急拡大の可能性:コネクテッドで拡張される新たなバイクライフ
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クルマにGPS式のカーナビゲーションが初めて採用されたのは1990年※のこと。それからほどなくして多くの車種に標準搭載され、現在では自車の位置や目的地までのルートを示すだけでなく、渋滞情報などもリアルタイムに取得反映される便利なアクセサリーであることは周知の事実でしょう。
※GPS式(人工衛星と連動して自車の位置を特定)カーナビゲーションを搭載したクルマが日本で出たのは1990年のことでした。但しその当時の機能としては自車の場所が地図上で示されるのみでした。
バイクの場合、こうした情報を得る方法は、長らく高速道路上の電光掲示板等に頼るしかありませんでしたが、遅れること数年、バイク用のナビゲーションが登場したことで情報化の流れは加速しました。また、デジタル液晶メーターを採用するモデルも増えたことにより、ナビゲーション機能が標準で組み込まれているものも増えてきました。
さらに、並行して普及と進化が進んだのが、デジタルデバイスであるスマートフォンです。デバイスの進化はもちろん、ソフトウェアであるアプリケーションをダウンロードすることで、ライディングをサポートする機能が刻一刻と進化しています。
そして、当然のごとく、バイクとスマートフォンというデジタルデバイスとがコネクトする時代となりました。
そこで今回は、現在国内バイクメーカー各社がリリースしているコネクテッドサービスとして、バイクと繋げることのできるアプリケーションを筆頭にご紹介します。
カワサキ「RIDEOLOGY THE APP MOTORCYCLE」&「Kawasaki SPIN」
RIDEOLOGY THE APP MOTORCYCLEについて
「RIDEOLOGY THE APP MOTORCYCLE」は、車両の状態や走行ログを確認したり、電話着信やメール/メッセージなどを液晶ディスプレイに表示/通知させることができるスマートフォンアプリです。主な機能は以下の通りです。
1:所有バイク情報の表示と設定変更
車両情報として、トリップメーター、オドメーター、ガソリン残量(EVではバッテリー残量)、航続可能距離など、車両状況に関する情報を確認することができます。
また、トラクションコントロールや電子制御サスペンションの設定など、バイクの各種電子制御システム設定を確認・変更することができます。なお、セッティングは車両から離れていても遠隔で可能です。
2:メンテナンスや走行ログの記録と閲覧
瞬間・平均速度や燃費が計測されるほか、走った日にちやライディング時間、走行距離といったライディングのログやメンテナンス記録も残すことができます。
また、走行したルートを車体の挙動と渋滞状況から、どの程度気持ち良く走れたかを自動的にスコア化し、道を表す色の濃度によって快適度が可視化されます。こうした走行ログはグラフや3Dアニメ―ションでも確認でき、自分の走りを客観的に見ることでライディングテクニック向上の参考にもなります。
3:ライダーとバイクの情報がシェアできる
同じアプリを使っているユーザー同士で、ライダーのプロフィールや走行ログ、位置情報などをシェアすることもできます。
4:統計情報の閲覧とランキング機能
走行距離の統計情報閲覧に加え、他のユーザーを含めたランキング機能もあります。ランキングの集計は、年間、月間、週間で表示されます。
※対応機能はモデルや年式により異なります。詳しくはウェブサイトをご確認ください。
Kawasaki SPINについて
「Kawasaki SPIN」は、Ninja H2 SX / Ninja H2 SX SE[2022~]に対応した、iOS・Android OS対応スマートフォンアプリです。「Kawasaki SPIN」に対応したサードパーティアプリをダウンロードすることで、ナビゲーションや音楽ストリーミングサービスなどをバイクの液晶ディスプレイに表示し利用することができます。
スズキ「SUZUKI mySPIN」
スズキのスマートフォンアプリ「SUZUKI mySPIN」は、6.5インチフルカラーTFT液晶マルチインフォメーションディスプレイを搭載したモデル専用アプリです。無線LANやBluetoothで接続することで、通常のスピードメーターの情報だけでなく、音楽や電話などスマートフォンの情報を表示することが可能になります。なお、アプリはiOS・Android OSの両方に対応しており、操作はバイクの左側ハンドルスイッチにあるモード/設定スイッチより、操作することができます。
主な機能は以下の通りです。
