落ち着きをみせるキャンプブームの中バイク×ソロキャンプ:キャンプミーティングin道志村
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バイク関連のショー会場に行くと、必ずと言って良いほど“バイク×キャンプ”を提案する展示が設けられています。また、バイク雑誌を開けばおすすめキャンプ用品やソロキャンプ術などキャンプ関連のページが組まれています。
そう、今まさにバイク業界では空前のキャンプブームなのです……と謳っていたのはコロナ禍のこと。今やSNSを中心にインターネット上では「コロナ禍による巣ごもり需要の終焉とともにキャンプの流行は終わった」「キャンプ用品メーカーの業績も落ち気味」など、さまざまな意見が飛び交っています。果たして実態はどうなのでしょうか?
そこで今回は、現在のバイク×キャンプ事情を確かめるべく、たまたま筆者もバイクでソロキャンプは未体験でしたので、ZuttoRide株式会社(以下、ZuttoRide)の主催する「キャンプミーティング in 道志村」を取材し、参加者の意見および筆者の実体験を通してソロキャンプの魅力に迫りました。
ZuttoRide(ずっとライド)とは?
はじめに、主催であるZuttoRideについて触れないわけにはいきません。
ZuttoRide株式会社は、1997年に創業した日本初の全国的なバイク専門ロードサービス会社です。 “困っている人を助ける”を原点とし、ひとりでも多くのライダーがバイクをずっと楽しめるよう、バイクに特化したロードサービス、盗難保険、延長保証を中心とする会員サービス(ZuttoRide Club)を運営しています。
国内4大バイクメーカー全てと提携しており、全国のバイク販売店約6,000店舗で取り扱っていますので、既にご存知の方も多いのではないでしょうか。
キャンプツーリングをはじめるきっかけは意外と少ない
話を本流に戻します。
まず、このキャンプイベントを始めたきっかけについて、ZuttoRideブランディング推進室 マネージャーの十時 孝太郎(以下、十時さん)さんに尋ねると、「キャンプツーリングをしてみたいけど、きっかけ”が無い」「初めてだけど、一人でキャンプできるだろうか?」というZuttoRide Club 会員の声に応えるものでした。
なお、本キャンプイベントは、 ZuttoRide Club 会員限定ゲリラ抽選会によるご招待枠34名と、一般募集で参加した12名の合計46名で実施されました。
程よい距離感のおもてなしと快適なキャンプ環境
本キャンプイベントは、キャンプデビューしたいソロキャンパー大歓迎と銘打っているだけあって、初心者でも安心してキャンプすることができる“おもてなし”の仕掛けが随所に見られました。
受付を済ませると、参加者全員に配布される割れないタンブラーがプレゼントされます。そして会場中央のテントでは、なんと生ビールと赤白ワイン各種、生ハム、燻製食べ比べなどのサービスを受けることができるのです。
今回の会場である山光荘オートキャンプ場は、トイレや洗い場なども新しく、非常に清潔で、各サイトに流し台も常備されていました。さらに、コインシャワーが2台あったほか、バケツ一杯の薪も500円で用意されており、初心者でも使いやすい環境が整っていました。ここで豆知識!薪で焚火をする際に知っておくと便利なのが、針葉樹は燃え尽きるのが早く、広葉樹は火持ちが良いとされています。焚火を眺めるのなら広葉樹!と覚えておいてください。
また、夜に燻製の出来上がりや、朝にコーヒーの準備ができたことをスタッフが知らせて回ってくれたりと、スタッフの目がしっかりと行き届いている安心感もありました。
なお、テントや寝具、焚き火台などのキャンプ用品の用意や設営、食事、ゴミの持ち帰りは参加者が自分自身で行うことにこだわっていました。にこだわっていました。ソロキャンプ初心者にとって、こうした自立心や基本的なマナーはやはり最初が大事ですね。
キャンプ参加のハードルは高くない。ちょっとしたきっかけだけ
今回初めてのキャンプ参加という東京都から来られたY・Tさん。
