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バイクでの旅人生をどこまでも。旅の達人・賀曽利 隆(後編)

自身の半生をかけて、世界のありとあらゆる場所をバイクで駆け抜けてきた旅人・賀曽利 隆さん(以下、賀曽利さん)。前編では「バイクとの出会い」や「壮大な旅での体験談」をお伺いしました。続く後編では、世界中を旅した後に目覚めた日本のすばらしさや、半世紀以上におよぶ賀曽利さんの旅人生から見える旅の醍醐味、これからの旅の目標などについておおいに語っていただきます。

バイクでの旅人生をどこまでも。旅の達人・賀曽利 隆(前編)

賀曽利 隆

1947年9月1日生まれ、東京都出身。

1968年(4/21横浜出発)から1969年にかけてバイクでの「アフリカ大陸一周」に挑戦。その後、バイクやヒッチハイクにより「世界一周(1971〜1972年)」「六大陸周遊(1973〜1974年)」「シベリア横断アフリカへの旅」「冒険家風間深志氏とバイクでのキリマンジャロ登頂への挑戦」「サハラに魅せられて」「パリ〜ダカール・ラリー参戦」などを経験。30歳を越えて初めて日本を一周。60代にして挑んだ、国内300日3000湯ツーリングは、1日10湯ペースでの温泉巡りでの日本一周で、ギネスの認定を受けた。

世界を旅して見えたバイク旅の醍醐味

バイクでの旅を楽しむための秘訣を語ってくれた賀曽利さん

アフリカ大陸縦断、2回にわたる世界一周、5大陸走破など文字通り世界中を駆け回ったあと、賀曽利さんはふとあることに気づきました。それは、日本を周遊していないことです。それからは、日本を見て世界を回り、世界を見て日本を回る、を繰り返されるようになりました。

免許を取って念願のバイクに乗り始めて、しばらくしたらツーリングに飽きてしまった若手ライダーや、「あと何年バイクに乗れるか」と不安を感じるベテランライダーもいることでしょう。これからの人生もバイクとともに旅していく賀曽利さんに、そういったライダーへのアドバイスを伺いました。

「僕の人生訓は、『昨日できたことは、今日もできる』です。今日できたことは、明日もできる、ということです。つまり途切れさせなければ、永遠に(乗り続けることは)大丈夫なんですよ!

何かテーマを決めて挑むと、旅の楽しさは倍増しますよ。とにかく走ることで次々と興味の種が沸いてきます。例えば各地の温泉を巡ったり、全国の『峠越え』を制覇するのは長年のテーマとしてやっています。何しろ『あの向こうへ行ってみたい!』という気持ちは他にはあり得ない、バイクの魅力です。

私が46歳のときに挑んだオーストラリア一周の旅には、『おくのほそ道』を開始した松尾芭蕉が当時46歳だったことから、『旅を決断する』という隠れテーマがあったんです。そのオーストラリア一周を達成できたときの感動は、次の旅への起爆剤になりました」

そう言って朗らかに笑う賀曽利さん。旅するモチベーションは尽きることがありません。

“生涯旅人”を貫く理由とは

ご自身の人生を言い表す一言に「生涯旅人!」と書かれた賀曽利さん

「生涯旅人!」という言葉を胸に、76歳(取材時)の現在も世界中をバイクで走り続ける賀曽利さん。人生そのものを旅と言い表す賀曽利さんは、その相棒にバイクという乗り物を選んだのです。タイプによって性能は異なりますが、世界のあらゆる場所へ行ってみたいという強い思いを実現させるうえで、困難な路面をも乗り越えられる可能性を持つバイクはうってつけの存在と言えます。賀曽利さんは、いつもバイクと対話しながら旅しているのだそうです。

「僕は海外を旅する際、松尾芭蕉の『おくのほそ道』を持って行って、それ以来穴が空くほど読んでいます。(物語の進む)速度がツーリングそのものなんです。そして、その間に登場する各地で詠んだ俳句は、現代の本で言えば写真や挿絵の位置づけだと思います。『おくのほそ道』のテンポ感、リズム……まさにバイクと同じなんですよ」