1:連絡先
発信者の名前や電話番号をディスプレイに表示することができます。ワイヤレスヘッドセットを使っての通話も可能です。
※発信の操作は安全な場所に停止するなど、安全が確保された状態でのみ行ってください
2:カレンダー
スマートフォンで登録したカレンダー情報をディスプレイ上に表示させ、スケジュールやリマインダーを確認することができます。
3:マップ
地図上で現在地の確認が可能。また、左ハンドルスイッチを操作しズームイン/アウトすることや、目的地を検索し、簡易な経路情報を得ることもできます。
※ナビ機能は別途サードパーティー製アプリが必要です。(使用可能アプリの例:Sygic GPS Navigation、REVER、FOBO Bike 2、Cardo Connect、ツーリングサポーターなど)
4:音楽
システムに接続されたワイヤレスヘッドセットを使って、スマートフォンの音楽ライブラリから音楽を聴くことができます。システムには2台のワイヤレスヘッドセットが接続可能なので、タンデムライダーもその音楽を一緒に聴くことも可能です。
5:電話の受発信
左ハンドルスイッチの操作で電話番号を直接入力するか、発信履歴の表示から電話をかけることができます。また、電話を受けると、画面に“Incoming Call”ポップアップ(受信中)が表示されます。
※停車中のみ電話番号を入力して電話をかけることができます
ホンダ「Honda RoadSync」&「HondaGO RIDE」
Honda RoadSyncについて
「Honda RoadSync」は、Honda スマートフォンボイスコントロールシステム搭載車(国内向けはCB1000R、X-ADV、XL750の3モデル)と連携させ、ハンドルスイッチによる操作またはインカムを通じて、ハンズフリーでメールや通話、音声の行先指示によるナビゲーション、音楽再生などができるAndroid OS対応のスマートフォンアプリです。(日本ではiOS非対応)
スマートフォンとバイクをBluetoothで接続して、スマートフォンに入っているナビゲーション、電話、メッセージ、音楽を、運転操作を妨げることなく利用できるシステムで、Hondaとグループ会社のDrivemodeで共同開発された独自技術です。
HondaGO RIDEについて
「HondaGO RIDE」は、バイクとの連携機能はなく、ライダーのバイクライフをサポートするサービスで、愛車のバイク情報を記録したり、ツーリング記録の共有や、メンテナンス情報、愛車遍歴などを入力して楽しむアプリとなっています。
主な機能は以下の通りです。
1:マイバイク
愛車を「マイバイク」に登録して、購入日や車検、給油履歴など様々な情報を記録することができます。さらに、愛車遍歴を記録することもできます。
2:ツーリング
ツーリングの記録をつけることができます。さらにツーリングプランを作成し、事前に仲間にシェアすることもできます。
3:メンテナンスノート
消耗品の交換や、定期点検などの整備記録をアプリに残すことができます。また、次回の交換時期や点検時期を通知することもできます。
4:バイクログ
メンテナンスしたタイミングや、ツーリングの思い出、レンタルバイクの履歴、給油したタイミングなど、バイクの思い出を時系列に振り返ることができます。
5:ポイント
このアプリでは、バイクに関する情報を入力したりツーリング記録を作成・公開することで、バイクライフを楽しみながらHondaGO RIDE独自のポイントを貯めることができます。さらに、HondaGO BIKE RENTALを利用することで利用料金の1%がポイントとして付与されます。貯まったポイントは、HondaGO BIKE RENTAL利用時やHondaGO BIKE GEARでのお買い物時に1P=1円でご利用可能です。
ヤマハ「MyRide-Link」「Y-Connect」「POWER TUNER」「YRC Y-TRAC」
MyRide-Linkについて
「MyRide-Link」は、TMAX560&TMAX560 TECH MAX[2022-2023]、NIKEN GT[2023]、TRACER9 GT+[2023]の4機種に対応した、iOS・Android OS対応スマートフォンアプリです。
車両とペアリングすることで以下の情報が得られます。
1:天気情報表示
アプリから現在地周辺エリアの天気情報を取得し、メーターに表示させることができます。
2:メールなどの通知
スマートフォンにメールなどの通知が届くと、メーター右上のアイコンが点灯して通知を表示させることができます。なお、どのアプリ通知を許可するかも任意で設定可能となっています。
