
今年も熱い戦いが始まる!2025年の国内二輪車レースの見どころを解説
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さまざまなカテゴリーで熱い戦いが繰り広げられるバイクレースが3月から各地で開幕します。一般財団法人日本モーターサイクルスポーツ協会(以下、MFJ)がロードレースやモトクロス、トライアルの全日本選手権を公認しています。各競技には主催者がいますが、ロードレースのプロモーションを担うMS・innovation、モトクロスとトライアルの運営を行うモトスポーツプロモーションに、各レースの魅力や2025年度の取り組みについて話を伺いました。これを読めば、いずれのレースも「一度は見に行きたい!」と思うこと間違いなし!
MFJとは

ロードレース、モトクロス、トライアル、エンデューロ、スーパーモト、スノーモビルという6種のモータースポーツを管理・統括しているのがMFJです。バイクレースの最高峰であるMotoGPなど、世界のバイク競技を統括するFIM(世界国際モーターサイクリズム連盟)に、日本で唯一加盟している国内競技連盟でもあります。
MFJの活動はバイク競技の公認・承認のほか、各レースの競技規則の制定と周知、車両や装備の公認、競技者、競技役員、主催者の資格認定と管理など、多岐にわたります。
MFJは年間約800もの大会運営に関わっており、今回は「ロードレース」「モトクロス」「トライアル」の3競技の全日本選手権について紹介します。
全日本レースの概要と2025年度の日程
MFJ全日本ロードレース選手権シリーズ

「MFJ全日本ロードレース選手権シリーズ」は、舗装路のサーキットで行われるロードレースの国内最高峰です。全国のサーキットを転戦し、規定周回数を速く走り切った順位に従い、ライダーにポイントが付与されます。各レースで獲得したポイント数により、年間チャンピオンを争うシリーズ戦です。世界に羽ばたいた全日本チャンピオンも多く、世界チャンピオンを獲得したライダーもいます。現在は排気量別のクラスやレギュレーションの異なる4カテゴリーが開催されています。
JSB1000 Supported by ETS Racing Fuels
国内バイクレースの頂点に位置するのがこのクラスです。国内4メーカーをはじめとする、各バイクメーカーの排気量1000ccクラスのフラグシップスポーツバイクを使用します。レースに向けてチューニングを施したレーシングバイクの最高出力は200馬力を優に超え、最高時速は約300kmに達します。また、世界に先駆けてカーボンニュートラル燃料を全面採用するなど、SDGsに配慮したレースでもあるのです。
ST1000 DUNLOP OFFICAL TYRE SUPPLIER
使用されるマシンはJSB1000クラスと同じですが、改造範囲が狭く、より市販車に近いレーシングバイクでレースが行われます。さらに使用するタイヤは、ダンロップが供給する専用タイヤのみという規則があります。イコールコンディションが徹底しているため、ライダーの技量が問われるカテゴリーと言えるでしょう。レーシングマシンのポテンシャルをいかに引き出せるかが、勝敗の鍵となります。
ST600 Supported by BRIDGESTONE
排気量600ccクラスを中心とした、市販スーパースポーツモデルを使用して争われるレースで、こちらのクラスではブリヂストンの溝付きタイヤが使用されます。改造範囲が狭く、ベース車両価格も排気量1000ccクラスに比べれば安いため、参戦コストが比較的低めなこともあり、多くのエントラントが参戦するクラスです。ステップアップを目指す若手ライダーからベテランまで、幅広いライダーによる熾烈な戦いが繰り広げられています。
J-GP3
排気量250ccの単気筒エンジンを搭載した、レース専用マシンで争われるカテゴリーがこのクラスです。現在の全日本ロードレース選手権では、唯一のレース専用マシンが使用されるレースとなっています。250cc単気筒と小排気量バイクながら、最高時速は約220kmに到達するレベルです。軽量クラスならではの接近戦は、手に汗握る迫力があります。常に混戦となるため、目の離せないレース展開が魅力です。若年ライダーの参戦も多く、選手育成の役割も担っているクラスです。
2025年 開催スケジュール
大会名 | 日程 | 会場 | 開催クラス | |
第1戦 | もてぎ2&4レース | 2025年4月19日 – 20日 | モビリティリゾートもてぎ(栃木県) | JSB1000 |
第2戦 | スーパーバイクレース in SUGO | 2025年5月24日 – 25日 | スポーツランドSUGO(宮城県) | 全クラス |
第3戦 | 筑波大会 | 2025年6月21日 – 22日 | 筑波サーキット(茨城県) | J-GP3 |
第4戦 | スーパーバイクレース in もてぎ | 2025年8月23日 – 24日 | モビリティリゾートもてぎ(栃木県) | 全クラス |
第5戦 | スーパーバイクレース in 九州 | 2025年9月13日 – 14日 | オートポリス(大分県) | 全クラス |
第6戦 | スーパーバイクレース in 岡山 | 2025年10月4日 – 5日 | 岡山国際サーキット(岡山県) | 全クラス |
最終戦 | 第57回MFJグランプリ スーパーバイクレース in 鈴鹿 | 2025年10月25日 – 26日 | 鈴鹿サーキット(三重県) | 全クラス |
D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ

