
若者は鈴鹿8耐をどう楽しんだ?
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今年もファンの熱狂の渦に包まれ開催された「2025 FIM世界耐久選手権 “コカ・コーラ”鈴鹿8時間耐久ロードレース 第46回大会」(以下、鈴鹿8耐)、鈴鹿サーキットを訪れたライダーも大勢いらっしゃったと思います。例年、鈴鹿8耐はレースを盛り上げるコンテンツが目白押しですが、今年はいろいろな角度から大会を楽しんでいる参加者の姿が多く見られました。特に若年層は鈴鹿8耐をどのように楽しんだのか、現場でリアルな声を聞いてきました!
鈴鹿8耐2025 ダイジェスト

今年の鈴鹿8耐で優勝候補のひとつとされていたのが、大会4連覇がかかるホンダのワークスチーム「Honda HRC」です。昨年と同じくMotoGPからヨハン・ザルコ選手(以下、ザルコ選手)を招聘。さらに鈴鹿8耐最多優勝記録保持者の高橋 巧選手(以下、高橋選手)という必勝体制で臨みます。公式予選上位10チームが1ラップのみのタイムアタックを行うトップ10トライアルで、ザルコ選手が2分04秒290という驚愕のタイムを記録してポールポジションを獲得します。
6年ぶりの鈴鹿8耐ファクトリー参戦となったヤマハのワークスチーム「YAMAHA RACING TEAM」は中須賀克行選手、アンドレア・ロカテッリ選手とMotoGPからジャック・ミラー選手(以下、ミラー選手) を招き、1999年の「YZF-R7」を彷彿とさせるホワイト&レッドの「YZF-R1」で臨みます。ミラー選手はトップ10トライアルで転倒したものの、スターティンググリッドは2位に付けるなどその実力を見せました。
スズキGSX-R1000Rで参戦した「ヨシムラ SERT Motul」にも注目が集まります。渥美 心選手、グレッグ・ブラック選手、ダン・リンフット選手といったFIM世界耐久選手権を知り尽くす万全の体制で優勝を狙います。
100%サステナブル燃料を使用する「GSX-R1000R」でエクスペリメンタルクラス(実験的クラス)に参戦する「チームスズキCNチャレンジ」、改造範囲の狭いSSTクラス※に「Ninja ZX-10R」で参戦する「Kawasaki Plaza Racing Team」も大きな関心を呼びました。
※スーパー・ストッククラスの略称。FIM世界耐久選手権(EWC)クラスよりも市販車に近い車両規定の車両を対象としたクラス

迎えた8月3日(日)の決勝、ホールショットこそ逃すも序盤からレースをリードしたのはEWCクラスのHonda HRC です。YAMAHA RACING TEAMは1回目のライダー交代を終えたところで2位に浮上、底力を見せます。ここからHRCとYRTは10〜30秒ほどのディスタンスを保ちながら、長いマッチレースへと突入しました。

上位陣が大きく譲らない状況が続きましたが、レース開始から6時間が経過したところで、クラッシュによるセーフティカーが導入され、1位と2位の差がわずか数秒にまで詰まりました。15分ほどでセーフティカーが解除され、激しい上位争いが繰り広げられるかと思われましたが、ここでホンダの高橋選手が決勝レースでもっとも速いラップタイムを叩き出し、再び2位との差を広げたのです。
残り1時間を切ったところで再びセーフティカーが入って一時的にトップが入れ替わりましたが、最終的にはホンダが勝利を収めました。2位のヤマハとの差はわずか34秒と、8時間もの長丁場を走り切ってのこの差を考えると、実力伯仲の戦いであったことが伺えます。3位にはヨシムラ SERT Motulが、Kawasaki Plaza Racing TeamはSSTクラスにおいて2位に輝きました。
鈴鹿8耐を楽しむ若者の声
今の若者は、鈴鹿8耐をどう楽しんだのでしょうか。決勝当日、サーキットで出会った若年層のファンに鈴鹿8耐の楽しみ方や推しポイントなど“生の声”を聞きました。
大阪から初参戦の男女4人組ライダー

