fbpx

希代の名車オーナーたちが集い語らう「みちのく旧車ミーティング」とは?

第35回、つまり35年の歴史を誇る「みちのく旧車ミーティング」が、今年も岩手県二戸市にある天台の湯の敷地内で開催されました。

このミーティングを知ったのは、昨年とあるライダーを取材した時の話。東北(=みちのく)で旧型車の集まるミーティングが35年も続いているとのことでした。その話を聞いてふと頭に浮かんだのは“なぜ旧型車のミーティングがそこまで長年に渡って支持され続けているのか”です。

もしかすると、みちのく旧車ミーティングが支持され続ける理由のなかに、末長く楽しむバイクライフのヒントがあるのかもしれない。そんな推測のもと、主催者である愛輪塾(みちのく旧車ミーティング)の小船 浩幸さん(以下、小船さん)にアポイントを取り、岩手県までバイクを走らせました。

長い時を経てバイクを末長く愛する者たちが集う場となった

岩手県に入ると沿道は緑に包まれる。会場はご覧の通り自然に囲まれた場所

岩手県二戸市浄法寺町は、県庁所在地である盛岡市をさらに北上すること75kmに位置する青森県の県境付近の町です。朝9時から開催される予定のミーティング会場へ向かう道中、バイクの姿はおろかクルマすら通らず、日時や場所を間違えたのではないかという不安を抱きながらなんとか到着。ちょうど町の中学生たちによる浄法寺太鼓の演奏が始まるところでした。

そもそも、どうしてこのようなミーティングイベントを始めたのかについて小船さんに聞きました。

今から45年前、高校三年生の頃に友達とツーリングした時、年式の古いバイクを大切に乗っているおじいさんと出会いました。

その方が「自分の息子はバイクに興味ない。この私の古いバイクはどうなるか」と心配そうに語る姿を見たのがきっかけでした。

そこでの出会いをきっかけに、小船さん自身もバイク好きであったことから、まずは焦らずゆっくりと「歴史的な価値のある旧型のバイクを集めてどこかに展示できないか」と考えるようになったといいます。

2001年に念願の展示スペースを確保:みちのく記念館オープン

構想から十数年、地元岩手県で空いている建物を貸していただけるという話が舞い込み、2001年にオープンしたのが、“みちのく記念館”でした。

降雪地域という土地柄、開館期間は4月から10 月末までの期間限定ですが、館内には1974製の白バイやスティーブマックイーンが実際に着用したブーツなど、バイクにまつわる歴史的なアイテムが多数展示されており、現在でも年間1,000人以上のライダーが訪れる名物スポットとなっているそうです。

なお、現在は数日前の事前申請によって見学を対応しています。

またみちのく記念館オープンに先立つ1989年(平成元年)より、わずかな会費を頂戴してスタートしたのが「みちのく旧車ミーティング」でした。

なお、みちのく旧車ミーティングは、事前申請かつ参加費も事前支払いとしているものの、遠方から訪れてキャンプのテントを張る強者もおり、前夜祭では80人を超える参加者で大いに盛り上がるそうです。

今年集まったのは113台!それぞれの参加理由には個性的なストーリーが

ホンダ「VFR750R(RC30)」で千葉県から参加していたSさん。バイクに乗り始めたのは17歳からで、レーサーレプリカブームも終盤に差し掛かった1987年に登場したVFR750R(RC30)に憧れを抱くも、当時のSさんには高価すぎて購入することが叶わなかったと言います(当時の新車販売価格は148万円)。それから約10年の月日を経て、1995年に念願の購入。

その後、Sさんは約300万円をかけてメーカーのリフレッシュプラン(エンジンのフルオーバーホール+消耗品の全交換プラン)を活用し、今でも千葉県から自走で参加するほど大事に乗り続けています。

昨年、友人の紹介でこのイベントを知ってから今回で2回目の参加だというSさんに、バイクの面白さについて尋ねると「バイクは操ること自体が大きな楽しさの一つであり、動く健康器具だと思っています。今でも楽しんで乗っています。」と、満面の笑みで話してくれました。

カワサキ「W1」に乗る友人に誘われて岩手県一関市から初参加していたIさん。

バイクに乗り始めたのはもちろん高校生の時で、その後24歳で一度バイクから降りてしまったものの、20年後にリターンしたと言います。まるで新車のようにアルミパーツもピカピカなヤマハ「XS650special」は約8年前に秋田県のバイクショップで見つけて、コツコツとレストアしてきたそうです。

