
平嶋夏海さんの体験談から学ぶバイクの楽しみ方
目次 - INDEX
女性ライダーは年々増え、趣味や通勤、日常の移動手段としてバイクに乗る人も珍しくなくなってきました。その一方で、足つきや取り回し、装備選びなど、悩みを持つ方も多いでしょう。今回は、女性ライダーの悩みについて、2026年に一般社団法人 日本二輪車普及安全協会の「JAPAN RIDERS」アンバサダーに就任した平嶋夏海さんにお話を伺いました。乗り始めた頃の戸惑いや日々感じる悩みに、どのように向き合ってきたのでしょうか。平嶋さんの体験をもとに、女性ライダーならではの“リアル”に触れていきます。
女性ライダーの現状と悩み
女性ライダーは増加傾向にある
内閣府の交通安全白書(令和7年)によると、令和6年末時点の運転免許保有者数は全体では前年より減少した一方、女性は増加しています。こうした動きも背景に、バイクに関心を持つ女性や、実際に乗り始める女性が注目されるようになっています。
そんななか、バイクに乗る女性ならではの悩みも存在します。身体的な差や装備、周囲の環境などが関係し、たとえば、車体の重さや足つきの不安は、特に小柄な方にとっては停車や低速走行の際に緊張を感じる要因となります。
また、装備面では、ヘルメット着用時にメイクや髪型が崩れやすい点も悩みの一つです。さらに、二輪免許保有者は依然として男性が多く、女性ライダーの比率がまだ低い環境では、一人で走ることに心理的な不安を感じる人もいます。
そうした悩みに、平嶋さん自身はどのように向き合ってきたのでしょうか。ここからは、本人の体験をもとに話を伺います。

平嶋 夏海(ひらじま なつみ)
2005年にAKB48第1期生としてデビュー。2012年のグループ卒業後は、オートバイ用品店「NAPS」のイメージキャラクターを務めるほか、BS11「大人のバイク時間 MOTORISE」や二輪専門誌への出演、YouTubeチャンネル「はしれ!なっちゃんねる」での発信など、多方面で活躍しています。2026年に、一般社団法人 日本二輪車普及安全協会の「JAPAN RIDERS」アンバサダーに就任。自らも教習所での苦労や公道デビュー時の不安を経験してきた立場から、初心者や女性ライダーに寄り添うメッセージを発信し続けています。
平嶋夏海さんが語る、女性ライダーの悩みと工夫
――はじめに、バイクに乗り始めたきっかけを教えてください。
「子供の頃から親とタンデムツーリングへ行ったり、オフロードのコースに連れて行ってもらったりしていたので、バイクが近い存在でした。オフロードコースでは自分で運転をしていたこともあって、タンデムツーリングに行ったときに、自分でアクセルやハンドルの操作をせず、後ろに乗ってただ待っているだけというのはなんだかつまんないなと思ってしまって……。『大人になったら二台のバイクでツーリングに行きたいな』と思ったのがきっかけで、高校卒業してから免許を取って、バイクに乗り始めました」
――乗り始めた頃、どんなことに不安を感じていましたか?
「やっぱり一人で公道を走るというのは不安が大きかったです。父もバイクに乗っているからこそ、子供に事故を起こしてほしくないという親としての思いがあったみたいで、最初は教習所で開催されている講習会に連れて行ってもらいました。教習所を卒業して初めて公道に出るときも、父が前をクルマで走り、私が後ろをバイクで付いて30分くらい走る、運転の練習をサポートしてくれてとても心強かったです。
でも、乗り始めたばかりの頃は乗っているだけでアドレナリンが出ていて、自分がどれだけ体力を使っているのかわかっていませんでした。実際に、父との初めての長距離ツーリングで富士山を見に行ったとき、高速を降りてすぐ父が休憩を提案してくれたのですが、私は『全然大丈夫、行ける!』と言って休憩をせずに走り続けました。ただ、やはり疲れていたんでしょうね。下道のカーブで、今考えればとっても緩やかなカーブだったのですが、高速道路の速度感覚が抜けていなかったのか曲がりきれず、コーナーの外側に少しはみ出して、砂利道に入ってしまったんです。幸い止まれましたが、立ちゴケのような形になってしまって……。自分がどれだけ体力を消耗していたのか、また高速道路とのスピード感覚のズレをちゃんとわかっていなかったんだなと気づきました。
この教訓を踏まえて、最初のツーリングは一人で行くよりも誰かが一緒にいてくれる状況の方が安心だと思います。教習所では一般道の教習しかないので、高速道路は本当に緊張しましたし、緊張する方は多いと思います。周囲のクルマに合わせて加速し、合流車に迷惑をかけないようメリハリをつけて速度を上げる。頭では分かっていても、実際にスピードメーターが上がっていく恐怖心は相当なものでした。私の場合は、父のようにインカムを繋いで一緒に走る人がいたことが大きかったです。多くの失敗をフォローしてもらいましたし、あの経験をもし一人きりでこなさなければならなかったとしたら……と考えると、今でもいてくれて良かった、と思います」
――その怖さや体力については、どう乗り越えましたか?