北所 賢佑さん / 19歳 / 大阪府 / ホンダ「CBR250RR」
匿名希望さん / 18歳 / 大阪府 / カワサキ「Ninja 250」
市川 舞さん / 17歳 / 大阪府 / ヤマハ「ドラッグスター400クラシック」
南 安弥さん / 17歳 / 大阪府 / ヤマハ「ドラッグスター250」
「4人とも初めての鈴鹿8耐です。男2人はバイクで来ました。音とスピードが最高!」(北所 賢佑さん)
「バイク乗りとして一度は鈴鹿8耐を観戦したいと思っていました。映像では伝わらない、生の迫力に感動しました」(匿名希望さん)
「私たち女性2人はクルマで来ました。トップ10トライアルでミラー選手が転倒したのには息を呑みました。すっかりファンになってしまいました」(市川 舞さん)
「バイクのスピードもとんでもないですが、ピット作業の早さにもビックリしました。あんな早い作業は見たことがありません」(南 安弥さん)
高校時代の同級生3人組

M.K.さん / 21歳 / 兵庫県 / カワサキ「ZX-10R」、ホンダ「クロスカブ110」
TATAさん / 21歳 / 兵庫県
N.S.さん / 21歳 / 兵庫県
「高校時代の同級生3人で鈴鹿8耐に来ました。僕だけがバイク乗りで、夏の旅行に『23歳までは無料で観戦できる鈴鹿8耐に行こう』と2人を誘ったかたちです。テレビで鈴鹿8耐を何度か観戦したことがあり、いつかは生で観戦したいと思っていたので念願が叶いました。乗っているバイクはZX-10Rなんですけど、ミラー選手が推しなので今日はヤマハを応援します! 今日を機に2人にもバイクに興味を持ってもらえて、3人でツーリングに行けたら嬉しいですね」(M.K.さん)
「レースに出ているマシンの音が凄すぎて、ちょっと怖いくらいですね。バイクには興味がありますし、一度は体験してみたいと考えています。今日のレースで興味を持てるバイクが見つかるかもしれませんね」(TATAさん)
「朝のフリー走行を見て、強烈なサウンドにシビれました。自分はまだバイクの免許を持っていませんが、もうかなり乗りたくなってしまっています。今日はとても暑いですが、夏の思い出になるなって思います」(N.S.さん)
バイクファンの高校生2人組

堀尾海匡さん / 17歳 / 三重県
麻生真吾さん / 17歳 / 三重県
「四日市市から観戦に来ました。校則でバイクが禁止されているのですが、バイクが大好きで、卒業したら免許を取りに行こうと思っています。興味があるのは、カワサキ『エリミネーター400』です。初めて鈴鹿8耐に来たのですが、バイクイベントって楽しいですね。早くバイクに乗れるようになりたいです」(堀尾海匡さん)
「僕が『鈴鹿8耐に行こう』と誘いました。写真を撮るのが好きで、鈴鹿8耐の写真を撮ってみたかったんです。僕もバイクが大好きで、早く乗れるようになりたいですね。欲しいのはホンダ『レブル250』です」(麻生真吾さん)
地元鈴鹿の同級生コンビ

K.K.さん / 20歳 / 三重県
りくとさん / 21歳 / 三重県
「鈴鹿が地元で、高校の同級生と来ました。鈴鹿8耐は今回で3回目で、地元のお祭りに来ている感じです。バイクの免許は持っていませんが、いずれはバイクに乗りたいと思っています。仮面ライダーが乗っているカウル付きのバイクが好きで、カワサキのニンジャ250に興味があります」(K.K.さん)
「イベントがない平日にも鈴鹿サーキットに遊びに来たりするんですが、やっぱり鈴鹿8耐は年に一度のビッグイベントなので、来ちゃいますね。レース観戦も楽しいのですが、会場内のブース巡りが特に好きです。いずれはバイク関連の企業で働きたいと思っています。今日一日、友だちと鈴鹿8耐を楽しんできます」(りくとさん)
「16-23 & 企業交流会」に参加する就活生の姿も