「D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ」は、ダート路面かつアップダウンの激しい周回路で速さを競う、モトクロスの日本最高峰の選手権シリーズです。全国のモトクロス場を転戦し、各レースで獲得したポイント数により年間チャンピオンを争います。規定時間の中でもっとも多く周回を重ね、ゴールが早かった順により多くのポイントが付与されます。
使用するバイクは、モトクロッサーと呼ばれる競技専用車両です。モトクロッサーは未舗装路走行に特化した設計のバイクで、ダート路面での高い走破性を持つだけでなく、高いジャンプも可能としています。目を見張るようなスピード、そして高いジャンプで観客を魅了するモトクロス。「D.I.D全日本モトクロス選手権シリーズ」は、現在規則の異なる4カテゴリーが開催されています。
IA1(アイエーワン)
国内モトクロスの最高峰クラスがこちらです。4ストロークエンジン搭載車は排気量290cc〜450cc、2ストロークエンジン搭載車は排気量175cc〜250ccのモトクロッサーで争われます。競技時間は30分 + 1周が基本で、1大会に2レースを開催します。このレース形式を「2ヒート制」と呼びますが、大会によっては3ヒート制が採用されることもあり、その場合競技時間も変更されます。
IA2(アイエーツー)
こちらのクラスでは、4ストロークエンジン搭載車は排気量175cc〜250cc、2ストロークエンジン搭載車は排気量100cc〜125ccのモトクロッサーで争われます。競技時間は、基本的にIA1と同じです。若手ライダーが多いクラスですので、勢いのある走りが見られるところがポイントです。
IB-OPEN(アイビーオープン)
クラス名に“OPEN”とあるように、多彩な車両の参戦が認められています。前述の「IA1」「IA2」という両クラスに参戦している車両がすべて参加可能なクラスです。異なるのはライダーのライセンス。「IA1」と「IA2」は最上級ライセンスである「国際A級ライセンス」を所持するライダーのみが参戦可能で、「IB-OPEN」は、国際A級に次ぐ「国際B級ライセンス所持者」によるレースです。年間ランキング10位までのライダーは国際A級へ自動昇格となるため、上位を目指す争いは熾烈を極めます。
レディース
その名の示す通り女性ライダーだけが参加可能なレースです。4ストロークエンジン搭載車は排気量85cc〜150cc、2ストロークエンジン搭載車は排気量65cc〜85ccのモトクロッサーが参戦可能と定められています。近年、モトクロッサーも4ストロークエンジン搭載車が主流となっていますが、このクラスは2ストロークマシンと4ストロークマシンが真っ向勝負を展開します。また、競技時間が15分 + 1周と他クラスに比べて短いため、一瞬たりとも目を離せないスリリングな展開が魅力です。
開催スケジュール
大会名 | 日程 | 会場 | 開催クラス | |
第1戦 | HSR九州大会 | 2025年4月13日 | HSR九州(熊本県) | 全クラス |
第2戦 | SUGO大会 | 2025年4月26日 – 27日 | スポーツランドSUGO(宮城県) | 全クラス |
第3戦 | オフロードヴィレッジ大会 | 2025年5月17日 – 18日 | オフロードヴィレッジ(埼玉県) | 全クラス |
第4戦 | 中国大会 | 2025年6月14日 – 15日 | 世羅グリーンパーク弘楽園(広島県) | 全クラス |
第5戦 | 近畿大会 | 2025年9月20日 – 21日 | 名阪スポーツランド(奈良県) | 全クラス |
第6戦 | オフロードヴィレッジ大会 | 2025年10月18日 – 19日 | オフロードヴィレッジ(埼玉県) | 全クラス |
最終戦 | 第63回MFJ-GP モトクロス大会 | 2025年11月1日 – 2日 | スポーツランドSUGO(宮城県) | 全クラス |
MFJ全日本トライアル選手権シリーズ