バイクの楽しさについて尋ねると「自然に囲まれる一体感、そしてバイクと人との“人馬一体”の感覚かな。」と答えてくれました。

1962年式のホンダ「スーパーカブ」で茨城から参加していたNさん。

「ミトハンクラブ」というスーパーカブをはじめとするOHV(オーバー・ヘッド・バルブ)エンジンバイクのクラブチームに入っており、今でも実走可能な愛車を披露してくれました。さらに、この愛車で1,000km24時間の耐久レースにもエントリーしてみたいと意欲満々でした。

Nさんは、同じく岩手県で開催されているイーハトーブトライアルにも参加しており、ある日競技の帰りに立ち寄ったみちのく記念館で小船さんの存在を知り、その後SNSでこのミーティングイベントを知ったそうです。

前のオーナーが丸目ヘッドライトを四角にカスタムしたようで、それが少々しっくりきていないそう。

こちらのカワサキ「Z1」のオーナーさんは、26年前にこのバイクを購入し、それからコツコツとレストアをして、現在の仕上がりになったそうです。

4本出しのサイレンサーと流れるようなエキゾーストパイプが存在感を示す、非の打ちどころのない手入れの行き届いたバイクでした。

大きく横に張り出したサイドカバーが特徴的な1974年式のホンダ「CB750FOUR」で参加していたH.Iさんは、約12年前に会社の先輩からミーティングイベントのことを教えてもらい、参加するようになったそうです。

こちらのバイクも大切に乗っていることがよくわかる実に手入れの行き届いた美車でした。

開口一番に「あと1週間で74歳です!」と話してくれたカワサキ「W3」オーナーのNさん。今回は同モデルに乗る仲間に誘われて初参加とのことでした。

「来年もぜひ来てください」と小船さんに言われると、笑顔で頷いていました。

ホンダ「AERA(エアラ)」という二輪車に初めて自動変速機(AT)を搭載したバイクで参加していたO.Tさんの参加理由は何ともユニーク。

もしこのミーティングでご自身と同じモデルに出会ったらすぐに乗り換えようと思っていたのですが、気付けば25年が経ってしまったそうです。

誰とも被ることのないマイナーなバイク(しかし実際は優れた名車)を新たに見つけて、来年もミーティングに参加したいとのことでした。

今回3回目の参加だというカワサキ「W1SA」オーナーのKさん。

このミーティングイベントに参加する目的は、普段ほとんど見ることのできない名車を見ることができるからだと言います。また、バイクという共通の趣味を通じて新しい友人ができることが何よりも嬉しいのだそうです。

自慢の愛車は学生のころから40年以上乗り続けており、手放すことはなく現在に至るそうです。

バイクにかける想いを披露できるミーティングイベント

昨今のSNS投稿の傾向を見てみると、時間限定ショート動画投稿の流行に逆行して、しっかりとストーリーを持って伝える投稿も目立ってきています。

みちのく旧車ミーティングの参加者もそれぞれが個性的なストーリーを持っており、バイクを共通の趣味としながらも自分とは異なる多彩なストーリーに出会うことが、バイクの楽しみ方の一つになっているようなミーティングイベントでした。

また、参加者のなかには、この年一回の開催に合わせてバイクを整備してきたという方も少なくなく、ミーティングイベントが開催されるからこそユーザーのバイクライフに中間目標が立ち、持続的な楽しさが生み出されているのだと感じました。

司会進行として参加者を紹介する小船さん(右)

肩肘張らず、それぞれの想いをお土産に携えて駆けつけ、少年のように純粋な気持ちでバイクを楽しみ共感するライダーたち。

ここ数年のバイクの技術進化は目覚ましく、今後さらに加速することも非常に喜ばしいことですが、一方でこうした趣味性の高い名車が集い、それぞれの想いを語る場が今後さらに増えるのではないでしょうか。何よりもみちのく旧車ミーティングの“第35回”という数字が物語っています。

青空の下でバイクについて語りあうライダー達の姿を見られると思うと、今のうちから来年の開催が楽しみになってきました。

みちのく記念館

https://airinjuku.web.fc2.com/

みちのく旧車ミーティングFacebook

https://www.facebook.com/groups/403501589819463/

RECOMMEND

あなたにオススメ