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初めてのサーキットデビュー完全ガイド

サーキットを走ってみたいけど、何を準備すればいいのか、当日は何をするのか、正直よくわからない。そんな不安を抱えたまま、最初の一歩を踏み出せずにいるライダーは少なくありません。しかし実際は、体験イベントや走行会など、その入り口は広く、正しい準備と基本さえ押さえれば安全に楽しめる世界です。本記事では、初めてサーキットを走る人のために、体験イベントから走行会、ライセンス取得までの3STEPを、元全日本ロードレース選手権TT-F1クラスチャンピオンの辻本聡さんのアドバイスとともに解説します。

辻本聡さん
1985年に全日本ロードレース選手権TT-F1クラスでデビューを果たすと、同年にチャンピオンを獲得。さらにTT-F3クラスでも上位に入る活躍を見せるなど、1980〜1990年代を通じて全日本ロードレース選手権を牽引したトップライダーの一人。引退後もスクールやメディア出演、さらには自身が経営するカフェのつながりを生かした“カフェ耐”を主催するなど、モータースポーツの普及に携わる。

【Step1】まずは体験から。つなぎ不要で走れるサーキット体験イベント

サーキットを走行するためには、基本的にレーシングスーツ(以下、革つなぎ)が必要です。ただ、一度もサーキットを走ったことがない方は、革つなぎを持っていないことが多いでしょう。そんな初めての方の最初の一歩におすすめなのが、体験イベントです。体験イベントは、初心者が安心してコースを走ることができるように設定されたプログラムで、多くの場合先導付きで進行します。参加者同士が競い合うような内容ではないため、いきなりスピードを出さないといけないということもありません。

また、装備については革つなぎがなくても参加できるケースが多く、フルフェイスヘルメットと長袖・長ズボン、グローブ、そしてくるぶしを覆うシューズという基本装備さえ整えれば参加可能です。費用は数千円から2万円前後が目安で、走行時間は20分程度の枠を複数回、あるいは半日プログラムとして構成されることが一般的です。走行前にはブリーフィングが行われ、走行中もスタッフが常駐しているなど、安全管理が徹底されています。

ただし、“体験”とあるように、多くのイベントでは低い速度域で周回を重ねるイメージです。「サーキットを走るならスピードを出したい」と考えている方にとっては少し物足りないかもしれませんが、安全な一歩を確実に踏み出し、サーキットの雰囲気を感じることができます。

初心者におすすめのサーキット体験

1:桶川スポーツランド「ビギナーズデー」

埼玉県にある二輪車やカート、ジムカーナ用サーキットである桶川スポーツランドの「ビギナーズデー」は、サーキット初心者に特化したイベントです。通常のスポーツ走行よりもハードルを下げ、「安全にのんびり走ること」を目的に開催されています。最大の特徴は、革つなぎがなくても参加できる先導付きクラスが用意されている点です。インストラクターが走行ラインやピットイン・アウトの方法、基本マナーについて実走を通して説明してくれるため、初参加でも不安を抱えにくいです。

クラスは排気量やレベル別に細かく分けられているため、ミニバイクから大型車両まで参加可能です。速さを競う日ではないため、スポーツ走行の雰囲気にまだ慣れていない人にも適しています。参加費は1枠3,200円で、事前予約制(支払いは当日)となっています。

2:筑波サーキット「コース2000の体験走行枠」

伝説のレースや二輪・四輪のインプレ記事でおなじみの国内公認サーキット、筑波サーキットでは、日本でも有数のテクニカルなレイアウトを誇る「コース2000」をライディングできる「体験走行枠」が設けられています。これは先導車付きで安全なペースで周回するプログラムで、筑波サーキットライセンスは不要です。参加条件は有効な運転免許証を持っていることで、バイクはナンバー付き登録車両が対象です。装備はヘルメットやグローブ、長袖・長ズボン、くるぶしを覆う靴といった基本的な安全装備があれば参加可能です。

3:鈴鹿サーキット「レーシングコースぷらっと体験スペシャル」

世界的な知名度を誇る鈴鹿サーキット(三重県)でも、初心者向けのプログラムが用意されています。「レーシングコースぷらっと体験スペシャル」は、レーシングコースをインストラクター先導で走行できる体験型プログラムです。革つなぎなしでも参加でき、自分のバイクで鈴鹿の本コースを体験できます。募集人数は22名、受講料は1万4,850円。サーキット内でバイクを停めて撮影することも可能で、バイクで散歩するような感覚でコースを楽しむことができます。

