
【第3回】安心・安全のためのライディングギア選びに役立つ基礎知識
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シリーズ第3回となる今さら聞けないバイクの専門用語解説、今回はライダーが身につける「ライディングギア」についてご説明します。着用が義務づけられているヘルメットをはじめ、ライディング時に身につけておきたい、身につけておくと快適になるグッズが数多く存在します。「そんなアイテムまであるんだ」という発見もあることでしょう。ぜひご一読ください。
ヘルメット

現代のバイク用ヘルメットは、大きくこの5タイプに分けられます。それぞれのスタイルを詳しく解説していきましょう。
一方で、一般社団法人 ヘルメット工業会が基準とする日本工業規格(JIS規格)では、乗車用ヘルメットは頭や顔を覆う範囲によりそのタイプが分かれています。後頭部までを覆う「スリークオーター形」、後頭部を途中までカバーしている「ハーフ形」、頭部のすべてに加え口元までを一体成型している「フルフェース形」、口元が開いている「オープンフェース形」と、形状によりタイプが区分されています。参考として下記サイトをご覧ください。
https://japan-helmet.com/products/index.html
フルフェースヘルメット

その名の通り、顔全体を覆うのがフルフェースヘルメット(以下、フルフェース)です。頭部はもちろんのこと、顎までをしっかりとガードするため、ヘルメットの中ではもっとも保護範囲が広いと言えます。各ヘルメットメーカーのフラッグシップはほとんどがフルフェースですし、レースではフルフェースの着用が義務付けられている(※一般公道用よりも厳格な規格があります)ことからも、その安全性の高さが伺えます。近年ではサンバイザーを内蔵した快適性の高いモデルもあります。
ジェットヘルメット

ジェット戦闘機のパイロットが着用するヘルメットに形状が似ていることから名付けられたジェットヘルメット(以下、ジェット)は、オープンフェースヘルメットとも呼ばれます。完全に頭部を覆うフルフェースと比較すると、視界を広く確保できるので周囲の状況をより把握しやすいというメリットがあります。また開放感があることからツーリングライダーから支持を得ています。
シールドやベンチレーションが標準装備された高機能タイプと、特に機能を有さないクラシックタイプがあります。クラシックタイプはシールドを後付けすることができるものもあります。シールドを取り付けずともヘルメットとして使用できますが、飛び石や虫などの飛来物から目を守るためにサングラスやゴーグルなどのオートバイ用アイウェアを着用しましょう。
システムヘルメット

フルフェースと同じ形状ながら、顔を覆っている部分が開閉できるのがシステムヘルメット(以下、システム)です。フルフェースと同等の保護範囲を保ちつつ、休憩時にはヘルメットを着用したままでも飲み物が飲めたり、視界を広げられる開閉機能が大きな利便性を生んでいます。多機能な分、フルフェースやジェットに比べて重くなってしまいますが、近年は軽量なモデルも登場しています。
オフロードヘルメット

フルフェースにカテゴライズされながら、オフロード走行に特化した機能を備えているのがこのオフロードヘルメット(以下、オフロード)です。日差しや前走者が巻き上げる泥や砂から視野を守る、帽子のツバのようなバイザーは、林道ツーリングでは木の枝などから顔を守ってくれる役目もあります。大きく張り出たチンガード(顎を保護する部位)は、激しいオフロード走行でも呼吸を確保するための設計になっています。シールドが装備されていないタイプを着用する際は、オフロード専用ゴーグルを装着しましょう。
ツーリングライダー向けにシールド付きのモデルも販売されており、これらは「アドベンチャーヘルメット」や「マルチパーパスヘルメット」、「クロスオーバーへルメット」などと呼ばれております。ツーリングを楽しむライダーに愛用されています。
ハーフヘルメット

帽子のように頭部だけを守る仕様になっているのが「ハーフヘルメット」です。メーカーが使用推奨する「125cc以下専用」と書かれたステッカーが貼られています。形状を見るとお分かりになるかと思いますが、他のタイプに比べて保護範囲がもっとも狭くなります。ヘルメットを着用する際は、用途に合わせてご使用ください。ハーフヘルメットは安い価格帯のものもありますが、モデルを選ぶ際にはPSCやSGマークが貼付されたヘルメットを選ぶように心がけましょう。
グローブ

