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“久しぶり”だからこそ聞いて欲しい。これからライダーとして復活するみなさんへ(宮城光さん)

日本自動車工業会がまとめた「2019年度二輪車市場動向調査」によると、2019年の二輪車新規購入者の平均年齢は54.7歳と元気な中高年が増えています。しかし一方で、警察庁の統計によるとこの年代における二輪車の交通死亡事故率も増加傾向にあります。活発な中高年ライダーとバイク事故率は、何か因果関係があるのでしょうか。

そこで今回は、日頃からライディングスクール等で同世代のリターンライダーと多く接している宮城光(みやぎひかる)さんに、これからリターンを考えている大人世代に伝えたいメッセージを伺いました。

 

宮城光さんプロフィール

1962年生まれ。全日本選手権で1983・1984年と二年連続チャンピオンを獲得したほか、その後も全米選手権への参戦、優勝など数々の軌跡を残し、後に四輪の世界でもスーパー耐久シリーズで活躍と、輝かしい実績を持つ。また、2016年にはボンネビル最高速記録を達成し、世界記録保持者の称号を与えられる。

現在ではこれらの経験をいかし、二輪・四輪ジャーナリストとして、MotoGP中継の解説をはじめ、ホンダコレクションホールに陳列されている歴代車両のテストライダー・ドライバー、ライディンググスクールのインストラクター、一般財団法人東京都交通安全協会や一般社団法人埼玉県安全運転管理者協会での講習など、多岐にわたって活躍。

 

昔やっていたからといって、数十年ブランクがあったら、いきなりフルマラソンを走る人はいないでしょ?

21世紀になったのを境に、モノに対する見方=価値がかなり変わりました。ファッションにおける古着の普及と同様に、バイクにおいても往年のバイクが見直され、レンタカーにはかなり遅れをとったものの、昨今はレンタルバイクという選択肢も定着してきました。

最も変化が大きいのが購買形態。販売店に足を運ばずにネット購入が急速に普及し、更にはオークションサイトやフリマサイトによる個人間取引も盛んに行われ、他人が履いたバイク用ブーツからバイク本体でさえも右から左へと売られていきます。

そんな目まぐるしく変化する時代に企業戦士として社会を支えてきた”アラフィフ世代”(50歳前後の世代)が、仕事や子育ても落ち着き、さあ憧れの、あるいは久しぶりのビッグバイクをと思う人が増えていると、たびたびニュースになります。そこでバイクの頂点を極めた宮城さんだからこそ伝えたいのが、見出しのメッセージなのです。

大人だからこそ、大人に相応しいカムバックをしてほしい。空いたブランクの分だけ、42.195キロではなく、5キロから、10キロから走り始めて欲しい、と。

 

宮城さんが薦める大人の寄り道とは?

40、50代は、明らかに年齢も意識も若者より高くかっこいいライダーであって欲しい、そんな切な願いを持つ宮城さんが薦めるのが、大人流の寄り道です。

今でもバイクを複数台所有しており、プライベートでもバイクライフを楽しむ宮城さん。

ちょっと耳を疑ったのは、「今はスピードに全く興味ないんですよ。」を笑顔で即答。

「スリルでなく五感をフルに使い、肌で感じ、身体で感じ、バランス感覚を養い、視界に入る景色を楽しむ事こそがバイクの楽しさです。自分が楽しく乗っている事が一番だと思います。どんなバイクを所有しているかではなく、どう楽しんでいるかが大切な事じゃないですか。」

Honda のワークスライダーまで登り詰めた宮城さんが語る言葉は胸に刺さります。

そこで、宮城さんが薦めるのは、”大人ならではの寄り道”でした。

「バイクは大人が乗るモノ。本来は大人が若者の見本になって欲しい。だからこそ、昔着ていたジャケットやヘルメットは横に置いて、最新技術のプロテクターが内蔵されているジャケットや、インカムを付けたヘルメット等、最新のライディングギアもぜひ使ってみて欲しい。」