バイクの競技というと“速さを競うもの”と考えてしまいがちですが、トライアルは違います。言うなれば“バイクを思うように操れるか”を競う競技なのです。普通ならバイクで走ることなど考えられない崖や、高低差の大きな人工的な障害物が設けられたコースを、足をつかずに走り抜けられるかで競技の順位を競います。
トライアルのトップライダーともなれば、長時間足を地面に着けずに静止させるのは当たり前。障害物をジャンプして超えたり、ほぼ垂直な壁を登ったり、乗車したままバックするなど、超人的な技を持っています。

「トライアラー」と呼ばれるトライアル専用バイクは、排気量およそ70kg台と超軽量です。競技中、ほぼ座ることがないので、シートもありません。排気量によるクラス分けがないことも、バイクの競技としては異色です。「MFJ全日本トライアル選手権シリーズ」は、そのトライアルの日本最高峰の大会です。現在は4クラスが開催されています。
IAスーパー
トライアルは「国際A級」が最上級ライセンスです。「IAスーパー」クラスは、トライアル国際A級ライダーの中でも、特に優秀な成績を収めたライダーのみが出場可能で、コースの難易度も高く設定されている国内トライアルの頂点です。また、トライアルは走行距離が短く、エンジンのピークパワーよりもトルク特性が重視される競技であるため、EV(電動)バイクの躍進が著しい競技でもあります。本クラスでは、エンジン搭載車とEVのトライアル車が激しく鎬を削ってシーンも注目のポイントです。
IA(国際A級)
こちらも「トライアル国際A級ライセンス」を所持するライダーのみ参戦可能なクラスです。「IAスーパークラス」ほど難易度の高いコースではないものの、十分なほど達人技を見られるクラスです。
レディース
「MFJトライアルライセンス」を所持し、地方選手権に出場している女性ライダーが参戦可能なクラスです。
IB(国際B級)
参加に必要なのは「トライアル国際B級ライセンス」となるクラスです。IA昇格を目指すライダーが、切磋琢磨しています。
開催スケジュール
大会名 | 日程 | 会場 | 開催クラス | |
第1戦 | 愛知・岡崎大会 | 2025年4月13日 | キョウセイドライバーランド(愛知県) | 全クラス |
第2戦 | 大分・玖珠大会 | 2025年4月27日 | 玖珠トライアルヒルズ(大分県) | 全クラス |
第3戦 | もてぎ大会 | 2025年6月8日 | モビリティリゾートもてぎ(栃木県) | 全クラス |
第4戦 | 北海道・和寒大会 | 2025年7月13日 | わっさむサーキット(北海道) | 全クラス |
第5戦 | 広島・三次灰塚大会 | 2025年9月7日 | 灰塚ダムトライアルパーク(広島県) | 全クラス |
第6戦 | 宮城・SUGO大会 | 2025年10月5日 | スポーツランドSUGO(宮城県) | 全クラス |
第7戦 | 和歌山・湯浅大会 | 2025年10月26日 | 湯浅トライアルパーク(和歌山県) | 全クラス |
第8戦 | City Trial Japan大会 | 2025年11月2日 | 調整中 | — |
2025年度の各レースの展望
全日本ロードレース選手権について

「MFJ全日本ロードレース選手権シリーズ」のトップカテゴリーJSB1000では昨シーズン、岡本裕生選手(現パタ・ヤマハ・テンケイト・レーシング所属 / 以下、岡本選手)が、チームメイトの中須賀克行選手(以下、中須賀選手)との熾烈な争いを制してチャンピオンに輝きました。岡本選手は、2025年からWSS(スーパースポーツ世界選手権)に参戦するので、JSB1000のディフェンディングチャンピオンが不在となります。

