【三ない運動撤廃】安全運転講習を受けた埼玉県高校生のアンケートから見えた交通安全意識の高まり
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県内全ての公立高校を対象にバイクの安全運転教育に取り組む埼玉県では、2019年から新指導要項の運用開始によって安全運転講習の実施体制が整い、多くの高校生が講習を受けています。これによって、バイクに乗る高校生へ安全運転教育が届けられるようになりました。
それでは現在、埼玉県で行われている「高校生の自動二輪車等の交通安全講習」によって、どういった成果が出ているのでしょうか。また、受講した高校生にどのような意識の変化があったのでしょうか。これについて、受講した高校生のアンケートから分析してみました。
参加学校数/受講者数ともに年々増加している
埼玉県内の自動車教習所を利用して年間6回行われている安全運転講習ですが、参加する学校は2019年が68校、2020年/2021年ともに91校が参加しており、参加校および参加生徒数ともに増加傾向にあります。また、受講する生徒も年間で平均300名を超えていますが、講習会場が教習所であるため、場合によっては2時間以上かけて来講する高校生もいました。
また、バイクに乗るための承認を学校から得るため、仕方なく受講する生徒も多いのではないかという考えは杞憂に過ぎず、受講を終えた高校生のアンケート結果を見てみると、しっかりと安全運転教育による成果が見えてきました。
アンケートから見えた受講生の大きな意識変化
埼玉県では2019年の初開催から毎講習後に必ず受講者へのアンケートを行ってきました。
安全運転講習の受講者アンケートから出てきた単語の頻度と関連性を共起ネットワーク※という手法で分析し、その結果から見えてきた具体的な高評価の理由を見てみましょう。
※共起ネットワークとは、単語と単語の繋がりをネットワーク図化し、感覚的に、どのような事象が頻出しているのかを把握できるものです。
上の図は、受講者の感想から単語を全てピックアップして共起ネットワーク図化したものです。円の面積が大きいほど回答頻度の高い単語であり、関連性の高い単語を線で結んでいます。
この分析で注目すべきは、最も面積の広い黄色の集合体、すなわち「事故の危険を考えるようになり、安全な運転を心がける」ようになったことが如実に表れています。
また、その左にある緑色の集合体からは「スピードへの苦手意識や、Uターンや実技/講習/練習の必要性を感じている」ことがわかります。
こういった生徒たちの不安要素や苦手意識を引き出せる講習内容になっていることが見えます。この結果は生徒たちに考えるきっかけを与え、安全方向への意識変化に繋げられていると言えるのではないでしょうか。
利用頻度の高い通学利用において予知しにくい危険が多数存在
また、同アンケートの中で、「運転時に危険を感じた事がありますか?」という質問に、半数近くの受講者が「危険を感じたことがある」と答えています。
こちらの回答結果についても共起ネットワークを見てみると、雨天時やマンホール、濡れた路面など、ある程度予測できる事柄は別として、クルマが原因で危険に感じた回答をいくつかピックアップしてみます。
- クルマに幅寄せされた
- クルマの急な割込み、急な追い越し
- クルマにあおられた
- トラックの内輪差
- 前を走るクルマの急ブレーキ
- 一時停止を守らないクルマと接触しそうになった
- クルマの急な進路変更、など
急な割り込みや、追い越し、急ブレーキ、進路変更など、動いているクルマの動作や進路については様々なケースが考えられ、受講生の言葉からも危険予測の見落としについて懸念していることがわかります。
つまり、雨天やマンホールなど、普段から通い慣れた道の環境変化に潜む危険性だけではなく、クルマがそばに来るとどのような危険があるか、交差点など見通しの悪い場所から人や自転車が飛び出してこないかといった、いわゆる”かもしれない運転”のための想像力や予備知識を学ぶことが交通安全講習に求められているのかもしれません。
現代の高校生は想像力豊か。必要なのはそれを危険予測に繋げること
日頃からバイク運転時に心がけていることを受講した高校生たちに尋ねると、意外にも多彩な答えが返ってきました。
例えば、走行時の周辺環境に対して、
- 対向車線にも気を遣う
- 高齢者に気を配る
- 遠くを見て早めに判断
- 停車中のクルマに注意を払う、など
また普段からも、
- 親にバイクを定期点検してもらう
- 自分の運転技術を過信しない
- 道路が混雑していても焦らない、など
冷静な交通安全意識を持ち、安全運転に努めていることがわかります。
心身ともに成長途中であり多感な時期でもある高校生の時期だからこそ、ゲームやインターネットなどからも様々な情報を得ながら、想像力を養っているのでしょう。そんな彼らの想像力を日々の安全にも活かすため、改めて昨今の事故事例などを含めて危険予測の意識を高める教育が必要です。
継続的な安全運転講習と積極的な参加の推進、これこそが高校生の事故削減に繋がるのではないでしょうか。
取材協力:埼玉県教育局県立学校部保健体育課