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[VR]バイクの世界をリアルに体感できるバーチャル空間の最新技術に迫る

バイクに乗る楽しさを余すところなく伝えられれば、まだバイクに触れたことがない、バイクに興味を持っていない人の気持ちをグッと引き込めるに違いありません。しかし、乗ることで気づくことができるバイクの多くの魅力を、二輪免許をお持ちでない方に伝えるのは実に困難です。

免許を持っていない人にも“乗ればわかる、バイクの楽しさ”を楽しんでもらう手段として、バーチャルリアリティ(仮想現実)での擬似体験です。「VR」「メタバース」の呼称で広く親しまれているこの技術の進化は著しく、馴染み深いゲームや映像の世界だけでなく、バイクの世界でも活用が進んでいます。

今回はバイクの世界におけるバーチャルリアリティの最先端を行く方々にお話を伺い、技術の進化やその先に広がる未来図をご紹介します。

バイクの新たな可能性を模索する技術革新

バイクでのライディングを擬似体験できるバーチャルリアリティシミュレータの開発なども手がける世界的に見ても特殊な事業を軸とする有限会社プロトタイプ。今回お話を伺った代表の渡辺光章さん(以下、渡辺さん)は、若い頃にバイクウェアブランド「クシタニ」のエクスプローラーサーキットの立ち上げにも携わった経歴の持ち主です。今まさに同社で技術革新を行っている「バイクでのVRシミュレータ開発」がバイクの世界にどんな変化をもたらし、どんな可能性を切り開いていくのかお話を伺いました。

渡辺光章

有限会社プロトタイプ 代表取締役
1962年9月24日、宮城県仙台市生まれ。


CMプロダクション会社やIT企業のデザインマネージャーを経て、2004年にプロトタイプを創業。バイクのVRシミュレータ開発を基幹事業として行っており、世界的にも注目を集める。国内外のバイクメーカーとも共同で機器の開発を行うことも。

難解なバイクとライダーの動作プログラムも着実に進化

私たちの生活にも日常的に普及しているVRの世界。クルマやバイクの世界でも技術革新は都度起こり続けていますが、やはりバイクはクルマと操作性や挙動が異なることから、開発が非常に難しいのだと渡辺さんは話してくれました。

「ハンドリング操作、ステップワーク、体重移動など、バイクは人間のフィジカルをかなり使って乗る乗り物ですよね。クルマの場合は機械の挙動を演算してプログラミングできるのですが、バイクはライダーの操作する挙動も計算に入れなければならないため、プログラムがかなり複雑になるんです。

人間が体を使って操る乗り物という点ではボートが近いんですが、バイクはさらに精密さが求められます。この研究を進めていると、いつもバイクという乗り物をプログラミングする難しさを感じさせられます。

10年前だと、とても実現不可能だと思っていたことですが、ようやくライダーのポジションがデータとして取れるようになってきたので、以前よりも格段に技術が進歩している実感があります。こうした取り組みや技術は、世界を見ても日本ほど進んでいないんですよ。世界に名だたるバイクメーカーが4社もある私たちが世界に先駆けて、新しいバイクの世界を切り開きたいですね」

バイクレースを仮想現実で楽しむ世界がすぐそこに

実際にバイクに乗っているかのような挙動や操作性を仮想現実の世界で楽しめるようになると、その先にはどんな未来が待っているのでしょうか。すでに海外で起こっているムーブメントとともに、渡辺さんはひとつの可能性を語ってくれました。

「バーチャルの世界でのバイクレースが広がってくると思います。すでにスポーツの世界ではeスポーツが大きなマーケットとなり、広く認知されるまでになりました。さらなる技術の進化で『バイクのVR世界』が日常的になってくれば、オンラインで繋げられたバーチャルリアリティのMotoGPができて、バーチャルレーサーと呼ばれる人たちが出てくるかもしれません。

日本でも販売されているバイクレースのゲーム「RIDE」が欧米では人気を博していて、バイクレースのシミュレーション体験が身近になっています。まだまだ発展の余地があるので、もっと発展したバイクのゲームが楽しめるようになり、さらにその先ではリアルなバイク体験の世界が広がっていくでしょう」

まだ見ぬバイクのVR世界に触れられる日はそう遠くない?

バイク免許を持つライダーなら味わえる“バイクの魅力、バイクの楽しさ”を、このVRの世界が一層進化することで免許を持たない人が体感できる日は来るのでしょうか。

「やはり現実世界でバイクに乗ることを完全に再現するのは、現時点では難しいでしょう。未来のことは断言できませんし、もしかしたらとてつもない技術が生まれて、現実世界と同等の体験ができるようになるかもしれません。今の段階では、極めて近い体験の世界を作り出せるけど、同じにはならない、ということです。

この研究を10年以上続けてきて、特に進化を感じるのは機器の小型化です。小さなセンサー類を各部位に取り付けられるようになり、得られるデータが飛躍的に増えてそれがシミュレータの性能アップに大きく寄与しています。こうしたテクノロジーは日々進化しているので、バイクのVRの世界にそれほど明るくない皆さんの想像する一歩先までお招きできるようにはなると思います」

ヤマハ発動機が挑戦するメタバースの世界

2023年6月、ヤマハ発動機はメタバース上で開催される世界最大級の規模を誇るバーチャル展示会「バーチャルマーケット2023 Summer」に出展しました。VRゴーグルを使用して没入体験ができる「VRChat」会場と、タブレット端末などから参加できる「Vket Cloud」会場のそれぞれで、ヤマハ発動機が提案するバーチャル空間での新しい移動体験を楽しめました。

そのルックスから浮遊感を感じられる未来のモビリティをイメージしたコンセプトモデル「VRパーソナルビークル」や、友達と会話をしながら、会場をゆっくり周遊できる開放的なモビリティ「VRコミュニケーションビークル」のほか、ヤマハ発動機のフラッグシップモデルであるスーパースポーツバイク「YZF-R1」が擬人化したアバター「YAX-0」:Version-0 [Prototype]が登場。パーツが組み合わさってバイクが人型に変形するというロボットアニメのような世界をメタバースで実現、マシンの新たな可能性を示しました。

ロボティクス技術を用いた自律ライディングロボット「MOTOBOT君」のアバターなど、ユニークなキャラクターの存在も参加者の目を楽しませていました。近未来を想像させるヤマハ発動機の新たな世界観が、バイクの進化に新たな風をもたらすかもしれません。

大学生がもたらすバイクのVR空間を堪能

若者の「好き」を形にするNPO法人Bizjapanが手がける大学生インカレサークル「Neoriders Project」では、「バイク×仮想現実」という次世代のバイクのあり方など、さまざまなバイクの楽しみ方について研究を進めています。こちらでもメタバースやVRを活用してバイクへの興味や関心を作り出す働きかけをしており、2022年には東京大学の学園祭「駒場祭」にバイク体験VR作品を展示、2023年には早稲田大学の学園祭「早稲田祭」にVRコンテンツの進化版を展示し、多くの来場者が興味を示し仮想現実の世界を体験していました。

さらなる進化が楽しみなバイクのVR空間

「バイクのVR空間」の技術革新がここまで進んでいるとは思いもよりませんでした。バイクという乗り物の特殊性を改めて知るとともに、近年のVR技術進化がバイクの世界に新たな風を吹き込んでくれる期待感も高まりました。MOTOINFOではこうしたバイクのVR技術の進化を追ってまいります。

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