【地球への恩返し】バイク乗りからはじめる地球愛護活動「ラブ・ジ・アース」とは?
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海洋プラスチック問題が話題になり始めたのは2017年ごろ、環境問題を題材に元アメリカ副大統領主演のドキュメンタリー映画が放映されたのが2006年のことでした。
「バイク乗りだからこそ、バイクで遊ばせてもらっている地球を愛そう、地球に恩返しをしよう」そんな呼びかけでスタートした地球愛護活動「Love the Earth(ラブ・ジ・アース)」は、それよりも以前の2002年から続く活動です。
少しずつ、私たちライダーにできることから恩返しをしていこうという地道な活動は、今年で20周年を迎え、これまでの開催回数は37回、参加者数は18,000人を超えました。
現在も続くこの素晴らしい活動を読者の方にも知ってもらうために、発起人であるラブ・ジ・アース実行委員会の会長である北村明広さん(以下、北村さん)と、第一回から運営を担う手塚千絵さん(以下、手塚さん)にインタビューさせていただきました。
発足直後の妨げとなったのは “バイクのマイナスイメージ”
バイクの人気が再燃しているここ数年は、ツーリングだけではなくキャンプや釣りなど様々な趣味を掛け合わせて健全に楽しむライダーを多く見かけるようになりましたが、20数年前はまさにカスタムブームがピークを越えた時期で、不正改造による騒音問題や違法駐車などといったマナーの悪い一部のライダーたちによって、負のイメージが強い時期でした。また、世代によっては1980年代の暴走族を思い起こす方もおり、ラブ・ジ・アースが活動を始めるまでには、一筋縄では行かなかったとのこと。
北村さんはラブ・ジ・アース実行委員会の発足当時を振り返って次のように語ってくれました。
「毎年いくつかの海岸でサーファーによるゴミ拾い活動は行われていたけど、当時は環境に対する意識も今ほど高いわけではありませんでした。ある時、静岡の海岸でウミガメの産卵を見るイベントに参加した際に、コンビニ袋を飲み込んでしまったウミガメを見たことがあり、本活動を発足させたいという強い意志を持ちました。職業柄、普段から私はライダーと多く接する機会があったので『バイク乗りは地球で遊ばせてもらっているのだから、その分を愛で返そう。バイク乗りとして、何とかバイク乗りのイメージを向上させよう』と考えました。」
まず、この考えを北村さんの経営する出版社の社員たちに提案したところ、誰からも異論が出なかったそうです。
さらに二輪メーカーや関連企業、二輪誌出版社、二輪関連団体などからの賛同も得られ、ラブ・ジ・アースの初開催に向けて動き出した矢先で、早くも壁に直面します。それは“自治体の協力”でした。
海岸のゴミ拾いである本活動では、拾ったゴミを適切に処理するために自治体の協力が必要不可欠です。しかし、バイク乗りが海岸の清掃活動をするという、これまでに前例のない活動であるがゆえに、提案に行った自治体の中には「バイク乗りがなんで掃除するの?」「集団で来られたらうるさいのでは?」といった懸念を理由に50以上の自治体に断られたとのこと。北村さんは、活動に賛同いただけなかったことよりも、想像以上にライダーへのマイナスイメージが根強く残っていたことにショックを受けたといいます。
ラブ・ジ・アースは2014年に自然環境功労者として環境大臣より受彰
多くの地方自治体に断られ続ける中で唯一「素敵な活動ですね。ぜひ協力させてください。」と、快く受け入れてくれたのが静岡県牧之原市(当時相良町)でした。その後、同市のサポートを受けながら第一回目は相良サンビーチにて開催することができ、ラブ・ジ・アース生誕の地となりました。
ラブ・ジ・アースの第一回目から活動に携わる手塚さんに、ビーチでの活動の様子を伺うと
「参加してくれる方の8割近くはソロツーリング(ひとり参加)です。最近では若者の参加も増えており、『海岸清掃ってカッコイイと思って参加しました』と言われた時はとても嬉しかったです。開催地に近い方の参加が比較的多いですが、20年間続けてきて、本当に参加される皆さんは良い人ばかりです。中には集合時間より早めに到着して、自主的に清掃を始めようとする人を待っていただくほどです。静かに集まって、そして静かに帰っていく。本当に良識を持った素敵な方ばかりです。」
こうしたライダーたちの姿を見て、地元住民や自治体のライダーに対する意識が大きく変わったことは言うまでもありません。
続けて北村さんは次のように語ってくれました。
「開催地の近隣では自治体が海岸清掃の協力依頼のために学校へチラシを配布してくれたり、部活でビーチを使っている学生さんも協力に駆けつけてくれます。本活動によってライダーのプレゼンスも向上し、次回もぜひ開催して欲しいと言ってくださる自治体も非常に多いため、活動が継続できているのだと思います。」
そんなラブ・ジ・アース活動は、自然環境の保全に関する功績が認められ、2014年に環境省から表彰されるにまで至りました。
生誕の地で行う20周年ラブ・ジ・アース
「大げさなことじゃなくていい、少しずつ、バイク乗りにできることから地球に恩返し」で始まったラブ・ジ・アース活動は、20周年のメモリアルイヤーである今年10月30日に、生誕の地である静岡県牧之原市の相良サンビーチで再び開催されます。
タイヤをすり減らし、排気ガスを出すバイクという乗り物に乗るライダーが環境活動を行うという行為は、少し矛盾しているのかもしれません。しかし、それは表層的な部分に過ぎず、地球愛護でありながら、本質はライダー各自の意識を変えることなのです。
いつもイベントのフィナーレに北村さんがスピーチする言葉に、ラブ・ジ・アースの本質を垣間見ることができましたので、最後にご紹介します。
「ラブ・ジ・アースという地球愛護活動は、地球規模で見れば本当に微細なこと。それでも、周りの人に今日得た感動や気持ち良さを伝えて欲しい。そして一人でも普段からでも地球を思うような生活に変えてみて欲しい。それがラブ・ジ・アースです。」
これが、北村さんの本音であり、ライダーの意識を変えるパワーワードであり、皆の心を動かすラブ・ジ・アース活動の本質なのです。
興味を持った方は、ぜひ公式サイトをチェックしてみてください。