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教習所はいまだ入校殺到なのか?アフターコロナで見えてきた教習所の進化と深化

寒暖差の激しかった10月を過ぎ、朝方の冷え込みから初冬の訪れを感じる季節となりました。

コロナ禍では、密を避けた移動手段であり独りで手軽に楽しめるアウトドア志向の選択肢としてバイクに注目が集まり、教習所はバイク免許の取得希望者で溢れました。そのため、一時期は多数の入校待ちや、入校後も教習の予約が取りづらいなどといった需要過多な状態に陥ることもありました。一方、2023年5月より新型コロナウイルスは季節性インフルエンザと同様の5類感染症へと移行され、渡航制限の水際対策も終了し、街でもマスクを着けている人もめっきり減りました。

いわゆる“アフターコロナ”へと転換した現在、教習所はどのような状況なのでしょうか。静岡県田方郡にあるT.D.S.田方自動車学校と、神奈川県横浜市の鴨居自動車学校を取材し、教習所の今が見えてきました。

卒業生や地域住民を巻き込みエンタメ融合で進化する田方自動車学校

1963年の開業から60年の歴史を持つ田方自動車学校では、2003年より毎年11月にT.D.S.フェスティバルというコンテンツ盛りだくさんのイベントを開催しています。

T.D.S.フェスティバルの内容は、レンタルバイクや自動車ディーラーなど本来の教習所らしい出展コンテンツに加え、ハンドマッサージ、血管年齢測定、近隣のCO-OP、子供服などの展示、おもちゃの金魚すくいやプログラミング体験、ふわふわ、おもしろ自転車試乗など、乗り物好きに関わらずファミリーや全世代が楽しめるコンテンツとなっています。

さらに、富士宮やきそばや静岡おでんなどといった静岡グルメを堪能できる20以上の飲食ブースも出店するほか、東京ディズニーリゾート宿泊券プレゼントやよしもと芸人によるお笑いライブなど、教習所が一大テーマパークへと変身します。それでいて入場無料というのだから驚きです。本年(2023年)は3年ぶりの開催となりますが、前回は約5,000人の来場があったそうです。

地域住民をはじめ、入校希望者や卒業生たちと、こうしたイベントを通じた接点作りに注力する田方自動車学校における、コロナ禍前と後の入校者数について、田方自動車学校自動車学校事業部 CS課の根上 浩(以下、根上さん)にお話を伺いしました。

年次(10月~9月)までの入校者数を見てみると、2020年〜2021年にかけて急増しましたが、それも一段落してコロナ禍前のレベルに戻った印象です。もともと2017年頃から普通自動二輪免許の取得希望者は増えているので、その時期からの上昇トレンドはもう少し続くのではないかと思います。

教習所側でも、入校されたらなるべく予約が取れて教習が進みやすい時期をお勧めしており、例としてクルマの教習がひと段落する4月、バイクシーズンが始まる9月あたりになるべく教習しやすいような環境に調整するよう心がけています。

2023年 春の試乗会

屋外でのイベントが緩和されてからの春の試乗会でも、多くの方が来場されました。

普通自動二輪免許保有者でありながら大型バイクを、また複数メーカーのモデルを乗り比べできる試乗会は、全国的に見てもあまり多くないことから、県外からも多くのライダーにお越しいただきました。
11月のT.D.S.フェスティバルでは入校特典も用意しているので、これをきっかけに入校される方も多いです。

バイクは免許取得後に自分のバイクを購入するまでが意外と大変な苦労をされる方が少なくないので、バイク購入後の楽しみをなるべく提供できるよう、コロナ前に開催していた春と秋のツーリング企画や、北海道ツーリング特典などを再開したいと考えています。

次に、最近の入校生のプロフィールについて尋ねました。

最近の入校者の動向としては、20代と50代が多い傾向が続いています。また、バイクへの興味がそこまで高くない段階から入校される方も増えてきていますので、そうした方にもわかり易いように専門的なバイク用語の使い方などには細心の注意を払っています。

また、Uターンが難しかったら降車して押し歩きもよしとするなど、今の教習生の感覚にあった教習を心がけています。

やはり教習所にバイク免許取得希望者が殺到したのは、コロナ禍による一過性のものもあったようです。しかし、本質としては着実に需要が増加しており、若者層と中高年層を中心に入校があるようです。

また、免許を取得したら(卒業したら)縁が切れるのではなく、家族や友人連れでまた卒業した教習所へ行きやすいきっかけを多く提供していることに、教習所自体の役割の変化を感じました。敷居の低い、参加しやすいきっかけ作りは、どの世界も大切なのかもしれません。

