お悩み解決型で応えるバイクの運転技術講習会「グッドライダーミーティング (レディースDay)」
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しばらくのあいだバイクから遠ざかっていたリターンライダー、またはバイクの免許を取得したてのビギナーライダーが最も不安に感じているのが、バイクを安全に乗るためのライディングテクニックでしょう。なかでも、体力に自信のない女性ライダーなどは、ライディングに対して苦手意識を抱きやすいのも事実です。
そんな女性ライダーの悩みを解決するため、定期的に開催されているのが「グッドライダーミーティング」(以下、G-MTG)の“レディースDay”です。
そこで今回は、2023年11月3日に埼玉県警察および埼玉県二輪車普及安全協会の主催で行われたG-MTGレディースDayを取材し、ライディングスクールの内容とともに参加されたライダーへの参加動機なども伺いました。
入念かつわかりやすいデモンストレーション
秋晴れの暖かな日差しのなか、埼玉県鴻巣市にある埼玉県運転免許センターにて行われた今回のG-MTGレディースDayには、20代から60代まで幅広い年代の女性ライダーが39名参加されました。
午前9時30分に開講式を行ったあと、乗車姿勢の確認やエアバッグ体験があり、続いて白バイ隊員のデモンストレーションがありました。8の字走行やパイロンスラロームをはじめ、交差点での右折直進事故や、クルマの横のすり抜けの危険性、横断歩道の安全な通過方法などについて事細かな解説があり、参加者は熱心に聴いていました。危険なシーンについては、危険なポイントの紹介にとどまらず、ライダー各自がどのような行動を取るべきかを白バイ隊員が見本として示すことで、参加者は危険性と危険回避の両面で認識できているようでした。
なお、実際にバイクに乗る走行時間は午前11時からの約1時間と午後1時からの約1時間となっており、参加者の負担とならないように配慮された時間割となっていました。
参加者の声:みんなの不安は共通!停止の際や低速走行時の不安定さ
坂戸市から参加のCBRさん。5年前に免許を取得してバイクに乗り始めたとのことでした。今回のG-MTGへの参加は3回目とのことで、G-MTG以外のライディングスクールには参加したことが無いそうです。
「とにかくうまくなりたい」「ライディングテクニックを向上させたい」が参加の理由で、ツーリング中で必要に迫られるUターンなどの小回りに不安があるようでした。
1年半前に免許を取得したという東松山市から来ていたRebel(27番)さん。
今回がG-MTG初参加とのことで、お子さんがバイク購入のために立ち寄ったバイクショップで、この講習会の存在を知ったのが参加のきっかけとのことでした。
やはりUターンに不安があるほか、エンジン停止後にバイクを後ろに引いてバックさせることに自信がないそうです。
川越市から来ていたVTRさん。免許取得は10年前でしたが、しっかり乗り始めたのはここ最近だといいます。
G-MTGへの参加は3回目で、毎回、初心に返ったつもりで参加されているとのことでした。また、何といってもバイクの練習に適した場所が無いことも理由のようです。
普段からバイクを運転していて立ちゴケしそうになる瞬間が多々あるため、それが最大の不安とのことでした。
ゆうに30回以上参加しているというG-MTG大ベテランのCBさん。
実は20年間ペーパーライダーだったそうですが、東日本大震災をきっかけとして、生きているうちにやり残したことがないようにと、2011 年に大型自動二輪免許を取得されたとのことです(後に旦那さんも大型自動二輪免許を取得されたそう)。
参加の目的はライディングテクニックの向上、そして安全に乗ることに尽きるとのことでした。
彼女が最も不安視しているのは、停止時だそうです。
1年8カ月前に免許を取得したRebel(17番)さんは、今回で3回目の参加。
他の参加者と同様に、技術向上と安全運転が参加の目的ですが、愛車が大柄なバイクとあって、降車後の押し引きや、走り出しの低速走行に不安があるとのことでした。
G-MTGへの参加は今回で15回目という免許歴24年のNCさん。
彼女が今回参加を決めた理由は、 “女性ライダー限定”だったからとのことです。以前男女混合のクラスに参加したこともあるそうですが、少々ペースが掴みづらく怖かったようです。
普段の走行では、幅寄せなどクルマの動きに不安があるとのことでした。
18歳で免許を取得し、今回のG-MTG参加は3回目だというR25さんは、「半分、母に連れられて……」と笑いながら答えてくれました(母親もG-MTGに参加されていました)。