とっても気さくに応えて頂きましたが、なんともユニークなバイク歴をお持ちでした。
16歳の時に友達のスクーターに乗って、利便性の高さに惚れ込み内緒で免許を取得。しかし、あるときポケットに免許証を入れたまま洗濯に出してしまい、家に帰ると免許証が洗濯物と一緒に干してあり、そこから家族会議が……。その後、普通自動二輪免許を取るために内緒で教習所に通うも、普段ならあり得ない早朝に外出することを問い詰められ、またもバレる。そして家族会議……。
もともとキャンプに興味があり、5年前に近所のお店の閉店セール時にテントを購入したものの、ずっと押し入れに眠らせたままだったので、この機会に参加へと踏み切ったそうです。
ビッグバイクの横で、手際よくテントの準備をしているH・Hさんにお話を伺いました。
バイクキャンプを始めたのは約5年前で、それからは二か月に一度はキャンプしています。普段からバイクで東北や鈴鹿など長距離ツーリングにも行きますね。
バイクの免許は社会人になってからお付き合いした彼氏の後ろに乗って「自分でも運転してみたい!」と思ったのがきっかけです。
しかし、それから結婚・出産・子育てなどでバイクから遠ざかり早20年間。あるとき、仕事で125ccのバイクに乗ったら楽しんでいた頃の感覚が蘇り、夫に内緒で大型自動二輪免許を取得しました。
この企画の参加は、もともとZuttoRideのロードサービスを利用していて、懸賞に応募してみたら当選したので参加しました。
もしも友人にバイクキャンプの楽しさを伝えるとしたら、なんといっても屋外での食事の美味しさに尽きるとのことでした。
千葉県から来られていたこちらの女性は、36年前に免許を取得したベテランライダーさんでした。
小学三年生の頃に近所のお兄さんがバイクに乗せてくれると言って、結局乗せてくれなかった悔しさを覚えていて、大学一年生の時に彼氏の操るバイクの後ろに乗せてもらうことができました。念願のバイクだったのですが、彼氏のヘルメットが邪魔で前方の景色が見えにくいことに不満を抱き、自分もバイク免許を取得しようと決意しました。
当時乗せてもらったバイクはクルーザータイプだったそうで、なるほど前方の景色を見る際に前のライダーのヘルメットが視界を遮るのが想像できますね。
その彼氏と付き合って一年後に結婚。3年後に二人でツーリングキャンプに行くようになりました。それから年に一回はキャンプに行っていましたが、私の場合はあえてキャンプ飯は作らないんです。ただただ、ゆっくり時が流れるのを満喫しています。
大自然のなかで自分時間を満喫する姿がとても印象的でした。
東京都から来られたY・Oさんは、年に数回はキャンプをしており、毎年北海道へも一週間程度ツーリングに行かれる強者でした。
バイクはバイクブームだった80年代の頃から乗っていたけど、キャンプをするようになったのは約10年前から。子どもが独り立ちして自分の時間が作れるようになり、東北や北海道でもこのスポーツバイクで行きますよ。
(少し間をおいて)キャンプの楽しさって、やっぱり非日常なのかな。時間にとらわれることのない空間でテント設営や焚き火など、あえて面倒なことに楽しさを見出しています。自炊はするけど、特にこだわるのではなく目についた食材で済ませています。
満面の笑みを浮かべ、自然体でフレンドリーに話してくれたY・Oさんからは、バイクキャンプを心の底から楽しんでいる様子が伺えました。
現地に到着したのはお昼過ぎのこと。途中の道の駅で少し食材を購入し、椅子とテーブルを組み上げ、少し休憩した後にテントを張りましました。
冬の気配とともに日没時間も早まっていますが、川のせせらぎと歩く人できしむ砂利の音しか聞こえません。日没前の夕暮れ時には、キャンプ場のあちこちからテント設営のためにペグを打つ音が響いていました。
ZuttoRideの企画にいつも協賛しているというTeam REDの皆さん。普段はAED(自動体外式除細動器)の必要性と普及のために各地でデモンストレーションなどを行っているそうですが、今回は参加者のためにピザを焼いて提供してくれていました。