4:鈴鹿ツインサーキット「サーキット体感走行」

三重県内の鈴鹿ツインサーキットは、よりコンパクトなレイアウトで初心者枠が豊富に設定されており、スピードレンジも比較的穏やかです。鈴鹿ツインサーキットの「サーキット体感走行」は、1周1,750mのフルコースを先導付きで5周走行する内容で、サーキット未経験者でも安心してコースに出られる入門向けメニューです。参加には自動二輪免許が必要で、つなぎは不要。長袖長ズボンなど、ツーリングウエアで参加できます。なお、ヘルメットはジェットタイプ、グローブは軍手でも参加可能ということで、装備を整えきれていない方も参加できます。走行は台数を制限して実施されるため、落ち着いた環境でサーキット走行を体験できます。

5:トミンモーターランド「SRTT トミンビギナーサーキット入門」

茨城県にあるトミンモーターランドで開催される「SRTT トミンビギナーサーキット入門」は、サーキット初心者を対象にしたイベントです。午前は座学講習とライセンス講習がセットで行われ、コース攻略のコツや安全走行の理論を学べます。午後はBコースを使った実技走行講習があり、フォームの作り方やコーナリングの進め方、メリハリのあるライディングなど、サーキット走行の基礎を丁寧に実践で学べる内容です。

参加費は1日コースが1万2,000円、午後のみの半日コースは8,500円です。2度目以降のリピーター向け割引料金も設定されており、当日飛び込み参加は別途料金が加算されるため、基本的には事前申し込みが推奨されます。さらに、同イベントに参加すると、希望者にはトミンモーターランドのスポーツライセンスを通常価格より半額で発行することができます。革つなぎでの参加を推奨していますが、持っていなければツーリングウエアでも参加可能。その場合、パッド入りのウエアやヒザスライダーなど安全装備が必要で、バイクはスクーター以外であれば参加可能です。

辻本聡さんの“ワンポイント”

「サーキットデビューをするにあたり、多くのサーキットやショップが体験イベントを用意していて、初心者への間口は広く整っています。ただし、つなぎを着用しないイベントに関しては、安全面を考慮しスピードはそこまで出すことができません。先導付きで非常にゆっくりとした速度での走行になるため、サーキット走行というよりはコース見学に近い体験になる場合もあります。このSTEP1は、まずは雰囲気を掴んでみたい、サーキットに入ってみたい、という方が一歩踏み出すためのイベントです」

【Step2】つなぎを着て挑戦、ライセンス不要のショップ主催走行会

サーキットを走るにはライセンスが必要ですが、ショップ主催の走行会であればライセンスを持っていなくてもサーキットを走行できます。

そもそもライセンスはサーキットごとにあるため、例えば筑波サーキットでライセンスを取得しても、同じライセンスで他のサーキットを走行することはできません。しかし、ショップ主催の場合はライセンスを取得する代わりとして保険が用意されており、加入することで基本的にライセンスなしで走ることができる仕組みとなっています。例えば、ライコランド・南海部品グループ主催によるサーキット走行会「サーキットスマイル」は筑波サーキットで開催されましたが、ライセンスの取得は不要です。走行会によって会場が異なるので、ライセンスなしでいろいろなコースを走ってみたいという方は、ショップ主催の走行会に参加するのが良いでしょう。

なお、サーキット主催の走行会もありますが、これは同サーキットのライセンスを取得することが必要になります。継続的に通う、または一つのコースの走り方を教わりながらたくさん練習したいという方に向いているでしょう。

また、つなぎについては、走行会によってレンタルつなぎサービスが用意されていることもあれば、持参する必要がある場合もあります。自前の場合、つなぎを購入していくか、レンタルサービスを使用することをおすすめします。クシタニなどのメーカーもサービスを展開しているため、予算に合わせて準備していきましょう。

ショップ主催とサーキット主催、いずれの場合も事前に装備条件や参加基準を確認することを忘れないようにしましょう。

辻本聡さんの“ワンポイント”

「ショップ主催かサーキット主催か、どちらの走行会から始めるかは人それぞれですし、サーキットでライセンスを取ってから走行会に参加するという方もいます。この場合は、取得したライセンスのサーキットで行われる走行会の、保険加入が免除されるなどのメリットはあります。また、レンタルつなぎは主催者側がある程度用意しているか、個別で借りてくるか主催によって異なります。レンタルサービスの選び方も、予算など人によりますが、綺麗なつなぎを求めている場合、メーカーが行っているサービスを選ぶと質が良いと思います」

