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日本ヘルメット工業会ってどんな団体?

ライディング時における万が一の事故の際、大切な頭部を守ってくれるヘルメットには、消費生活用製品安全法という法律に基づいて製品の安全性を消費者に保証するPSC(Product Safety of Consumer Productsの略)マークの貼付が義務付けられています。そして、乗車用ヘルメットのPSC基準の調査や研究を行っているのが、今回ご紹介する一般社団法人 日本ヘルメット工業会です。産業用・乗車用・自転車用と、国内で販売されているさまざまなヘルメットの安全基準を管理し、私たちライダーの安全を影で支える日本ヘルメット工業会の活動内容や取り組みをご紹介しましょう。

この記事を読み終わったら、ぜひあなたのヘルメットにもPSCマークがついているかどうかを確かめてみてくださいね。

日本ヘルメット工業会とは

1957(昭和32)年、ヘルメット製造業の有志6社が集った連絡会が結成され、1964(昭和39)年に「日本安全帽工業会(当時の名称)」として「日本ヘルメット工業会」は誕生しました。

さまざまな分野のヘルメット国内製造業者、輸入業者ら30社が会員となっており、関係官庁などへの窓口、国内に流通するヘルメットの規格制定や改正、適正使用を促す活動などを行っています。

2006(平成18)年には、乗車用ヘルメットや自転車用ヘルメットの規格となるJIS規格改正原案作成委員会へ安全性向上のための改正原案の提出。2014(平成26)年にはJIS T8131(自転車用ヘルメット)及びJIS T8133(乗車用ヘルメット)の改正原案の提出など、日本経済や社会情勢などに適応しながら安心安全な環境づくりのために活動しています。今後さらに多くの関係者、輸入業者と協力しながらヘルメット業界を支えていく、日本で唯一のヘルメットに関する工業会です。

日本ヘルメット工業会の主な活動

日本ヘルメット工業会が精力的に取り組んでいる7つの活動についてご紹介します。

1:各種の規格等の制定

日本国内でヘルメットを製造・販売するために必要な規格の制定に携わっています。この規格は、ヘルメットを着用した際の高い安全性を証明するためのものであり、模造品や粗悪品から使用者を守るための大きな役割を果たしています。

2:ヘルメットの品質向上や試験・検査方法の研究及び調査

時代によって変化し続ける乗り物や使用環境に、ヘルメット側も対応していく必要があります。その時々で求められるヘルメットの品質や安全性の試験、検査方法の研究に取り組んでいます。

3:研究会及び関係機関への協力、関係官庁との連携

日本ヘルメット工業会に所属する国内のヘルメット製造メーカーや輸入事業者との関係性の支援や、経済産業省、厚生労働省、警察庁、労働基準局等の関係官庁との連携に尽力しています。日本のヘルメット業界において、産業界と官庁、国内と国外を結ぶハブ的な役割を担っているのが日本ヘルメット工業会です。

4:外国規格のヘルメットの研究及び品質向上

ヘルメットの形状や規格は、使用者の骨格や使用状況などに応じる必要があるため、各国ごとに定められている内容は異なります。日本ヘルメット工業会では外国の規格や技術に関する情報の収集や研究を行い、国内製造メーカーに共有することでヘルメット品質向上に貢献しています。

5:市場の分析及び検討

日本国内におけるヘルメットの販売状況、販売金額等を集計し、統計の算出や市場分析を行っています。数値化することで市場動向を正しく理解し、より的確な指針を日本のヘルメット業界に示しています。

6:災害救援物資として救援寄付行為

災害時の救援物資としてヘルメットの寄付を行っています。これまで、1986(昭和61)年の伊豆大島噴火、1991(平成3)年の雲仙普賢岳噴火、1995(平成7)年の阪神・淡路大地震、2011(平成23)年の東日本大震災などの際に、ヘルメットを寄付してきました。各自治体によるキャンペーン等への寄贈なども行っています。

7:ヘルメットリサイクル

日本ヘルメット工業会は、使用済みの産業用ヘルメットを回収して再利用するリサイクルにも力を入れています。材質に応じて、家電などの部品や建築材料、セメント原料などに利用できる樹脂へと再生させています。このサスティナブルな取り組みは2003(平成15)年からずっと続いている事業です。

ヘルメットの種類

日本ヘルメット工業会では、さまざまな分野のヘルメットを対象として活動しており、主に3種類に分類されます。メインとなる3つの分野のヘルメットをご紹介していきましょう。

産業用ヘルメット

保護帽とも呼ばれる産業用ヘルメットは、頭部の損傷や感電の危険を防止・軽減するために使用されています。労働安全衛生法が定める規格に適合したものが産業用ヘルメットと認定されます。土木や建設などの工事現場、家庭での防災用などさまざまな場所で使用されており、形状やバリエーションも豊かなのが特徴です。

乗車用ヘルメット

乗車用ヘルメットは、バイクに乗ったライダーが事故に遭った際に頭部を守るためのものです。お椀のような形状のハーフ形、セミジェットとも呼ばれるスリークォーターズ形、オープンフェース形、フルフェース形に大別されます。日本で販売されているものには、PSCマークの貼付が法律で義務付けられています。