バイクに乗る上で欠かせないライディングギアの一つがグローブです。そのタイプも大きく分けると3つあり、「オールシーズンタイプ」「サマーシーズンタイプ」「ウインターシーズンタイプ」となります。サマーシーズンタイプは暑い夏場でも手汗などで操作性を損ねないようメッシュ素材を用いた通気性の良いグローブに、ウインターシーズングローブは寒さで手が冷えて操作を困難にしないよう防寒性に秀でたグローブとなっています。最近では電熱線の内蔵されたヒートグローブもあります。用途が異なる一般のグローブとは違い、バイクライディングに特化した機能がどのタイプにも備わっています。
万が一の転倒時にはじめに地面に手をつく確率は非常に高く、もし素手の状態でその状況に陥ったら大変な怪我につながってしまいます。また、硬質ゴムやスポンジラバーといったゴム素材が用いられるハンドルグリップは、素手よりもグローブを着用した方が滑らないので、操作性と安全性を高められます。必需品と捉えて着用するようにしましょう。
プロテクター

令和6(2024)年3月7日に警察庁が発表した「令和5年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」の「二輪車の事故死者(508人)」の損傷主部位(致命傷の部位)では、1位が「頭部」(187人 / 全体の36.8%)、2位が「胸部」(165人 / 全体の32.5%)、3位が「頸部」(45人 / 全体の8.9%) となっています。頭部はヘルメットをしっかりと着用することで守り、そして胸部はプロテクターで守らなければなりません。
「胸部プロテクター」「脊髄プロテクター」「肘プロテクター」「膝プロテクター」等、未着用だと万が一の際に大怪我をしてしまう主要な部位を守るプロテクターが揃っています。そしてプロテクターにもヘルメットと同様、製造物の信頼性を表す「EN規格」があり、その証として「CEマーク」と呼ばれるステッカーが貼られます。プロテクターを購入する際は、CEマーク付きの製品を選ぶようにしましょう。
ライディングジャケット

グローブと同様、バイクに乗る際に着用したいのがライディングジャケットです。その名の通りライディングに特化した設計のジャケットで、一般衣料ブランドの製品と異なり、ライディングフォームを支えるデザインは体にぴったりと合い、それによって走行風によるバタつきを抑えて疲労軽減につなげています。さらに強度の高い素材とプロテクターを組み合わせた製品は、転倒時の怪我から体を守ってくれます。
夏場はその暑さから、つい薄着でバイクに乗ってしまいたくなりますが、半袖だと紫外線を直接腕に受けてしまい、日焼けによる疲労で長袖着用時よりも疲れてしまったり、もしもの場合に大きな怪我に繋がる恐れもあります。メッシュ地を使用した通気性の良い夏用ライディングジャケット(メッシュジャケット)もあるので、バイクに乗る際はぜひ着用するようにしましょう。
ライディングパンツ

ライディングジャケットとセットで用いられるのがライディングパンツです。ジャケットと同様、膝プロテクター(備え付けと脱着可能なものがあります)とバタつきを防ぐライディング向けのデザインで仕上げられており、快適なライディングを堪能できます。メッシュ素材の夏用パンツ、そして冬用には防寒性に優れたパンツや重ね着するオーバーパンツが取り揃えられています。ご自分のバイクライフに合わせたパンツを選べば、バイクに乗るのがもっと快適で楽しくなるでしょう。
ライディングブーツ・シューズ

エンジニアやコンバットタイプのブーツからスニーカータイプまで、さまざまな種類があります。ライディング用であれば、踝(くるぶし)や踵(かかと)にプロテクターが内蔵されていて、転倒時の安全性を高めてくれます。また、左足の甲部分にシフトプロテクターを装備していて、ブーツやシューズ表面の傷みを軽減できます。
電熱ウェア

