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ツーリングが観光産業や地域社会へもたらすメリットとは?【大学における研究】

2017年から普通自動二輪免許の取得者数は増加の一途を辿っています(AT及び小型限定を除く)。また、2023年5月からは新型コロナウイルス感染症の第5類移行によって、行動の制約はもとよりイベントの開催制限や人数上限の制限もなくなりました。これによってライダーたちはさらにアクティブになり、さまざまな場所でバイクに乗って楽しむ姿を見かけるようになりました。

特にツーリングシーズンの9月、10月はバイクイベントが毎週末開催されており、週によっては重複するほどでした。

サーキットスマイル@筑波サーキットの様子

バイク業界にとって、こうしたポジティブな流れが続くなかで、特筆すべきはそれぞれのライダーが多種多様なバイクライフを満喫しているという点です。

各自が道具持参で行うソロキャンプから、コーヒーのみを無料提供するミーティング、バイクメーカーあるいはバイク関連企業が主催するイベント、さらには、装備品まで含めるとかなりの用意が必要なサーキット走行会など、満遍なく各々がバイクを軸に楽しさを見出しているのです。

全国各地でライダーたちが多種多様な楽しみ方をするというのは、近年では起き得なかった特別なことかもしれません。

地元還元の経済効果を立証した「SSTR(サンライズ・サンセット・ツーリング・ラリー)」

SSTRのゴール地点でライダー歓迎する地元住民の姿

“バイクを文化として日本に根付かせる”、このフレーズは1970年代あたりから方々で口にされましたが、俳優やタレントなどの影響でバイクが注目されようと、画期的な新技術を盛り込んだ新型モデルが登場しようと、文化として形成されるまでには至りませんでした。

しかし、年月を経て世代が変わることで環境やライフスタイルも変化し、肩肘張らずにより自然なかたちでバイクのある生活を楽しむ人が増えました。多種多様な趣向でバイクを楽しむユーザーが増えたことにより、こうした気軽でポジティブな付き合い方が、新たなバイク文化として形成され始めています。

MOTOINFOでもご紹介したツーリングイベント「SSTR」は、初開催時の参加者数は127名でしたが、回を重ねるごとに動員を増やし、気づけば開催期間中、地元宿泊施設のキャパシティを優に超える1万人以上のライダーが集まるイベントとなりました。開催地である石川県羽咋市はもとより、地元地域へ大きな経済効果をもたらしていることは言うまでもありません。

また、日本列島の東側から出発するライダーを応援する宿泊施設や、さらにはゴール地点から出発して、わざわざ日本列島東側の朝日を撮ってから戻ってくるという参加者も増え、参加ライダーによるさまざまな楽しみ方が全国的に波及しています。

ライダーが走って生まれる波及効果!?「SSTR」と「にっぽん応援ツーリング」で垣間見た冒険家 風間深志氏の想い

政府の観光支援政策も追い風となる

国土交通省 観光庁「観光立国推進基本計画(第4次)概要(令和5〜7年度)」

ライダーと、それを受け入れる自治体側にとっても追い風となるのが、国土交通省が力を入れている観光立国に向けた政策です。

国土交通省 観光庁の発表した「観光立国推進基本計画(第4次)概要(令和5〜7年度)」によると、さまざまな支援(補助金・助成金など)が準備されています。こうした政策が受け入れ先である地方自治体にとっても後押しとなり、ライダーの行動と観光地域の取り組みのベクトルが合っていると言えます。

例として支援策を一部抜粋して掲載します。

<「観光再始動事業」の公募>
地方公共団体・観光地域づくり法人(DMO)・民間事業者等が実施する、特別な体験コンテンツ・イベント等の創出等を支援

<「インバウンド受入環境整備高度化事業」の公募>
“公共交通機関の駅等から個々の観光スポットに至るまでの散策エリアにおける「まちあるき」や広域的な周遊に係る環境整備を一体的に進める事業”及び“訪日外国人旅行者の来訪が特に多い又はその見込みがある観光拠点施設における拠点機能の強化を図る事業”を支援

<「事業者間・地域間におけるデータ連携等を通じた観光・地域経済活性化実証事業」の公募>
観光地・観光産業全体の収益最大化・最適化への転換を図るため、旅行者、観光地域づくり法人等の観光地経営を行う者、宿泊事業者等の地域内事業者に関わる課題の解決に資する先進モデルの創出に取り組む

<訪日外国人旅行者周遊促進事業費補助金>
歴史的資源の宿泊等環境整備に対する支援並びに歴史的資源を活用した滞在拠点の高付加価値化支援
こうしたことが地方自治体の観光に対する前向きな動きに繋がっているのかもしれません。

ライダーの変化もプラスのベクトルに寄与

親子バイク教室

昨年度に一般社団法人 日本自動車工業会が発表した統計結果(2021年度 市場動向調査)によると、ライダーの平均年齢もわずかながら若返った(54.2歳)ほか、各バイクメーカーとも原付二種(排気量50〜125cc以下)のモデルが充実したこともあって、若年層の参入が顕著にみられます。

東京モーターサイクルショー2023にてMOTOINFOがアンケート調査

こうした若年層ライダーにバイクに乗り始めたきっかけを尋ねると、両親や親戚の影響で乗り始めたと回答する若年層の割合も増えました。

1990年代まではバイク乗車に対して否定的な考えを持つ親族が多数派でしたが、「バイク=うるさい、危ない」といったネガティブな印象は払拭されつつあり、両親や親戚も薦めるアクティブで楽しい趣味という位置付けに変化していると思われます。