3:ナビゲーションアプリ「Garmin Motorize」(有料)との連携表示
サードパーティアプリである「Garmin Motorize」アプリ(有料)と連携させることで、メーターにナビゲーションを表示させることができます。「Garmin Motorize」アプリの使用には、月額500円、または年額5,000円の費用が別途かかります(30日間の無料トライアルあり)。
4:最終駐車位置やそこからの目的地までの案内を表示
“Last mile navigation”は、車両を降りた後に利用するナビゲーション機能です。“Find my car”は、車両を降りた位置を表示する機能です。
Y-Connectについて
「Y-Connect」は、バイクライフをより快適かつ充実させるための車種専用スマートフォンアプリです。
対応モデルは、NMAX ABS[2021-2022]、 NMAX155 ABS[2022]、 X FORCE ABS[2022]、トリシティ125[2023]、トリシティ155[2023]、XMAX[2023]で、iOS・Android OSに対応しています。主な機能は以下の通りです。
※本アプリの利用には、YAMAHA MOTOR IDアカウントの登録が必要
- スマートフォンの通話着信等を車両メーターに表示
- 燃費管理
- メンテナンス推奨時期をお知らせ
- 最終駐車位置を記録
- 故障の際に通知を表示
- Revs Dashboard(エンジン回転数、スロットル開度、加速度、エコ運転状況、瞬間燃費などの表示)
- ランキング機能(本アプリユーザーによる走行距離、ECO運転のランキング表示機能)
POWER TUNERについて
「POWER TUNER」は、ヤマハの競技用オフロードモデル4機種(YZ450F[2018–24]、YZ250F [2019–24]、YZ450FX[2019–24]、YZ250FX[2020–24]に対応した、燃料噴射量(Fuel Injection)と点火時期(Ignition)、トラクションコントロール、レブリミットなどを調整可能とするスマートフォンアプリ(iOS・Android OS 両対応)です。
レースログや故障診断、車両状況チェックだけでなく、車速、スロットル開度、エンジン回転数、燃料消費量、水温、吸気温、バッテリー電圧、などもスマホ画面に表示させることができます。
YRC Y-TRACについて
YZF-R1MにCCU(コミュニケーション・コントロール・ユニット)を装着することで使用可能となる、サーキット走行を前提としたラップログを記録するためのアプリケーションです。iOSやAndroid OSの搭載されたスマートフォンやタブレットを使用して、YZF-R1Mのセッティングや走行分析をすることができます。
まとめると、ライダーが走行中にどのような機能を必要とし、それをいかに簡単操作できるか。そして、そのためにはバイク自体をどのように設計し、進化の目まぐるしいデジタルデバイスまたはアプリケーションとコネクテッドさせていくのか。
クルマでは当たり前のことも、バイクにおいてはこれからのデジタル進化に大きな期待が寄せられています。バイクおよびライダーと情報ネットワークが繋がることで、より安全で快適なバイクライフがサポートされるほか、バイクの利便性が向上することでバイクが一層見直され、バイク業界のさらなる市場規模拡大も期待されるのではないでしょうか。
カワサキ「RIDEOLOGY THE APP MOTORCYCLE」
https://www.kawasaki-cp.khi.co.jp/kawasaki_connect/jp/mc.html
スズキ「mySPIN」
https://www.globalsuzuki.com/motorcycle/app/suzukimyspin/suzukimyspin_man_jpn.pdf
ホンダ「Honda RoadSync」
https://global.honda/jp/tech/Honda_RoadSync/
ホンダ「HondaGO RIDE」
ヤマハ「MyRide-Link」
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/owner-support/connect/myride-link/
ヤマハ「POWER TUNER」
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/power/
ヤマハ「Y-Connect」
https://www.yamaha-motor.co.jp/mc/lineup/y-connect/