電熱ウェアとは、ジャケットやベストに電熱線を内蔵させた防寒用ウェアのことです。ヒートジャケットとも呼ばれています。インナーとして着用するウェア類が主で、電熱グローブ、電熱ブーツなどライディング時の指先やつま先を寒さから守ってくれるバイク用ギアも揃っています。
バイクに内蔵されるバッテリーを電源にするタイプと、モバイルバッテリーなどを用いるタイプに分かれます。前者はバッテリー切れの心配がなく、ずっと暖かい状態を保てるのがメリットですが、用いる際にバイクのバッテリーと接続せねばなりません。後者の場合はバッテリーが衣類と一体化しているので、気軽に着用できるのがメリットです。デメリットは、使用時間に限りがあることです。また、バイクのバッテリーを用いるタイプと比べて発熱量が低い点もあります。
バイク用エアバッグ

近年のクルマには標準装備されているエアバッグが、「着るエアバッグ」としてバイク用製品が販売されています。形状はベスト型で、引っ張るとエアバッグが起動するストラップをあらかじめバイクに装着しておくシステムになっています。この他に、センサーによって起動するタイプもあります。
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レイングッズ

バイク用のレイングッズは、走行時のバタつき防止や雨の侵入を防ぐ仕様が基本で、一般的な雨具とは異なります。ウェアについては上下がセパレートになっているタイプと、ワンピース型の2タイプがあります。この他、雨の中でも操作性を損なわないレイングローブ、シューズの上から着用するシューズカバーもあります。雨の日のライディングにおいては、濡れた路面で足が滑る危険性があるので、しっかりグリップしてくれるバイク用シューズカバーを選ぶことをオススメします。
近年は天候が変わりやすく、突然の雨に見舞われることも少なくありません。遠出の際はレイングッズを一式持っていくようにしましょう。
インナーウェア

バイク用のインナーウェアは大きく分けて2種類あります。暑い夏でも体を涼しく保ってくれる冷却素材を使った夏用インナーウェアと、体温低下から体を守るための防寒用インナーウェアです。いずれも上下ともさまざまな製品が出ており、着膨れしないようぴったりとフィットするものが主です。レイングッズとも共通しますが、寒さからつま先を守ってくれる防水ツーリングソックスも防寒に役立ちます。
夏場などはどうしても薄着をしたくなりがちですが、万が一の転倒時に大怪我をしないよう長袖のウェアを着用せねばなりません。冷却効果を備えた夏用インナーウェアと合わせることで、厳しい暑さと日差しから体を守れるので、ぜひ活用してください。
インカム

今や着用しているライダーが珍しくないインカムは、「インターコミュニケーションシステム」の略称です。本体をヘルメット外側に、イヤホンとマイクをヘルメット内に取り付けて接続することで、一緒にツーリングするライダーやパッセンジャーと通話できます。スマートフォンと接続すれば、ナビゲーションの音声案内や音楽が聞けます。
製品によって性能が異なり、会話可能な人数が2人までのものから、10人まで可能なものがあります。機能によって価格も変わりますので、自分のバイクライフに合ったインカムを選びましょう。
ヘルメット装着型のドライブレコーダー

バイクでもクルマと同じく、車体に装着するタイプのドライブレコーダーが多いですが、ギアとしてライダーが身につけるドライブレコーダーも販売されています。主にヘルメットに装着するタイプで、バイクのバッテリーを電源として用いる車載タイプと異なり取り付けが簡単なこと、複数台のバイクを所有するライダーはこれひとつで事足りることがメリットです。使用する際は、取扱説明書をよく読んで正しく装着してください。
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用途に合った正しいギア選びを

着用義務があるヘルメットを除いて、ウェア類に関してはバイク専用製品でなくともライディングは可能です。しかし、バイク専用に開発されたジャケットやグローブ、シューズなどはライディング時の疲労軽減や操作性を損なわないように設計されており、快適で安全なバイクライフのためにもバイク専用ギアを選ぶようにしましょう。
そうした必需品に加えて、インカムやドライブレコーダー、エアバッグなどさらに快適性、安全性を高めてくれる製品も数多く取り揃えられています。気になるアイテムは手にとってみて、バイクショップやバイク用品店のスタッフなど詳しい方の意見を参考に、自分のバイクライフに合ったものを選ぶのが良いでしょう。