【Step3】ライセンスを取得して、本格走行へ

継続的に走りたいと考えたときに必要になるのがサーキットライセンスです。これは特定のサーキットでスポーツ走行を行うための資格制度で、座学講習や確認テスト、場合によっては実技講習を受けて取得します。費用は1万5,000円から3万円程度が目安で、有効期限は1年間の更新制が一般的です。

なお、一部サーキットでは、安全面強化として年齢等の条件によりエアバッグ付き革つなぎ(頸部保護を含む)の装着を義務付けています。条件は改定されるため、走行前に各サーキットの最新規定を必ず確認してください。

全国の本格サーキット

スポーツランドSUGO

宮城県にあるスポーツランドSUGOは全長約3.6km、高低差約70mというアップダウンの大きいレイアウトが特徴で、約700mのストレートとテクニカルセクションが組み合わさった走り応えのある構成です。全日本選手権も開催される本格的なコースとして知られています。スポーツ走行を行うには、ビジターとしても走行可能ですが、基本的にSSCM(SUGOスポーツクラブメンバー)ライセンスへ加入すると特典も付き、お得に走行することができます。区分はナンバー付き一般車両向けと競技車両向けに分かれており、MFJ競技ライセンスを取得すればレース仕様車での走行も可能になります。また、提携ショップ主催の走行会も行っていますので、興味のある方は気軽に問い合わせてみてはいかがでしょうか。

走行レベルは初心者向けのナンバー付き枠から、レース志向のライダーに向けた枠まで幅広く設定されています。走行前には講習やブリーフィングがあり、初めてでもルールを理解したうえでコースインできます。

筑波サーキット

茨城県の筑波サーキットは、コンパクトながら攻略性が高く、タイムアタック文化が根付いています。「コース2000」は、全長約2,000mで複雑なコーナーと比較的タイトなストレートが特徴で、初心者〜上級者まで対応するバランスの良いレイアウトです。

通常のスポーツ走行を行う場合は筑波サーキットライセンスが必要で、ファミリー走行やスポーツ走行など複数の走行クラスが用意されています。ライセンス取得者向けにはタイムによるクラス分けや走行アドバイザーの導入など、走行レベルに応じたフォロー体制も整っています。

モビリティリゾートもてぎ

栃木県茂木町にある国内屈指のモータースポーツ複合施設で、全長約4.8kmのロードコース(フルコース)は国内でもトップクラスの規模を誇ります。特にストレートの長さを生かしたブレーキング勝負や、リズム重視のコーナーが続く区間など、走りの醍醐味を味わえるコースレイアウトとなっています。

また、レーシングコースのほか、ショートコース、ドライビングスポーツランドやパレードラン用の施設もあり、幅広いニーズに対応しています。安全管理が徹底された走行枠の設定や、ピット・観客設備の充実も特徴の一つで、スポーツ走行だけでなく、家族や仲間とモータースポーツを楽しむ拠点としても人気があります。国内最高峰レースの開催実績を持つコースとして、スポーツ走行のステップアップにも最適な環境です。

富士スピードウェイ

静岡県の富士スピードウェイは、国内屈指の高速コースとして知られ、長大なメインストレートとテクニカル区間を併せ持ちます。高速域での安定性とブレーキング精度が求められます。

富士スピードウェイではサーキット走行イベントがあり、ライセンスの有無や経験に応じて複数の参加形態が用意されています。初心者向けの走行会や体験イベントでは、事前のミーティングでコースのルールや安全に関する説明を受け、スタッフの指示に従って走行できます。一方、スポーツ走行枠に参加する場合は、基本的に事前の申込みが必要で、走行当日は受付・車両チェック・ブリーフィングが行われます。

岡山国際サーキット

西日本を代表する岡山国際サーキットは、岡山県美作市に位置する全長約3.7kmの国際公認レーシングコースで、かつてF1や世界ツーリングカー選手権など国際レースが開催された歴史あるサーキットです。大小合わせて13のコーナーと2本のストレートを持つテクニカルなレイアウトが特徴です。コース幅は12〜15mと比較的広く、高速域と中低速コーナーがバランスよく配置されているため、走りのリズムを掴む楽しさがあります。参加者向けイベントや走行会も数多く開催され、初めてのスポーツ走行にも挑戦しやすい環境が整っています。

辻本聡さんの“ワンポイント”

「サーキットは怖いという印象を持つ方も多いかもしれませんが、実際は、初心者は10時から10時半、中級者は10時半から11時といったように、レベル別に初心者と経験者の走行枠が明確に分かれているため、安心して走ることができます。他にも、救護体制が整っていたり、黄旗で転倒をすぐに知らせたりと、安全面は十分に確保されています。