自転車用ヘルメット

自転車用ヘルメットは、自転車に乗っている人の頭部を事故や転倒によるケガから守るためのものです。日常的に使用しやすいシンプルなデザインのタイプや、競技で使用される軽量で空気の流れを考慮されたタイプなど、用途にあわせてさまざまな形状が展開されています。2023(令和5)年から一般道での自転車走行時のヘルメット着用が努力義務となったことで、通勤通学時などにも使用しやすいカジュアルなデザインのタイプも増えてきています。

ライダーのヘルメットの安全性を保証する上で重要なこと

日本ヘルメット工業会 乗車用ヘルメット技術委員会に所属する株式会社SHOEI 執行役員 品質保証部長 西城 芳晃氏と株式会社アライヘルメット 品質管理部 ゼネラルマネージャー 山本 正樹氏に、ヘルメットの安全性向上に向けての取り組みやライダーにぜひ知っておいていただきたいことを語っていただきました。

「ヘルメットを使用しているのに、頭部を怪我してしまったり、命に関わる事態に陥るケースがありますが、そのほとんどが正しく使用できていない3つの理由に起因しています。

1つ目は、あご紐がしっかり締められていないなど、正しく着用できていないことです。万が一の際にヘルメットが脱げてしまわないよう、締めすぎず緩めすぎず、適切にあご紐を締めておきましょう。

2つ目は、ライダーの頭に合ったサイズのヘルメットを選んでいないことです。各ヘルメットメーカーが推奨する適正サイズは、実際にご本人が着用すると狭く窮屈に感じることがあり、1サイズ大きいヘルメットを選ばれる方もいらっしゃいますが、こちらもあご紐をしっかり締めることと同様に適正サイズのヘルメットをお選びいただきたいです。

3つ目は、PSCの基準をクリアしたヘルメットを利用されていないケースです。安全性を確保するための大切な基準ですので、必ずPSC基準のヘルメットをご利用ください」(西城氏)

「一見するとPSC基準に準じたヘルメットそっくりに作られた模造品が通販等で販売されていることもあります。販売価格は本物よりも安いので、消費者は『PSC基準の安全なヘルメットをお得に購入できる』と、誤って購入してしまうようです。実際に模造品を見たのですが、本物とは比べものにならない粗悪品でしたので、万が一のときに大切な頭を守ってくれる保証にはならないでしょう。

今なお二輪車による交通死亡事故での致命傷部位で『頭部』が35.5%(「令和6年中の二輪車交通事故死者の致命傷部位(警察庁)」)ともっとも高く、万が一の際でも命を落とす可能性を軽減する安全性が高いヘルメットの普及に取り組んでいる当会としては、適切なヘルメットを正しく着用いただきたいのです。

スマートフォンやパソコンの画面だけで本物か偽物かを見分けるのは難しいかと思いますので、サイズチェックも合わせて行える正規販売店でのご購入を推奨しています」(山本氏)

人それぞれ頭の形は異なりますし、だからこそ現物を試着して自分の頭に合うヘルメットを見つけることが重要ですね。

「ヘルメットのサイズ選びは、靴のフィッティングと似ていると思います。大きめのものを履くと靴ずれしてしまいますし、小さいものだとキツくて履き続けられないですよね。メジャーで頭の鉢周り(ハチマキを巻く位置)のサイズを測って、自分のサイズを把握しておくとヘルメット選びの際に大変役立ちます。測った数値を基準に、前後2サイズぐらいを販売店で試着すれば、自分に合ったヘルメットが早く見つかるでしょう。

ライダーの安全を守るための製品について、あらゆる対応をしているのが私たち日本ヘルメット工業会です。ライダーの皆さんには正しい製品を正しくご利用いただきたいと思っています」(西城氏)

「さまざまな分野のヘルメットの製造・販売・輸入に携わっている企業の団体である私たち日本ヘルメット工業会は、頭部という非常に重要な部位を守るための製品を取り扱う企業と、安全を保証する規格を取り決める官庁とを繋ぐ重要な役割を担っています。

時代が進むにつれてヘルメットに求められる安全性にも変化が生まれますので、何より利用者の安全確保を第一に考えられたヘルメットが市場に送り出されるよう尽力することが私たちの使命だと考えています。適正な規格のヘルメットが流通し、利用者が正しく使用することで死亡事故を減らしていければ、バイクの楽しさをより多くの人に知ってもらえる社会に繋がっていくと信じています」(山本氏)

安全性の高いヘルメットに欠かせない団体

日本ヘルメット工業会は、日本で購入できるヘルメットの安全性や信頼性を守るため、そして使用者が頭部に怪我を負ったり命を落としてしまわないために、さまざまな方面へ働きかけるとともにより高いレベルでの研究と安全性を担保する規格の制定に努めています。乗車用ヘルメット技術委員会には、お話を聞いたお二方の他にも名だたる日本のヘルメットメーカーが名を連ねており、各企業のノウハウや知識が持ち寄られて規格が設けられ、私たちライダーの安全が守られているわけです。

改めて、今使用しているヘルメットが適正サイズか確認してみてはいかがでしょうか。そしてヘルメット工業会の取り組みを多くのライダーに伝え、安全で安心のバイクライフが送れる社会へとともに近づけましょう。

一般社団法人 日本ヘルメット工業会

https://japan-helmet.com/

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