一般社団法人 日本自動車工業会「二輪車用胸部プロテクター認知度調査(2022年9月)」より抜粋

また、教習所や二輪業界団体などが主催する最近の安全運転講習会では、ヘルメットはもちろんのこと胸部プロテクターの着用も必須となっている講習も増えました。

教習所に通う期間で胸部プロテクターの着用が習慣化されることで、免許取得後も常用するという若者の言葉を耳にするようになりました。

家族・親戚など親族からの推奨をはじめ、ライダー自身の安全に対する意識の向上によって、世代を超えたコミュニケーションを生み出し、周囲からライダーに向けられる視線も以前より暖かくなっているものと思います。

仮説:高付加価値のバイクツーリズムが社会貢献につながる可能性

一つ例として挙げられるのが、2013年から東北で開催されている自転車イベント「ツール・ド・東北」です。このイベントは、東日本大震災の復興支援および震災の記憶を未来に残していくことを目的としており、参加費・協賛金・寄付金から収益が出た場合は、「ツール・ド・東北基金」に寄付されています。基金の使いみちは、東日本大震災の被災地の復興に関する活動への助成として使われています。

参加することで社会貢献ができる、これもある意味で一つの付加価値なのかもしれません。

バイク業界に目を向けると、コーヒーミーティングやメーカー主催のミーティングなど、昨今はイベントが非常に盛況です。

こうしたイベント(目的地)までのツーリングに、目的意識や新たな楽しさ、社会貢献などの付加価値を加えた“ガイドプログラム”を開発することで、より一層ライダーにとって参加する意義のあるものとなり、年間の恒例行事となり、規模の拡大によっては開催地周辺の地域活性化に貢献するような社会的メリットを呼び、それがまたライダーの楽しみ方拡大につながるのではないでしょうか。

こういったライダーの行動変容に着目した研究が、岡山理科大学(以下、岡山理大)で行われていました。

訪日外国人の“コト消費”に大きなポテンシャル

欧米などでは休暇を長めにとる習慣があるほか、バイク旅でも基本的にはパートナーを伴うなど、日本人の習慣や行動とは異なる点が数多くあります。こうした文化や慣習の違いが観光においても影響を与えることは、以前取材をした訪日外国人によるバイクツーリズムの際に感じ取ることができました。

彼らにとって日本という国は、短期間で海も山も満喫できる魅力的な島国であり、和食をはじめとする“おもてなし”の文化を堪能していました。取材をさせていただいたバイクツーリズム中の訪日外国人の方からは「どうしてクルマが皆キレイなんだ?」「手を出したら勝手に水が出てきたよ!」など、日本に住んでいたら普段当たり前と思っている文化や習慣も、彼らにとっては魅力的に映るようでした。

ツアー費用に加え、追加料金でレンタルバイクのモデルをアップグレードし、さらに旅先ではお土産を購入するなど、一人当たりの消費金額は100万円に近づくものでした。ツアーに参加していた十人程度が各々で高額の出費をするわけですから、これだけでも少なからず経済効果が見込めることは言わずもがなでしょう。

岡山理大の資料より「訪日外国人のコト消費需要に関する仮説」

つまり、今後、訪日外国人による“コト消費”が加速し、そうした流れのなかにバイクを用いた観光(ツーリズム)が着目されることとなれば、かなりの経済効果が期待できるのではないでしょうか。

さまざまな視点から因子分析した結果をもとに提案

岡山理大の資料より「(仮)モトツーリズム概論目次」

岡山理大 経営学部 林恒宏研究室・太成学院大学 経営学部 小倉哲也研究室では、訪日外国人ライダーはもとより、日本でバイクに乗るすべてのライダーたちに向けて“ガイドプログラム”を開発することを目的として研究を行っています。

従来までのバイクの楽しみ方は、ツーリングを中心としたライダー自身がバイクで走行することに楽しみを見出すものでした。

本研究では、より高付加価値な“ガイドプログラム”を提供するための要素を、経験価値や観光資源(地域資本)の観点から明らかにすることを試みとしています。

具体的には、経験価値と観光資源(地域資本)を中心に、既にモトツアー事業を手掛ける事業者に対しての調査や、各事業者が行うツアーに帯同し、経験価値と観光資源(地域資本)の観点で観察とツアー参加者への聞き取り調査を行なっています。また、事業者とツアー参加者への観察・聞き取り調査で得られた項目(キーワード)をもとにアンケートを作成し、ツアー参加者、バイク免許保有者、免許非保有者(一般ユーザー)にアンケート調査の実施を予定しています。

その結果を因子分析し、特にモトツアーにおけるガイドプログラムにおいて重要な要素を抽出し、モデルの確立を試みるというものです。

本研究によりモトツアーガイドプログラムの必要因子を明確にできれば、モトツアーガイドプログラムのさらなる普及につなげることが期待できるというものです。

大学がこうした研究に乗り出すこと自体が、ある意味でバイクのプレゼンスが向上しているとも考えられます。新たなガイドプログラムの創出によって、バイクが日本における観光立国の大きな材料として注目されることに期待しましょう。

国土交通省 観光庁「観光立国推進基本計画」

https://www.mlit.go.jp/kankocho/kankorikkoku/kihonkeikaku.html

一般社団法人 日本自動車工業会「二輪車用胸部プロテクター認知度調査」(2022年9月)

https://www.jama.or.jp/operation/motorcycle/environment/pdf/Awareness_survey_on_Chest_Protectors_for_Motorcycles_2022.pdf

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