「バイクに乗り続けるうちに、自然と感覚が掴めるようになってきました。それは単なる運転技術だけでなく、事前に『これくらい走ったら休憩を取る』といった、自分の体力の目安が分かってきたことも大きいです。
安全に乗るためには、自分の「持久力」を把握することが欠かせないと思います。長距離が得意な人もいれば、そうでない人もいます。私の場合は、『自分は休憩をこまめに取るタイプなんだ』と自分のことを理解したので、限界が来る前に自分のペースで走るという向き合い方が今はできるようになりました。
また、私の場合はたまたま父親が『ジムカーナ』をやっていて、その流れで私も練習会に参加する機会がありました。そこで練習を重ねたことで、バイクの知識が蓄積されていったというのはありますね。ジムカーナは結構転ぶことも多い競技なのですが、転んでも自分で素早く起こしてもう一度走り出す必要があります。その経験を通して、転倒した後に冷静になれるようになりましたし、慌てずに素早く行動することを学べたのは大きかったです」

――取り回しや足つきなどで「これは大変だな」と思ったことはありますか?
「足つきや取り回しへの不安は、今でも感じることがあります。どんなに慣れたと言っても、かかとまでべったり足がつく男性に比べれば、信号で止まるときなどは絶対に気をつかっていますし、停止直前のブレーキングも慎重に行うようにしています。大切なのは、自分の体格で無理なく扱える範囲を理解することだと思います。身長は変えられないので、その前提で工夫するようにしています。解決策としては、厚底のブーツを履いたり、ローダウンしたりローシートをつけたりすることですかね。でも、やっぱり限界はあります。どうしても大きすぎて無理なバイクは、来世の自分に託すことにして、基本的には自分の体格に合った、自分が乗れる範囲内のバイクを楽しもう、と今は思っています。
また、お仕事でいろいろなバイクに乗らせていただく際、たとえばクルーザーで峠道に行くと、コーナリング時に外側の腕が伸びやすく、操作しづらさを感じることがあります。そういうときは、意識的に前方のクルマと車間を空けて、余裕を持ってスピードを乗せて走れるようにするなど工夫しています。自分の弱点を理解し、それをカバーしつつ、決して格好をつけないことが安全に楽しむコツだと思います」
――装備を選ぶうえで困ったことはありましたか?
「女性用のものはそもそも作られている個数が少なくて、好きなデザインがあっても、どうしてもサイズや数に限りがあると実感します。今も『これが着たい』と思っても店舗に在庫がなくて、違うサイズで試着だけしてネットで購入する、ということは結構ありますね。サイズが合わなくて、本当はMがいいけれど仕方なくLを買う、といったこともありました。私が乗り始めた当初は、父と一緒に都内の用品店を5店舗くらい回ったこともありました。結局サイズがなくてブーツなどは通販に頼りました。
ただ、最近はレディースコーナーも広がり、以前より選択肢が増えてきたと感じています。また、もし好みのブランドを見つけたら、用品店だけで見るのではなく、そのブランドの直営店に行くことをおすすめします。サイズやカラーが豊富に揃っているので、自分の欲しいものが手に入る可能性が高いです」
――身だしなみ、特にヘルメットを被る際にメイクや髪型が崩れてしまうと思います。これについては何か対策されていますか?
