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「eやんOSAKA」実証実験の結果を振り返る

「eやんOSAKA」実証実験の結果を振り返る

2020年10月より開始された「eやんOSAKA」の実証実験が一年を終え、様々な結果が見えてきました。今回はモニターになって頂いた学生さんの利用状況におけるデータ集計と、実験を担当している大阪大学大学院工学研究科 葉(よう)助教授(以下、葉助教)へのインタビュー結果から見えた課題と共にご紹介したいと思います。

 

eやんOSAKA実証実験の前提条件

データを集計する上での前提条件は次の通りです。

まずは参加者ですが、これまで参加していただいた80名のうち二輪未経験者は57名と予想よりも多い結果となりました。どんな交通手段からの代替えなのかを見ると、最も多かったのは自転車で、次いで公共交通機関でした。

想定以上に、二輪未経験者が多かった事から、バッテリー(以下、BT)交換式の電動バイク(以下、EV)による新しい需要創出の可能性が期待できると言えます。

また、走行ログすなわちGPSによる位置情報をメインに収集・解析を行ってきた大阪大学によると、自宅を出てから帰宅するまでの行動が、4パターンに分けれらているということです。

  1. 短距離一か所往復 :片道5km以内で2~3kmのケース多し
  2. 狭い範囲を何か所か立ち寄るパターン:半径2km以内(自宅、大学、スーパー等)
  3. 2よりも少し広い範囲を立ち寄るパターン:半径5~10km程度の範囲
  4. 長距離を単に往復:片道15km程度

それでは実際に参加していただいたモニターの活動実態について、数字とコメントから紐解いてみましょう。

 

葉助教によると、実験の対象地域では日常の生活に必要な移動をきめ細かくカバーするほど公共交通機関が充実しているとは言い難く、出来なかった移動をEVによって補いつつ、地域内での消費を活性化する移動具となりえるかが重要なポイントとみており、スムーズな移動による暮らしやすい街づくりを期待していました。

 

数字とコメントから見えるモニター参加者の活用実態

数字と時期(月)を照らし合わせると、やはり寒い時期には利用が落ち込む傾向にありました。さらにモニター参加者からは、「夏は2往復できるものの、冬は同じようにはいかない」という意見もあり、航続距離が外気温に左右されるとのことでした。

また、一か月単位での走行距離は、平均200km前後と決して多くないですが、実際に利用した学生からの意見では、数字からだけでは判らない定性的な回答も返ってきました。

eやんOSAKAは実証実験ということもあり、大学とその周辺おおよそ10km圏のコンビニに、BT交換ステーションが設置されているわけですが、裏を返せばそこに行かないとBT交換ができず、どうしても早めに交換しておきたいという意識が働いていたようです。

つまり、BT交換ステーションの所在地によって、行動範囲が決まってしまうということ。実際に、もっと遠方にもBT交換ステーションがあれば遠出する、という学生さんのコメントもありました。

このあたりは、利用者の行動や心理(どこへ行きたいか)を十分に把握したうえで、BT交換ステーションの設置個所を拡充していく必要があるという課題が見えてきます。

 

走行体験を積むことで距離が延びる傾向

左の図は、利用開始一か月目のモニターのBT交換時のバッテリー残量と交換頻度を表しており、まだ残量が7割も残っているのに21%の人がBT交換をしています。

これが、利用開始から三か月目ともなると、右の図のように交換する人が15%に減ります。

ただし、このあたりは、大学生による通学という必須行動パターンの影響が大きく、通学をメインとする人は早めに交換する傾向にあると葉助教も分析していました。頻繁に利用して様々な場所を回遊する人は、BT残量ギリギリまで替えない傾向にあり、中にはどこまで足を伸ばせるかを日々の経験によって学習している人が一定数いたそうです。このあたりが前記の三か月後の変化になっているようです。

以上のことから、走行の経験を積むことで、気温や傾斜等の外的要因を加味した、走行距離とBT残量の関係の知見も高まり、BTを使い切る傾向になる(BTと上手く付き合えるようになる)と推測が出来ます。

 

BT交換式EVについては満足している

今回の実証実験では、BT交換ステーションの設置場所が大学を中心とした10km圏内に集中していたということもあり、行動範囲がどうしても設置場所を基点とした利用になっていることを前述しましたが、BTの交換自体に何か課題はあるのでしょうか。モニターの大学生に聞いてみると心理的な側面による課題も見えてきました。