ただし、ライセンス取得後の走行に一人で行くのはおすすめしません。例えば転倒して足を怪我した場合、運転できなくなり一人で帰れなくなるなどリスクがあるので、なるべく複数人で、仲間と一緒に楽しむのが良いと思います。そのため、走行会やイベントに参加することは仲間を作る良い機会にもなります。一人で悩んでいる方はいきなりライセンスを取得してサーキット走行へ行くというよりも、STEP2を踏んでからライセンス取得へと踏み切るのが良いかもしれません。実際、走行会で意気投合し、一緒にサーキットライセンスを取得しに行く人も多いです」

【番外編】押さえておきたいサーキット走行のキホン

サーキット走行時のマナー

「コース内でのマナーについて、これは全てライセンスを取得する際に学ぶことができます。ライセンス取得時には必ず講習があり、サーキット内でのルールや各種旗の意味、黄色い旗による追い越し禁止の指示などを学びます。走行会でも事前に講習があり、初めての参加者は手を挙げれば丁寧に教えてもらえます。誰も何も教えてくれないということはありませんし、安全に走行できる環境は整っています。
初心者の方は、後ろから速い人が来たら怖く感じたり、慌ててしまうかもしれませんが、あまり周りを気にせず自分のペースで走っている方が安全だと思います。上級者の方が走りを見て、適切に避けて通ってくれますし、むしろ初心者の方が他のことを気にして譲ろうとするとかえって危険になることがあります」(辻本聡さん)

保険について

「サーキット走行には転倒などの危険が伴うため、保険への加入は必須です。サーキットで加入している保険、走行会やイベントの主催者側が用意する団体保険、個人の保険でサーキット走行時の事故をカバーするものなど、様々な選択肢があります。走行シーンに応じて必要になるものも変わるため、確認が必要です。特に個人の保険が適用できるのかどうかは、事前に確認しておくことをおすすめします」(辻本聡さん)

最後に、辻本さんが語るサーキット走行の魅力です。

「様々なコースをいかに攻略するかという点が最大の魅力です。同じバイクで、ライン取りやブレーキングポイントを工夫しながら、いかに良いベストタイムで1周を回れるかを追求することが面白さだと思っています。前回よりもコンマ1秒速く走れた、という達成感は格別です。また、サーキットにはコースレコードがあるので、それを目標にして、ブレーキングポイントを少しずつ奥にしたり、コーナーをより早く回ろうとしたり、少しずつ自分の限界を探っていく過程は楽しいです。毎周同じようなタイムで走るリズムが刻めるようになると、今度は誰かと競争したくなってレースに参加したくなります。

始めるにあたり、サーキット走行は事故や怪我のリスクがあり、覚悟は必要です。ただ、やりたいという気持ちがある人に対しては入口を広くして待っていますし、学ぶ環境もたくさんあります。その覚悟を決めるためのステップとして、まずは体験や走行会から始めてみてください」

サーキットは速い人のための場所という印象を持たれがちですが、実際には、フラッグで状況が即座に伝達されるほか、転倒時にはすぐに救護が駆けつけることができる、安全が整った環境です。体験イベント、走行会、ライセンス取得後のサーキット走行……初心者が一歩踏み出す環境は段階別に用意されています。

重要なのは、自分に合った入口を選ぶこと。自分は何から始めたら良いのか、今回の記事を参考にサーキット走行の楽しさを見つけてみてください。

桶川スポーツランド「ビギナーズデー」

https://okspo.jp/news/beginnersday/

TKクラブ「袖ヶ浦フォレストレースウェイゆったり走行会」

https://tkclub.flips.jp/mobile?page=page111

筑波サーキット「コース2000の体験走行枠」

https://www.tsukuba-circuit.jp/ride-drive/course2000.html

鈴鹿サーキット「レーシングコースぷらっと体験スペシャル」

https://www.suzukacircuit.jp/stec/bike/school/2017/racingcourse/

鈴鹿ツインサーキット「サーキット体感走行」

https://twincircuit.co.jp/guide/experience/

トミンモーターランド「SRTT トミンビギナーサーキット入門」

https://srtt.co.jp/tbc.html

スポーツランドSUGO

https://www.sportsland-sugo.co.jp/

筑波サーキット

https://www.tsukuba-circuit.jp/

モビリティリゾートもてぎ

https://www.mr-motegi.jp/motorsports_m/

富士スピードウェイ

https://www.fsw.tv/

岡山国際サーキット

https://www.okayama-international-circuit.jp/

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