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ライダーの安全を祈願するバイク寺・本瀧寺の姿に迫る

大阪府北部・豊能郡能勢町の山間部にひっそりと建つ本瀧寺は、日本で唯一の『バイク寺』として全国に知られる存在となっています。副住職を務める野間秀顕(のま・しゅうけん / 以下、野間さん)さん自身もバイクをこよなく愛するライダーで、日々交通安全の祈願や講話に勤しんでおられます。

大阪の中心地からバイクで約1時間という、ツーリングとしても程よい距離に位置する本瀧寺。いつ、どのようにしてバイク寺となり、全国のライダーから注目されるようになったのでしょうか?これまでの活動や今後の展望などを伺ってきました。

野間秀顕

出身地:大阪
誕生日:1974年9月9日
資格:普通自動車免許、大型二輪免許
役職:本瀧寺執事長・宗法会部長


高校卒業後、比叡山などでの修行を経て2004年より総本山本瀧寺に入寺。祈祷・供養・滝行などで多用な日々を過ごすなか、40歳で青年時代の趣味だったバイク熱が再燃。全ライダーの安全を願うべく、交通安全の普及に努める「バイク寺」としての活動を始める。

「本瀧寺の野間和尚」から「バイク寺の和尚」へ

本殿が落成したのは1935年。寺院としては比較的新しい

本瀧寺は、奈良時代から続くお滝(行場)をお守りしている祈祷寺です。祈祷寺とは、無病息災や商売繁盛、交通安全などを願う目的で建立されたお寺のことを指します。したがって、野間さんにとって交通安全祈願は職務のひとつであり「バイクに乗る以前から当然のこと」だったそうです。

若い頃にバイクに乗っていた経験を持つ野間さんは、40歳のときに友人や先輩からのすすめもあって、再びバイクに乗ることになりました。

「大型の海外製アメリカンバイクに乗り始めたんですが、久しぶりのバイクは怖いなんてものじゃありませんでした(笑)。若い頃と違い、いろいろな怖さを知っているせいもあって昔とは乗り方が変わったのだと実感しました。

そんななかでとにかく去来したのは「安全第一」でした。楽しいツーリングも、事故を起こしてしまったら台無しです。バイクを愛する方々のためにも、私は交通安全の普及により力を入れなければならないと決意しました」

交通安全への想いを強固にした野間さんに、多くの方々が賛同してくれました。

「すべてのライダーに、交通安全についてもっと考えてもらいたい。そのために本瀧寺に訪れていただき、お互い理解を深めていきたい。そんな想いをバイク仲間が汲み取ってくれて、その取り組みを広めてもらうサポートをしてもらうようになりました。

『バイク寺』などの呼称にも私自身照れていた部分もあったのですが、仲間からは「交通安全が野間和尚の使命だとすれば、恥ずかしがっている場合じゃない。まずは認知されることが大事だ!」と大真面目に助言してもらいまして、その気持ちとともに今日まで活動を続けられています」

バイク祈祷、安全運転と精力的に活動

愛車と一緒に交通安全祈願の様子。個人でのご祈祷は予約制

ライダーの安全を祈願するバイク寺として広く活動する本瀧寺では、一般的な御祈祷とは別で、バイク乗りのために「バイク車輛前祈祷」を執り行っています。また大阪府警に協力する形で安全運転への呼びかけや啓蒙活動に従事しています。それも、「一人ひとりのライダーにもっと安全運転について考えてもらいたい」「不幸な事故を1件でもなくしたい」という野間さんの強い想いから。今や関西圏だけでなく、全国各地から安全を祈願しにライダーが本瀧寺を訪れるそうです。

大阪府警豊能署とともに行った安全運転のイベントの模様

本瀧寺で開催した大阪府警豊能署とのイベントでは、安全運転のためのお手本を白バイ隊員がレクチャーし、安全運転の心がけについて野間さんが講和されました。乗り慣れてくると疎かになりがちなライディングの基本を改めて思い出しつつ、気持ちの面でも余裕をもった運転を意識することで危険性を大幅に減らせると参加者も気づきが多かった模様です。

お寺×カフェの異色コラボでバイク寺として認知

精力的に交通安全に関するイベントを企画・運営する野間さんがライダーの憩いの場として考えたのが、お寺×カフェ『ほんたき寺巣(てらす)』です。

「休憩や飲食ができる場所があれば、ツーリングやお参りがてら来てもらいやすいと考えたんです。2016年にオープンした当初は『ほんたき山のカフェ』という名称で、空いている敷地にテーブルと椅子を並べた程度のものでしたが、2022年にリニューアルしたんです。ライダーが自然に帰ってきたくなる「巣」のような場所でありたいという想いから、同じく住職で弟の昭泉(しょうせん)が『ほんたき寺巣』と命名しました」