上のグラフからも、待つ事なくBTを交換出来る事に満足・やや満足との回答は9割近くあり、交換システムそのものにも、今後の普及への期待値が数字として表れています。

「大学構内での交換は手軽さを感じました。普通の原付だとガソリンスタンドに立ち寄って給油と支払いをしなければいけませんが、EVであれば大学構内のBT交換ステーションでBTを交換するだけで済むため非常にスムーズだと感じました。BT交換ステーションの設置場所は、今よりも、分散して多くなれば使い勝手も広がると思います。」と、頻繁にEVを利用する学生は語ってくれました。

 

また、原付の運転経験もなかったというモニターからは、以下のようにコメントしてくれました。

「EVは環境にやさしいと思いました。加速する力も十分ありますし、何よりニオイがしないのも良いですね。実証実験に参加し始めてから通常のガソリンバイクにも興味を持ち、レンタルバイクで乗ってみましたが、EVに慣れていたためか、ニオイが気になりました。」

これらのヒアリング結果をもとに見えてきたBTステーションの改善事項は以下の通りです。

  1. コンビニ内のBT交換ステーションが店舗の奥にあり、両手で計20kg(BT1個約10kg×2)を持って店内を歩くのもかなり重労働。また、買い物もしないのに店内を行き来することに抵抗もある。
  2. 夜間などにBTを交換する場合、EVのBT差し込み口(手元)が暗いことが多く、何度か斜めに差し込んでしまうことがあった。

なお、今回の実証実験はモニターに対して十分なBT数量が準備されていたので、交換時にBTが満充電ではなかったという声は聞かなかったそうですが、実際にBT交換式EVの普及が進むと、満充電のBTがないという事態が起こりえます。それを回避するためには、クルマで利用されているようにスマホアプリでBT残量の把握や、BT交換ステーションでの在庫の有無、交換予約などができることが将来的には必要になってくるでしょう。

 

利活用を中心として視野を広げる必要性がある

交通計画とまちづくりの研究を専門としている葉助教より、とても新鮮な意見を頂きましたのでご紹介し、本編を締めたいと思います。

「BT交換ステーションの設置場所は、充電が切れそうになったら交換するという想定で、実証実験エリア内である大学から10km圏内に設置しましたが、遠方へも足を伸ばす想定であれば5〜10km間隔にあるべきという結果が分析から導き出されました。極端に言うと、公共交通機関とのつながりを重視するなら、BT交換ステーションの設置場所は各駅ごとの方が良いのかもしれませんが、公共交通機関に乏しい郊外から市街地への移動も考慮すると、その道中にも設置すべきかもしれません。その地域の交通手段として何を原付に期待するか整合させる必要があります。また、様々なモニターの移動ログ解析やヒアリングを行うと、通学利用のみの人から遠方に足を伸ばす人まで、想像以上に多種多様な利活用形態が見られました。」

予想を上回る利活用によって求められるBT交換ステーション設置場所の問題は、これから推進する上で大きな課題と言えます。

 

「原付というモビリティは、近所の買い物や通勤・通学で使うイメージでしたが、大学生モニターの行動ログを分析するなかで、通勤・通学だけではない様々な利活用を見ることができました。これこそが、原付の持つポテンシャルなのだと思います。今後BT交換式EV普及のためには、EVそのものだけでなく施設整備も含め、レンタルやシェアリングなどの選択肢も加味したうえで、地域ごとの実情にマッチさせていく必要があると思います。1つのパターンで、どの地域でも適合するような正解は無いのではないかと思います。また、使われていないBTをどう有効利用するか=災害時の予備電源など、企業、行政、コミュニティなど誰がBT交換ステーションを管理するのか、地域内での交流を増進し、有効な使用方法を共に考えて、どう定着できるのかが次のステップなのではないでしょうか。」

本実証実験の行動ログ分析を続ける葉助教は、すでにBT交換式EV普及に向けた未来を見据えている様でした。

 

「最後に、バイクという乗り物である以上、100%の安全はありませんので、利便性の向上を謳うだけでは不十分です。そのため、本実証実験ではインストラクターを招いてモニター参加者に対し安全運転講習を実施してきました。利便性の追求だけではなく、安全性も確保することで、より良い交通社会の実現に繋がるということを忘れてはいけないでしょう。」

実際の利用から見えた様々な課題、そして期待されるBT交換式EVのポテンシャル、合わせて地域との連携によって広がる可能性を視野に入れて進めなければいけないという期待と課題がともに広がった実証実験となっています。

 

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