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楽しさとリスクの両面を伝える母親ライダーのバイク教育とは?(川崎由美子さん)

いつの時代も母親は我が子の安全を願うものです。子どもの目線では、ときに疎ましく過保護のように感じたり、母親の目線では、どのようにして我が子を守っていくか頭を悩ませます。

そこで今回は、3児の母であり、また息子と共にバイクを楽しむ現役のライダーである川崎由美子(かわさきゆみこ)さんご一家にお話を伺ってみました。

川崎さん(以下、由美子さん)は、どのように考え息子とバイクを楽しむに至ったのでしょうか。

 

自分の身体は自分で守る、それが我が家のルール

両親ともにライダーだったため、バイクの使用に対して”我が家のルール”という名の厳しい教育方針がありました。

一番はやはり、本当に自分はバイクが好きで乗るのか、バイクが必要だから乗るのかをきちんと把握すること。

そして、バイクは楽しさと危険性が表裏一体であることを十分理解すること。

最後に「自分の身体は自分で守る」という意味を込めて、バイクの免許費用は本人が全部用意すること。

それでも男三兄弟は一様にバイクに対して憧れを抱いていました。しかし、長男、次男は、多忙な大学生活を過ごし、そのまま就職活動へと突入し大学卒業、その後すぐに就職と、結局教習所に通う時間が取れずじまいとなってしまいました。

そんな兄たちを見て三男の皓旭(こうき)さんは、就職してしまうと免許が取りづらいと考え、就職活動終了から大学卒業までの空き時間を利用して、アルバイトで貯めたお金でバイク免許を取得しました。

 

心配するだけではなく、自分たちの経験を知って貰う

皓旭さん(左)、由美子さん(右)

結局バイク免許を取得したのは皓旭さんのみでしたが、両親ともにライダーであったことから、バイクについての楽しさはもちろん、乗り方によっては危険であるということについても、よく話していました。

ツーリングの時の写真を一緒に見ながら、楽しかったこと、面白かったこと、事故にあったこと、ケガをしてしまったことなど、ありとあらゆることを話し、事故に合わないための対策などの教育を徹底していたとのことでした。

 

初めて自分で操る喜びを知った親子バイク体験会

皓旭さんが初めてバイクに乗ったのは、5歳の時に由美子さんが主催した親子バイク体験会でのことでした。

体験会の参加者は5歳くらいのお子さんから中学生までと幅広く、1台のバイクを通して親子がコミュニケーションを取りながら操作方法を学び、安全に楽しんでもらうという主旨のものでした。

ヘルメットやライディングウェアは兄のお下がりでしたが、レーサーになった気分でとても喜んでいました。また、体験内容は駐車場をクルクルと走るだけでしたが、風を切る喜びや爽快感、バイクを操ることの楽しさに感動し、バイクへの関心度が一気に高まったとのことでした。

 

家族の思い出、そこにはいつもバイクがあった

長男が転落しないように背負わせたリュックとベルトで自分の体と繋いていた

これまでに数え切れないほど親子でツーリングに出かけたとのこと。

「長男が5歳くらいの頃から、夫がバイクで私がクルマというツーリングもあれば、東京〜静岡間を1台のバイクと1台のサイドカーで往復したこともありました。」

 

「心をリフレッシュさせてくれるバイクの力が、より一層自分を強くしてくれていたかもしれない。」由美子さんは、当時を振り返りながら笑顔で語ってくれました。

 

インカムの向こうから聞こえた息子の本音

皓旭さんと初めてのツーリング、それは両親と3人で行った三浦半島でした。皓旭さんにとっては初めての高速道路走行でもあったため多少の不安はあったものの、みんなでインカム(ヘルメット専用インカム)を装着し、走り方のアドバイスや雑談をしながら、楽しいツーリングとなりました。

皓旭さんはその時のことを「初ツーリングの感動も大きかったですが、いままで親にクルマで連れて行ってもらっていた場所に、自力でバイクを運転して来れた事に感激したのを覚えています。」と語ってくれました。

また、ある時、由美子さんと皓旭さんで箱根までツーリングしたこともありました。その時もインカムで会話をしながらのツーリングでしたが、走行中に由美子さんの走り方を見るなり、皓旭さんが「お母さんカッコイイな」とつぶやいたそうです。その時のことを由美子さんは、「息子があんな風に言ってくれたのは本当に嬉しかったです。なにより、人の走り方を観察しながら走行できるほど、心に余裕を持って運転ができるようになったことが素直に嬉しかったですね。」と語ってくれました。

 

自己責任の教育がライダーとしての安全意識につながる

「バイクに乗るということは、常に危険と隣り合わせであり、跨った瞬間からライダー本人の意思や技術に委ねるしかない。一緒にツーリング走行をしていたとしても、助けられないことも生じるかもしれない。しかし、リスクも含めて寛大な気持ちで信用しなければ、親は歯がゆさも感じてしまう。」

「日頃から息子がバイクで出かける際も、笑顔で送り出しているものの、心の中では帰宅するまで心配でたまらない。」由美子さんは、そんなもどかしい親心も話してくれました。

バイクが家族の思い出を作り、時に言葉を超えたコミュニケーションの架け橋となる。そんな言葉にはできないバイクの不思議な魅力やパワーを皓旭さんも感じているようでした。

バイクの良し悪しをしっかりと理解し、「自分の身体は自分で守る」ということ。つまり、自分が全ての責任を持つという家の方針。ライダーとしての責任を自覚させ、正しい安全意識を養う効果的な方法のひとつなのではないでしょうか。

 

プロフィール:川崎由美子さん 

https://yumiko91.at.webry.info

音楽大学在学中にバイクの免許を取得。学生時代からファッションモデルや、TV・ラジオレポーターやイベントMC、バイク雑誌の活動にも携わる。現在は、二輪ジャーナリスト活動のほか、二輪車安全運転特別指導員として安全運転への啓発活動に従事する。音楽家(ピアノ演奏)としても活躍。

 

プロフィール:皓旭さん

https://www.koki-iwase.com

1994年生まれ、三男。早稲田大学卒業後、2018年に某IT企業へ入社。その後も稽古や小劇場への出演を続け、2021年4月より俳優活動に専念。堪能な英語、ドイツ語を活かして、日本のバイクと風景の動画配信や世界の舞台での俳優になるために、日々奮闘中。

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