他にも、エアバッグ体験をさせてくれる無限電光株式会社、オフロードバギー体験を提供してくれるバイクショップのファンビークルさんなどが協賛されていました。
キャンプを快適に過ごすためのポイント4つ
この記事をご覧の方のなかには、バイクでソロキャンプをしたことがない方もいらっしゃると思います。インターネットや雑誌を見ると、おすすめキャンプグッズがたくさん紹介されており迷ってしまいますが、キャンプを快適なものにするための要点は大きく分けて4つ。“荷物置き場”、“睡眠”、“調理” 、“くつろぎ”です。
まず1つ目が“荷物置き場”です。雨天時や朝露に荷物が濡れてしまうことを避けるため、荷物置き場が確保できる大き目のテントを選ぶ方が良いでしょう。ヘルメットやブーツ、バイクから下した荷物など、濡らしたくないものを置いておくためのスペースが寝床以外にも必要です。
2つ目は“睡眠”です。地面には石が転がっていることも多いため、テント+寝袋だけでは背中が痛くて寝られません。そのため、テント内にマットを敷くことで、快眠度が格段に変わります。バイクへの積載が許すようならば、寝床以外のスペースにもテント内全面に薄いマットを敷いた方が快適です。また、寝る時は必ずテント外側のカバー(フライシート)の閉め忘れに注意しましょう。もしも閉め忘れると真夜中に凍えそうになることを、筆者は身をもって経験しました。
3つ目は“調理”です。料理の内容によって調理器具は変わりますが、最低でも沸かす、焼くが可能となる調理器具を用意しましょう。また、気取ってナイフとフォークのみではなくお箸も持参した方が無難です。
食材は自宅から持参でも良いですし、キャンプ場までの道中で見つけるのも楽しいですね。カップラーメンなどの即席麺も手軽ですが、やはり簡単で構いませんので地元の食材を仕入れて調理することで充実感が段違いです。今回は途中の道の駅で野菜とソーセージを購入し、焼いて食しましたが、そんな原始的な調理方法でも美味しいと感じるのは、やはりアウトドアという非日常環境だからこそなのかもしれません。
最後に4つ目は“くつろぎ”です。キャンプにおけるくつろぎ方は皆さん千差万別。
バイクへの積載を考慮すると、どうしてもチェアやテーブルなどはコンパクトな低めのタイプを選びがちです。しかし、ある程度高さのあるものを選ぶことで、ゆったりとキャンプをくつろぐことができます。最新のキャンプグッズはコンパクトかつ軽量設計なので、持っていくのはバイクへの積み方次第です。ただし、荷物積載時はバイクの重量配分(バランス)が大きく変わり、ハンドリングが普段と変わることがあるため注意が必要です。
ストレスからの解放をバイク×キャンプ=非日常に求める
今回、参加者と会話をするなかで、キャンプブーム一巡後の実像が見えてきました。多くの参加者が“非日常”という体験に価値を見出し、流行にとらわれる気配は微塵も感じられませんでした。
現代社会においてほとんどの方が何らかのストレスを抱えながら生きているかと思います。そんな現実から離れ、時間もスマホも人の目も気にせず、あらゆる束縛から解放されたソロキャンプという非日常体験でリフレッシュ(気持ちのリセット)をしているのでしょう。
さらに、バイクに乗るという行為もまたコロナ禍を経て、ストレスから解放されるための趣味材として広く再認知されるようになりました。つまり、バイク×キャンプの組み合わせは、ストレス社会における心身のリフレッシュ方法として、多くのユーザーを惹きつけているのかもしれません。
コロナ禍の影響もあって注目を集めたバイク×ソロキャンプですが、全ての人が100%ストレスのない快適な毎日を送ることが難しい時代において、非日常を求める欲求はいつの時代もあり続ける=定着しはじめているのではないでしょうか。
ZuttoRideの主催する本キャンプイベントのように、キャンプ初心者のライダーでも安心してエントリーできる環境を提供してもらえることは、バイクを末長く楽しむコンテンツを提供していることと同義であり、バイクユーザーの繋ぎ止めにも一役買っていると言っても過言ではありません。