運転技術に対する苦手意識から、たまに目的地まで辿り着けないこともあるため、G-MTGに参加して克服したいとのことでした。
1年前に免許を取得したというNinjaさんも同じく、参加理由は「母に連れてこられた……」とのことでした。
一人で走ることに不安があると話していましたが、初参加のG-MTGでは終始笑顔で楽しそうでした。
前述の娘さん2人と一緒に参加されていた母親のVTRさんは今回で3回目の参加。
バイクに乗り始めたきっかけはお兄さんの影響だったそうです。そこから娘さんへ脈々とバイクの楽しさが継承されているという羨ましい母娘でした。
「バイクを倒してしまった際に引き起こせなかったらどうしよう……」というのが一番の不安とのことでしたが、ライディングフォームは非常に綺麗でした。
不安払拭のための下準備がポイント
G-MTGレディースDayのカリキュラムは、ほとんどの説明を女性白バイ隊員が行い、説明を受ける集合場所も、直射日光の当たらない場所を選ぶ気遣いが見られました。さらに、説明内容についても、先ほどヒアリングした参加者の悩みを解決するかのように、とても丁寧に解説されていました。
では、なぜこうした参加者への細かな配慮と、参加者の困りごとにマッチした講習内容が実現しているのでしょうか。その答えを求め、埼玉県・茨城県二輪車普及安全協会事務局長の徳岡 優幸さん(以下、徳岡さん)に尋ねたところ、どんなことを教えて欲しいかについて事前にアンケート調査を行っていたのでした。
なお、事前アンケートの結果を一部抜粋すると以下の通りです。参加ライダーの悩みごとは人それぞれですが、いくつか共通する項目も見られました。
- Uターンをマスターしたい。坂道でのUターンなども教えてほしい。
- 最近やっとバイクが納車されたものの、全くの初心者で不安だらけです。
- 特に8の字走行とパイロンスラローム走行が苦手で練習したい。
こういった多くの声を事前に把握し、埼玉県警ならびに二輪車安全運転指導員とともに協議して作られたカリキュラムになっていたのでした。
白バイ隊員によるパイロンスラローム走行の模範走行を見学する参加者
300kg近くあるバイクを華麗に操る白バイ隊員のパイロンスラローム走行は、実に不安のない美しいフォームであり、それを実際に見学することで「自分もあのように走りたい」「練習すればできるようになるかも」といった希望を与えているようでした。
一般的なライディングスクールではあまりみかけないスタンディング走行も
こういったライディングスクールでは珍しく、スタンディング走行もカリキュラムに入っていました。この理由について、再び徳岡さんに伺いました。
1つ目は、バイクの左右バランスが取れる位置を身体が自然に探して乗車できること。
2つ目は、ステップの荷重が強まる姿勢になることで、膝・腰・腕の柔軟な使い方が体感できます。
3つ目は、立つことによって、自ずとニーグリップをするようになる効果があります。
なるほど。立ち乗りの姿勢をとることによって、バイクの重量やバランスについてよりダイレクトに感じることができ、それに対して身体が上手く順応し、かつ感覚的にも理解しやすい効果があるという非常に合理的なレッスンでした。
ライダーたちのために、女性指導員と交通機動隊SKIP(女性白バイ隊員)も7名おり、各所で的確なアドバイスを行っていました。
指導する側も受ける側も女性なので、参加者たちはリラックスして講習を受けられていました。特に、休憩時間も白バイ隊員や指導員に質問している姿が印象的でした。
埼玉県二輪車普及安全協会会長 田島和雄さんに今後の展望をお伺いしました。
「G-MTGは運転経験の浅い初心者や久しぶりにバイクに乗るリターンライダーを対象に運転技術並びに交通安全意識の向上を目的としたライダーの為の体験型実技講習となっています。
ベテランの指導員が乗車前点検及び基本姿勢から安全に乗るためのテクニックを分かりやすく指導してくれます。
その為にできるだけ多くの方に、特に初めての方にご参加いただきG-MTGを必要としている方に広めていただければ幸いです。
全てのライダーが交通事故を起こさず、巻き込まれずバイクライフを楽しんでいただきたいと思います。」
今回取材したレディースは、女性同士だからこそ理解し合える不安要素や恐怖心、運転の難しさ。そうした悩みごとをしっかりと受け止めるべく、事前に受講者の要望を把握してカリキュラムを工夫し、指導員が個別に優しくアドバイスをしてくれる。このようなソフトなコミュニケーションだからこそ、初めてでも参加がしやすく、リピートにも繋がっているのでしょう。
年齢や免許歴を問わず、バイクの運転に不安のある女性ライダーは、ぜひ一度受講されてみてはいかがでしょうか。