【バイク業界の未来を担う】二輪車整備士を目指す若者にバイクとの付き合い方や夢について聞いてみた!
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ここ数年の二輪車市場を俯瞰で見ると、バイクの新車販売台数は2019年から好調が続き、2021年には7年ぶりに40万台を突破しており、バイク免許の新規取得者数にいたっては、2017年から毎年増加傾向にあり、まさに活況が続いています。さらに、2019年と2021年で新車バイク購入者数を比較すると、30代以下の年齢層が29%から32%へと増加しており、バイクユーザーの平均年齢に若返りも見られます。※
コロナ禍による追い風も一つの要因かもしれませんが、数字の通りコロナ禍以前からジワジワとバイクの魅力が認識(リターンライダー層には再認識)されはじめていることを鑑みると、この先も当面の間は活況が続くといっても過言ではありません。
しかし、バイクに乗るユーザーが増えているということは、必然的に修理やメンテナンスのための整備需要も高まります。いや、活況である現在、すでに整備士が不足しているという声は方々から聞こえます。そこで今回は、バイク業界の未来を担う二輪車整備士を目指す若者にバイクとの付き合い方や夢について伺ってみました。
※一般社団法人 日本自動車工業会「2021年 二輪車市場動向調査」より
整備士を志す若者たちがバイクに興味を持ったきっかけ
バイクまたはクルマの整備士を目指しながらバイクに触れる毎日を送る、関東工業自動車大学校(以下、関東工大)の生徒7名に集まっていただき、彼らが整備士を目指すよりも以前の原体験として、バイクに興味を持ったきっかけとバイクに乗ろうと思った理由について尋ねました。
- 野村さんは、中学生の頃に父の運転するバイクの後ろに乗せてもらい、その時の爽快感が忘れられず、バイクに乗りはじめたと言います。
- 松本さんも同じく中学生の頃に、友人の父親がバイクに乗っているのを見て興味を持ったとのこと。
- 三上さんがバイクに興味を持ったのは、高校生の頃に友人が乗っていた原付がきっかけとなって乗りたい気持ちが芽生えたと言います。
- 栗原さんも高校在学中にバイクに興味を持ったようです。高校に申請すればバイク通学できることを知り、それからバイクに興味を持ち、バイクに乗りはじめたとのこと。
- ネパールからの留学生ディネスさんは、自国で何度もバイクレース観戦に行っており、そこでバイクに魅了されて関東工大に入学したと言います。
- 遠藤さんは、中学生の頃に二歳年上の知人が購入したバイクに興味を持ち、バイク免許を取得した暁には絶対乗ろうと心に誓い、高校入学後まもなくバイクに乗り始めたとのこと。
- 山崎さんがバイクに憧れを抱いたのも中学生の頃。テレビドラマでバイクを観てから、いつかは自分も乗りたいという夢を持ち続け、遂にはメーカーの内定まで勝ち取ったと言います。
バイクに興味を持つきっかけやタイミングは十人十色ですが、整備士を目指す彼らの共通項としては、バイクという乗り物を初めて認識したときのインパクトが強烈であったが故に魅了され、整備士を目指すまでに至っているという点でした。
自分のバイクを自らの手で整備したいという願望は大半のライダーと同様かもしれませんが、整備のプロを目指し、整備士という職業に就こうと考えるのですから筋金入りです。
なぜ整備士を目指そうと思ったのか?
次に、整備士を目指そうと思った動機について伺ってみました。
動機は千差万別で、当初は整備士を目指してはいなかったものの、入学後に整備の奥深さを知り整備士を目指そうと決めた方や、サービスマニュアルやパーツリストを見ることで構造を理解し、どんどんバイク整備に傾倒していった方、バイクショップで整備されたバイク前に喜んでいるライダーを見て、自分も整備することで人を喜ばせる職業に就きたいと考えた方などなど。
整備だけにとどまらず、チューンアップやドレスアップなどといったカスタマイズにおいてはクルマ以上に柔軟性が高いことから、バイクの整備士について魅力を感じているようでした。
整備士を目指すためには最高の環境が揃っている
関東工大の整備実習授業は規定よりも多く、一級自動車整備科では8割以上、二級自動車整備科でも約7割が整備実習というカリキュラムになっています。
そのため彼らは、学校でクルマやバイクの整備について学びつつ、放課後や休日も大好きなバイクのメンテナンスや大型免許取得のために教習所へ通ったり、さらにはバイクの情報収集などにも余念がなく、まさに整備士になるための英才教育に自らの意思で身を置いています。
ちなみに関東工大では、国内外の四輪メーカーをはじめ二輪メーカーや建設機械メーカーなど、毎年就職を希望する卒業生の就職率は100%を誇るというのだから驚きです。
整備士を目指す若者のバイクとの向き合い方
スマホネイティブ世代である彼らのバイクとの付き合い方は、昔ながらの考え方と現代的な考え方が混在し、ハイブリットにバイクを楽しんでいるよう。
InstagramやYouTubeなどといったSNSでバイクの世界を楽しんでいるという意見はもちろんのこと、バイクは不安定な乗り物であるからこそ乗りこなせたときに達成感があり、乗車中に広がる景色や体に受ける風といった開放感や爽快感はクルマとは全く異なる楽しみ方があると感じているようでした。
なかには、一緒に旅をしながらバイクと会話をしている、それはまるで人のようだ。あるいは、一緒に走ることで一緒に楽しさを共有している、まるで推しのアイドルのような存在だという意見もありました。
バイクに乗って写真を撮りそれをSNSにアップしたり、他のライダーの投稿を見て共感するといった現代的な楽しみ方がある一方で、整備士を目指す若者たちはバイクを単なるギアやツールとしてではなく、人または生き物として捉え、大切に整備しながら楽しむという考え方も持ち合わせていました。
山崎さんは大型二輪免許を取得し、野村さんも現在大型二輪免許取得にチャレンジ中。遠藤さんや松本さんは学校から帰宅後もバイクを整備して楽しんでおり、三上さんも先輩から譲ってもらったバイクをカスタムやメンテナンスして楽しんでいるとのこと。さらに栗原さんは、鹿と衝突して廃車にしてしまったこともあるそうですが、今でも複数台のバイクを乗って楽しんでいると言います。
前述のように、バイクに興味を持ったきっかけは十人十色、バイクに感じる魅力も千差万別でしたが、最後に聞いた質問では、みな口を揃えて同じ回答が返ってきました。
彼らが思う今の夢は“バイクで日本一周”。
普段はスマホゲームやバイクの整備・カスタムも楽しんでいる彼らですが、物腰の柔らかい穏やかな口調とは裏腹に、人並み以上の冒険心を持ったアクティブな性格でした。
きっと彼らなら、しっかりと整備したバイクで出発して旅を思う存分楽しむことでしょう。そして道中、万が一故障したライダーと遭遇したときでも、頼もしく助けになってくれたら、そのライダーもきっと整備の大切さを知るきっかけになるでしょう。
そんな彼らが将来バイクの整備士となり、バイク業界における非常に重要な“縁の下の力持ち”として、バイクの楽しさを整備で支えてくれることを期待するばかりです。