野外のカウンターやテーブル席。能勢の絶景を眺めながらくつろげる
同じバイク乗りとして、兄と二人三脚で本瀧寺を支えている弟の昭泉和尚(左)

構内にカフェを併設したことをSNSで知ってもらえるようになってから、バイク寺と名乗るようになったと野間さんは語ります。

「その当時、バイク神社といえば安住神社さんが有名でしたが、バイク寺はどこにもなかったんですよ。「よし、やろう!」となり、すぐに動きました」

一番人気の「ほんたき薬膳カレー+揚玉葱(1,300円)」。お寺らしく、薬膳効果のあるスパイスを用いている

インフルエンサーに取り上げられたことから有名になった『ほんたき寺巣』は一気に知名度が上がり、休日には行列待ちができるほどに。カフェ利用だけではなく本堂に手を合わせていただくことを目的に来訪してほしい野間さん、御祈祷のために訪れてくれたライダーとの交流に心が安らぐこともあるそうです。

「あるライダーさんに「よろしければ『ほんたき寺巣』で休んでいってください」とお声がけすると、「え?カフェなんてあるんですか?」とおっしゃってくださったんです。カフェ目的ではなく、交通安全を祈願するために来てくださる方も大勢いるんですよ。

バイク寺と名乗ってからもしばらくは関西圏のライダーさんが中心でしたが、関東や九州など、全国あちこちのナンバーを見かけるようになりました。私のことを「バイク和尚」と呼んでくださる方もいて(笑)。バイク寺として前進したことを実感しましたね」

絶妙のタイミングで「安全第一」を思い出させてくれる守護鈴

野間さん考案の守護鈴。バイクの地面に近い場所に取り付ける

本瀧寺ではバイク祈祷や滝行などのほか、お守りや守護鈴といった交通安全にかかわる授与品も好評です。なかでも守護鈴は野間さんが考案した独自の法器。何度も試作を重ね、安全運転に直結するよう工夫したそうです。

「まず、守護鈴とはバイクに取り付けることを想定した法器のことで、金剛鈴から着想を得ています。金剛鈴は邪気除けのために身につけるものですが、守護鈴は邪気を追い払ったうえで、良い気を取り入れるよう祈願しています。

鈴の鳴り方には力を入れていまして、心地よく、それでいてはっとさせられるような音色にしました。コーナーを曲がったときやスピードを出しすぎたときなどに「チリン」と聞こえれば、「安全運転」がよぎるじゃないですか。あるライダーさんは笑いながら、「走行中でもマフラーの音にかき消されることなく守護鈴の音だけは妙に聞こえてくる」とおっしゃっていました」

他の授与品にも野間さんと昭泉さんのこだわりが詰まっている

「守護鈴といえば、「これ、道に落ちてましたよ」と拾って持ってきてくださったライダーさんがいましてね。もはや持ち主さんがわからないので、お札をお返しするように、本瀧寺に返納したいとおっしゃって。

失くした方はお焦りになったと思いますが、きちんと仏様にお返ししました。この記事をお読みで心当たりのある方、ご安心くださいね」

ライダーの安全を祈願する全国行脚を行いたい

野間さんに「バイク寺」の今後の展望を伺いました。

「これまでと同様に、交通安全祈願や安全運転を呼びかける講話は積極的に取り組んでいきたいと思っています。これまでも各メーカーさんやバイク関連団体さん、また大阪府警さんからお声がけいただき、大規模なイベントを行ってきました。そうした取り組みにもどんどん協力していきたいですね。春や秋はバイク日和なので、今年も忙しくなりそうです」

現在はバイク専門サイトでコラム執筆を担当されており、さまざまな面から安全運転のための発信をされています。

「和尚という立場上、「説法」を通じて交通安全やバイクとの付き合い方を執筆しているのですが、文章に落とすという行為は難しいものですね。しかし、これも修行の一貫であり、私の使命として、精一杯やらせていただいています」

精進し続けるバイク寺の今後に注目

ツーリングスポットとして立ち寄ることができ、交通安全祈願もでき、休憩がてらお腹も満たせるライダーの巣。多くのライダーに応援され、愛され続けている野間さんと本瀧寺の今後が楽しみです。ぜひ、愛車とともに訪れてみませんか。

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妙見宗総本山 本瀧寺

https://www.hontakiji.com/

本瀧寺公式インスタグラム

https://www.instagram.com/hontakiji/

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