大本命と目されているのは、岡本選手のライバルだった中須賀選手です。中須賀選手は、これまでJSB1000で12回チャンピオンを獲得してきた実力の持ち主です。王座奪回を虎視眈々と狙っているのは間違いありません。近年は海外メーカー勢が力をつけてきているJSB1000ですが、日本メーカーの活躍に期待したいところです。
JSB1000以外では、ST1000クラスとST600クラスは、どちらもイコールコンディション度(同じ条件下でレースを行うこと)が高く、実力が拮抗しているので熾烈なレース展開が予想されます。誰がチャンピオンに輝くか想像がつかない、それが楽しさでもあるクラスです。
J-GP3は、スタートからゴールまで、もつれにもつれる激しいバトルが約束されたレースになります。次世代のレーシングライダー育成を目的に特別参戦枠が設けられていますから、若いライダーの台頭を楽しめるでしょう。
全日本モトクロス選手権について

2025年の「全日本モトクロス選手権」では、ポイント制度が大きく変わります。昨年まで16位以下のライダーには付与されなかったポイントが、完走した30位までのライダーに与えられることになりました。これまでのポイント計算が大きく変わるので、ランキング争いが混迷化し、よりスリリングな展開が期待されます。

トップカテゴリーであるIA1クラスの大本命は、ディフェンディングチャンピオンであるジェイ・ウィルソン選手(YAMAHA FACTORY RACING TEAM所属 / 以下、ジェイ選手)。2023年、2024年と連覇した王者が3連覇を目指します。そのジェイ選手の対抗馬と目されているのが、横山遥希選手(Honda DREAM Racing LG所属 / 以下、横山選手)です。横山選手は、ジェイ選手の母国でもあるモトクロス強国オーストラリアで経験を積み、昨年帰国と同時にホンダワークス入りした期待の新星です。横山選手と同じホンダの大倉由揮選手の活躍にも期待が集まります。

モトクロスのパドックは常にオープンで、選手との距離感も近いのが魅力のひとつです。各チームのテントを見て回ったり、“推し”のライダーの様子を間近で見られたりと、他にない楽しみがあります。
全日本モトクロス選手権では、家族で楽しめるコンテンツが用意されています。今年からキッズ向けの「電動モトクロッサー試乗会」が第3戦、第4戦、第6戦で開催予定なので、ぜひ参加してみてください。
全日本トライアル選手権について

「MFJ全日本トライアル選手権」のトップカテゴリーIAスーパークラスで、昨シーズンチャンピオンに輝いたのがホンダの小川友幸選手(TEAM MITANI HONDA所属 / 以下、小川選手)。12年連続、通算14回目の王座獲得という圧倒的な実力の持ち主です。今年49歳の小川選手がトップを走り、10代から60代までの選手がしのぎを削る年齢幅の広さもトライアルという競技の特徴です。小川選手の独走が続くのか、意外な新世代の台頭があるのか、見どころ満載の「全日本トライアル選手権」なのです。
さらなる見どころは参加マシンにもあります。排気量によるクラス分けがないので、近年はEV(電動)バイクが注目を集めています。昨シーズンにはヤマハのEVトライアラーが表彰台を独占する大会がありました。ガソリンエンジンバイクとEVバイクが同じ土俵で競い合うモータースポーツは、トライアルだけ。バイクの未来、バイクの進化を知るうえでトライアル観戦はうってつけと言えます。

エントラント(競技参加者)と観客の距離が近いのもトライアルの特徴です。競技が行われるコースのすぐ脇での観戦が可能なので、信じられないスーパーテクニックを目の前で楽しめます。また、ゴール後にエントラントと観客のあいだで「コール&レスポンス」のようなエール交換もお約束です。あらゆる意味での距離の近さが、トライアルの大きな魅力と言えます。

全日本トライアル選手権の第8戦となる「City Trial Japan」は、街中の一画にコースを作って開催されます。昨年に続いて今年も大阪で開催予定です。エクストリームスポーツのような世界を大都市の中心で楽しめる大会は、フェスが好きな人にオススメです。ぜひ足を運んでみてください。
限界に挑むバイクレースの世界へGO!

ロードレース、モトクロス、トライアルと、バイクのタイプからフィールドまですべてが異なりますが、いずれもバイクという乗り物の限界に挑戦している競技なのです。それぞれ会場もさまざまで、「あ、バイクで行ける距離の会場だ」という開催場所がきっとあるはずです。日常的に接する機会がないレースという非日常に触れてみると、知らなかったバイクの魅力にきっと気づけるはずです。ツーリングの目的地として、是非レース会場に足を運んで、レースの雰囲気に触れてみてください。