前傾ライダー&リターン組の腰・肩をほぐす、乗車前後の簡単ストレッチ

ツーリングの後半になると、腰や肩がつらくて集中できない。降りたあとも凝りが抜けない。長くバイクに乗っていると、多くのライダーがぶつかる悩みです。とくにSSのような前傾姿勢のバイクや、久しぶりに乗り始めたリターンライダーは要注意。放っておくと「もう歳だから」と、バイクから離れる理由になってしまいます。体がこわばっていると、ライディング中に反射的な動きも鈍くなり危険にもなります。

この記事では、乗る前後にできるケアを、アイオースポーツマッサージ湘南の丸山 修平氏(アスレティックトレーナー / あん摩マッサージ指圧師)への取材をもとに、体の仕組みから整理してみましょう。

その腰痛・肩こり、「乗り方」から来ている

そもそも、なぜバイクに乗ると腰や肩が痛むのか。丸山氏は、腰痛の成り立ちからひもといてくれました。

「腰痛にはさまざまな原因があります。筋肉の緊張などが関係するものもあれば、椎間板ヘルニアや分離症のように、骨や椎間板などが関係するものもあります。後者は治療が必要になりますが、筋肉の緊張や硬さが腰のつらさに関係しているケースもあります」

そのうえで丸山氏は、長時間の座位姿勢や、走行中に路面から受け続ける振動も、腰まわりの負担につながると説明します。乗車時間が長くなれば首まわりも固まってきます。ゆっくり流しているつもりでも、体は着実に疲れている、というわけです。

実は大事なのは太もも。前か、後ろかを確かめましょう

まずは「膝がつま先より前に出るか」をひとつの目安に

ケアの前に、自分の姿勢や体の使い方の傾向を知っておきましょう。丸山氏がセルフチェックのひとつとして挙げる方法は、意外なほどシンプルです。

「立ったときに、体重が前寄りか後ろ寄りか。肩のラインや、猫背になっていないか。そして中腰の姿勢をとったときに、膝がつま先より前に出るかどうか。膝がつま先より前に出て、骨盤が前傾している人は、太ももの前(大腿四頭筋)や腸腰筋が硬くなっている傾向があります。逆に猫背タイプの人は、ハムストリング(太もも裏)に負担がかかっていることがあります」

少々大げさにやってもらいましたが、膝がつま先より前に出るとはこういうことです

ライディング姿勢によって生じる筋肉の張りや動きの偏りを見るうえで、丸山氏が重視するのが「太もも」と「股関節まわり」です。腰そのものだけを見るのではなく、太ももの前が硬いのか、裏が硬いのかを確認することで、セルフケアの狙いどころが見えてきます。

下半身をほぐす。内転筋から入るのがコツ

自分の姿勢の傾向がわかったら、次は実際に下半身をほぐしていきましょう。丸山氏によれば、骨盤が前傾する傾向のある人は太もも前(大腿四頭筋)や腸腰筋、猫背傾向のある人は太もも裏(ハムストリング)を意識するのがポイントです。前者は立った姿勢で足首を持ち、かかとをお尻に近づけて太もも前を伸ばす。後者は脚を前に伸ばして上体を軽く倒し、太もも裏を伸ばします。いずれも反動をつけず、無理のない範囲でじんわりと伸ばしましょう。

太もも前の伸ばし方。じわっと30秒ほど伸ばしましょう
太もも裏の伸ばし方

そのうえで、丸山氏がもう一つ挙げたのが“内転筋”でした。

「バイク乗りの方は、座って長時間という点で、内転筋(内もも)も一つのポイントです。腸腰筋も大切なんですが、体の奥にあって、自分ではなかなか触れない。内転筋なら自分で触れるので、セルフケアは、まずここから入ったほうがイメージしやすいと思います」