なるほど、ライダーと教習所の関係を免許取得で終わらせるのではなく、そのバイク熱を家族や周りの方へも影響を与えるほど、エンターテイメント化しているのですね。

マーケティングによって教習所の役割を深化させる鴨居自動車学校

次に取材へ伺ったのは神奈川県横浜市緑区の鴨居駅から徒歩5分、商店街の外れにある鴨居自動車学校。こちらは公共交通機関を用いたアクセスがしやすいこともあり、通勤・通学後の時間を活用して多くの教習生が訪れていました。

鴨居自動車学校 教務部教務 出川 義尚(以下、出川さん)に尋ねたのは、先の田方自動車学校と同様、コロナ禍前後での入校者数の推移についてです。

以前は「若い時にバイクの免許を取得できなかった」などといった理由から中高年層が多い時期もあり、そうした教習生はバイクの知識について既に十分ある方が多かったですが、最近は初めてバイクを触るというような方の入所が増えました。

2017年ころから毎年5〜10%増で2021年まで続いていましたが、2022年に入り少し落ち着き始めています。

年齢別入稿者割合(資料提供:鴨居自動車学校)

今年(2023年)の入校者数は、コロナ禍以前よりも少し多いか同程度にとどまっています。コロナ禍以前にあたる2018年(通年)を100とした場合、今年の半期集計(1~6月)で50を上回っていますので通年ではほぼ2018年同様と見ています。

昨年(2022年)の実績値を見てみると、男女比では83:17、年代では10〜20代が約48%、30〜40代が約34%、50代以上が約18%となっています。傾向としては40~50代の構成比が増し、この影響で10〜20代の構成比が相対的に下がっていますが、それでも半数近い数字(48.4%)となっています。

鴨居では男女別、職業別、年代別、その他で分析をしており、その他柏秀樹さんのイブニングスクール、教習所内でのイベントなどでの意見も貴重な情報としてします。

鴨居駅に近く、商店街を抜けたすぐのロケーションで、電車でも仕事帰りでも来校しやすく多くの入校者を受け入れていることもあり、しっかりとプロフィールだけでなく、ユーザーの生の声も参考に分析しているようでした。

整備風景
タンデムスクール風景

次に、これから予定している企画などの試みについてもお話を伺いました。

最近肌で感じているのは、卒業後は免許以外の用事がないと来校しにくいと感じている方が多いということです。クルマの免許を取得した方が今度はバイク免許を、あるいは逆のケースなど、再度来校して頂ける可能性はまだまだあると思います。そのあたりの悩みごとに耳を傾けるべく、教習所に再来する敷居を下げるために、今後は教習所でのコーヒーミーティング開催を検討しています。

ペーパーライダーのマンツーマン教習は今年6月に始めたばかりですが、これも一つのライダーの悩み解決に対する提案です。

そのほか、コロナ禍で一時中断していたキッズスクールの再開や、タンデムスクール、試乗会も12月に計画をしており、さまざまなカタチで教習所に来られる機会をこれからも提供したいと思います。

また、教習生の待合室にはサービス(メンテナンス)可能なバイクジャッキを設置し、今後、必要なメンテナンスについても教習の中で教えることができるようにしたいと企画しています。

2つの教習所への取材を通じて、教習所側としても、適宜適切な対応ででその存在や楽しさを向上させる努力をされていることが、非常によくわかりました。単なる免許取得に向けた教習の場ではなく、せっかくバイクライフを始めた方のライフスタイルに定着するよう、さまざまなアプローチが教習所で企画されていることはライダーにとっても心強い存在なのではないでしょうか。

一時期に比べると入校者数に落ち着きを取り戻しつつある教習所ですが、今が“通い時”なのかもしれません。

ところで、最近2つの教習所ともに多く問い合わせがあるのが「出力を抑えた125㏄以下の車両が乗れるようになるのなら、小型限定免許(AT/MT)を取る必要がなくなるのか?」という質問です。これは、警察庁が2023年9月7日発表した、原付免許で乗れる車両区分の見直し検討に入るという報道に起因します。つまり、現在の排気量50cc以下のモデルだけでなく、最高出力を4kw以下に制御した総排気量125㏄以下の二輪車を原動機付自転車と区分することです。

たとえ出力を抑えた125cc以下の車両が原付免許(普通免許を含む)で乗れるようになったとしても、原付(50㏄以下)に相当する車両区分の法規(時速30キロ制限、二段階右折)は変わらないのでご理解ください。

T.D.S.田方自動車学校

https://tagata-ds.com

鴨居自動車学校

https://www.kamoi-ds.co.jp

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