賀曽利さんのご自宅の本棚には、これまでの旅の記録がびっしりと保管されています

賀曽利さんのご自宅には、今までの旅の膨大な記録が完璧な形で整理整頓されています。古いモノクロのフィルムまで揃っている写真や、旅の1日ごとの走行距離や訪れた街のことを記した日記が何十冊もあり、いつの記録でもすぐに取り出して確認することができます。これらの記録の数々は賀曽利さんにとってかけがえのない財産であり、このように旅の足跡を記していくことが旅するモチベーションでもあるのでしょう。

賀曽利さんはまさしく“現代の芭蕉”とでも言うべき存在なのではないでしょうか。

旅の相棒:スズキ Vストローム250

現在の相棒スズキ・Vストローム250と賀曽利さん

現在の賀曽利さんの愛車は、2017年7月31日に納車されたスズキ「Vストローム250」です。

「これはね、すべてがちょうどいいんです。スズキが長年バイクを作り続けて、究極の旅バイクを仕上げたと言っても良いと思いますね」

排気量250ccのエンジンが生むパワーは過不足なく、そのエンジンを軸に安定感と軽快感を併せ持つ車体が組み合わさってバランスの良い仕上がりの一台となっています。「どんな走り方をしても不満がない」そうで、旅に必要な荷物を載せるための積載能力も高いのです。そのうえ燃費も良くて故障知らず。すっと背筋を伸ばせるライディングポジションもあって足つき性も良好で、長距離走行はもちろんチョイ乗りにも使える万能型のバイクだと言います。

「もう23万キロ以上走りましたが、消耗品の交換と定期点検を実施しただけで、まったくのノントラブルですよ。長旅好きなライダーには最高のバイクだと思いますね。」

目的に合わせて複数のバイクを所有するライダーも、1台を大切に乗るライダーもいます。賀曽利さんは後者、1台のバイクをしっかり乗る派だそうです。

これからの目標

76歳(取材時)になられてもなお旅に挑戦し続ける賀曽利さん

「今後の目標は?」という質問に、賀曽利さんはこう語ってくれました。

「旅の総走行距離200万キロを達成することです。二十歳の旅立ちからこれまで(2024年1月1日まで)で183万4,819キロとなっているので、あと約17万キロですね。旅日数も、8,474日となっており、1万日を達成したいと思っています。

30代から始めた各年代での日本一周の旅も、80代でも必ずやりたいです。ライフワークでもある峠越えと温泉巡りはもちろん継続します」

最近は、日本の旧国府にテーマを絞って式内社巡りも実践しているという賀曽利さん。廃藩置県以前の長い歴史を感じるための旅は、また違った視点で興味の湧くテーマでもあり、日本そのものを深く感じる旅であると賀曽利さんは考えているのです。

「ツーリングする人には是非旧国名、つまり五畿七道68ヶ国を覚えることをお勧めします。バイクは国の境を感じ取れる乗り物です。古来の日本の姿を追い求めることは、バイクだからこそできる楽しみなんです。

長旅することだけが旅の醍醐味とは思いません。それこそ半日でも一日でもいいから、興味ある事柄を考えてバイクで出かけましょう。そうすると、必ず発見があるんです。長年かけてもいいから、分割して日本一周を実践してみるなんて方法も良いですよね。それなら一般のライダーだってできますから」

終わらない旅人生をいつまでも

インタビューを終えて、再び旅へと出かけていった賀曽利さん

少年のように旅の話をしてくれる賀曽利さん。その姿は、10歳のときに叔父さんとタンデムして大はしゃぎした頃のままのようでした。その頃からお持ちだった、まっすぐに突き進んでいく行動力も今なお健在です。そして賀曽利さんとともに走ってきた数々のバイクの存在も、賀曽利さんの半生を語るうえで欠かせない存在であることが伺えました。いつも自分のそばにいて、普段はじっと黙っていますが、「さぁ旅に行こう」とエンジンをかけると心強い旅仲間として未知の世界へ導いてくれるのです。

賀曽利さんはこうも言っていました。

「芭蕉も現在に生まれていたら、絶対にバイクで旅をしたと思う」

賀曽利さんが言うと、本当にそう思えてきますね。

【動画】「生涯旅人」賀曽利 隆さんインタビュー(後編)

カソリング -賀曽利 隆 オフィシャルサイト-

https://kasoring.com/

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