するのは容易ではありませんが、二輪車安全運転指導員の育成や募集を進めるとともに、皆様の声に応えていきたいと思っています」

BRLで安全を学び、楽しく上達しよう!

経験豊富な同性の指導員や、同じ悩みを持つ仲間と気軽に話せるBRLは、女性初心者ライダーにとって心強い味方です。公道走行への不安を抱えながら会場を訪れた受講者も、レッスンを終える頃には自信に満ちた笑顔へと変わり、バイクに乗る楽しさを実感しながら帰路についていました。BRLで身につけた技術や知識は、きっとこれからの安全で楽しいバイクライフを支えてくれるはずです。2025年の開催は残りわずかですが、来年も全国各地で継続して開催されます。ご興味のある方はぜひお住まいの地域での開催情報をチェックしてみてください。

新しい仲間との出会い、そして自分自身の成長に出会えるはずです。

Basic Riding Lesson(安全運転講習)| 一般社団法人 日本二輪車普及安全協会

https://www.jmpsa.or.jp/safety/event/event.html

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