「髪型については、帽子を持って行くようにしています。ヘルメットを脱いだ後に帽子を被って髪型の崩れを気にしなくていいようにしています。もし帽子を持っていけない場合は、前髪カーラーやコードレスのヘアアイロンを持ち歩いたりすることもあります。どうしても完璧に維持するのは難しいですが……。
メイクについては、ヘルメットの内装部分にファンデーションがついてしまうのが気になります。特に夏場やレースのときは汗をかいてどうしても落ちてしまうので、バイクに乗るときは基本ファンデーションは塗らず、日焼け止めだけ塗るようにして、メイクの崩れが目立たないようにしています。ただ、全部メイクを薄くするのではなく、目元はウォータープルーフのメイク道具でしっかりメイクする、というようにバランスを取る工夫をしています」
――装備を着用していると、お手洗いなどの脱ぎ着が大変だという声もあります。
「私はツーリングのときに上下がつながっているタイプのウェアを着ないので、お手洗いで困ることはそれほどないです。たとえば夏場にデニムを履くと汗で張り付いたりするので、それを防ぐために接触冷感インナーを履くなど、季節ごとに工夫はしています。
脱ぎ着の面で言えば、お手洗いよりも座敷で食事をする際に靴を脱ぐのが大変かもしれません。安全のために足首までしっかり隠れるライディングシューズを履いているので、座敷のお店などでサッと脱げないというのはあります。ただ、何かあったときにくるぶしを怪我したら歩けなくなってしまいますから、そこは安全を優先しています」

――最初に乗り始めた頃と今を比べて、ご自身のなかで変わったと感じる部分はありますか?
「よりバイク自体を楽しめるようになったなと思います。初心者の頃は緊張で頭がいっぱいになって疲れてしまうこともありましたが、心に余裕ができると、バイクそのもののポテンシャルや機能、そして周りの風景を存分に楽しめるようになりました。この余裕については、慣れはもちろんですが『時間の余裕』もすごく大事にしています。ツーリングのときは、不測の事態や事故を防ぐために、予定より早めに着くようなプランを立てて、ゆとりを持って行動することを心がけています。余裕ができることで、楽しめる幅もぐっと広がります。
一方で、慣れてきたからといって運転操作が雑にならないようには気をつけています。定期的にバイクでお出かけするのはもちろん、タイヤの空気圧や溝、オイルの状態、電灯類などを頻繁にチェックするようにしています。たくさん乗ることで、走行中だけでなく、走っていない時間にもバイクの知識を深める機会が増えると思いますし、それがライディングやカスタム、次に行きたい場所の幅を広げてくれると思っています。安全に走るためにも、たくさん乗ることはやはり大切ですね」
――振り返ってみて、「気にしすぎだったかも」と思うことはありますか?
「やはり女性ライダーは少ないので、サービスエリアなどでは、女性ライダーというだけで目を向けられることがあります。初めは見られていると『ちゃんと喋らなきゃ』とか『上手に発進しなきゃ』と緊張してしまって、逆によろけそうになることがありました。でも今振り返ると、周りの人はただバイクが好きで見ているだけだし、誰に評価されるわけでもないと気づきました。当時の自分には、『下手だっていいじゃん、気にしなくて大丈夫だよ』と伝えたいです」
――女性ライダーが少ない環境で、人との関係に戸惑うこともありますよね……
「女性ということで注目されたり、いわゆる『教えたがり』の方に出会ったりすることもあります。アドバイスはありがたく聞きつつも、あまり考えすぎず、自分の信頼できる人の言葉を大切にするのがいいと思います。特に女性は、同じ女性からのアドバイスがすごく役に立つことが多いです。男性とは体格や筋力が違うので、たとえば、少し押せばいいとアドバイスをいただいて同じようにやっても、私はその倍くらいの力をかけないと車体を動かせないことがあります。ライディングスキルにしてもカスタム方法にしても、女性同士の方が共通して理解できるポイントが多いのはたしかです」

――最後に、悩みを持つ女性ライダーやこれからバイクに乗る女性に向けてメッセージをお願いします。
「最初から一人で頑張ろうとせず、信頼できる人の力を借りながら少しずつ経験を重ねていってほしいです。また、私は本当にバイクに乗るのが下手くそな時期があってたくさん失敗もしてきました。みんな失敗してきているので、一回の失敗で諦めずに、バイクの楽しさを掴むまで乗ってほしいなと思います。
ただ、怪我をしないために最低限のウェアはしっかり準備してください。一式揃えるのは痛い出費かもしれませんが、身の安全を守るための投資だと思えば、決して高くはないです。怖いことがあっても、それはみんなが通る道。上手に、そして長く乗り続けてほしいなと思います」
バイクに乗るうえで感じる不安や悩みは、決して特別なものではありません。平嶋さんの言葉が示すように、自分に合った工夫を重ね、必要なときには周囲を頼ることが、長く安全に楽しむための第一歩になります。
平嶋夏海(Instagram)
https://www.instagram.com/natsuminsta528/
はしれ!なっちゃんねる【平嶋夏海】(YouTube)
https://www.youtube.com/@nacchannel_bike
運転免許保有者数及び運転免許試験の実施状況|内閣府
https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/r07kou_haku/zenbun/genkyo/h1/h1b1s2_3.html

