「鈴鹿市出身で、現在県外の大学に通っているのですが、地元の企業に就職したくて今回帰省しました。鈴鹿8耐で『16-23 & 企業交流会 in 鈴鹿8耐』というリクルート会場が設けられると聞いて、せっかくだから鈴鹿8耐も観戦しながら就職の機会を探してみようと思いました。バイクも大好きなので、地元のバイク関連企業とお話の機会が持てて有意義でした。
鈴鹿8耐は家族で何度も観戦しに来ています。小さい頃から親しんでいるイベントですね。今回は地元の『TSRホンダ』を応援しています!」(M.N.さん)
静岡の大学生ライダー仲間

佐々木 稜さん / 20歳 / 静岡県 / スズキ「イントルーダー250」
河村 将暉さん / 20歳 / 静岡県 / ヤマハ「MT-25」
「静岡の大学に通っていて、バイク仲間の河村くんを誘ってきました。鈴鹿8耐には元々興味があって、『16-23 & 企業交流会 in 鈴鹿8耐』も開催されるというので、将来の就職先になる企業があればと足を運びました。4社ほどお話を伺いましたが、『こんな仕事があるんだ』と勉強になることばかりでした。
初参加の鈴鹿8耐は、さすが日本最大級のレースだと思わされる迫力と盛り上がりです。世界選手権ということで、海外のチームの戦いぶりを見られるのが楽しいですね。スズキのバイクに乗っていることから、『チームスズキCNチャレンジ』と『ヨシムラ SERT Motul』を応援しています」(佐々木 稜さん)
「初観戦の鈴鹿8耐には圧倒されています。生身の人間が、あんなスピードで走るのかと驚かされるばかりです。あと、サウンドが凄まじいですね。生観戦していないと体感できないなと感じました。
スタート地点のすぐ横に設置されている“16-23 ZERO円パス専用エリア”でスタートの模様を観ましたが、マシンが一斉に第一コーナーになだれ込んでいくさまがとにかく大迫力で感動しました!」(河村 将暉さん)
愛知の社会人2人組は音楽フェスも楽しみに

Sさん / 23歳 / 愛知県
Yさん / 23歳 / 愛知県
「鈴鹿8耐には前から来てみたくて、さらに『NANKAI 8FES』にシンガーソングライター茉ひるさんが登場するので、これはもう絶対に行こうと、友だちを誘ってきました。
マニュアル仕様のレトロなクルマが好きなんですが、高価なうえに選択肢が少ないことから、じゃあマニュアルが基本のバイクにまず乗りたいなと思っています。レトロ好きなので、4気筒だった1990年代の『CBR250RR』が魅力的ですね」(Sさん)
「父がバイク乗りなので、バイクはずっと身近な存在でした。Sくんと同じく250ccの4気筒バイクが欲しくて、ホンダ『ホーネット250』を狙っています。
鈴鹿8耐で応援しているのは、以前、長尾 健吾さん・健史さんの長尾兄弟が所属していた『ネクスレーシング』です。彼らのYouTubeチャンネルのファンで、今は所属されていませんが応援しています」(Yさん)
お祭りとして楽しめる鈴鹿8耐の魅力

鈴鹿8耐へやってくる若者のほとんどはライダーかと思いきや、バイクの免許を持っていない若者も多くいることが意外でした。それはつまり、鈴鹿8耐というイベントが、既存のライダーのみならずバイクファンであれば誰でも楽しめる魅力満点のコンテンツなのだと言えるでしょう。実際、バイク免許を持っていない人にバイクの印象を聞くと「バイクってやっぱりカッコいい」「バイクに興味が湧いてきました」と答えてくれました。
また、鈴鹿サーキットに足を運んだ人たちは、迫力あるトップライダーの走りや奮闘するメカニックの姿を目の当たりにして、その熱気や興奮をより深く味わっていました。まだ鈴鹿8耐に行ったことがない方も、この記事をきっかけに興味を持たれたなら、ぜひ来年は鈴鹿サーキットを訪れて“生の鈴鹿8耐”を体感してみてください。