「イマドキのバイクで身体のウォームアップ、最新のライディングギアを使いこなして、これから再び楽しむバイクライフのウォームアップをしてほしい」

現代のバイクやギアのテクノロジーに、長らくブランクのあった自分の心身の対応力をつけてから、最終目的のバイクに乗って欲しい。というのが宮城さんの言う寄り道でした。

 

バイクレッスンによる技術向上と自分に合ったサイズ選びが重要

その寄り道の方法として、薦めてくれたのが2つ。

 

まず1つ目はレッスンです。

ご存知の通り、キャブレターはインジェクションタイプに変わり、さらにスロットルはワイヤーから電子制御へと変わっています。これによりスロットルの開度と加速フィーリングは大きく変わり、無駄のないダイレクトな加速をしてくれるのが現代のバイクです。

さらに、国内モデルにおいても126cc以上はABS装着が義務付けられ、宮城さんのライディングスクールでは、ブレーキロックやABS作動の感覚を掴む指導もしているとのことでした。確かに、もしものときの性能技術ですので、体験はもとより練習すらできませんよね。そこで宮城さんが薦めるのは、最新のバイクが体験出来るレッスンです。

以前よりも簡単に加速する事はできても、衝突や転倒をしないように止まる事ができず事故に至るケースをよく耳にするとの事でした。それこそがレッスンにこだわる理由です。なお、宮城さんのライディングスクールでも、9割の受講生が急制動に苦手意識があるそうです。

宮城さんに「教習所で運転の基礎を学んだ後、何か指導を受けた事ありますか?」と問いただされ、「確かに無いな」と深く頷きました。

 

そして2つ目が250㏄クラス。

近年、250ccクラスは、若者を中心に人気が再び加熱しています。

多種多様なジャンルが揃い、各メーカーのラインアップもカラーリングを含めると実に200種類以上あります。

街中で活躍する150ccクラスのスクーターモデルから、シート高の低いクルーザーモデル(昔で言うアメリカン)、レース用バイクの血筋を引いたフルカウルのスポーツモデル、高い視線で疲労の少ないアドベンチャーモデル、定番のネイキッドモデルからオフロードモデルまで、バラエティに富んだラインアップが揃っています。

 

「ビッグバイクに比べて軽量で取り回しし易いモデルが多く、気持ちに余裕の持てるこのクラスで、身体と気持ちのウォームアップやバイクテクノロジーへの対応力も養えますし、将来、お子さんが乗りたいと言った時にも適切なアドバイスが出来るのではないでしょうか。」

そしてこれは補助的な事柄なのかもしれませんが、活況の250㏄クラスは、もちろんバイクの状態にもよりますが、リセールバリューも高いようです。

250ccクラスは、決してビッグバイクの廉価版などではありません。排気量こそ小さいものの、技術進化によって必要十分なパワーを発揮してくれますし、ビッグバイクに比べて軽量で取り回しし易い傑作モデル揃いです。

いつか再びビッグバイクに乗るための重要なウォームアップとして、決して無駄にはならない寄り道ではないでしょうか。

 

大人だからこそ、ライダーの模範となって欲しい。家族を想い決して事故を起こして欲しくない。大人の余裕があるからこそウォームアップして欲しい、と語る宮城さん。

長年バイクの世界に携わり、今でも自身が思う存分バイクを楽しみ、その傍でライディングレッスンを通しユーザーとの接点を持ち続ける宮城さんの言葉は、実にロジカルで知見に基づいた的確なアドバイスでした。

ビッグバイクは確かに魅力的、だからこそブランクがあったら昔の記憶ではなく、ご自分の現在の肉体年齢にも相談をして、ご自分をアップデートしていただいては。

コロナ終息後にリターンを検討している方は、大人の寄り道を考えてみてはいかがでしょうか?

日本自動車工業会「2019年度二輪車市場動向調査」

https://www.jama.or.jp/lib/invest_analysis/two-wheeled.html

警察庁「交通事故統計」(2021)

https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/toukeihyo.html

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