乗る前に、硬い場所をひととおりゆるめておく。動き出しの体をいきなり前傾で固めない、というのが狙いです。

内ももの伸ばし方は、足先の方向にコツがあります。写真のように土踏まず側を内側に向けると内ももが伸びます
体育で習った伸脚、つま先を上に向ける形をとると、太もも裏が伸びます。併せて伸ばしておくとよいでしょう

上半身は「肩甲骨がすべてを語る」

肩こり対策として、丸山氏が繰り返したのが「肩甲骨」でした。

「上半身は、肩甲骨がすべてを語ります。肩を上げずに、肩甲骨を斜め下に引き寄せる。このとき、顎を斜め上に向けて引くと、背骨本来のカーブを作って、肩甲骨が引き寄せやすい位置に入るんです。こう動かすと、お腹にも自然に力が入るし、肩こりの予防にもなる」

前傾で丸まりがちな背中を、肩甲骨から立て直す。信号待ちや休憩のタイミングで肩甲骨まわりを動かし、固まりっぱなしにしないことが大切です。

肩甲骨を斜め下に引き寄せるストレッチは、実は難しい。多くの人は肩甲骨を寄せるというと、斜め上に寄せてしまいます。筆者もやってみましたが、下に寄せているつもりでも上に寄っていると言われてしまいました。そこでおすすめなのが、100円ショップなどで扱っているストレッチ用ゴムバンド。これを伸ばしながら肩甲骨を寄せると、うまく下に寄せることができるのです

休憩中は「軽く力を入れてから、緩める」

首を傾けた状態で、手で押さえる方向に逆らうように首へ軽く力を入れます。数秒保ったあとに力を抜き、首まわりをゆるめます。痛みが出るほど強く押さえないようにしましょう

走行中に首や肩まわりが固まってしまったら。丸山氏が教えてくれたのは、その場でできる緩め方です。

「伸ばすんですけど、逆に一度ぐっと力を入れてあげる。入れた力を一気に抜くと、筋肉が弛緩する方向に進むので、緩みやすくなります」

サービスエリアやコンビニの休憩で、固まった首・肩・腰に応用できる手軽な方法です。ただし痛みが強いときは無理をせず、専門家や医療機関に相談を。

車種によって負担も変わる。タイプ別ケアのポイント

最後に、車種・乗り方によるポイント。

前傾姿勢になるスポーツタイプの車種なら、首・肩・手首と、硬くなりやすい太ももの前を重点的に。一方、アメリカンやアップライトな車種などで反り腰になりやすい人は、太もも裏や腰まわりを意識します。同じバイクでも、車種やライディングフォームによって体にかかる負担は異なるため、自分の姿勢に合わせてケアする場所を変えることがポイントです。

膝を立てた状態からお尻を持ち上げる「ヒップリフト」。臀部や体幹まわりを使うトレーニングです

また、前傾姿勢のスポーツバイクに乗る人は、ストレッチだけでなく、臀部や体幹まわりの筋肉を使うトレーニングを取り入れるのもひとつの方法です。ライディング姿勢を支える体づくりという視点も意識してみましょう。

痛みは“降りる理由”になる前に

腰や肩のつらさを、何となく我慢し続ける必要はありません。まず自分のタイプを知り、乗る前に硬い場所をゆるめ、休憩中に肩甲骨と体をリセットする。疲れをためないことは、集中力を保ち、安全に走ることにもつながります。これからも安全に、長く相棒と付き合うために、今日からのひと手間を。

なお、強い痛みやしびれなどがある場合はセルフケアだけで対処せず、医療機関に相談しましょう。

丸山 修平
アイオースポーツマッサージ湘南。あん摩マッサージ指圧師(国家資格)、アスレティックトレーナー(JSPO-AT)、日本トレーニング指導者協会認定トレーニング指導者(JATI-ATI)。競輪・ロードバイク・トライアスロンなど、競技者のコンディショニングを手がける。
アイオースポーツマッサージ湘南

https://ioshonan.com/

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